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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ

作者:炎の剣製
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057話 文化祭編・開催2日目(04) まほら武道会・本選開始 その4

 
前書き
更新します。 

 
ネギとタカミチの試合が終わり未だ話題の渦中で人の波に揉まれているネギ君をよそにタカミチは一人すぐに脱出していた。
そして一人タバコを吸い煙を口から吹かせながら、

「ふふ…二ヶ月であれか。一年もしたら追い抜かれちゃうかもしれないな…」
「なにをいう? 実際かなり手を抜いていたと言うのに…」
「そうね。実質タカミチの本気はシロウしか見た事がないらしいけど、あれじゃただのじゃれ合いね」
「確かにな~…あの戦い、確かに一般の目からすればすごいだろうが…俺達からすれば児戯にも等しいもんだろう。殺気や圧迫感っていうものがまるでなかったからな」

タカミチの背後にはいつの間にか士郎が立っていて、さらには木乃香達のグループから抜け出してきたのかイリヤとランサーも一緒になっていた。
それに驚いたのかついタカミチはタバコを落としそうになったがすぐに体勢を立て直して、

「まぁそうかもしれないね。でも今のネギ君には十分だろうと思ってね」
「甘いわね。今頃はきっとネギはエヴァにしこたま叱られているでしょうね。こう『勝たせてもらったようなものだ!』っていう感じに」

それでタカミチは苦笑いを浮かべていた。そしてそうかもしれないと思っていた…。



実際その通りである。
今、ネギは救護室でエヴァによるお説教兼タカミチがどれだけ手加減していたか文字通り拳で語っている真っ最中だ。
こう、
『なにが“勝った”だ!』や『この愚か者!』や『あんなものは当たって当然だ!』など師匠から反省点をしこたま叩きつけられている。
チャチャゼロもついでに『ツケアガルナッテコッタ』と言っている。
だが小さくエヴァは『ま………………最初の瞬動と決め技の着想はよかったがな』と呟き、一緒にいた古菲にニマニマ顔でおちょくられて顔を赤くしてそっぽを向いたのは…まぁ、ご愛嬌。



―――閑話休題



少し話をしているとそこにはアスナと刹那がやってきた。
そしてしばらくアスナはネギが負わせてしまった怪我についてタカミチにネギの代わりに謝罪し頭を下げていた。
それをタカミチは大丈夫だとやんわりと返し、変わりに「アスナ君もネギ君の事が心配だったのだろう?」というような言葉がいくらか交わされアスナは実にその通りなので赤くなって黙りこくってしまった。
微妙に空気が重いので刹那は気を利かせて話題転換のために超鈴音の事を話し出した。
タカミチはもう気が済んだらしくこれからは刹那がちびせつなを使って見つけたと言う地下施設を調べにいくという。
それで士郎はなにかあったらすぐに連絡をしろといって、刹那は案内のために呼び出した半自律型のちびせつなをタカミチのおともにさせた。
イリヤはランサーも連れて行かせようとしたらしいがランサーはどうやら戦いが見ていたいらしく(特に小太郎)それを辞退した。
最後にアスナとデートの話をしてタカミチは地下施設に向かって歩いていった。


………だが、これ以降タカミチからは連絡が入らなくなってしまうがこれには士郎達も気づかなかった。


◆◇―――――――――◇◆


Side 衛宮士郎


さて、ネギ君たちの試合でけっこう会場が破壊してしまったので修理している途中だがそろそろそれも終わり、次はアスナと刹那の対戦か。
だがアスナは刹那に対して相手になるのか今一で微妙の域を出ないな。
と、そこへもう慣れた感じに俺の背後に立つものが一人。

「なにようだ……?」
「驚いてもらえませんか。結構この手には自身があるのですが」
「あいにくとそういった手合いは昔に色々とあって学んでいるから平気さ。それよりまるで狙っているかのような登場だな」
「はて、なんのことでしょう?」
「とぼけるな。次の対戦で俺が心配げな表情をしていた時に現れるというにはなにかあるのだろう?」
「食えないお方ですね。はい、ありますよ。ですがまだ言うことはできません。そのうちわかりますがね」

