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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第57話

~隠れ里エリン・ロゼのアトリエ~


「…………その零の御子――――――”キーア”さんですが、”零の御子”の事を知った皆さんなら恐らくご存知だと思いますが”零の御子”は”クロイス家”が作り上げた人造人間(ホムンクルス)なのですが…………目覚めた当初は記憶もなく、肉体年齢、精神年齢共に10歳児くらいの女の子だったのです。」
「じゅ、10歳の女の子!?”零の御子”ってそんなに幼い子供なんですか!?」
ローゼリアの疑問に答えたトマスの答えを聞いたアリサは驚きのあまり声を上げ
「ええ、そう聞いているわ。そして”零の御子”――――――”キーア”は”クロイス家”の手配によって、当時のクロスベル最大のマフィア――――――”ルバーチェ商会”が毎年行っていた競売会――――――”黒の競売会(シュバルツオークション)”の目玉品とすり替えられたそうなんだけど…………その時に招待客に扮して”黒の競売会”の潜入捜査を行っていた”特務支援課”が彼女を見つけた事で彼女を競売――――――人身売買させない為に彼女を連れての脱出行動を開始して、脱出の際に襲い掛かってきたルバーチェの構成員達を撃退しながらクロスベルに帰還し、帰還後は彼女を特務支援課で保護したそうなのよ。保護後のキーアは特務支援課の面々にすぐになついたし、特務支援課の面々もキーアとの仲を深めながら大切に育てていたそうだから、多分”キーアにとって特務支援課は家族”だったのじゃないかしら?」
「で、特務支援課――――――ロイドお兄さん達の元で育てられているキーアにとって”クロスベルは自分にとっての故郷”にもなったから、当然の如くクロスベルに住んでいる様々な人々とも仲良くなったわ。――――――ここまで知れば、”並行世界のキーア”が因果律を変えた理由も大体”察する”事ができるでしょう?」
「それは…………」
「間違いなく家族と故郷を守る為だろうな…………」
「ま、記憶がない10歳のガキなんだから、ギリアスの野郎や”黄昏”のせいで”特務支援課”とやらやクロスベルも巻き込まれるだろうから、連中や故郷を守る為に因果律を変える事にも躊躇いが無かったんだろうな。」
「最もその幼い判断によって、エレボニアは正しい歴史と比べて既に多くの犠牲者を出したと言っても過言ではないがな。」
アリサの言葉に答えたサラの後に説明を続けたレンの問いかけにラウラは答えを濁し、マキアスは複雑そうな表情で呟き、クロウは静かな表情で呟き、ユーシスは呆れた表情で呟いた。

「フフ…………盟主(グランドマスター)や私とアリアンロードを除いた”蛇の使徒”達が討たれた事、そしてアリアンロードの離反も間違いなく”並行世界の零の御子”によるものでしょうね…………覚醒した”零の御子”はある意味”神”に等しい存在だったから、結社が存在していたら今後も実行されるであろう”計画”や”実験”で特務支援課やクロスベルを巻き込んだかもしれないから、零の御子はエレボニア同様特務支援課やクロスベルに危害を加える存在である”結社”が滅ぶ因果律へと変えたかもしれないわね…………」
「姉さん…………」
寂しげな笑みを浮かべて呟いたクロチルダをエマは複雑そうな表情で見守り
「因果律を変えられた件で気になっていたが…………本来の歴史のレン皇女殿下は一体どんな立場だったのでしょうか?本来の歴史では異世界は繋がっていない為、当然レン皇女殿下もメンフィル帝国の皇女にはならないはずですが…………」
「レン?本来の歴史のレンは結社の”執行者”だったそうよ。執行者NoはⅩⅤで二つ名は”殲滅天使”でパテル=マテルの操縦者。しかも”本来の歴史のレンはリベールの異変を起こした結社の福音計画にも参加して、エステル達ともやり合ったそうよ。”」
「ハアッ!?」
「まさか本来の歴史のレン皇女殿下は結社の”執行者”だったとは…………それを考えると、レン皇女殿下もリィン君同様メンフィル帝国の存在によって相当本来の歴史を変えられたのでしょうね…………」
「こちらの執行者Noの”ⅩⅤ”は存在していないけど…………フフ、でも貴女が抱えている”闇”を考えると結社入りしてもおかしくはなかったのでしょうね。」
「ハハ、レン君がパテル=マテル君と一緒に敵に回るなんて考えただけでもゾッとする話だねぇ。」
「というか本来の歴史も二つ名が同じ事を考えると、”本来の歴史でも”相当あくどい事をしていたんだろうね。」
ミュラー少佐の疑問に対して小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えにその場にいる全員が血相を変えている中サラは驚きの声を上げ、トマスは複雑そうな表情で呟き、クロチルダは意味ありげな笑みを浮かべてレンを見つめ、オリヴァルト皇子は苦笑し、フィーはジト目でレンを見つめて指摘した。

