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宇宙海賊は世界最強

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5話

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 雫サイド

「二刀流・居合――『羅生門』」

 銀華のしっかりした声がここまで聞こえてきた。

 私たちは今、銀華と南雲くんに任せて、階段へと急いでる。

 私はあの時、彼が居合をする構えをしてるのを視るけど、彼の太刀筋が見えなかった。

 でも、『ベヒモス』が縦にまっすぐ両断されちゃった。

 この時、私は理解した今の私と彼との彼我の差を・・・。

 強い・・・強い・・・強すぎる。

 メルドさんたちでもあんなに苦戦した怪物を彼は難なく倒しちゃった。

 見せつけられた。私たちがさっきまでごっこ遊びをしていたことに・・・。

 私も分かっていたつもりだったけど、分かっていなかった。

 現実を突きつけられちゃった。

 悔しいなァ~。

 一撃で状況を激変させてしまう。彼の圧倒的強さ、隠れ持つカリスマ。

 普段の彼とは違う一面。改めて、見惚れちゃったな。

 やっぱり、銀華は私が願ってる王子様。

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 銀華サイド

 フゥ~、あの怪物は問題なく倒せたけど、案外弱かったな。

 とりあえず、皆の元に戻るか。

 俺は南雲と連れて、雫たちの方に向かおうとするも、

「やっぱ、化物無双大海賊団の船長だけはある・・・『銀帝(・・)』」

 その時だった。近くにいる南雲とは違う声が聞こえてくる。

 しかも、この声はまさか・・・。

 俺と南雲は声のした方に振り向くとそこにいたのは、軽く2メートル以上の男がいた。

 あの体型からして間違いない。

「ダンストン」

「え?」

 カズの命令で来てるのはカインズとダンストンだったとは聞いてるが、何故、彼奴がここにいる。

 しかも、彼奴は堅物だ。

 カズが言ってたことも忘れるほどの野郎だ。

 不味いな。彼奴は硬さは知ってる。やりたくねぇ相手だ。

 俺は一番の愛刀の『虹竜』を抜刀する。

 もしかしたら、彼奴・・・。

「行くぞ!」

 やっぱり!?

 俺は超人並みの筋力で『虹竜』を振るい、斬撃を飛ばす。石を裂くほどの斬撃。

 だが、ダンストンはその斬撃を真っ正面から受け止める。
 
「やっぱり、無理か」

「え?」

 俺の呟きが聞こえた南雲は呆けた声を漏らす。

 何故なら、両腕を左右に振るって、斬撃を横に逸らしてしまう。

 逸らされた斬撃は橋の向こう側の壁面を斬りつけた。

 此には、南雲も会談前で視ていた雫たちも驚きを隠せない。

 だが、俺はなんとなく、そうなるのを分かっていた。

 彼奴の異名は『金剛石の(ダイヤモンド)ダンストン』。硬さだったら、世界一ともいわれてる怪物だ。

 流石はカズを支える6人の大幹部の一人。

 やりづらい。

 土煙が晴れるとダンストンは健在で、身体のほとんどをダイヤモンドの光沢が輝いてた。

「やっぱり、無傷か・・・それもそうだな。世界一の硬度を持ってる男に斬ろうと考えてるのって俺ぐらいだろうし」

 ハアと俺は息を吐いてしまう。

 それに対して、ダンストンは

「やはり、貴様の斬撃は凄いな・・・ギン(・・)

