女装男子×男装女子

「本当に」
「それならいいけれど」
「あと」
　ここでだ、そっとだった。
　千夏は勇気の手を握ってこう彼に囁いた。
「何かこのファッションをしていたら」
「どうしたのかな」
「私達もっとね」
　それこそというのだ。
「距離狭めていかない？」
「そうだね、じゃあね」
　勇気も千夏の言葉に頷いて述べた。
「僕も」
「そうしてくれる？」
「手をつなぐだけじゃなくて」
「キスもして」
　そうしたこともというのだ。
「後は」
「色々とね」
「やっていこうね」
「そうね、ただね」
「ただ？」
「いや、だからね」　
　ここでだ、千夏は顔を赤くさせてこんなことを言った。
「付き合っていたらキスから」
「ああ、そういうことだね」
　勇気は千夏が何を言いたいのかを察して頷いて述べた。
「あれだね」
「そう、あれとか」
「していいの？」
「そこまでは待って欲しいけれど。私が男装して」
「僕が女装してだね」
「するとしたら」
「それはね」
　どうかと言うのだった。
「何か凄い変かしら」
「倒錯かな」
「だからどっちが上になるかとか」
「また具体的に言うね」
「だってそういうのが大事なことでも」
「それで言うんだ」
「ええと、普通は私が下よね」
　千圧は顔を真っ赤にしてさらに具体的に言った。
「そうよね」
「正常なのはね」
「けれど今は勇気が女の子だから」
「僕が下？」
「そうした場合も多いっていうけれど」
「じゃあ後ろからの場合は」
「ええと、私が後ろからだけれど」
　後ろからは本来はというのだ。
「この服装だと」
「僕が女の子だから」
「男の子が女の子に後ろからって」
　それはというのだ。
「何かね」
「おかしいとか」
「そう思うし」
　それでというのだ。
「どうなのかしら」
「いや、だからね」
　勇気は顔を真っ赤にして言う千夏に返した。
「何でも女装男装なのかな」
「だって好きだから」
「好きって。じゃあ」
　勇気は千夏に引いた顔で言った。
「もうそれ趣味じゃない」
「だから趣味よ」
　千夏も否定せずに返す。
「私が男装してね」
「僕が女装することは」
「そのことはね」
　まさにというのだ。