「失礼ね~。ちなみに本来の歴史のレンは”お茶会”の件でレンと知り合った後にレンが執行者である事を知ったエステルがレンをヨシュア同様”表の世界”に戻す為に色々と頑張って、その結果”リベールの異変”から約2年後くらいにレンに”想い”をぶつけてその”想い”がレンにようやく届いた事で、レンがブライト家の養女になったそうよ。――――――うふふ、レン自身にとっても中々興味深い話だったわ♪」
「ア、アンタが”ブライト家”――――――カシウスさんの養女になったって本来の歴史のエステルは一体何をしたのよ…………」
「フフ、カシウス卿や殿下から話には聞いてはいましたが、相当な”器”の持ち主のようですね、カシウス卿のご息女は。」
「ハハ、リウイ陛下どころかセリカさんにも臆さないし、フェミリンスさんすらも説得したあのエステル君だから、レン君の件に関しても納得できるよ。」
レンの説明を聞いたアリサ達がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中サラはジト目でレンを見つめながら呟いた後疲れた表情で溜息を吐き、静かな笑みを浮かべるアルゼイド子爵の言葉にオリヴァルト皇子は苦笑しながら答えた。

「話を戻すけど別にキーアは何も”特務支援課とクロスベルの為だけに因果律を変えた事が全ての理由”だけじゃないと思うわよ。キーアの話だと、本来の歴史でのクロスベル占領後にリィン・シュバルツァーを含めた一部のⅦ組の人達も特務支援課と交流を深めた上当時ルーファス総督の謀によって特務支援課としての活動を行えなかったロイドお兄さん達の代わりに結社によるクロスベルでの新たな”実験”で現れた執行者達と戦ったって話だし、”黄昏”発動後はⅦ組と特務支援課が協力する事もあったそうよ。」
「前触れもなくサラリととんでもない話を何気なく話すなっつーの。」
「アハハ…………でも、今の話だとやっぱり特務支援課の人達はオリヴァルト殿下の話通り何らかの形でわたし達に協力してくれるかもしれないね。」
「というかその”特務支援課”がルーファスさんのせいで活動を行えなかったと言ったが、一体ルーファスさんは何をしたんだ…………?」
「…………あの兄上の事だ。間違いなく俺達にとっては許し難い所業をしていたのだろう。」
「ユーシス…………」
何気なく答えたレンの話にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中疲れた表情で呟いたクロウの言葉にトワは苦笑し、ガイウスの疑問に静かな表情で答えたユーシスをマキアスは複雑そうな表情で見つめた。

「それよりもレン皇女殿下は”黄昏”が発動してからⅦ組が”特務支援課”と協力――――――つまり、”黄昏が起こった後の話”も何気に口にしましたが…………もしかして、レン皇女殿下は零の御子から”本来の歴史で黄昏が起こった後の出来事”も聞いているのですか?」
「うふふ、察しがいいわね。――――――キーアの話だと、”黄昏”発動後Ⅶ組のみんなはさっきの皇太子の話のようにリィンお兄さんを奪還する為に行動を開始して、”黒の工房”の本拠地を突き止めてリィンお兄さんを奪還して、その後リィンお兄さんと共に”黄昏”が起こった後の世界を何とかする為に活動するのだけど…………決戦――――――要するに鉄血宰相との戦いの後の歴史の流れが非常に不安定だったらしくてね。最終的にリィン・シュバルツァー、クロウ・アームブラスト、そして鋼の聖女が消える寸前に放った鋼の聖女に残された力のお陰で”根源たる虚無の剣”に宿っていた意識が”幽体”という形で具現化できたミリアム・オライオンが犠牲になる流れがかなりの高確率であったそうよ。」
「何ですって!?」
「リ、リィンにクロウ、それにミリアムが最後には犠牲になるって…………!」
「それにリアンヌが消える――――――”死ぬ”とは、一体正しい歴史ではリアンヌの身に何があったのじゃ!?」
アンゼリカの指摘に感心した後に答えたレンの答えにその場にいる全員が血相を変えている中サラは厳しい表情で声を上げ、エリオットは悲痛そうな表情をし、ローゼリアは厳しい表情で訊ねた。

