戦国異伝供書
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第八十話 鬼若子その十一
「だからな」
「それで、ですな」
「ここは、ですな」
「兄上にしても」
「一乗様のことは」
「若し恩を忘れることをすれば」
その時はというのだ。
「当家もじゃ」
「陶殿の様になりますな」
「あの様に無残な末路を迎える」
「因果応報として」
「そうなりますな」
「左様、わしだけがそうなればよいが」
それでもというのだ。
「お主達や他の者達までそうなれば」
「それではですな」
「何にもなりませぬな」
「折角土佐を一つにしても」
「それでも」
「だから考えておる」
今の時点でというのだ。
「どうしてもな」
「左様ですか」
「果たしてどうすべきか」
「土佐を一つにするにも」
「どうすべきか」
「そこを守る、何とかな」
こう言ってだ、そのうえでだった。
元親は本山家との戦、次のそれの用意を進めつつも既に一条家とのことを考えていた。そこで政も行なうが。
漁業も進めさせていた、元親は土佐のその海を見て家臣達に話した。
「海の幸は全てじゃ」
「魚も貝も海老もですな」
「その全てをですな」
「獲りそして食う」
「そうしていきますな」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「魚を干したり燻製にしたり塩漬けにしてな」
「そしてですか」
「そのうえで、ですか」
「さらにですか」
「そういったものを食いますか」
「漁師達は既にそうしているが」
そうして食っているがというのだ。
「それだけでなくじゃ」
「我等もですか」
「漁師達からその塩漬けや干物を買い上げ」
「そうしてですか」
「兵糧にしてな」
そしてというのだ。
「そのうえでな」
「戦っていく」
「そうしていきますか」
「確かに干物や燻製、塩漬けがあれば」
「さらによいですな」
「左様、ではじゃ」
元親はあらためて言った。
「よいな」
「海の幸もですな」
「兵糧に入れていきますな」
「干物や塩漬けにし」
「燻製にもして」
「そうせよ、それとじゃ」
元親はさらに話した。
「今は本山家と戦っておるな」
「はい、今は」
「我等の敵はあの家です」
「何といっても」
「先々代からの宿敵です」
「忘れられませぬ」
「その本山家を倒すだけではない」
それで終わりではないというのだ。
「それはわかっておろう」
「はい、我等も」
「それは承知しております」
「やはりです」
「殿は土佐の統一を目指しておられます」
「やがては四国も」
「だからじゃ」
その為にというのだ。
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