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尻フェチ

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第六章

「この娘は」
「水着や下着のグラビアも人気で」
「アイドルは絶対にグラビアになるよな」
「それもお仕事の一つだからね」
「もうそれは受け入れないとな」
 水着姿や下着姿を人前に晒すことはだ。
「当然として」
「そうよね、それでね」
「それで?」
「その娘お尻が評判らしいよ」
「そういえば形いいな」
「そうでしょ」
「言われて気付いたよ」
 こう妻に言うのだった。
「今な」
「そうなのね」
「ああ、けれどな」
「けれど?」
「若い時ならな」
 和馬は自分の過去を思い出しつつ語った。
「俺もそれでな」
「興奮したのね」
「お尻好きだからな」
 それでというのだ。
「そうだったけれどな」
「じゃあ今は」
「もうな」
「ないのね」
「ほぼな」
 乾いた目でテレビを観つつ述べた。
「そうなったな」
「あなたも変わったわね」
「変わったっていうかな」
「っていうか?」
「歳取ってな」
 あと少しで還暦という年齢になっている。
「もうな」
「そうしたことでなのね」
「枯れたからな」
「あなたもそうなるのね」
「四十五位まではな」
 まさにその時まではというのだ。
「どんどんだったのが」
「それがよね」
「枯れたな」
「あなたがそうなるとかね」
「そういう奥さんもな」
 和馬はキッチンで洗った食器を拭いている妻に言った。
「変わっただろ」
「私もなのね」
「ああ、そうだろ」
「そうね、もうそうしたことをしようって」
 その様にはとだ、夢子も答えた。
「思わなくなったわ」
「二十代三十代の頃と違ってな」
「それはね、けれどね」
「今はな」
「歳になって」
 とにかくこのことが大きかった。
「体力もないし」
「お互い大きな病気はしてないけれどな」
「そうね、けれどね」
「歳だからな」
 和馬は若い時よりかなりトーンが落ちた調子で言った。
「本当に」
「そうなるとね」
「本当にそんな気なくなるな」
「出ても滅多にで」
「ああ、それでな」
 ここで和馬は自分の身体と夢子の身体を見比べた、そうしてそのうえで今度はこんなことを言った。
「俺も奥さんも身体がな」
「くたびれてね」
「ああ、それでな」
 その為にというのだ。
「余計にそんな気がなくなるな」
「私のお尻だって」
 夢子はかつて夫が毎日見て来たその尻に手をやりつつ話した。
「お肉がついて垂れて」
「それ言うか」
「実際にでしょ、何ていうか」
「そうしたことで何がいい何処がいいとかな」
「そんなことを言えるのはね」
 それこそというのだ。
「若いうちよね」
「ああ、歳を取るとな」
「もうね」
「そんなこと言うとかな」
「ないわね」
「ああ、じゃあ今日はな」
 和馬は今度は眠そうに言った。
「飯も食ったしな」
「お風呂入ってよね」
「寝るか」
「私もそうするわ」
「歳取ると夜早く寝るっていうのも本当だな」
「何もすることなくなるからね」
「ああ、本当にな」
 こう言って和馬は風呂場に向かって風呂に入った、その後は妻と一緒にベッドに入ったがそのままぐっすりだった。
 そして次の日の夜に仕事から帰って今度はこんなことを言った。
「爺さんが衰えないって絶対に嘘だろ」
「そうよね」
「七十近くで子供作った人は本当に凄いな」
 テレビに今グラビアで活躍しているお尻の形のいい女の子を見つつ言った、もう和馬には若い時のあの情熱はなくかえってあの頃の自分を懐かしくも思った。あくまで尻に燃えていた自分自身のことを。


尻フェチ   完


                 2019・8・14 
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