「詳しい経緯は長くなるから省略するけど、リィンお兄さんとCがそれぞれの騎神を操縦してアリアンロードが操縦する騎神――――――”アルグレオン”と戦って、激闘の末リィンお兄さんとCが勝利してリィンお兄さん達の説得でアリアンロードがリィンお兄さん達の仲間になりかけたのだけど、そこに”金の騎神”を操縦するルーファス・アルバレアが”精霊の道”による転位でアルグレオンの背後から”不意打ち”をして(ケルン)の中にいたアリアンロードにアルグレオンごと”止め”を刺したそうよ。」
「なっ!?ルーファスさんが!?」
「しかも”本来の歴史”ではルーファスさんが”金の騎神”の”起動者(ライザー)”だったなんて…………!?」
「”本来の歴史”ではそこまで”堕ちて”いたのですか、兄上は…………ッ!」
レンの説明によって驚愕の事実を知ったマキアスとエマは驚きの声を上げ、ユーシスは怒りの表情で声を上げた。
「という事はどの道、リアンヌが消える事は変わらなかったのか…………いや、リアンヌの記憶が残っていると思われる今のリアンヌが存在しているだけ、この世界の方がまだマシかもしれぬの…………」
「ロゼ…………」
疲れた表情で肩を落としたローゼリアをセリーヌは心配そうな表情で見守っていた。

「そのルーファス・アルバレアの件だけど、メンフィル・クロスベル連合が”焦土作戦”を受けたバリアハートを占領した際に、前アルバレア公爵の執事を務めていた人物から驚愕の事実を教えてもらったから、ルーファス・アルバレアの鉄血の子供達(アイアンブリード)入りはそのあたりが関係しているとレン達は推測しているわ。」
「兄上の…………アルノーは兄上の事について一体何を知っていたのでしょうか?」
レンの説明内容が気になったユーシスは複雑そうな表情でレンに訊ね
「ユーシスお兄さんも知っての通り、ルーファス・アルバレアは前アルバレア公とその正妻の間に生まれた”尊き血”を引くアルバレア公爵家の長男だったけど…………実はそれは真っ赤な嘘で、”ルーファス・アルバレアは前アルバレア公――――――ヘルムート・アルバレアの息子ではないのよ。”」
「え…………」
「ル、”ルーファスさんがアルバレア公の息子じゃない”って…………!それじゃあルーファスさんは一体誰の子供なんですか!?」
レンが口にした驚愕の事実にその場にいる全員が血相を変えている中ユーシスは驚きのあまり呆けた声を出し、マキアスは信じられない表情で訊ねた。

「ヘルムートの正妻とヘルムートが追放したヘルムートの弟――――――ユーシスお兄さんにとっては”叔父”に当たる人物との不義密通の末生まれた子――――――それがルーファス・アルバレアよ。」
「な――――――」
「まさかあのルーファス卿がそのような生まれだったとは…………」
「…………アルバレア公はルーファス卿が自身の子供でない事はご存知だったのですか?」
レンの答えを聞いたオリヴァルト皇子は驚きのあまり絶句し、ミュラー少佐は複雑そうな表情で呟き、アルゼイド子爵は真剣な表情で訊ねた。
「ええ。そして”ヘルムート・アルバレアはルーファス・アルバレアが実子でない事を知っているにも拘わらずアルバレア公爵家の実子”としたそうなのよ。」
「ハ…………?何でアルバレア公は自分の妻の不倫によって生まれた不倫相手の子供を自分の子供として認知したのよ?」
「それについてはあのアルバレア公らしい馬鹿馬鹿しい理由よ。――――――”家の名誉の為、そして何よりも平民の血が流れている実子であるユーシス・アルバレアを長男にしたくなかったから”との事よ。」
「…………ッ!」
「そんな…………そんなことの為だけにアルバレア公爵はルーファスさんを自分の長男として認知して、ユーシスさんに対して冷たい態度を取っていたんですか…………!?」
「そこまで…………そこまでしてアルバレア公は”庶子”であるユーシスに対して冷遇するなんて、四大名門や貴族以前に”人として”間違っている…………!」
セリーヌの疑問に呆れた表情で答えたレンの答えにユーシスが辛そうな表情で唇を噛み締めている中エマとラウラは怒りの表情で答えた。