食えないのはどちらだ。
クーネルはにこやかな笑みを浮かべてまた姿を消してしまった。
これは次の対戦、なにかありそうだな。

「士郎老師、誰と話していたアルか?」
「いや、なんでもない。それよりもう会場も直ったようだし刹那達はまだだろうか」
「多分もう出てくるアルよ」

『皆さん、お待たせしました!!』

「お、言ってる間にというか来たアルよ」
「来たか、って…あいつらなんて格好をしているのだ」

朝倉の声に古菲とともに見るとそこにはなにやらひらひらしたとても戦闘をする格好ではない服を着た二人がいた。
それになぜか会場が(主に男性陣が声を荒げる)大いに沸き立つ。
確かに似合っていると思うがそこまで騒ぎ立てるようなものか?
アスナもなにやら朝倉に抗議の声を上げているがそれは流されていた。強制か。二人とも憐れ…。
一方で刹那はエヴァとなにやら会話をしている。

「あの女はバカか? お前とでは勝負にならないだろう。ボコボコにしてしまえ」
「い、いえ、それは…」
「確かにアスナでは無理アルかなー」
「厳しいでござるなぁ」

と、アスナの実力では無理だろうと皆言うが、

「いや、そうとも限らんぞ?」
「ええ、確かにそうとも限りませんね」
『え?』

俺といつの間にか隣にいたクーネルで続けざまに声を発すと全員は驚いた声を上げる。
そしてクーネルはおもむろにアスナに近づくと頭を軽くクシャッと撫でた。
当然アスナは慌てて離れるがクーネルは気にした風にもせず所々に知らないキーワードを散りばめていく。
『人形のようだった』といい『ガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグがタカミチに託した』など気になる言葉を発していた。
どうやらこいつはアスナの過去を知っているようだな。
エヴァは「お前も探していた」というセリフで迫るが瞬時に姿を消してしまった。
そしてクーネルの本当の名前であるアルビレオ・イマを知っていてこの場にいた全員をくらますように言葉を発していき、アスナの前にまた出てきて、珍しく表情を真面目にして、

「少しだけ力を貸しましょう。もう二度とあなたの目の前で誰かが死ぬことのないように…」

という言葉を残してその場から消え去った。
気になることをいうな。

「ふむ、奴はどうやらこの大会出場の一つにこれを踏まえているのかもな」
「なぁ士郎。お前はあいつの存在をもしかして知っていたのか?」
「ん?」

そこでエヴァが話しかけてきたので隠すことでもないし「ああ」と答えた。

「あいつとは図書館島以来から知り合いだ。まぁ顔を合わせたのは今日で二回目だが。しかしやはりあいつはナギさんの知り合いだったか。京都の別荘での写真でそうだとは思っていたが」
「なぜ、いわなかった?」
「聞かれなかったからな」
「ぐっ…ま、まぁいい。では奴は図書館島にいるということか」
「おそらくは。この件はもしかしたら学園長も知っているかもな。今回俺が出たのも奴の真意を探る目的でもあるからな」
「なるほど。確かに私も知りたいな、それは」


「―――いずれわかりますよ♪」


エヴァとともに後ろに振り向くがもう消えていた。
俺はため息をつきながら、

「やはり疲れる…。殴ってやりたいほどに」
「お前のその気持ちは分かるぞ」

エヴァとともに顔を渋っていると話は進んでいたようで試合は開始されていた。
するといきなりでもないが刹那はともかくアスナがぎこちなさがあるがしっかりと打ち合いをしている。

「なっ…」

声もあげたくなるだろう。
何度か打ち合いを繰り返して刹那が一際大きい踏み込みをして切りかかってもそれを受け止め、剣速すらも上がって反撃すらしている。
それを刹那は避けて一度しゃがみ下から突き上げるように蹴り上げられる。
追撃で迫るも空中でそれを受け止め空中でも何度も打ち合い弾かれるように着地する。
ここまで見ても異常なのは確かなことだ。それで俺もつい見入ってしまっている。

『こ……これは意外!! 色モノかと思われたメイド女子中学生、予想以上の動き!! 先程までの試合にひけをとりません。予想どおりのモノが見れた男性陣からも賞賛の拍手が!!』

朝倉の声で正気に戻される。
そこでエヴァも異常だというように、

「なぜだ!? なぜ神楽坂明日菜ごときにこれほどの身体能力が!? 体力バカでは説明つかないぞ!」
「確かにそうだな」
「フフフ、あれはアスナさんが元から持っている力ですよ」
「ぬぐっ、貴様……出たり消えたり。はっ…お前あのとき神楽坂明日菜に何かしただろう!?」
「まさか。私は少しきっかけを与えただけですよ」

そう言って温和に笑うがその笑みはやはり含みがあるな。
やはりカレンと同じ系統か?

