英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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第60話
~エリンの里・広場~
「其方達はカレル離宮でプリネ皇女殿下と共にジョルジュ先輩達と戦った…………」
「結社の執行者No.Ⅱ――――――”剣帝”レオンハルト…………!」
「それに”魔弓将”まで一緒だなんて、わたし達に何の用なの?」
二人に見覚えがあるラウラが真剣な表情で呟いている中サラは声を上げてレーヴェを警戒し、フィーは真剣な表情で疑問を口にした。
「その二人はⅦ組が”黒の工房の本拠地を見つけるまでの期間限定の協力者”よ。」
「ええっ!?ぼ、僕達の…………!?」
「一体何故そのような事に…………」
レンの答えにエリオットが驚いている中エマは困惑の表情でレーヴェとエヴリーヌを見つめた。
「プリネに頼まれたから、しょうがないからⅦ組に協力する事になっただけだよ。」
「プリネ姫が…………何故プリネ姫は二人をⅦ組の協力者に?」
興味なさげな様子で答えたエヴリーヌの答えに目を丸くしたオリヴァルト皇子はレン達に訊ね
「プリネお姉様はリィンお兄さん達がマルーダ城に”待機”している間にメサイアお姉さんが情報収集をしていた時に、今回の戦争の経緯とかをメサイアお姉さんに説明したらしくてね。それでメサイアお姉さんからの情報でリィンお兄さん達が今回の戦争の件を知ってⅦ組と袂を分かってメンフィル帝国軍側として戦う事を決めた事で、メサイアお姉さんに戦争の件を教えた自分にも責任があると思ったプリネお姉様がせめてもの罪滅ぼしに二人が期間限定で”Ⅶ組”に協力するように手配したそうよ。」
「そのような事情が…………」
レンの説明を聞いたユーシスは複雑そうな表情でレーヴェとエヴリーヌを見つめた。
「ちなみにレンもⅦ組に協力する事になっているから、改めてよろしくね♪」
「ふええええっ!?それじゃあレン皇女殿下まで黒の工房の本拠地を見つけるまではわたし達に協力してくれるんですか…………!?」
「フフ、まさに最高の展開じゃないか♪」
「お前にとってはそうだろうが、俺達にとっては正直”殲滅天使”にまで協力してもらうなんてどうかと思うぜ…………どうせ、その皇女の事だろうから、他にも目的があって俺達に同行するんだろうしな。」
レンの申し出を聞いたアリサ達が驚きのあまりそれぞれ血相を変えている中トワは驚きの声を上げ、喜んでいるアンゼリカに呆れたクロウはジト目でレンを見つめた。
「失礼ね~。レンの事を何だと思っているのよ。」
「――――――レン皇女の説明にあったようにプリネ皇女の要請を受けた俺達は、お前達が黒の工房の本拠地を見つけるまではお前達に協力する事となった。戦力としての同行なり、鍛錬の相手なり、上手く俺達を利用するがいい。――――――だが、それはあくまで互いにとっての利害――――――黒の工房の本拠地を見つける事が一致している間だけの話で、それ以降の協力は得られない事を念頭に置いておくといい。」
「プリネに頼まれて仕方なく手伝う事になったから、せめてエヴリーヌを退屈させないようなトラブルに巻き込まれてね、くふっ♪」
レンが溜息を吐いた後に答えたレーヴェとエヴリーヌの答えにアリサ達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「うふふ、エヴリーヌお姉様は”星杯”やカレル離宮でもその実力の一部を見せてくれたように、戦闘方面ではとっても心強い存在よ♪レーヴェに関しては…………クスクス、レーヴェの事をよく知っている”深淵”のお姉さんが説明してあげたら?」
「ク、クロチルダさんがその人の事をよく知っているって事は…………」
「そりゃ”剣帝”は元結社の”執行者”だったんだから、”蛇の使徒”だった”蒼の深淵”も”剣帝”の強さも当然知っているに決まっているわよ。」
意味ありげな笑みを浮かべたレンの言葉を聞いてある事を察したエリオットが不安そうな表情をしている中、サラはジト目でクロチルダとレーヴェを見比べていた。
「フフ、私も今のレオンの正確な強さは知らないけど…………結社に居た頃のレオン――――――執行者No.Ⅱ”剣帝レオンハルト”はそのナンバー通り、”執行者”の中ではマクバーンに次ぐ使い手よ。」
