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ラブドライブ!〜女神の守り人〜

作者:希ー
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転生した彼らは何の為に生きるのか?
  count,2 Grim Reaper

 
前書き


魔進チェイサー

身長:201cm
重量:107kg
パンチ力:7t
キック力:12t
ジャンプ力:約26m
走力:100mを6秒

高田ユウキがブレイクガンナーを使って変身する戦士。変身アイテムでもあり武器でもあるブレイクガンナーを使用した銃撃、打撃を得意とし、距離を選ばず戦える。チェイサー平均的能力は数値的には他の戦士より低いが、変身者であるユウキが高いポテンシャルを持っているので数値を遥かに超える戦闘能力を叩き出す事が出来る。重加速下でも行動が可能でチェイサーも重加速を発生させる事が出来る。更にチェイサーには重加速現象を消滅させる事が出来る。ユウキが自分専用に改良した為、彼以外では例え変身しても操る事はほぼ不可能である。チェイサーバイラルコアを使う事で武装チェイサーとなる。また、シフトカーも使用することが出来る。武装チェイサー時の武器はチェイサースパイダーバイラルコアの力で装備する爪・ファングスパイディー、チェイサーコブラバイラルコアの力で装備する鞭・テイルウィッパー、チェイサーバットバイラルコアの力で装備する弓兼翼・ウィングスナイパーである。必殺技はウィングスナイパーを背中に装備して飛び、キックを放つエグゼキューションバット。ファングスパイディーから蜘蛛型のエネルギー刃を放つエグゼキューションスパイダー。テイルウィッパーを飛ばして相手を攻撃するエグゼキューションコブラ。


※上記はこの小説内での設定 

 




–––––12月の夜




 高田ユウキだ。とあるホテルの一室。俺はソファーに座っている。そして目の前には、これまたソファーに座った薄着の東條希がいる……。



「ほな、もっかい始めよか」
「ああ……」
「なんや不満そうやなぁ?」
「まぁ……こう何度も何度もやられてはな…」


そう言うと東條は悪戯っぽい笑顔を浮かべながら俺の顔を覗いてきた。


「とか言って、本当は好きなんやろぉ〜?」
「そんな訳あるか馬鹿が」
「まあまあ、もっかいやろ?ウチが満足するまで付き合ってもらうよぉ〜?」
「ちっ……はいはい…」


 何を言っても無駄な様だな。こうなったらとことんコイツに付き合って、やるしかないか……。


「ほな…いくで……」


 東條は1度真剣な顔をした後に目を瞑り、ソレを指でゆっくりと捲った……。



















「……死神やね」
「死神だな」


 何やってるって思ったんだ?唯のタロット占いだ。

 さっきから何回もやってるんだが全部死神が出てる。ま、俺は1度死んで転生した身だ。死神が連発しても不思議じゃない。それに……

 ああ、それと最初にホテルの一室と言ったがラブホじゃねぇぞ。俺達は今、修学旅行で北海道・札幌にいる。そこの宿泊ホテルの一室にいるという訳だ。
 明日の朝にはホテルを出て、昼に東京に戻る為の飛行機に乗るので準備をしていたら東條が俺の部屋にやって来て占いを始めたってとこだ。


「何でこんな毎回死神が出るんやろ?それにこの結果やったら、ユウキ君はとっくに死んでしまっとるってことになってしまうし…」
「ふん。実はもう死んでいて、お前の目の前にいるのは幽霊かも知れんぞ?」
「おー!それはそれはスピリチュアルやね」
「……はぁ………」
「むむっ!あんま溜息ばっかつくと幸せが逃げてしまうで〜?そんなユウキ君にはウチがわしわしして、希パワー注入したr!?


 その台詞が言い終わる前に、俺は東條の頭を掴んだ。


「そんなに鐚死鐚死して欲しいか?」
「あ…あはははー…ちょっとした茶目っ気やん♪やから許して…痛たたたた!?ちょ!?ユウキ君握力どんだけあるん!?」
「右(測定器を破壊した為)測定不能。左(測定器を粉砕した為)測定不能」
「なんやそれ!?もう人の握力やないやん!?ウチ潰れるやん!?」
「ったく……」


 俺は東條の頭から手を離した。東條は涙目で頭を摩っている。かなり軽く握ったつもりなんだが……。


「もう!酷いでユウキ君!」
「酷くて結構。とっとと出てけ」
「むぅー、はぁーい…」


 そう言うと東條は部屋から渋々出て行った。その後、俺はシャワーを浴びに向かった。




「ハァ……」


シャワーを浴びながら、俺は先程の占いのことを考えていた。そして、あの事も……。

 未だに本当の敵は見えない。奴らは何が目的なんだ?何故この世界を襲う?一体その先に何があるんだ…?