「どうですエヴァンジェリン……古き友よ。ひとつ賭けをしませんか? 私はアスナさんの勝ちに賭けましょう」
「……何? ……お前の掛け金は何だ?」
「アスナさんについての情報」
「ふん……いいだろう。貴様が何をしようと奴が刹那に勝てるとは思わん」
「いいのかエヴァ。そんな簡単に賭けを提示して」
「構わん。なにを言ってもこいつには袖で返されるだけだからな」
「どうなってもしらんぞ」

クーネルは「では承諾ですね」と相槌を打ってそれではとあることをいいだした。
それは俺にとっても心臓に悪い提案だった。

「そうですねー、ではあの神鳴流剣士のお嬢さんが負けた場合……」
「ん?」

なにやら指を翳すと少しばかり光りだしている。
魔法の予備動作か?

「あなたにはスクール水着を着て次の試合に出て頂きましょう」
「待てぇい!! 何だソレは!」

クーネルは紺色のスクール水着を取り出すと目をキュピーンと光らせてそんなことをのたまった。
仕立ても気合が入っている。なんていったって胸の名前の部分に『えう゛ぁ』と平仮名で書かれているのだから用意していたのかもしれない。
これは着たら会場男子は盛り上がるだろうな。俺はやる気がダウンするが。
しかしあえて俺はつっこませてもらう。

「くくく…なかなか面白いことをいう。次の対戦でその格好のエヴァと戦えと? 悪い冗談だ」
「その割には笑みが取れませんが…?」
「なぁに、お前の性格が今もってある知り合いとドンピシャなので哀れだなと自分に対して嘆いていたところだよ」
「フフフ…そうですか。あなたとはいい友人関係を築けそうです」
「それはできればお断りだな」
「そう言わずにどうですか?」
「えぇい! 私を無視して話を進めるな! すでに私が着るような話を仕出すな!」

俺とクーネルではははと笑いながら対応すると、

「…お前ら、実は仲がいいのか?」
「いや」
「いいえ、まだ」
「くっ…」

それで紛らわすように試合に目をやるとまた高速での打ち合いが始まっていた。
しばらく打ち合っているとアスナはこちらに指を刺しながら、

「ネギ、ちゃんと見ていなさいよ!!」

と、言っているがあいにくこちらにはネギ君はいない。
それでアスナも面を食らっているようだがネギ君の「アスナさーん、こっちでーす。ちゃんと見てますよー」という方向に目をやり、

「と、とにかくしっかり見てなさいよ。私がちゃんとパートナーとしてあんたを守ってやれるって所を見せてやるわ!!」

と宣言したが、残念なことにネギ君は顔を赤くしてしまい他の観客もいいように勘違いしたようで色々と声を上げている。
そこにとどめの朝倉の実況、

『おおーーっと、これは大胆。試合中に愛の告白かーーー!?』

と持て囃す。いやぁ、「ちがーーーうっ!!」とは反論しているもののなんていうか一同に注目されるアスナは可愛そうな構図だな。
だがそこでアスナの動きが突然悪くなる。
なにがあったのだろうか。
アスナは誰かと会話をしているようだが相手はおそらくクーネル。
そして使ったのはなんとタカミチが使う咸卦法。
これで驚かないわけがない。
エヴァですらなぜ使えるという感じに驚いている。

「クーネル、あれは?」
「ふふふ、内緒です」
「貴様、教えろ!」

会場はあちこちで色々な意味でヒートアップしていく。
アスナも気合を入れなおして「いきます、師匠!」といって刹那に突っ込んでいく。
そしてまた始まる高速戦闘。
エヴァは必死な形相で、

「ええい、刹那!! 神楽坂明日菜程度に何を手間どってる!! 5秒で倒せ!! いや、殺れ!!」

といって捲し立てる。
そこにクーネルが追加の賭けをしてきた。

「エヴァンジェリン……賭け金をさらに上乗せしましょうか?」
「何!?」
「私の賭け金はナギ・スプリングフィールド……サウザントマスターの情報です」
「な……が……」

今現在かなり脳内暴走しているエヴァには的確にクリーンヒットしてクーネルの罠ともいえる誘いに、

「の……ぐぐ……乗るに決まっているだろうがっ!」
「フフフ、了解です」

簡単に乗ってしまった。

「な、なんかいいように遊ばれているような」
「アイツトナギダケハ御主人ノ天敵ナノダ」
「天敵…それはわかるな。俺もあいつとは真っ向に相手をしたくない」

そしてクーネルが出す賭けの追加に刹那が負けた場合、エヴァが着る水着にさらに「ネコミミ」「メガネ」「セーラー服」が上乗せされた。
カモはそれに興奮して俺は想像してもしかしてという理由で顔を青くした。

