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戦国異伝供書

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第七十二話 六角家からの話その十一

「弓矢も一つや二つでは大したことはあるまい」
「はい、それ位なら」
「何でもありませぬな」
「これといって」
「それでは」
「しかし何百何千と使うとな」 
 そうすればというのだ。
「大変なものになるな」
「ですな、確かに」
「そうしますと」
「それならですな」
「鉄砲もですか」
「音に加えて弾も当たりますか」
「鉄砲の間合いはよくて矢と同じかやや短い位だ」
 それ位だというのだ。
「ならばな」
「それならですな」
「弓矢を使う方がいいやも知れぬ」
「そう考えてもおかしくないですが」
「しかし音を考えますと」
「そして何百も使うと」
「やはり違う、色々考えるとな」
 これがというのだ。
「織田殿はよいお考えだと思う」
「島津家と同じですか」
「では我等もですか」
「鉄砲を揃えるべきですか」
「考えてみたが揃えられそうであるしな」
 それ故にというのだ。
「ここはな」
「そうされますか」
「殿を説得されて」
「ここは」
「そうしてみよう」
 家臣達と話してだった、猿夜叉は実際に久政と何度も鉄砲のことを話した、久政は最初はどうかという顔だったが。
 我が子の熱意を受けてこう答えた。
「わかった、ではな」
「それでは」
「鉄砲を多く買おう」
「それでは」
「それで数はどれ位じゃ」
「三百かと」
 猿夜叉のその数について答えた。
「これだけです」
「三百か」
「今の当家ではまあこれ位がです」
「限度か」
「はい、ですが三百ありますと」
 その鉄砲がというのだ。
「違うと思いますので」
「三百持っておくか」
「そして戦の時にです」
「使うか」
「斎藤家も使っておりますし」
 国を接するこの家もというのだ。
「一度あの家との戦にです」
「使ってみるか」
「そうしてはどうでしょうか」
「ではな、しかし鉄砲を買ってな」
 その後はどうかとだ、久政は我が子にどうかという顔で答えた。
「それを使うのはわしではない」
「それがしですか」
「うむ、わしは鉄砲を見てもな」
 久政にしても見たことはある。
「使い方を知らぬ」
「そして戦い方もですか」
「わからぬ、だからな」
 それでというのだ。
「お主がじゃ」
「鉄砲を揃えたなら」
「それならばじゃ」
 まさにというのだ。 
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