「テメエこそ、相変わらずの硬さだな」

 フッと笑みを零すダンストン。

 仕方ない。

 俺はここで意を決した。

 すまないな、南雲。巻き込んじまって・・・。

 構える俺にダンストンは俺目掛けて、殴りかかってくる。

 俺は南雲を抱え込んで、後方に跳躍して躱す。

 ついさっきまで俺がいたところを殴りつけるダンストン。

 殴りつけたせいで、石橋に亀裂が入る。

 しかも、今、俺と南雲がいるところまで亀裂が入る。

「何だよ、あの人の腕力・・・」

 南雲は顔を上げて、ダンストンの腕力と亀裂が入った石橋を視て、顔を青ざめている。

「彼奴の腕力って怪力でね。見た目通りだけど・・・腕力だったら、俺に匹敵するほどだ」

「ええ!? 魁くんに匹敵する腕力なの!?」

「驚いてる暇があるなら、生きてることを祈ることだ。彼奴の硬さはダイヤモンド並だからな」

「そんな人間いるの!?」

 いるよと俺は言葉を紡がなかった。

 それは、ダンストンの拳の殴打が俺に襲いかかる。

 俺は見聞色の覇気で躱す。少し先が見えることが功を期して助かった。

 だが、そこにメルドさんたちからの魔法による援護射撃が飛び交う。

 その一つが俺と南雲の方向に向かってくる。

「チッ!?」

 俺は思わず、舌打ちをしてしまい、すぐさま、跳躍でダンストンの背後をとるも着弾点が運悪く、橋を崩壊させるきっかけになった。

 しかも、ダンストンの殴打もきっかけになって、橋が完全に崩壊――。

 俺と南雲はそのまま、奈落へと落ちていく。

 彼奴は見た目とは打って変わって俊敏だ。こんなの難なく乗り越えるだろう。

 だが、俺と南雲が落ちていく最中、雫と白崎が俺と南雲を助けたいがために、身を乗り出しそうとしてる。

 それを止めるのが光輝と龍太郎。

 メルドさんたちも悔しそう、不甲斐なさがにじみ出してた。

 こんな時に俺は

「すまないな、南雲。巻き込んじまって・・・」

 謝罪する。

「・・・いいよ。どうせ、僕がいなくても皆だったら、なんとかなるよ」

 案外、開き直ってるな。

「どうだろうかね。少なくとも、クラスの中には俺かお前のことを疎んでる奴がいることは確かなようだけどな」

「それってやっぱり・・・」

 こんな状況下で俺と南雲は暢気でお喋りをしていた。

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 雫サイド

 嘘っ・・・・・・銀華が奈落の底に落ちていく。南雲くんと一緒に・・・・・・。

 私は酷く焦燥感に陥っていた。

 無意識に助けようと思って、身を乗り出そうとする。

 でも、それを龍太郎が取り押さえてくる。

 私の眼から銀河が見えなくなってしまった。

 銀華と相手をしていた大男もいつの間にか姿を消していた。

 許せない。

 あの大男だけは許せない。

「殺してやる・・・」(-。-) ボソッ

 この時の私の中にあったのは、あの大男に対する殺意しかなかった。

「・・・殺してやる」(-。-) ボソッ

「雫? どうしたんだ?」

 龍太郎が私に話しかけてるけど、今の私の気持ちは

「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる・・・・・・殺してやる!!!!!!」

 私の心を支配してるのは復讐心しかなかった。

 私の殺意、怨嗟の声に便乗して幼馴染みの香織も募らせていた。

 だけど、そんな私と香織をメルドさんは手刀で後頭部を叩かれる。

 ぎ・・・銀華・・・

 目の前が真っ暗になっていく中、目の前から消えていく彼を見て、涙を零してしまう。

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 銀華サイド

 イヤァ~、落ちるところまで落ちたな。

 俺は今、南雲と一緒に奈落の底にいる。

 まあ、五体満足無事だが、助けが来るとは思っていねぇよ。

 むしろ、彼奴に仲間っていう意識するあるのか分からねぇしな。

「とりあえず・・・どっかに隠れるか」

「・・・うん・・・そうだね」

 やけに元気がないな。

 それもそうか。クラスメイトに見捨てられたんだ。

 疑心暗鬼になってもおかしくないか。

