戦国異伝供書
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第六十六話 婚姻と元服その八
「ここまで果報者はそうはおらぬであろう」
「その中に私もですか」
「入っておる、その果報に報いる為にも」
築山に笑って話すのだった。
「これから今川家の為に励もう、領地の政もな」
「岡崎のことも」
「しかと治めてな」
そうしてというのだ。
「豊かな国にしたい」
「そうされるのですか」
「元服前から政はしておるが」
「これからは、ですか」
「本腰を入れてな」
「これまで以上にですか」
「治めていきたい、家臣達に任せるだけでなく」
元服したからにはというのだ。
「しかとな」
「政をですか」
「していきたい」
「では駿府と岡崎をですか」
「行き来することにもなる」
「お忙しくなりますね」
「これからはな。だがその間常にな」
築山に微笑み話すのだった。
「そなたと共にな」
「いてくれますか」
「そのつもりじゃ、岡崎に行く時もついてきてくれるな」
「是非」
築山も微笑んだ、そのうえでの返事だった。
「そうさせて頂きます」
「それではな」
「これから宜しくお願いします」
「頼むぞ」
元康は夫婦での暮らしもはじめた、元服してからの彼は多忙で駿府で今川家の政に若いながらも重臣の一人として加わり岡崎に行った時はそちらの政に励んだ。そうして義元から直々にこんなことも言われた。
「この度尾張の織田家が三河に入ろうとしておる」
「だからですな」
「それを退ける為にな」
是非にというのだ。
「出陣するが」
「それがしもですな」
「そなたは三河者達を率いてでおじゃる」
そのうえでとだ、義元は元康に話した。
「先陣を務めてもらうでおじゃる」
「初陣で先陣ですか」
「お主なら出来るとでおじゃる」
「見て下さってですか」
「決めたでおじゃる」
「後ろには拙僧がおる」
雪斎も言ってきた。
「だからな」
「後ろは気にせずですか」
「思う存分戦うといい」
「さすれば」
「そなたの采配見せてもらう」
こう言うのだった。
「よいな」
「それでは」
「それでじゃが」
義元は元康に微笑んで話した。
「そなたの具足じゃが」
「それは」
「松平家の主代々のがあろう」
「あの具足ですか」
「黄色のあれじゃ」
「あれを着てもよいのですか」
「そなたは松平家の主じゃ」
だからだというのだ。
「それならでおじゃる」
「あの具足を着てですか」
「出陣するのは当然でおじゃる」
そうだというのだ。
「そして陣羽織も」
「そちらもですか」
「黄色い松平家のものを羽織ってじゃ」
そのうえでというのだ。
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