恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第八十話 陳宮、決意するのことその三
「御二人はこの宮殿におられますが」
「それでもお姿は」
「本当におかしなことね」
また言うのだった。
「国の柱が双方もというのは」
「ですね。しかし」
「御姿はどうしても」
「わかったわ」
話を切る言葉だった。
「それではね」
「はい、それでは」
「それではといいますと」
「詠と話があるから」
こう言うのであった。
「貴方達は下がっていいわ」
「わかりました。それでは」
「これでは」
こうしてだった。側近達はその場を後にするのだった。そして董白は。
彼女自身の言葉通り賈駆のところに来てだ。そのうえで彼女に問うのだった。
「姉様はどうしてもなのね」
「そうよ。まだよ」
目を怒らせて返す賈駆だった。
「今は。ちょっとね」
「ちょっとちょっとって随分経つけれど」
「仕方ないじゃない。どうしても会えないのよ」
「私でも?妹の話でも」
「そうよ。残念だけれどね」
「残念とは思ってないから」
それはないという董白だった。
「ただ。それでもよ」
「会えないことがっていうのよね」
「そうよ。姉様がこんなに人前に姿を見せないし」
しかもだというのだ。
「帝もどうされたのよ」
「御病気よ」
賈駆も言うことは同じだった。
「だから仕方ないじゃない」
「普通に考えればね」
「普通に?」
「そう、普通に考えればね」
あえてだ。董白は皮肉を装って返す。
「姉様は何かあれば率先して動かれるのに」
「それが今はっていうのね」
「ましてや各州の牧達の軍がこの洛陽に迫っているのよ」
「それはわかってるわよ」
「どうして姉様が出陣されないのよ」
「月が出陣したことなんてないでしょ」
本質的に文官である彼女はそういうことはしないのだ。
「いつも華雄達がしてくれてるじゃない」
「それにあんたもね」
董白はまたシニカルな感じで言ってみせた。
「あんたもそうするわよね」
「私もって。どういうことよ」
「あんたも何かあればいつも自ら作戦を立てるじゃない」
「軍師として当然のことよ」
「けれど今はしないわよね」
「それが変だっていうのね」
「思いきりね。おかしいわね」
まさにだ。その通りだと返す董白だった。
「あんたも今回は作戦何も立てないし」
「ねねがいるじゃない」
「あの娘に何ができるっていうのよ」
陳宮に対して侮辱とも取れる言葉だった。だがそれでもあえて言ったのだった。
「まだ小さいし。しかも恋限定の軍師じゃない」
「それでも軍師は軍師よ」
「あんたと比べたら落ちるわよね」
幼さ故にだった。未熟だというのだ。
「それに対して相手は名だたる軍師が揃っているじゃない」
「その分恋がいるわよ」
「恋だったら何でもできるって訳じゃないでしょ」
「そうね。けれどよ」
「けれど、なのね」
「そうよ。あの関にあの娘がいたら大丈夫よ」
「だといいけれどね」
「とにかくよ。あんたはあんたでね」
賈駆の方から董白に話す。
「やって欲しいことがあるから」
「この都の防衛ね」
「それを頼むわ」
呂布達が出払っている。それならばだった。
「そういうことでね」
「わかってるわ、それはね」
棘を収めてだ。董白は言葉を返した。
「それはちゃんとするから」
「なら御願いね。そっちは」
「全く。何が何かわからないわ」
董白は眉を顰めさせて話す。
「今の状況はね」
「僕にそれを言うのね」
「あんた、何か知ってるでしょ」
賈駆のその眼鏡の奥の目を見据えて問うたのだった。
「姉様のことも全部」
「何が言いたいのよ」
「ありのままよ。それで隠してるわね」
問うその目の鋭さがさらに強くなる。
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