テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―
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第二十二話
「――まさか、あなたがディセンダーだったなんて…」
――前回のセルシウスの言葉から、僕達は取り敢えず、仲間になる事になったセルシウスとリヒターさんを連れ、バンエルティア号に戻ってきた。
今目の前には、話を聞いたアンジュが驚いた表情でメリアを見ていた。
まぁ、それはそうか……今まで『伝説』と言われてた存在のディセンダーが、今まで自分達と一緒にいたのだから。
「……どうか……した……?」
「ご、ごめんなさい、何というか…、あまりにも驚いてしまって上手く言葉が出て来ないの…」
「……ですが、今思い返せば、彼女がディセンダーだと考えられる点は確かにありましたね。あなた方に聞いた民間人の生物変化、そして私達が見た暁の従者の生物変化…。そのどちらも、元に戻したのは確かに彼女でしたからね」
驚いたままのアンジュに、少し考えるような仕草をした後、そうジェイドが口を開いた。
因みに今居るのはホールの方で現在、彼女がディセンダーだと聞いて殆どのメンバーが此処に集まっている。
「彼女がディセンダーである事は分かりましたが……しかし、問題は彼の方ですね」
ジェイドのその一言で、周りから一斉に視線が僕に移った。
「『イレギュラー』……ディセンダーのような伝説や、ただの噂にしても、聞いた事が無いわ」
「私もはっきり言えば、『イレギュラー』については詳しくは知らないの。……ただ、何らかの原因によって、このルミナシアとは全く別の世界から呼び込まれた存在……と、私は世界樹から聞いているわ」
セルシウスの言葉に、その場にいる全員が、驚いたり、考える仕草を見せたりと様々な反応を見せた。
「『このルミナシアとは全く別の世界』……?それって一体……」
「そうね……。……それは、彼から直に聞いた方が早いんじゃないかしら?」
そう言って、視線をアンジュから僕へと移すセルシウス。流石は世界樹にまつわる精霊。案の定、気付かれてるようだった。このバンエルティア号で一応、僕の正体の事を知っているハロルドとリタの方に視線を向けると、『頑張ってね』と言わんばかりの表情である。
うん、心折れそう。
「……あの、さ…。信じてもらえるとは思ってないけど……今から話すことは、実際僕に起こった事だから……聞いて欲しいんだ」
僕は小さく一度深呼吸すると、皆の方を向いてそう、口を開いた。
―――――――――――――
「――……そう、だったの……」
僕が以前、ハロルドとリタに説明したように、僕には元々記憶があった事、何らかの原因でこの世界に来てしまった事等、自分が事故にあった事以外や元の世界のこの世界と特に差し障りの無い部分を話した後、暫く沈黙が続き、アンジュがそう口を開いた。
「…しかし…『別世界』か…。俄には信じられないな」
「ま、普通ならそうでしょうね。でも、衛司が言ってる事は確かに事実よ。私とリタは一度、衛司のドクメントを見せてもらってるからね――」
徐々に皆が口を開いていくなか、キールの言葉にハロルドがそう言って、僕のドクメントの事を説明していく。
一応、話していく中で僕のドクメントの状態等については誤魔化してくれたようだが。
「――……なる程、ね……改めてドクメントって凄いわね…」
「――ですが、それが本当なら、衛司様が海で見つかった訳も分かりますね」
「うん……今まで皆を騙してて……本当にごめん……っ!!」
ハロルド達の説明を聞いて、皆が納得したのを見ると僕は皆に向かい深々と頭を下げてそう言う。
何はどうあれ、僕が皆に記憶の有無について騙していたのは変わりない。
……ただ、このまま頭を上げるのが恐い。
別に嘘をついていた事については怒られても仕方ないと思っている。
だけど僕にとって恐い事は……『皆から拒絶される事』。
『ディセンダー』として知られているメリアは確かに、少しぐらいは皆からの見方は変わると思うけど……果たして、『イレギュラー』と呼ばれる僕はどうだろうか……?