「”死神しか出ない”……そうだろうな…」



 身体中にある傷の一つを指でなぞる

 もし解っている事があるとすれば一つ…。それは俺に死神が迫ってるんじゃない……。













「俺が死神なんだ…」








_________________________




––––次の日の朝



 ウチは東條希や。今日は修学旅行の最終日でさっぽろ羊ヶ丘展望台にみんなで来たんや。
 そんで、今は親友のエリチと一緒にクラーク像の前におるんよ。


「おー!アレがクラーク像かぁ」

「”Boys, be ambitious(少年よ、大志を抱け)”有名な台詞よね」





 そんな事を話していた時後ろから鈍い音が聞こえたので、ウチとエリチは振り返った。見ると音ノ木坂の男子生徒3人が、倒れている同じ音ノ木坂の男子生徒1人を囲んでた。どうやら倒れている生徒は3人の内の1人に殴られて倒れたみたいや。

 そして倒れてる生徒には、にこっちが寄っていた。


「ちょっと!?何してんのよ!?」
「そいつが悪いんだよ。俺達がにこにーと話そうとするのを邪魔したんだからな」
「そうそう」
「だからにこは、アンタ達みたいなのと話す事なんて無いって言ってるでしょ!いい加減しつこいわよアンタ達!」
「まあまあそう言うなって…」


 男子生徒が、にこっちに腕を伸ばしていく。ウチとエリチはにこっちが危ないと思って走り出した!


 ………でも、男子生徒の腕はにこっちに届く前に止められたんや。



「なッ!?テメェ!」
「野村 俊一……佐竹 良樹……仁村 敬太……よくもまあ、修学旅行の最終日に暴れてくれたなァ……。一々仲裁するコッチの身にもなって欲しいもんだ」
「ユウキ…!」


 にこっちは嬉々とした顔をする。なんせ彼女を助けたのは最も信頼している男子、高田 ユウキ君だったから。

 ユウキ君は野村君の腕を掴んだまま、3人を鋭い目付きで睨んでいる。そうなった3人は正に蛇に睨まれた蛙状態。野村君はユウキ君の腕を振り払ってそそくさと逃げ出し、佐竹君と仁村君もその後を追って逃げていった。


「全く……。帰ったら生徒指導室にブチ込んでやろう。……で、無事か瑠川 利也?」
「う、うん……何とかね」


ユウキ君は瑠川君に手を伸ばして立ち上がらせた。


「ごめんねぇ。にこにーが可愛過ぎるばっかりに、貴方にまで迷惑かけちゃってぇ…。ああ!やっぱりにこにーの可愛さは罪なんだわ!」
「無事ならいい。暫くは気をつけろ。なんかあったら俺に言え。生徒会権限で奴らを潰そう」
「ありがとう…でもそれって執権乱用じゃ……」
「使える時に使わずして、何の為の金と権力だ?」


 ……なんか途中から恐ろしい会話が聞こえてきたなぁ…。ほんで、無視されたにこっちがユウキ君の胸板を叩きながら何か叫んでる…。あ、頭掴まれた……。


「瑠川君、ユウキ、大丈夫だった?」


 エリチが2人に尋ねた。ウチもその後ろで返答をまっている。


「俺は無問題だ」
「僕も大丈夫です」
「そう。なら良かったわ」
「それはそうとユウキ君、そろそろにこっち離してやってな」

「ん?…あ、成る程」


 ユウキ君のあの握力で頭を掴まれてたにこっちは身体を痙攣させてたんや……。にこっち、南無阿弥陀…。


「イッ…タァァァ…!?ユウキの馬鹿!もう少しでにこの頭潰れちゃうとこだったわよ!って、希は手を合わせるな!まだ死んでないわよ!!」
「何処でもうるせぇな……矢澤は」
「僕は、元気があって良いと思うなぁ」
「むむむむー!…お!何よ、瑠川君は分かってるじゃない♪じゃあ、瑠川君は特別ににこの事をにこちゃんって呼んで良いわよ♪」
「本当?じゃあそうさせてもらうよ」


