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ヘタリア大帝国

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TURN29 開戦前夜その十一

「カナダさんは連合国だったのですか」
「そうだったらしいぞ。僕も会議で一度も見ていなかったがな」
「私も初耳です」
 ガメリカ軍の提督でさえ知らなかった。軍の高官でさえも。
「カナダさんは連合国だったのですか」
「ううん、ひょっとして誰も知らなかったのか」
「私も知らないですし」
 それにだった。
「おそらくは長官、いえ四長官はおろかプレジデントも」
「そうか。カナダはそこまで影が薄いのか」
「そもそもカナダさんは今ここに来られているのですか?」
 アメリカとハルゼーは今はネイティブ達のコロニーの中にいてそのネイティブ達と握手をしている。だがそれでもだったのである。
「そもそも」
「あれっ、そういえばいないぞ」
 いるのはネイティブ達だけだった。今親睦で握手をしている。
「何処に行ったんだろうな」
「おかしいですね。国家ならすぐに気付くのですか」
「全く。何処に行ったんだ」
「さて。それではですね」
 ハルゼーはここで言う。彼女のことを。
「私はこの親睦の訪問の後で任地に戻ります」
「ミクロネシアにだったな」
「はい、戻ります」
 そうするというのだ。
「日本軍に備えてすぐに」
「そうか。僕もハワイに行くからな」
「お互いに頑張りましょう」
「そうしよう」
 こうした話を二人でしながらだ。アメリカはハルゼーと共にカナダを探した。だが。
 ドロシーの研究所は見た。しかしだった。
 カナダの姿は全く見えない。何処にもいなかった。ハルぜーは本気でアメリカにこう尋ねた。
「あの、カナダさんは本当に」
「ここにはいなかったのか?」
「そうかも知れないですね。そういえば」
「君はカナダに会ったことがあったかな」
「いえ、あったかも知れませんが」
 それでもだというのだった。
「覚えていません」
「じゃあどんな顔か知らなかったのか」
「はい、知りません」
 もっと言えば覚えていなかった。
「どういった国だったのでしょうか」
「僕によく似た顔だぞ」
「それなら目立つ筈ですが」
 アメリカが目立つことはハルゼーはわかっていた。それならだというのだ。
 しかしそれでもだった。カナダが誰かはわからなかった。
 その中でハルゼーはドロシーの研究所を遠くから見る。それでアメリカに密かに囁いた。
「祖国さんはあの研究所に入られたことは」
「あるぞ。サイボーグの研究所だ」
「サイボーグですか」
「そうだ。軍にサイボーグやアンドロイドを導入する計画があるのは君も知っているな」
「はい、そのことは」
「ドロシーはそれを研究しているんだ」
「成程。そうだったのですか」
 ハルぜーもアメリカも、そしてドロシー本人もだった。この時点ではこう考えていた。
 だがこのことが恐ろしい存在を生み出すことは彼等は知らなかった。そしてそれがガメリカでだけ起こるとは限らないということもだ。
 彼等はそのまま親睦の交流を終えてそれぞれの任地に戻った。その彼等が去った後で。
 カナダはうきうきとしながらクマ二郎さんに尋ねていた。
「ハルゼー提督ってどんな人なのかな。会うのが楽しみだよ」
「誰?」
「君の飼い主のカナダだよクマ一さん」 
 彼だけは穏やかだった。尚彼が連合国の一員だと知っているのは連合の五人だけだ。だがその彼等もカナダに会っていることには気付いていないのだった。


TURN29   完


                         2012・6・6 
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