「なっ!?あの化物の次に強い”執行者”って事は”劫焔”が死んだ以上、現状その人が結社の中では”最強の執行者”って事じゃないですか!?」
「執行者のナンバーは必ずしも強さの順番ではないって話だが…………マクバーンとそいつに関してはそのナンバー通りの強さという訳かよ。」
苦笑しながら答えたクロチルダの説明を聞いたマキアスは驚きの表情で、クロウは真剣な表情でそれぞれレーヴェを見つめた。
「そういえばオーロックスで初めて”神速”と対峙した時にも、”剣帝”の話が出てきたな…………」
「ああ…………確かあの”神速”が100回戦って1回だけ勝てたという話だったな…………」
「ふふ、ちなみにレオンは執行者の中で”火焔魔人”化する事でアリアンロードと渡り合えたマクバーンのような”異能”が備わっていないにも関わらず、”人”の身でアリアンロードと渡り合えたのよ?」
ある出来事を思い出したユーシスの言葉を聞いたガイウスは静かな表情で当時の出来事を思い返し、クロチルダは意味ありげな笑みを浮かべてレーヴェを見つめてアリサ達にレーヴェの強さについての説明をした。
「ハアッ!?」
「あ、あの伝説の”槍の聖女”とも渡り合えるって事はひょっとしたら、子爵閣下以上の剣の使い手なのかも…………」
「さて…………それについては実際にやり合ってみないとわからないが、正面からの対決において俺を凌駕する者はそうはいない。たとえ領邦軍の英雄やエレボニア最高の剣士といえどな。」
「フフ、機会があれば其方とも手合わせを願いたいものだ。」
レーヴェの強さを知ったセリーヌは驚きのあまり声を上げ、信じられない表情で呟いたトワの推測に対してレーヴェは静かな表情で答えた後挑発をするかのように静かな笑みを浮かべてアルゼイド子爵に視線を向け、視線を向けられたアルゼイド子爵もレーヴェのように静かな笑みを浮かべて答え、レーヴェとアルゼイド子爵の答えとその様子にその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「そ、それよりも姉さんはあちらの方を愛称のような名前で呼んでいたけど…………結社にいた頃の姉さんはあちらの方と親しかったの?」
「ふふっ、”レオン”は私が一方的に呼んでいる愛称でレオン自身は他の人達からは”獅子”という愛称で呼ばれていたわ。」
「……いささか不本意だが、仲間内ではそう呼ぶ者は多いな。まあ、お前たちも好きなように呼ぶがいい。」
「フム…………だったら遠慮なく今後はレーヴェさんと呼ばせてもらうが…………レーヴェさんはクロチルダさんと一体どんな関係なのかな?クロチルダさんがクロウ以外の男性を呼び捨て――――――それも、愛称で呼ぶなんてただならぬ関係と思われるのですが?」
エマの疑問に答えたクロチルダに続くように静かな表情で答えたレーヴェの答えを聞いたアンゼリカは興味ありげな表情で訊ねた。
「フフ、それはレオンが結社にいた頃は私が一方的にレオンに対して熱を上げていたからよ。」
「ほう…………?」
「ハ…………?」
「ね、姉さんが!?」
「なあああああああぁぁぁっ!?」
「そ、そそそそ、それってもしかして、クロチルダさんはレーヴェさんの事を…………!?」
苦笑しながら答えたクロチルダが口にした驚愕の事実にローゼリアは興味ありげな表情、セリーヌが困惑の表情をしている中エマとマキアスは驚き、エリオットは信じられない表情でレーヴェを見つめ
「ほほう…………?さすがはレーヴェ君。義弟のヨシュア君のように兄弟揃って、モテモテだね♪」
「少しは口を慎め、このお調子者が…………!」
「クスクス、今の話は初耳ね♪」
「プリネが今の話を聞いたら、どんな反応をするだろうね、キャハッ♪」
興味ありげな表情をした後いつもの調子になったオリヴァルト皇子をミュラー少佐は顔に青筋を立てて注意し、レンはからかいの表情で、エヴリーヌは不敵な笑みを浮かべてレーヴェを見つめた。
「…………当事者である俺からすれば鬱陶しくて迷惑な話だったがな。」
「フフ、わかってはいたけど相変わらず私には振り向いてくれないのね。私以外の他の女――”姫君の中の姫君”になびいて”結社”を離れたようだけど、一体”姫君の中の姫君”の何が貴方の心を射止めて、貴方をそこまで動かしたのやら。」
(ク、クロチルダさんが鬱陶しくて迷惑って…………!)