「クーネル、やめろ。俺を試合で殺す気か?」
「はて、なんのことやら」
「こいつ…! もしそうなったら腹いせがすべて俺に向かってくるのだということになるんだぞ!?」
「あー、確かにそうですね。その時はご愁傷様というしかありません」
「マァ、ソノトキハアキラメロ。ケケケ」
「そうだな。士郎にすべてぶつければいい。ぶつければ…フフフ」
「士郎の旦那、ご愁傷様っす」
「くっ…なんという、ことだ」

全員のお言葉をもらい俺はひざを付きそうになる。
俺も刹那にカードで加勢でもしてやろうか?
そんな思いが過ぎったが刹那の気持ちに反して卑怯だろうと自分で却下した。

『第八試合、神楽坂選手 対 桜咲選手!! 二人で舞を舞っているかのような華麗な攻防!!』

朝倉の実況で現実に戻り密かに刹那、勝て!という気持ちで応援していた。
隣で「結果が楽しみですねえ」とほざいているクーネルがいるがこの際無視だ。
今は試合を見ることに集中しよう。
一応刹那の師匠的位置合いにいるのだからしっかりと見ていなければ。
だがそこでクーネルがなにか吹き込んだのか一度刹那が倒されハリセンを首にさらされてしまった。
大丈夫か刹那!?
だがすぐに起き上がってアスナの動きを褒めていた。
刹那は気づいていないのだろう。今のアスナは指示通りにやったことなど。
そしてアスナの意思と反して攻撃が続けられる。

「コラーーーーッ!! 桜咲刹那!!」

その一連の行動についにエヴァがキレル。

「京都神鳴流剣士がちょっとパワーが上がっただけの素人に何を手こずる!! さっさと倒せ!! 負けるなど私が許さぬ!! あの修行を思い出せ!!」
「い、いえしかし、このアスナさんの動きは本物……」
「騙されるな!! コイツが助言をしているだけだ!! ええい、貴様っ念話をやめんかあっ」
「ハハハハ」

クーネルの首を揺さぶり楓などが宥めている最中だ。
普段なら俺も加入するところだが次の試合を考えると中々とめることができない弱い俺ですまない、エヴァ。

「お…お前が負けるとだな、私がとてもハズかしいコトになる!!」
「ハ、ハァ……?」
「とにかく勝て! いいか? もし負けでもしてみろ、お前には……あーー、お前にも私と同等の、いや私以上の恥辱を与えるとしよう。私が直々にだ。そうだな、お前の大切なお嬢様と敬愛している士郎の眼前で……」
「ちょっとーーーッ!?」

もう調子がおかしくなっているな。
それと俺も巻き込まないで欲しい…。
近くでカモミール達も口々に、

「コレが悪か?」
「イヤ、テンパッテイルダケダ」

と、言っているのだから腹積もりは相当だろう。
アスナもクーネルの助言が嫌なのか必死に一人でやらせてといっているがこれはどう動くのか。
そして刹那も本気でいくらしく神鳴流の技を使い始めた。
これで決まりかと思ったがアスナの様子がそこで変わる。
そう、刹那が上段から斬りかかったその時にアスナのハリセンが例の大剣へと変化を遂げていてそのまま刹那のデッキブラシを切り裂いた。
やばいな。今のアスナはなぜか気が動転して誰の言葉も耳に入っていないだろう。
朝倉に注意を促す刹那に向けて大剣を振り下ろした。
クーネルもやばいとおもったのか止めようとしたが、ランサーとで鍛えた刹那の反射神経を舐めてもらっては困る。
すぐに脇に入りなにかの技を決めてアスナを気絶させた。

『あ…神楽坂選手ダウン! しかもこれは何かの手品かいつの間にやら神楽坂選手の手には巨大な剣が!』

朝倉の実況で刃物の禁止の話が出てアスナは失格判定となり、

『桜咲選手、勝利――――ッ!』


◆◇―――――――――◇◆


Side 衛宮イリヤ


試合が無事に終わってひとまず安心したけど、

「アスナのあの動き、なにがあったのかしら」
「そうだな。特に最後のは別人みてぇだったからな」

別人、確かにそう見えた。
なにかの衝動にも動かされていたようにも感じた。
ますますアスナの隠された秘密が知りたくなったかもしれない。

「まぁとにかく次はシロウ達の試合か。…なにか控えの席でエヴァがなにやらわめき散らしているけど一体どうしたのかしら? なにかこう面白そうなことが起こっていそうな感じ?」
「ありゃガキの暴動にしかみえねぇがさて、な」
「シロウが気にかけているフードの男関係か…。ま、いいわ。そのうちわかるだろうし」


 
 

 
後書き
士郎、命拾いをする。 
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