『世界樹を守護する存在』として知られる『ディセンダー』と違い……僕は言わば『異物』、『正体不明』の『イレギュラー』と呼ばれる存在だ。
『異物』である僕は、一体皆にどう見られてしまうのか……。
そして、それを今まで一緒に戦ったり、過ごしてきた人達から見られ、拒絶される恐怖。
――恐い。恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い――……。
自分が生み出した『負』の感情に、ただ追い込まれ、頭を上げられずにいる……――その時だった。
―――ガツンッ!!
「――ぬごぅっっ!!?」
――突如、下げたままの後頭部に何かが当たった音と強力な激痛が入り思わずそんな声を上げて後頭部を抑えて転げ回る。
痛みが走る頭を抑えながら見ると、そこには先程の激痛の正体であろうロッドを手に持って僕を睨むように見るロッタが立っていた。
「ロッタ…?一体なにを……――」
「――アンタ、バッカじゃないのっ!?」
僕が口を開くと、ロッタはキッと目を変えそう、声を上げた。
その勢いに、思わず僕は言葉が止まる。
「アンタ……どうせ自分は『居たらいけない存在』だから居たらいけないとか、皆から拒絶される、とか思ってたんでしょ……?」
「ッ……それは……」
「ふざけてんじゃないわよっ!!この船の、誰が、アンタを『いらない』なんて思うのよっ!?」
「――その通りだよ、衛司」
……ロッタの言葉に続いて、その近くいたクレス師匠が口を開く。
「…ロッタの言うとおり、僕達は衛司を――『拒絶』なんかしない」
「――話はよく分かんないけど…衛司には無かった記憶があったって事だろ?なら、いいじゃないか!嬉しい事なんだろ?」
「――アンタ……本当に話分かってないのね…」
そしてクレス師匠を皮切り、それに続いて今度はスタン師匠とルーティが……
「まぁ、ロッタやクレスの言うとおりだ。どうして、『仲間』のお前を俺達が拒絶なんてすんだよ?」
――ユーリが……
「僕もよく分からないけど……衛司がいなくなったりしたら、寂しいよ」
――エミルが……
「そうそう……それに、今までの船の宿賃、まだまだ払ってもらわないと足りてないのよ?」
――アンジュが……
「よくわからねぇが…兄弟《ブラザー》は俺のブラザーだ。変わりはしねぇよ!」
――ヴォイトが……
「……衛司……居なくなったりしたら……嫌……」
――メリアが……
「そうだよ、衛司…。衛司は確かに、『イレギュラー』…此処に居ない筈の存在かもしれないけど……衛司は衛司だよ!私達が今まで一緒に過ごして、一緒に依頼をこなしてきた『仲間』の衛司だよ!だから……衛司が居なくなるのも嫌だし…私達は絶対に衛司を嫌いになんかならないよっ!!」
――そしてカノンノが……皆が……。
そう言って、僕を引き止めてくれた。
「ッ……皆……どう、して……ッ…」
皆の言葉に、少しずつ自分の声が震えているのを感じながら、そう、言葉を出す。
どうして皆……僕を拒絶しないのか……嬉しい…だけど不安で、そう言ってしまった。
そんな僕に対し、皆を代表するようにカノンノが僕の前に出る。
「――そんなの決まってるよ。衛司はちゃんとした一人の人間で、私達の大事な一人の『仲間』で……私達の大切な『存在』だから…私達は絶対に、拒絶なんてしないもの」
「――……ッ……みん…な…っ…!!」
そう、カノンノの言葉に…皆の笑顔に……僕は壊れたように、涙が零れ出す。
そうなんだ……僕は……『此処』に居て……いいんだ…っ!
「…ぅ…っ……みん、な……あり、がとう…っ!!」
皆の優しさや言葉にただ僕は…泣くことと、そう言葉を出す事しか出来なかった。
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