(あ、あの蒼の歌姫にそこまで想ってもらいながら、無下にした挙句振るとか、罰当たり過ぎだぞ…………!)
レーヴェの答えを聞いたクロチルダが意味ありげな笑みを浮かべている中エリオットは信じられない表情をし、マキアスはジト目でレーヴェを睨んだ。
「ハア…………”剣帝”まで一時的に協力するとか、どんな皮肉よ…………」
「サ、サラ教官。」
「―――”紫電のバレスタイン”。エレボニアの遊撃士の中でも5本の指に入る元A級正遊撃士にして今は”トールズ士官学院”の武術教官だったか。フッ、随分と俺に対して色々と思う所があるように見えるが、俺の記憶が間違っていなければ”紫電”とやりあった記憶はないのだが?」
疲れた表情で溜息を吐いた後ジト目でレーヴェを睨むサラの様子にエマが冷や汗をかいている中レーヴェは静かな表情でサラの情報を口にした後興味ありげな表情でサラを見つめて問いかけ
「ええ、あんた自身とやりあった事はないわよ。でも、2年前の”リベールの異変”が起こる半年前くらいに起こったエレボニア帝国の事件――――帝都各地で起こった猟兵達による遊撃士協会支部の襲撃事件と言えばわかるでしょう?」
「そ、それって……」
「以前教官の話にあった……」
「リシャール大佐によるクーデターが起こる前に潰されないように、カシウスさんが結社によってリベールから離されていたあの件か…………」
「―――なるほど、”ジェスター猟兵団”か。確かに奴等には俺が稽古をつけてやったのだから、遊撃士協会の支部を襲撃した奴等を強化した俺に対して思う所があってもおかしくないな。」
サラの答えを聞いたエリオットとマキアスは目を丸くし、オリヴァルト皇子は複雑そうな表情で呟き、かつての出来事を思い出したレーヴェは納得した様子で頷いてサラを挑発するかのように口元に笑みを浮かべてサラを見つめた。
「言ってくれるわね……!なんなら今ここでやりあって2年前にあんたが育てた連中から受けた”借り”を返してもらってもいいのよ!?」
「まあまあ~、今の彼は結社の”執行者”ではない上、サラ教官達に協力してくれる立場なのですから、彼に対して思う所はあるかもしれませんが、生徒達の為にも2年前の件は今は頭の片隅にやっておいて、お互い仲良くしましょうよ~。」
顔に青筋を立てて今にもレーヴェに戦闘を仕掛けそうなサラの様子を見たトマスは苦笑しながらサラを諫めようとし
「…………とりあえずあの二人だけは戦術リンクを組ませない方がいいだろうな。」
「ん。最初の頃のマキアスとユーシス、それにわたしとラウラのように戦術リンクが失敗して戦闘に支障をきたす事は目に見えているものね。」
その様子を見たその場にいる多くの者達が冷や汗をかいている中ユーシスとフィーはジト目で二人を見つめて呟いた。
「あ、それと一つ伝え忘れていたわ。実は”星杯”が出現した際の帝都の混乱に乗じてヴァイスラント決起軍が帝都に潜入して鉄道憲兵隊に身柄を”保護”されていたアッシュ・カーバイドを救出して帝都から離れたそうなのよ。」
「な――――――ヴァイスラント決起軍がアッシュを!?」
「何故ヴァイスラント決起軍は彼の救出を?」
レンが口にした意外な情報にその場にいる多くの者達が血相を変えている中サラは驚きの声を上げ、アルゼイド子爵は真剣な表情で訊ねた。