「絢瀬、帰りの飛行機だが、俺は瑠川の隣りに座るぞ」
「えっ!?」
「えっ…じゃねぇ。コイツをまた、あんな連中に絡ませる訳にはいかんだろ」
「そ、そうね…」


 エリチは少し残念そうな顔をしてる。本当やったら、ユウキ君とエリチは隣り同士やった筈やもんな。それが無くなったのが残念やったんやろ。
 まぁ、こんな事言ったら、エリチに怒られてしまうから黙っとこっと。














_____________________________











–––––修学旅行から2週間後


 俺はアイドル研究部の部室で読書をしている。その隣りでは矢澤が鏡を見ながら笑顔の練習とかいうのをやってる。
 そこにあの男がやって来た。


「にこにー、高田君、こんにちは」
「あ、瑠川君!こんにちはにこー♪」
「………また来たのか。お前も暇だな」
「ははっ、まぁ特にやる事も無いし、ここに居る方が楽しいしね」


 瑠川 利也……修学旅行の時に助けた男子生徒だ。クラスはB組だそうだ。あれ以来矢澤と仲良くなったらしく、よく部室に顔を出している。

 俺と同じで他の男子達から嫌われてるらしく、恐らく転生者ではないだろう。この世界に最初からいる男ってことか。


「そういえばクリスマスにA-RISEがライブやるらしいね?」
「そうなのよ!もうチケットは取ってあるわ。しかも3枚!ユウキ!瑠川!一緒に行くわよ!!」
「良いの!?嬉しいな!」
「却下。東條でも誘え」
「何でよ!?アンタ仮にもアイドル研究部の副部長でしょ!?部長の言うこと聞きなさいよ!!」


 矢澤はピーピー喚いている。本当に喧しいなぁ…コイツ。何にせよ、俺は行くつもりは無いっての…。

 その後は適当に言葉を並べて断った。矢澤も渋々了承してくれた様だ。ライブには矢澤と東條と瑠川の3人で行く事になったらしい。俺はA-RISEのライブなんざ、興味ねぇしな。わざわざ行く必要性も無いって事だ。














 ……この時、俺がついて行くと言っていれば、結果は変わっていたのかも知れない。辿り着く答えは変わっていたのかも知れない……。











___________________________











 クリスマス。今日は矢澤と東條と瑠川の3人がA-RISEのライブを観に行く日でもある。時間帯的に今頃会場で大いに盛り上がってんだろうな。
 なら、こちらは1人でゆったりと過ごさせてもらおう……。




「1人っきりのクリスマス…………の筈だったんだがなぁ
「……私達が隣りにいるのに、その台詞は無いんじゃないの?」
「……姉妹デートに巻き込んどいて、その台詞は無いんじゃないか?」


 俺は今、絢瀬と彼女の妹と一緒に喫茶店にいる。あるシフトカーの最終調整を終えて街をバイクで走り回っていて信号で停車した際、この姉妹に声を掛けられ捕まってしまったということだ。


「迷惑…でしたか…?」


 絢瀬妹が上目遣いでコッチを見てきた。


「いや、大丈夫だ。寧ろ、コッチが邪魔してる様に感じてな」
「そんな事無いですよ!ユウキ先輩の話はお姉ちゃんからよく聞いてたんで、会えて嬉しいです!」
「俺の話?」


 絢瀬め…ロクでもない話でも吹き込んだのか……。


「はい!凄く頼りになる男の人だって、言ってました!」
「ちょ、ちょっと亜里沙!?」
「ほぉ……意外と高評価だったとはな…」


 絢瀬は顔を赤くしながら伏せた。


「兎にも角にも、改めて自己紹介しよう。高田ユウキ。音ノ木坂学院の2年生で生徒会副会長だ」
「絢瀬亜里沙です!元々ロシアに住んで居たんですけど、1ヶ月前に日本に来ました!音ノ木坂中学校の2年生です!」
「1ヶ月前か……その割りにはなかなか流暢な日本語だ」
「日本人の祖父も一緒に住んで居たので教えてもらいました!」


 成る程…ってか、元気な子だな。


「俺のことは好きに呼んでもらって構わない。宜しく、亜里沙ちゃん」
「はい!宜しくお願いしますユウキ先輩♪」
「……なんか…私の時とは態度が違うわね…」


 絢瀬がボソッと何か言ったが……ま、別にいいか。そう思っていると携帯に着信が入った。矢澤からだ。


「ちょっとすまん」


 俺は席を立ち、店の外に出て携帯に出た。


「何の用だ、矢澤?」











《矢澤にこ、東條希、瑠川利也は預かった》


 聴こえてきたのは少し高い男の声だった。


《返して欲しければ今から言う場所にk「そりゃ助かる。適当な時間になったら迎えに行こう」…ふざけんな!?保育園じゃねぇんだよ!?》
「ちっ………で、何が目的だ?」
《それは後で教えてやるよ。港にある倉庫に来い。急がないとコイツら……どうなっても知らねぇぞ…?》


