曇天に哭く修羅
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第一部
Tough Boys
前書き
_〆(。。)
「時間も限られてるし、そろそろ行くか……」
《立華紫闇》は背中から魔晄を噴射。
しかし何かが違う。
推進力や速度が数倍だ。
《橘花 翔》との間合いが一瞬で埋まる。
紫闇が編み出したというか、自然と出来てしまった技でレイアやエンドも出来る。
【黒鋼流・三羽鳥ノ一・音隼/双式】
通常の音隼は一対二枚の翼に見えるような魔晄の放出が行われる。
双式は二対四枚のような姿。
段違いの出力から生まれる高速の領域で紫闇は息を吐きゆるりと右拳を放つ。
翔の顔面に迫る打撃は最下級の【魔獣】なら見失ってしまうほどの迅速さ。
だが彼は平然とした顔で首を動かす。
それだけで躱した。
お返しに裏拳ぎみのジャブを見舞う。
(蝿が止まるように感じてるのはそっちだけじゃねえんだよ。喰らいやがれっ!)
紫闇も余裕の回避。
体を左斜め下へ落とす。
最中に右足が跳ねる。
袈裟斬りのような蹴り。
回避と反撃が繋がり応じ合う。
一方が動けば風が吹き像を残す。
会場に来ている人間で見えているのは
《黒鋼 焔》
《黒鋼弥以覇》
《江神全司》
《永遠レイア》
の四人だけだろう。
他の人間には一定速度までしか見えない。
高速戦闘しながらの心理戦を行っていることなど及びもつかないのは明白だった。
(切りが無いな。使用予定の上限はまだまだ先だがそろそろ知ってもらうか。身の程を)
敢えて翔が前へ出る。
それを紫闇は見逃さない。
空中で前転しながら勢いを付けた縦一閃の手刀が振り下ろされ右肩に食い込む。
平均的な軍属の【魔術師】なら魔晄防壁を張っていようと頭を真っ二つに出来る威力。
そのはずだがダメージは無かった。
紫闇は続けて鳩尾へ攻撃。
右の拳が完璧に捉える。
が、またもダメージは無い。
「別に回避しても良かったんだが面倒だ。別に受けても構わないだろう? お互いにこれで終わるわけじゃあるまいし」
紫闇は歯軋りする。
考えが甘かったことに。
(こいつ、スピードだけじゃない。タフネスも有るから耐えるしガードも堅い!)
ノーガードの魔晄防壁だけで受けきられた。
ならば攻撃が通るようにしなければ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
翔は再びボクシングのフォーム。
その場でステップを踏む。
紫闇は構えを変えた。
両腕を前に出し腰を落とす。
摺り足の運びで間を詰める。
先手は翔。
今までよりも速くステップイン。
「そらよ」
ストレートのようなジャブ。
込められた力も今までで一番。
だが紫闇には脅威でも何でもない。
彼の魔晄防壁が膨れて球状に変化したところで翔の左拳が激突する。
硬質な音が響く。
黒鋼流・三羽鳥ノ一【盾梟/丸魔】
通常の盾梟よりも堅い。
直接攻撃してきた相手はぶつけた手足が衝撃で痺れてしまうこともザラだ。
「どうだい堅剛の味はッ!」
紫闇は近付いて腕を掴む。
「良い防御。しかし詰めが甘い」
動かない。
紫闇は関節技を極める為に必要な体勢に入って後は技を掛けるだけだと言うのに翔の真っ直ぐ伸びた腕はビクともしなかった。
彼は左腕一本で全身から出るパワーと体重に逆らい紫闇の服を掴み取ってしまう。
「耐えて見せろ立華」
翔が掛けた言葉の意味は解らない。
しかし良くないことなのは解る。
紫闇の視界がブレた。
翔は左手で紫闇を捕らえたまま左ジャブを繰り出し魔晄を流し込む。
ただ揺らされるだけなら紫闇は耐えた。
しかし体へと流入する魔晄は紫闇の魔晄と反発し総身を荒れ狂いながら蝕ばむ。
左腕が振られてシェイクされる毎に魔晄の影響が強くなるので堪ったものではない。
(相手が江神だったなら想定内だけど橘花だと想定外だったな。うんざりするほど強ぇ。あらゆる面で俺の上を行きやがる……!)
紫闇は音隼/双式を発動。
魔晄で四枚二対の翼を出す。
手の平と足の裏からも噴射。
無理矢理に翔の腕を振り解く。
「ああ~気持ち悪い。気功を体内に食らったらこんな感じなのかね。しっかしクッソ強いし底が見えないからどうしたもんか……」
宙に浮いた紫闇は吐き気を堪える。
そして次にどうしたら良いか考えるのだった。
後書き
音隼はV2ガンダムの光の翼をイメージ。
本体と比べてあそこまで大きくないけど。
_〆(。。)
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