「さあ?その方が帝国政府にとって都合が悪いからか、もしくは帝国の”呪い”に巻き込まれた彼を”哀れ”に思って助けてあげたか、それを知るのはミルディーヌ公女とヴァイスラント決起軍の上層部――――――”黄金の羅刹”と”黒旋風”くらいでしょうね。――――――ただ、そのアッシュ・カーバイドだけど目を覚ました後はヴァイスラント新生軍の陣地から脱走したそうよ。――――――ご丁寧にも”ヘクトル”を一機盗み出してね。それを考えると脱走時はヘクトルを操縦して脱走したのでしょうね。」
「そのアッシュとやらがせっかく救出してもらったヴァイスラント新生軍から脱走を…………」
「しかも機甲兵を操縦して脱走するとはその男は一体何を考えているのだ…………?」
「それについてはわからないが、できれば彼を見つけた際は私達で保護した方がいいかもしれないね。」
レンの説明を聞いたラウラとユーシスが真剣な表情で考え込んでいる中、オリヴァルト皇子は静かな表情で答えた。
「クスクス…………――――――何はともあれ、形は違えど新旧Ⅶ組メンバーは全員”終焉の御伽噺”の舞台に上がった事になるわ。”並行世界の零の御子”によって改変されたこの世界の”終焉の御伽噺”はどのような結末を迎えるのでしょうね♪」
「それは……………………」
「まあ、少なくても本来の歴史と違ってリィン君達が犠牲にならない事は確実でしょうね。」
「黒兎と公女、”双剣のヴァンダール”の後継者たるヴァンダール家の次男はメンフィル・クロスベル連合軍側、”呪い”に侵されていた”三人目のハーメルの遺児”は何らかの目的のために独自に行動…………ぬ?後一人――――――クロスベル出身の”ユウナ”とやらは今はどうなっているのじゃ?」
意味ありげな笑みを浮かべたレンの言葉を聞いたトマスが複雑そうな表情をしている中クロチルダは苦笑し、新Ⅶ組メンバーの状況を思い返してそれを言葉にしたローゼリアはある事に気づいてレンに訊ねた。
「”ユウナ・クロフォード”は元々クロスベル警察に就職する為にクロスベルの警察学校に通っていたけど、戦争の影響でクロスベル警察も人手不足になったから警察や警備隊の応援の為にクロスベル帝国政府が決めた”臨時派遣員”の一人として”特務支援課”に派遣されて、今は”特務支援課”の一員として働いているわよ。」
「……………”黄昏”の件はクロスベルにとっても無関係ではないのだから、間違いなく”特務支援課”も今回の件に何らかの形で関わる事になるのだろうな。」
「という事は残っていた一人はクロスベル側か…………」
「そのユウナさんという方も本来の歴史では”Ⅶ組”の一員だったとの事ですからできれば、私達に協力して欲しかったのですが…………」
「ま、その”ユウナ”って人の故郷はクロスベルで所属も元々クロスベル側なんだから、どの道今は”Ⅶ組”とは何の関係もないどころかエレボニアとクロスベルが戦争している状況だとリィン達の件同様クロスベル皇帝の許可が必要になってくるから無理だと思うよ。」
レンの答えを聞いたミュラー少佐は重々しい様子を纏って呟き、マキアスとエマが複雑そうな表情をしている中、フィーは静かな表情で答えた。
「ちなみにユウナ・クロフォードは本来の歴史では”星杯”の件でリィン・シュバルツァーが拉致された事やミリアム・オライオンの死に意気消沈していたⅦ組に真っ先に”喝”を入れてⅦ組の士気が戻るきっかけを作った上、リィン・シュバルツァーが不在の間は本人は意識していなかったらしいけど精神面でⅦ組を支えた影の功労者だそうだから、”本来の歴史ではユウナ・クロフォードはⅦ組のもう一人の重心だったそうよ?”」
「ええっ!?そ、そのユウナさんって人がリィンと同じ…………!?」
「…………レン君。そのユウナ君という人物は一体どういう人物で、どのような経緯で本来の歴史でトールズ第Ⅱ分校に入学したんだい?」