 それだけ言うと通話は切れた…。犯人は…恐らくロイミュードか…。俺の正体を知っている可能性もあるな。だとしたら狙いは俺ということか。


「少々面倒な事になりそうだ……」


 俺は再び店に戻り絢瀬達の所へ行く。


「悪いが野暮用が出来た。失礼させてもらう。コイツで払っとけ」


 そう言って俺は二千円札をテーブルの上に置いた。


「え…?」
「へ…?」
「何だよ?コイツで十分に足りる筈だが……」
「「コレってお金⁉︎」」


 ……流石だ二千円札。全然浸透してねぇ


「……正真正銘の金だ。滅多に見ないけどな」
「「ハラショー…」」


 二千円札に驚いている姉妹をほっといて、俺は店を出てバイク・ライドチェイサーに乗り、指定された場所へ向かっていった……。













_____________________________


















「ここか…」


 俺は指定された場所に着きバイクを停め、倉庫の中へ入っていった。


「…ッ」


 倉庫の中には気を失った東條と矢澤と瑠川が倒れていた。俺は3人に駆け寄り、身体を揺さぶった。


「おい、起きろお前ら……ッ!?」
「シャァァッ!」
「ハァァッ!」


 突然、物陰から2つの影が飛び出して来た。コブラ型とバット型の下級ロイミュードだ。俺は咄嗟に反応し、奴らの攻撃を躱していく。そしてカウンターの蹴りを放っていって奴らを東條達が倒れている場所から離していった。


「貴様ら…何の真似だ?」


 ロイミュードの番号はコブラ型が080、バット型が086……。


「そんなの決まってんだろ、高田ァ……」
「このラブライブの世界で好き勝手やる貴様をズタズタにしてやるんだよ!」
「そういう事だ……」


 そして、2体のロイミュードの間から歩いて来た青年……野村俊一だ。


「やっぱりテメェか野村…」
「高田ァァッ…!俺達の邪魔ばっかしやがって……貴様も転生者か!?」


 ………あ?コイツら、俺の正体知らなかったのか?ただ俺が東條や矢澤とツルんでるのが気に食わないから俺を消そうって魂胆か。瑠川はとばっちり喰らったって訳か。


「まぁ、音ノ木坂にいる男子の大半が転生者だからな。俺もそれだ」
「やっぱりか…!」
「テメェ!俺達を排除してハーレムでも作る気か!?」


 080が訳の解らん事を言ってきた。馬鹿だなコイツは


「誰がそんなもん作るか、怠い。てか、好き勝手暴れてんのはテメェらだろうが…」
「もう良い……。佐竹、仁村、アイツ消すぞ」


 あの腰巾着2体は佐竹良樹と仁村敬太だったか…。まぁ、予想通りだな。どっちがどっちかは…どうでもいっか。

 そして野村はロイミュードに姿を変えた。上級ロイミュードに。

 右腕はスナイパーライフルの様になっており、ボロく薄汚れた白い布切れみたいなのを身体に纏っている。右眼付近にはスコープの様な物が植え付けられていた。


「スナイパー…それがこの俺、元052の新たな名だ!」


 そう言ってスナイパーは右腕のライフルを俺に向けてきた。


「3対1…か。ハンデには丁度良いな……」
「……本当にそう思うか?」
「ああ。俺と貴様らの実力を考えれば…」



「違う…」
「何?」








「本当に“3対1”だと思うか…?」
「……!?まさか……ッ!?」






 背後から気配を感じた俺は振り返った……。













 そこには俺にナイフを突き立てた瑠川利也がいた…。


「瑠川…!?何故……!?」


 俺は咄嗟に左腕を盾にしたので致命傷は間逃れた。だがその腕には刃が深々と刺さっている。


「チッ、後ろからナイフでグサッ!ってやつをやってみたかったんだがなァ…」


 その声はあの弱々しい瑠川の物とは思えない程、冷たい物だった。


「瑠川も転生者だったとはな…」
「は?何言ってんの?」
「あ…?」







「俺は転生者とかいうのじゃないぜ。普通の人間だ…」


 瑠川の放ったその言葉が俺には理解できなかった。何故転生者でも無い普通の人間がこんな事をするのか?こんな事をして何になるのか?


