レーヴァティン
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第百四十五話 港町からその二
「それならな」
「王であろうとも」
「臣下に出来るからな」
「問題ないでござるな」
「だからな」
それ故にというのだ。
「皇帝になったことはな」
「その意味でも大きいでござるよ」
「本当にそうだよな」
「皇帝はこの浮島で一人だけでござる」
「そうそう、実はな」
「王は何人もいるでござるが」
この地位にある者はだ。
「しかしでござる」
「皇帝になるのはな」
「一人だけでござる」
「この浮島でもな」
「あの時皇帝に即位してでござる」
そうしてというのだ。
「よかったでござる」
「そうだよな」
「権威もついたでござるからな」
「皇帝の権威な、ただな」
「ただ?」
「同じ皇帝の地位にあってもな」
それでもとだ、久志は進太に話した。
「流石に日本の天皇陛下は違うな」
「別格でござるな」
「俺はこの世界のこの浮島の皇帝だけれどな」
「それでもでござるな」
「幾ら権威があってもな」
このことは事実でもというのだ。
「それでもな」
「日本の天皇陛下は違う」
普段は誰も恐れぬといった感じの正もこう言うことだった。
「まさにな」
「そうだよな」
「おられるだけで日本は他の国とは違うものがある」
「そうなんだよな、これが」
「王ではない」
「皇帝でな」
天皇陛下を英訳するとエンペラー即ち皇帝となる、やはり王とは格式が違っていると言っていいのだ。
「そのうえでな
「長い歴史をお持ちだ」
「俺なんか最近なったばかりのぽっと出だな」
久志は自分でこう言った。
「本当に」
「しかし日本の皇室は違う」
「即位の礼なんかもう源氏物語の世界だしな」
「千年は前だ」
「そうだよな」
「もっと言えば千年で効かない」
「三世紀にはもう存在していたみたいだしな」
「飛鳥時代と言うが」
正はこの時代の話もした。
「七世紀のことだ」
「恐ろしい位昔だな」
「仁徳帝の陵墓もだ」
「その頃から皇室があった証だな」
「他ならぬな」
「あのでかさも凄いけれどな」
人頭天皇陵の巨大さは実に有名だ、古代エジプトのクフ王のピラミッドや始皇帝の驪山陵にも匹敵する程だ。
「歴史もな」
「恐ろしいものがある」
「そうなんだよな」
「日本の皇室は格が違う」
正はきっぱりと言い切った。
「こう言っては何だがお前とはな」
「同じ皇帝でもな」
「例え世界を超えてお会い出来てもな」
「格が本当に違うな」
「アメリカも中国も皇帝は戴いていない」
中国は二千年以上戴いていたが二十世紀に袁世凱が一時皇帝を自称したのが最後だった。
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