レンの説明を聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中アリサは驚きの声を上げ、オリヴァルト皇子は複雑そうな表情でレンに訊ねた。
「どういう人物と言っても、新旧Ⅶ組メンバーの中ではまさに”平凡”を表すような少女よ。クロスベルの一般家庭の夫婦の間に生まれた”普通”の女の子で、リィンお兄さんみたいに特別な”力”がある訳でもなければ、エリオットお兄さんやマキアスお兄さんのように親が”平民”でありながら軍や政府の上層部という訳でもないし、一部のⅦ組メンバーのように何か特別な過去を持っている訳でもない探せばどこにでもいるような正義感あふれる活発な少女よ。」
「性格に関してはエステル君と少し似ているようだが…………何故クロスベル出身の彼女がエレボニアの士官学院に?」
レンの説明を聞いて考え込んでいたミュラー少佐はレンに続きを促した。
「ユウナ・クロフォードは”特務支援課”の活躍に憧れてクロスベルの警察学校に通っていたけど、エレボニア帝国の侵略でクロスベルが併合された後帝国政府の手配によって”重要参考人”扱いされた”特務支援課”のリーダーであるロイド・バニングスがキーアと共に指名手配されちゃってね。その件で”軍警察学校”となった帝国か派遣されたクロスベル警察の学校長に異議を申し立てたら、校長を含めた軍学校上層部によって今まで修得した全単位が取り消されて、クロスベル警察に就職する夢が断たれかけたのよ。」
「そのような事が本来の歴史では起こっていたのですか…………」
「”零の御子”であったキーアさんを危険視して指名手配した事はまだわかるのですが、何故犯罪を犯した訳でもないクロスベル警察に所属している方を指名手配したのでしょうね…………?」
「――――――”特務支援課”は”六銃士”が現れるまではクロスベルにとっては”風の剣聖”に次ぐ”クロスベルの英雄”だったのだから、恐らくは併合したクロスベルの統治に邪魔になる存在である”クロスベルの英雄”のリーダー的存在であるロイド・バニングスを抑えてクロスベルの市民達の心を”折る”つもりだったのでしょうね。」
「ハッ、あのギリアスの野郎ならいかにもやりそうな手だな。」
「そしてその件には当然本来の歴史ではクロスベルの総督になっていた兄上も深く関わっていたのだろうな…………」
レンの説明を聞いたトマスは複雑そうな表情をし、エマの疑問に答えたクロチルダの推測を聞いたクロウは鼻を鳴らして不愉快そうな表情をし、ユーシスは重々しい様子を纏って呟いた。
「で、当時臨時教官として赴任していた”氷の乙女”がユウナ・クロフォードの単位取り消しを見かねて上層部達を取りなした結果、”氷の乙女”に推薦してもらう形で単位取得分を”トールズ第Ⅱ分校”で行うという形で入学したそうよ。」
「ええっ!?ク、クレア少佐が!?」
「一体何を考えてそんなことをしたのかしら、あの女は…………」
説明を続けたレンの話の中で意外な人物が登場した事にエリオットは驚きの声を上げ、サラは困惑の表情で考え込んでいた。
「さあ?それを”識って”いるのは今ではもはや並行世界のキーアだけだからこの世界にいる誰にもわからないわ。ま、そういう経緯もあってユウナ・クロフォードはクロスベルを侵略したエレボニアを嫌ってはいるけど、”氷の乙女”の世話になった事もあるから帝国人全てが悪人でないと理解していたそうよ。そしてかつての旧Ⅶ組のように学院生活や”特別演習”の経験で新Ⅶ組を含めた第Ⅱ分校の生徒や教官達、そして旧Ⅶ組との仲を深めたユウナ・クロフォードはいつか”クロスベルと帝国の双方の人々が笑顔になれる未来”を探す事を決意したそうよ。」