「その目…。何で俺がこんな事したのか理解不能って目だなァ……教えてやろうか?」


俺は何も言わずに瑠川を睨む。瑠川は気色の悪い笑みを浮かべている……。反吐が出そうだ…。



「ま、理由なんて別にねぇけどな」
「無い…だと…?」
「強いて言うなら……人を殺してみたかった…だな」


 そう言うと瑠川はゲラゲラと笑い出した…。ロイミュード共も俺の背後で笑っている………。









 狂ってる……。
 ただ狂ってる……。

 転生者も…この世界の人間も……。
 なら俺は狂ってないのか?


 いや、きっと俺が一番………。


「狂ってる…」


「あッ?」
「本当……馬鹿だったよ俺は。敵を捜してる内に貴様らと戦う理由を考え……貴様ら“と”戦う理由を考えている内に…貴様ら“の”戦う理由を考えていた…」
「……何が言いたい?」
「ある訳ねぇよなァ…。人ってのは皆悪魔だ。理由が無くても他者を傷つけ殺せる…そういう生き物だ。理由無き悪意も殺意も、そこら中に転がっている…。転生者もこの世界の人間も根本は同じだ…」


 俺は刺さっていたナイフを引き抜き投げ捨てる。


「貴様らに理由が無いなら……俺にも理由は要らねぇ…。仮に貴様らにそれが有っても知った事では無い………。全て俺の敵だ…」


 俺は懐からブレイクガンナーを取り出した。


「もう貴様らの理由も、是非も問わん……」




 俺は痛む左腕を無理矢理上げ、ブレイクガンナーのマズルに左掌を押し付けた。


「只々……」


 そして左掌をマズルから離す……。








「地獄で…悔むがいい……!」



《Break up…!》








___________________________










–––––瑠川利也は目の前の現実を受け入れられずにいた。ロイミュードの存在は問題無い。仲間である野村や佐竹らからその存在については聞いていたからだ。


–––––彼らと仲間になったのは修学旅行の2週間前。偶然にも野村がロイミュードになり、殺人を犯している所を目撃したのがキッカケだ。瑠川には強い殺人願望があり、とにかく人を殺してみたいという思いがあった。幼少の頃から周囲から隠れて兎や犬、小鳥などの動物を殺していたという過去を持っている。


––––––そんな彼の前に現れたスナイパーロイミュードは瑠川にとっては信仰の対象となった。簡単に命を奪える力…命を蹂躙できる力…。それは瑠川にとって、最も欲しい物だったのだ。


––––––瑠川は野村に協力すると言い、野村も瑠川は利用できると判断して2人の協定は成立した。そして今日、最も邪魔なユウキを殺す為に、にこと希の誘拐を計画、実行したのである。


––––––ユウキを瑠川が殺し、にこと希を野村達が好きにする筈だった……だが……。





《Tune Chaser Cobra…!》


–––––ユウキは黒と紫の鎧を纏う戦士となった。そして今、右腕に鞭を装備して3体のロイミュードを蹂躙している。


「グッ…!?ば、馬鹿な…!?グアアアアアァッ!?」


–––––080……仁村が、鞭による猛攻に耐え切れず爆死散した。そして飛び出したコアも鞭により薙ぎ払われ粉砕された。


「仁村ァァァァッ!?」
「野郎ォォォ…!!」


–––––仲間を殺られ叫ぶスナイパー。そして怒りのままに飛び出していく086……佐竹。だが、それは愚かな行為だった。再び鞭が振られ086は吹っ飛んで倉庫内に積み置かれていた木箱に突撃した。


《Tune Chaser Bat…!》


–––––右腕の武器が形状を変え、今度は弓の様になった。そしてそこから放たれた光矢が086の顔面を貫いた。086は断末魔すら上げる事無く倒れ灰化した。飛び出したコアも有無言わさず光矢が貫く。


「佐竹!?貴様ァァ……よくも仲間をォォォッ!!!」


–––––スナイパーが右腕のライフルから銃撃を放っていく。だがユウキはそれを回避しながら走り、その際に右腕の武器を背中に装着して翼の様にする。そしてそれを羽ばたかせ飛翔した……。


