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戦国異伝供書

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第七十二話 六角家からの話その六

「公方様にしてもな」
「公方様、足利家も確かに源氏ですが」
「それでもですな」
「鎌倉様の家の血筋ではなく」
「傍流ですな」
「嫡流はない」
 源氏のそれはというのだ。
「最早な」
「鎌倉は三代でしたな」
「それだけで絶えました」
「木曽殿も殺されましたし」
 木曽義仲、彼もというのだ。
「身内で殺し合いを続け」
「父子もそうでしたな」
「あの家の様なことをしてはならぬ」 
 断じてと言うのだった。
「やはりな」
「左様ですな」
「ああしたことをしますと」
「何もなりませぬな」
「家が絶えるだけです」
「それに不孝自体がな」
 親へのそれがというのだ。
「わしとしてはじゃ」
「出来ぬ」
「左様ですな」
「若殿としては」
「その考えでな」
 それでというのだ。
「わしとしてはな」
「これからもですな」
「家督を継がれるにしても」
「お父上を大事にされますな」
「殿を」
「何があろうともな。だが父上のお考えは」
 久政のそれはというと。
「やはり変わられぬな」
「ではですな」
「六角家から姫君もですな」
「迎えようとされますな」
「若殿の奥方に」
「そうなる」
 間違いなくというのだ。
「このままではな」
「どうしたものか」
 海北は難しい顔で述べた。
「ここは」
「わしの元服は間近でな」
「それで、ですな」
「元服と共にな」
 まさにその時にというのだ。
「六角家の姫君をな」
「奥方にですな」
「迎えることになり諱もな」
 こちらもというのだ。
「六角殿からじゃ」
「頂くことになる」
「そこまでになるとな」
 六角家から妻を迎えまた諱を貰うと、というのだ。諱を貰うということはその者が親も同様になるということだ。
「六角家から出るにしても」
「それでもですな」
 赤尾も言ってきた。
「色々面倒ですな」
「奥方とは別れてな」
「六角家に戻ってもらう」
「そしてな」
「諱もですな」
「六角殿から頂いても」
 六角義賢、六角家の主である彼からというのだ。
「それも返上する」
「烏帽子親にもなりますが」
「それもな」
 どうもというのだ。
「縁を切ることになる」
「だからですな」
「そうしたことは最初からせぬに限る」
「それでは」
「残された時は少ない」
 猿夜叉はそのことをあらためて認識した、そしてだった。  
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