「それは……………………」
「そのユウナ本人はこの世界ではその憧れの部署の一員になっているのだから、ユウナ本人にとってはリィン同様本来の歴史より今の歴史の方がいい結果になったのでしょうね。本来の歴史と違って祖国は占領されていない所か、大国になっている上憧れの部署で憧れの”英雄”達と仕事を共にしているのだからね。」
「…………何にしてもこの世界では”Ⅶ組”は灰の小僧共々”Ⅶ組にとっての重要な役割を持つ人物”抜きで今回の件に挑まなければならない事は事実じゃの…………」
説明を聞き終えたガイウスが複雑そうな表情をしている中セリーヌは疲れた表情で答え、ローゼリアは重々しい様子を纏って呟いた。
「…………みんな、レン皇女殿下から教えてもらった”本来の歴史”に関する話で色々と思う所はあるかもしれないけど、それは”今の世界”に生きるわたし達にとってはあくまで”参考”になる程度の話だから、今は目の前の事に集中しよう!それがミリアムちゃんを取り戻して、そしてリィン君達に少しでも早く近づく為の方法なんだから!」
「はいっ!!」
自分達と見回して激励の言葉をかけたトワの言葉にアリサ達はそれぞれ力強く答え
(クスクス、威勢だけは立派ね。)
(――――――奴等にエステル・ブライトや”特務支援課”のような成長を遂げる事は今の状況ではあまりにも厳しいと思うがな。)
(ふあ~あ…………せめてリウイお兄ちゃん達が本格的な侵攻を再開するまでの”暇潰し”くらいのトラブルに巻き込まれて欲しいよね~。)
アリサ達の様子を見守りながら呟いたレンの小声にレーヴェは静かな表情で答え、エヴリーヌはあくびをした後興味なさげな様子でアリサ達を見つめていた。
その後アリサ達は今後の活動について話し合った結果、”特異点”を探す活動をするトワ達とⅦ組を除いた”紅き翼”のメンバーであるトールズ士官学院の生徒、教官達はアルゼイド子爵をレグラムに送り届けた後セドリック皇太子の奪還の目途が立つまでは現状唯一安全に活動できるクロスベル市でクロスベル帝国政府が出すクロスベル復興に関する依頼をこなしつつ情報収集をすることになり、オリヴァルト皇子はミュラー少佐と共に守護騎士専用の飛行艇である天の車を所有しているトマスの協力の元ユミルを訪問した後国外の有力者達に”巨イナル黄昏”に関して判明した様々な事実の説明や紅き翼の協力者を増やす為に国外で活動する事になり、クロチルダは独自で情報収集や結社から離れた自分やブルブラン同様結社とは袂をわかった”執行者”達に何らかの協力を取り付ける為の行動をする事になった。
それから数日、アリサ達はエリンの里の郊外にある”魔女”の一族の修行の場である迷宮で修行を重ねて昏睡状態に陥っていた時の力を取り戻した後それぞれの”特異点”を探す為に順次里から出発し、Ⅶ組を見送りそれぞれの旅装を身にまとったトワ、アンゼリカ、クロウ、サラもローゼリアに見送られようとしていた。
1月26日――――――
~エリンの里・ロゼのアトリエ~
「それじゃあ行ってきますね、ローゼリアさん!」
「フフ、おぬしらはあの厳しい修行を乗り越えた。カンも完全に取り戻したじゃろうし、胸を張って旅立つがよいぞ。」
「おう!」
「それにしても本当にサラ教官は私達に同行してよかったのですか?クロイツェンやノルドに向かったアリサ君達の方がサザ―ラントに向かう私達よりも安全な地域とはいえ、”Ⅶ組”の担当教官としてアリサ君達に同行した方がよかったと思うのですが…………」