《Execution…!》
《Full Break…!Bat…!》




––––––突き出された右脚は、スナイパーの肉体に深々と喰い込み、跡形も無く粉砕した………。









___________________________








「あぁ……!?は……あ…!?あぁ……!?」


 俺は…瑠川利也は脅えていた。目の前の存在に…。
 奴はさっき殺したのから飛び出てきた数字を銃で撃ち抜くと、その銃口を俺に向けて歩いて来る。


「や、辞めろ…!?来るなァァァ……!!」


 どんなに叫んでも奴は俺に近いて来る。


「何だよ…!?自分を殺そうとした奴が気に喰わないのかよ!?お前だってアイツら殺してんじゃないか!?お前だって人を殺すのが悪い事だとか思ってないんだろ!?俺と同じだ!!蟻も蝿もゴキブリも人間も、所詮同じ命だ!!人間だけ殺しちゃなんねぇなんておかしいだろ!?人を殺すも虫ケラを殺すのも一緒……。なぁ…何で人を殺しちゃいけないんだ……–––––グッ!?」


 奴は俺の首を、怪我をしている左の手で掴み締め上げていく。そして奴は高田ユウキの姿になった…。


「何で人を殺しちゃいけないのか?……教えてやるよ」
「な…にィ……!?」


 怪我をしているとは思えない程の力で俺の首は締め上げられていく。気道が塞がれ、まともに呼吸が出来ない……。




「この状況で…その質問が出来るか?」
「…それ……は………ッ!?」




「気付いたか……。いいか、人を殺しちゃいけない理由は“自分が他人に殺されない様にする為”だ。人を殺すって事は、人から殺される可能性も考えなければならない。お前は“自分が殺される可能性”を考えずに人を殺そうとした……。反吐が出る…」


 首はギリギリと締められ、俺の意識は段々と遠退いていく……。


「人から殺される覚悟……それも碌にない奴が人の命を奪うなど笑止千万……」


 高田は俺を投げ捨てた。俺は床に激突し転がる。
 俺は恐怖で身体中が震えている。何なんだコイツは?俺はコイツに殺されるのか?


 嫌だ…



「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたく……!!?」





 俺は高田を見た…。奴は俺に銃を向けている。


「い、嫌だ……!?やめてくれ……!?」
「言っただろ?地獄で悔めと……」

 





–––––引き金は弾かれ、一つの灯火が消失した…。










________________________











「んっ……ここは…?」


 気が付いた時、ウチはベッドの上で寝ていた。
 確か…にこっちと瑠川君と一緒にA-RISEのライブを観に行ってそれから……。


「目覚めたか…」


 隣りを見るとユウキ君がウチの寝ているベッドの傍らに座っていた。


「ユウキ君…どうして…?」
「簡潔に説明しよう。お前達は拐われた。そして港にある倉庫の中に連れ込まれた。偶然目撃した人間から通報があって警察が駆け付けた時には犯人は消え、お前と矢澤だけが転がっていた。……瑠川は犯人に殺害された」
「ッ!?瑠川君が!?何で!?」
「さぁ……解らん…。運ばれたお前と矢澤はここ西木野病院で眠っていた…という事だ。矢澤はお前の隣りのベッドで眠っている」


 それだけ言うとユウキ君は立ち上がった。そしてウチに背中を向けて去っていこうとする。



「あ…ユウキ君!」


 ユウキ君はウチに振り向くこと無く部屋から出て行った…。


 ウチにはユウキ君の様子が変に見えた。いや、変と言うのは違うかも知れない。どう表せばいいかは分からないけど、とにかく何時ものユウキ君ではない気がした。背中は大きくも、小さくも見えた。
 何かを決断し、何かを背負った……。そんな人の背。

 ユウキ君が少し離れた様な気がした…。









_______________________








 俺は戦う……己の前に立つ全ての敵と。それが何者でも容赦はしない。ただ排除する。それこそが俺の正義。これが俺の答えだ……。後悔はしない。



 俺はその欲望(正義)の為なら……。









悪鬼(オニ)となる……」





 
 

 
後書き


という訳でチェイサー=ユウキ編3話終了しました!


最初は瑠川もロイミュードとして出す予定でしたが、急遽変更してサイコパスという設定にしました。必ずしも敵がロイミュードだけということはあり得ないという意味もあります。

ユウキの今回の決断が後々の彼の行動にどう影響していくか注目して頂きたいです。


さて、次回は遂にドライブ=タカユキ編のラストです!

タカユキは立ち直る事が出来るのか?そして衝撃の結末が…?


感想、ご意見、質問等、その他、是非是非お待ちしております!
 
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