「ちなみにこれは余談だけど、バリアハート占領の際の調査でルーファス・アルバレアが過去猟兵団を雇った事実が判明したわ。――――――雇った猟兵団の名は”アルンガルム”といえば”C”やⅦ組のみんなはわかるでしょう?」
「何ですって!?」
「ア、”アルンガルム”って確か…………」
「…………”鉄血宰相”と敵対する勢力による依頼で”鉄血宰相”を脅迫しようとした結果、猟兵団が全滅させられた帝国解放戦線幹部V(ヴァルカン)が団長をしていた猟兵団だね。」
「…………まさかルーファスが”V”の件に関する首謀者だったとはな。だが、何でルーファスは猟兵団をギリアスの野郎に差し向けたにも関わらず、”子供達”――――――それも”筆頭”になったんだ?」
レンが口にした意外な事実を聞いたサラは厳しい表情で声を上げ、エリオットは不安そうな表情で”V”の過去を知った時のかつての出来事を思い返し、フィーは真剣な表情で呟き、厳しい表情で呟いたクロウはレンに訊ねた。

「さあ?みんなも知っての通り、ルーファス・アルバレアはクロスベルの迎撃戦でリィンお兄さん達に討たれて既に”戦死”してまさに言葉通り”死人に口なし”だから真相は闇へと葬られたわ。ルーファス・アルバレアについての”真相”を知っているのはルーファス・アルバレア本人か、もしくは”鉄血宰相”なら知っているかもしれないわね。」
「…………アルバレア公爵家にとって…………そして自分にとっても貴重な話を聞かせて頂いたこと、心より感謝いたします、レン皇女殿下。」
「ユーシス…………」
クロウの疑問に対して興味なさげな様子でレンが答えると複雑そうな表情を浮かべていたユーシスは表情を引き締めてレンを見つめて頭を深く下げた感謝の言葉を述べ、ユーシスの様子をガイウスは心配そうな表情で見守っていた。
「ああ、そういえばそのルーファス・アルバレアの件でユーシスお兄さんに渡す物があったのを忘れていたのを思い出したから今それを渡すわ。」
「兄上の件でレン皇女殿下が自分にですか………?」
その時ある事を思い出したレンの言葉を聞いたユーシスが眉を顰めるとレンは指を鳴らして異空間から一本の剣を取り出した。

「い、異空間収納の魔術…………!それも無詠唱で発動させるなんて…………!?」
「フフ、”殲滅天使”はあらゆる”才”に長けている話は知っているけど、まさか魔術の”才”にも長けていたとはね。」
レンが使った魔術にエマは驚き、クロチルダは興味ありげな様子でレンを見つめていた。
「その剣は確かルーファス卿の得物であった…………」
「名前は確か”聖剣イシュナード”だったかしら?何でもアルバレア公爵家に伝わる兄弟剣の片割れだそうだわよね?」
「え、ええ。ですが何故その剣をレン皇女殿下が…………?クロスベルの迎撃戦で兄上が戦死した際に、メンフィル・クロスベル連合によって回収されてしまったものだと思っていたのですが…………」
レンが取り出して宙に浮かせた剣に見覚えがあったラウラが目を丸くしている中、レンはユーシスに確認し、確認されたユーシスは困惑の表情で答えた。