 とりあえず、俺たちは人気のない場所に向かうことにした。

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 三人称サイド

 その頃、無事に生還した勇者一行とメルドさんたちは王国に帰還した。

 生徒大半は人の死というのを目の当たりにし、過酷な現実を知ることになった。

 王国としての反応は死んだのが無能のハジメと孤高の銀華だった。

 ハジメに関してはほっとするも、銀華に関しては豹変することだった。

 何故なら、彼の天職に海賊というのがあり、ステータスすらも不明で、魔力操作と不可解なスキルがあった。

 魔力操作といえば、魔物の象徴。王国と教会は異端なるもの扱いだった。

 しかも、天職の海賊ということでさらに悪化させる。

 海賊というのはトータスでも悪人扱い。それによって、銀華を完全に異端者認定された。

 此を未だ眠ってる雫が知ったら、乱心するのは間違いない。

 香織もハジメの捜索することすらも認められなかったことを知ったら、どうなるのか?

 王国と教会は知る由もなかった。

 メルドさんもこうなることを予見して、唇を噛む。

 処分として、数日の謹慎処分と一年の減給で収集した。

 今、香織と雫は一つの部屋で休んでる。

 医者の話だと、生命維持のため、気を失ってるとのこと。

 今は優花が看病してる。

 彼女は雫に次いで、銀華と仲が良い。

 彼のバイト先の娘なので、なにかと馬が合う。

 なので、彼女はメルドさんからわけを聞くことにした。

「メルド団長・・・どうして、魁くんが異端者ってどういうことですか?」

 彼女の質問にメルドさんはうむっと考えた後、他言無用いや八重樫さんだけには話しておいてくれると嬉しいということで、ある事件を話した。

「数ヶ月前になる。突如として、神山に現れた二人の男性が、『ここは、かの四皇――カズ様の納める星になる大海賊団』と宣言する。もちろん、教会もそんなの支配されたくないので敵対するも、返り討ちに遭い、教会が壊滅寸前に陥った事件があったんだ・・・その時にいた男性が『オルクス大迷宮』で魁と相対していた大男だったんだよ。見たことのない能力と戦闘力の高さに蹂躙されたという。それ以降、海賊というのを神敵として行方を追ってるんだ」

 数ヶ月前にカズたち『ブラッキー海賊団』が縄張りするという宣言をしたらしい。

 ついでに言うと、銀華のステータスプレートにも海賊というのが記載されていた。

「たったそれだけで魁くんを異端者認定させたって言うんですか!?」

 優花は彼を愚弄する周りの空気に力が入る。

「私も魁の人柄は知ってる。海賊といえど、彼は彼らとは違うというのは分かってはいる。例え、海賊といえど、我々に牙を向けるような男じゃない」

「・・・・・・魁くん」

 心の内に秘めたメルドさんに対する銀華の感想を聞き、優花も彼が彼処まで強いのと行動を振り返った。

 『オルクス大迷宮』でも『ベヒモス』をたった一撃で斬り裂いた実力を持ち、素人目でも特筆に洗練されてた。訓練だけで得られる実力じゃないのは白昼の事実。だからこそ、彼を失ったことで自分たちがなんて愚かで浅はかだったのか深く後悔する。その時、ポツリと出た言葉が・・・

「・・・・・・こんなの今の雫が知ったら・・・」

「確かに私もそれだけが気がかりだ。彼女は魁と仲が良いのか?」

「はい・・・」

 優花は銀華と雫の二人の仲が良いのを知ってる。

 雫が銀華に好意を抱いてるのも知ってる。

 だからこそ、あの時の雫の復讐心の叫びが理解できる。

「それじゃあ、私は香織と雫の部屋に向かいます」

「くれぐれも内密にな」

「はい」

 優花は後悔の念を滲ませながら、香織と雫が寝てる部屋に向かう。

 向かう際、銀華の部屋を通り、彼の部屋に入る。

 彼の部屋にあった置き手紙と何かしらのインカムが三つもあった。

 優花は彼が置いていったものだと思い、それをもって、香織と雫の部屋に向かう。

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後書き
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