トワの言葉に対して静かな笑みを浮かべて答えたローゼリアの激励の言葉にクロウが力強く頷いた後アンゼリカはサラに確認した。
「仕方ないでしょう…………人数の関係や活動する場所の危険度もそうだけど、アンタ達に同行する”ただでさえ信用できないメンフィル側の協力者の中でも最も信用できない人物”がアンタ達に同行する事になったのだから、期間限定とはいえ、本当にこっちの味方かどうかを最初の活動で見極める為にもアンタ達に同行するしかなかったのよ。」
アンゼリカの確認に対して溜息を吐いたサラはジト目で自分達と同行するメンフィル側の協力者――――――レーヴェを睨み、サラの言葉と様子にその場にいるサラとレーヴェを除いた全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「やれやれ。エヴリーヌもそうだが、まさかレン皇女よりも信用されていないとは、2年前の件があるとはいえ幾ら何でも根に持ちすぎだと思うがな。」
「そういう態度を取っているから余計に信用できないのよ!あたしに信用してもらいたかったら、まずは2年前の件であたしに謝罪するみたいな”誠意”を見せなさいよ!」
「ア、アハハ…………改めてよろしくお願いします、レーヴェさん。」
「フフ、”エレボニア最高の剣士”と謳われる”光の剣匠”とも渡り合える”剣帝”の力、遠慮なく頼らせてもらうよ。」
呆れた表情で指摘したレーヴェの言葉に対して顔に青筋を立ててレーヴェを睨んで反論するサラの様子に再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせたトワは我に返ると苦笑しながらレーヴェを見つめ、アンゼリカは口元に笑みを浮かべてレーヴェを見つめた。
「話した通り、まずはサザ―ラント州の何処かにある特異点を探るのがよかろう。渡しておいたアレはちゃんと持っておるな?」
「はいっ!」
ローゼリアの確認の言葉に頷いたトワはローゼリアから授かった霊具を取り出した。
「”楔”の霊具…………特異点にこれを打ち込めば”場”を固定できるんでしたね。」
「そんでこっちのペンデュラムは特異点を特定してくれるんだよな?」
「うむ、霊力に反応する素材で作られた品物でな。”特異点”を探す標になるほか里と外界を繋ぐ”鍵”にもなる優れモノじゃ。まずは里の外れの転位石から”魔の森”に出るがよい。そこに設置された転位石の一つにかざす事で表の”大森林”に出られるはずじゃ。――――――其方たちの武運を祈っているぞ。」
「行ってきます!!」
そしてトワ達はローゼリアに見送られてエリンの里から旅立った――――――
後書き
という訳で期間限定ですが、レーヴェ、レン、エヴリーヌがⅦ組のゲストメンバーとしてⅦ組側の仲間になります。後既に予想できてる人達もいると思いますが原作閃4の第一部のストーリーとなる次話以降の話は、展開を大分すっ飛ばしますww何せ原作で各地で登場する第Ⅱ分校メンバーを登場させられませんので(汗)その為、恐らくですがⅠ0話以内か、もしくはそれ以下の話数で特異点を見つける話は終わると思います。なお黒の工房本拠地突入までのリィン達に関してですが………最後の特異点の話が終わったあたりで、外伝で登場、活躍してもらう予定です。なお、その外伝にはグラセスタ陣営も登場、活躍予定です(ニヤリ)
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