「エリゼお姉さんから、レンがユーシスお兄さんに会う事があればその剣をユーシスお兄さんに返してあげて欲しいって頼まれていたのよ。ま、要するに”形見分け”ね。」
「ええっ!?エリゼさんが!?」
「何故エリゼ君がルーファス卿の剣をユーシス君に返すように手配したんですか?内戦や今回の戦争の件を考えると、エリゼ君はエレボニア帝国にもそうですが、アルバレア公爵家に対しても相当な怒りを抱いていると思われるのですが…………」
レンが答えた意外な答えにアリサは驚き、アンゼリカは不思議そうな表情で訊ねた。
「確かにエリゼお姉さんは内戦の件でアルバレア公爵家に対しても相当な”怒り”を抱いているけど、内戦の件とは無関係で貴族連合軍と敵対してリィンお兄さんと一緒に”紅き翼”の一員として活動していたユーシスお兄さん個人に対してまで怒りを抱く事は”理不尽”だと判断するくらいの理性はあるし、ましてやユーシスお兄さんはエリゼお姉さんにとって大切なリィンお兄さんのクラスメイトだった上、今回の戦争でシュバルツァー家がアルバレア公爵家の”全て”を奪う事になるのだから、ユーシスお兄さんにとっては大切な兄だったルーファス・アルバレアが使っていた代々アルバレア公爵家に伝わる家宝の剣を”形見”として返してあげるくらいの良心はあるわよ。」
「ハハ…………今回の戦争でも内戦に続いて早速エリゼ君にお世話になってしまっていたとはね…………改めてシュバルツァー家に対して私達アルノール家は一生頭が上がらない事を思い知ったよ…………」
「それよりもその口ぶりだともしかして、エリゼはリィンが将来メンフィルで滅茶苦茶出世する事が内定している事も知っているの?」
レンの答えを聞いたオリヴァルト皇子は疲れた表情で溜息を吐き、フィーは真剣な表情でレンに訊ねた。

「当たり前じゃない。エリゼお姉さんはリフィアお姉様の”秘書”も務めているのだから、当然メンフィル帝国政府の最新情報にも詳しいわよ。」
「………やはり今回の件が終われば、メンフィル帝国政府の動きに詳しい協力者を作る為にも何としてもリィン君にエリゼ君とのパイプを築く協力を頼むべきですね。」
「ハア…………ただでさえシスコンのリィンがエリゼを利用する事に対して良い顔をしないでしょうに、あんまりにもしつこいと、冗談抜きでリィンに”斬られる”かもしれませんから、あたしは止めといた方がいいと思いますよ。」
フィーの疑問を肯定したレンの説明を聞いて新たな決意をしたトマスの言葉にその場にいる全員が冷や汗をかいて脱力している中サラは呆れた表情で指摘した。
「クスクス、そもそも七耀教会――――――というか宗教が国の政治に関わる事を嫌うメンフィル帝国政府の方針を知っているエリゼお姉さんが七耀教会の協力者にはならないと思うけどね。」
「ハハ…………薄々察してはいましたがやはりメンフィル帝国政府はエレボニア帝国政府同様七耀教会(私達)のような宗教が国の政治に関わる事は嫌っている事で七耀教会とは距離を取った関係を保っているのですか…………やれやれ、クロスベル帝国政府も七耀教会とは距離を取った関係にする方針のようですし、今後のゼムリア大陸での七耀教会の国際的立場が低くなってしまう可能性が高い事を考えると七耀教会所属の者としては色々と複雑ですね…………」
小悪魔な笑みを浮かべたレンの指摘を聞いたトマスは苦笑した後疲れた表情で肩を落とした。そしてレンが再び指を鳴らすと剣はユーシスの目の前へと移動した。
「ま、そういう事だからその剣は遠慮なく受け取っていいわよ。」
「…………メンフィル帝国とレン皇女殿下、そしてエリゼの寛大なお心遣いに心より感謝いたします。」
レンの許可を聞いたユーシスはレンを見つめて頭を下げて感謝の言葉を述べた後目の前に浮いている鞘に収められている剣を取って、元々自分の得物である騎士剣の傍に装備した。

「後もう一本のアルバレア公爵家の家宝の剣――――――確か”聖剣エルヴァース”だったかしら?その剣も返すつもりだけど、もしユーシスお兄さんさえよければⅦ組の今後の方針に関係なくウィルお兄さんにその聖剣を預けて、それをウィルお兄さんが強化・改造してもらった後にユーシスお兄さんに返してあげてもいいわよ?」
「…………せっかくのレン皇女殿下のご厚意との事ですから、その提案もありがたく受けさせて頂きます。”エルヴァース”の件に関してはレン皇女殿下の提案通りでお願いします。」
レンに提案されたユーシスは少しの間考え込んだ後レンに頭を下げてレンの提案に乗る事を決めた事を答えた。
「それにしてもアルバレア公の執事を務めていた人…………確かアルノーさんだったか。アルノーさんはどうしてメンフィル・クロスベル連合にアルバレア公爵家のスキャンダル同然の事実をメンフィル・クロスベル連合に教えたんでしょうか?」
「理由はユーシスお兄さんをメンフィルの処罰対象から外してもらう為だそうよ。――――――今回の戦争はアルバレア公爵家の当主であるヘルムート・アルバレアが”元凶”の一人なのだから、前アルバレア公自身もそうだけど公爵家自体にも責任が求められると危惧した執事がせめて、ユーシスお兄さんまで処罰の対象にならないように自分から色々と話してくれたそうよ。」
「…………ッ!アルノー…………ッ!」
ある事が気になっていたマキアスの疑問に答えたレンの説明を聞いたユーシスは辛そうな表情を浮かべてある人物を思い浮かべた。

「…………色々と気になる事が判明したとはいえ、今はこれからの事を考えましょう。皆さん、今のレン皇女殿下の話は皆さんにとっても”朗報”となる情報があった事に気づきましたか?」
「今の話の中に我らにとって”朗報”となる情報、ですか………?それは一体どれの事を示しているのでしょうか?」
「多分…………ううん、間違いなく”剣”になってしまったミリアムちゃんの意識がまだ”剣”に残っているという事だよ。」
トマスの言葉にラウラが不思議そうな表情をしている中、トワが真剣な表情でその疑問に答え
「あ…………っ!」
「”聖獣”が消滅し、”黄昏”が発動した後”剣”になってしまったミリアム君も皇太子殿下を乗せた紅の騎神(テスタ=ロッサ)と共に転位で消えたから、恐らく”剣”になってしまったミリアム君も皇太子殿下同様黒の工房の本拠地のどこかに保管されている可能性は高いだろうね。」
「はい…………!そして本来の歴史でもミリアムちゃんの意識が”剣”に残されていた事を考えると、今の私達の世界の”根源たる虚無の剣”にもミリアムちゃんの意識が残されている可能性は十分にありえます…………!そしてそのミリアムちゃんの意識を何らかの方法で呼び出して、”劫焔”から頂いた”神なる(カクヅチ)”を何らかの方法で利用すればミリアムちゃんを蘇生させられるかもしれません…………!」
「フン、元々皇太子殿下の奪還の為に黒の工房の本拠地を探す予定だったのだから、俺達にとって一石二鳥の事実だ。皇太子殿下共々奪還してくれる…………!」
トワの言葉を聞いてある事に気づいたⅦ組の面々がそれぞれ血相を変えている中アリサは声を上げ、アンゼリカとエマは明るい表情で答え、ユーシスは闘志を高めて答えた。

「うふふ、”サービス”として更にいい事を教えてあげる。――――――本来の歴史での黒の工房の本拠地には白兎(ホワイトラビット)のスペアボディ――――――要するに白兎(ホワイトラビット)そっくりそのままの肉体があったそうだから、それを考えるとこっちの世界の黒の工房の本拠地にも白兎(ホワイトラビット)の肉体があるかもしれないから、もしそれがあれば”白兎(ホワイトラビット)”の蘇生に役立つかもしれないわよ?」
「ミリアムそのものの肉体まで黒の工房の本拠地に…………」
「フフ、白兎(ホワイトラビット)そのものの肉体もあれば、白兎(ホワイトラビット)の魂を肉体に宿らせたことによって起こるかもしれない拒絶反応も起こらない可能性が高いでしょうね。」
「…………黒の工房の本拠地を見つける理由が二つも増えたんだから、絶対に見つけないとね。」
レンが口にした新たなる朗報にガイウスは目を丸くし、クロチルダは静かな笑みを浮かべてアリサ達に情報を伝え、フィーは決意の表情で呟いた。
「…………ヌシにしては随分と気前がいいの、小娘。そのようなⅦ組(エマ達)にとっての重要な朗報、エマ達に対して更に有利な交渉をする為の交渉材料にできたのではないか?」
一方ローゼリアはレンの意図がわからず、真剣な表情でレンに訊ねた。

「うふふ、その方がⅦ組が皇太子奪還の為の意欲が強まるから、レン達メンフィル・クロスベル連合にとっても都合がいいからよ♪」
「ハハ…………理由はどうあれ、Ⅶ組(彼ら)にとって朗報となる情報を教えてくれた事には素直に感謝しておくよ。――――――それよりも並行世界のキーア君による歴史改変の話を聞いた時からずっと気になっていたが、並行世界のキーア君はメンフィル――――――いや、ディル=リフィーナの英傑達ならば宰相殿達相手に確実に勝利できる上、”黄昏”の件も解決できると判断したからゼムリア大陸とディル=リフィーナを繋げる”因果”にしたのかい?」
レンの答えに苦笑したオリヴァルト皇子は表情を引き締めてレンに訊ね
「ええ。結社、黒の工房、そしてゼムリア大陸最大の軍事国家エレボニア帝国を纏めて圧倒できるレスペレントを制した闇夜の眷属の英雄王――――――”闇王”リウイ・マーシルンが建国したメンフィル帝国が持つ”力”、結社や黒の工房を超える技術があり、”覇道”を歩むメンフィルとは全く逆の方法である”王道”で人間に限らず多くの種族との”共存”を目指す”匠王”ウィルフレド・ディオンを始めとしたユイドラの”工匠”達の技術力、”激動の時代”に巻き込まれたクロスベルが”激動の時代”を乗り越えられるようにクロスベルを導いてくれる存在になってくれる”王”――――――”メルキア中興の祖”と称えられた”簒奪王”ヴァイスハイト・フィズ・メルキア―ナとその好敵手にして親友たるヴァイスハイトと並ぶもう一人の”覇王”である”暴王”ギュランドロス・ヴァスガンと二人の”覇王”を支えた仲間達、そして――――――”巨イナル黄昏を確実に滅ぼせる存在”たるセリカ・シルフィルとその仲間達が存在する世界であるディル=リフィーナをゼムリア大陸と繋げた理由よ。」
「”巨イナル黄昏を確実に滅ぼせる存在”ですって!?一体何者なのよ、その”嵐の剣神”は…………?」
「今までの話の流れからしてその”セリカ・シルフィル”とやらは神や魔王と並ぶ”超越者”の類である事には気づいておったが…………その”セリカ・シルフィル”とやらもまさか”神”か”魔王”の類なのか?」
レンの説明を聞いたその場にいる全員が血相を変えている中クロチルダは信じられない表情で声を上げ、ローゼリアは真剣な表情でレンに訊ねた。

「クスクス、セリカお兄さんはむしろその”神をも超えた存在”よ?」
「か、”神をも超えた存在”…………?」
「!まさかそのセリカさんという方は…………!」
小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンが口にした言葉にエリオットが不安そうな表情をしている中、察しがついたエマは真剣な表情を浮かべた。
「ゼムリア大陸では”嵐の剣神”なんて異名がついているセリカお兄さんだけど、ディル=リフィーナではこの異名を世界中に轟かせているわ――――――”神殺し”という異名――――――いえ、”忌み名”をね。」
「か、”神殺し”っ!?」
「い、異名からしてとんでもなく物騒な異名だが…………」
「そのセリカって人はその異名通り、”神を殺した存在”なの?」
レンが口にした驚愕の事実に周囲の人物達が驚いている中アリサは思わず声を上げ、マキアスは不安そうな表情をし、フィーは真剣な表情で訊ねた。そしてレンは”神殺し”の一般的な説明をした―――――― 
 

 
後書き

今回の話の最後でレンがセリカの事についての話をする時は実際のゲーム画面でセリカのシルエットが写ってBGMはZEROのOP”約束の剣”もしくは天秤のOP”La erteno”のどちらかが流れてそこでレンによるセリカについての説明がされると思ってください♪

来年はついに新しい軌跡の作品が出ますね!それにしても軌跡シリーズ最新作の発表と共にあれだけ謎にしていた盟主の顔バレをするとかあまりにも斬新過ぎる展開だwwファルコムの公式サイト移動して創の軌跡のタイトル見た瞬間吹きましたwwプレイアブルキャラも閃4を遥かに超える人数との事ですから、ホントどんな内容なのか楽しみですねwまさか盟主を最新作発表と共に登場させたのは盟主をプレイアブルキャラとして操作できる伏線…………はさすがにないと思いたいwwそれにしてもプレイアブルキャラが50人以上だったら、空、零・碧、閃の全プレイアブルキャラを含めても全然足りない気が…………新プレイアブルキャラは一体何人になるのやら(汗)
 
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