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妖精のサイヤ人

作者:貝殻
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第四話:圧倒的!雷を操る魔道士の桁違いなパワー!

 
前書き
皆さんお久しぶりです。お忘れになっていると思いますが貝殻です。もう投稿始めたり、リメイクしてこの1年…いい加減投稿を早めないといけないと思いながらもなかなか上がらないことが申し訳ないです。
…いや、ホントよ?本当に反省しているのよ?
それはそうと、来年の1月にドラゴンボールZKAKAROTが発売しますね…Zのストーリーを振り返りながら遊びたいです。そういえば私個人的に気になっているのですが、悟空たちサイヤ人が超サイヤ人に変身するときって、初代ゼノバースと同じ必殺技で変身するのか気になりますね。
戦闘中に超サイヤ人、1、2、3順で変身するのが好きなプレイヤーとしてすっごく気になっているところです。
もう一つ気になっているのはDLC、ですね。Zの劇場版ストーリーになるとか…願望だコレ(白目)
まぁ、どっちにせよKAKAROTのバトルクオリティが好きですし、他のキャラクターとの関わりも気になるし…楽しみな要素がいっぱいありますので早く発売日になってほしいです。

…なんか長々になったけど、第四話、どうぞ。


…今回の話、タイトルと違いすぎますけど気にしないでくださいね(ボソッ)
 

 
サイヤ人の肉体は弱いわけではない。最初自体弱かったとしても鍛錬を続けて、限界を超えればすぐに化ける。
当然強くなるのに必要な順調というものがあるのだろう。
ただサイヤ人達の惑星で鍛えられたわけでもなく、彼らの日常風景の描写が多くなかったから知らないが…それでもドラゴンボールの物語を強くなる知った方法ならいくつか覚えている。
オレがまず始めたのは体作りと(魔力)を専念して、次には瀕死によるパワーアップ。
前世で本来ならありえない出来事をできるようになっていきながら、オレは興奮と同時に不気味さを感じた。
何を不気味に思ったのか、それは前世で異能と思っていた力を使っていたこと、そして何度も傷ついても尚やめようとしなかった自分自身。
人間は生まれ変わって、それも前世の記憶を持ったままだから早々価値観が変わるわけではない。それでも、こうなることを覚悟していたし、何よりもオレ自身が求めていた現象だ。慣れるのに時間がかからなかった。
ただ、昔の俺ならきっと途中で投げ出していたことを、今のオレが行っているという時点に俺だった精神が変化し、今のオレという精神が継続しているというのに一番の不気味だった。まるで、前の俺はもうオレじゃないと言っているようで。
それなのに、何故こんなに早く慣れたかは疑問だが…いや色々疑問を持つが、何もわからない事だらけの今では考えても仕方ない。
考えるべきなのは今知っている方法で強くなること。疑問のことは旅に出てから考えていいだろう。
そうして修業を続けて、うろ覚えでありながらも記憶に残っている技を覚えていくうちに…ある技に一旦立ち止まったことがある。
今のオレの戦闘力じゃ下手な魔物と闘っても返り討ちになることが多い。いざってときにも姉さんに助けられるなんて都合のいいことを続くとも思えないのなら、”あの技”を覚えたほうが良いと思って、習得しようとしたが、うまくいくことはなかった。
その技の習得に必要なのは気によるコントロールが必要不可欠だ。だからこそ気による感知や舞空術を覚えてその技の特徴である赤いオーラを思い浮かべながら練習したが、どれも失敗したりするし、筋肉痛が多くなっていった。
まぁ、こういう感じでまだまだあの技の習得はできない。ならオレが次に取れる手段はなんなのか。
それは、オレの腰に生えているこの”サイヤ人の尻尾”に頼ることになるってわけだ。
尻尾を持つサイヤ人が満月を観たときに変化する姿―――大猿の制御して10倍の戦闘力の世界を感じること。
強引手段であり、危険な修行だが…オレよりも100倍強い姉さんに手伝ってもらいながらこの修業に入ることができた――――姉さんに毎回気絶させられながら。本当姉さん何者?
尚、この修業は満月が出る月に一度にしかできなかったから夜の時間はとても貴重だった。

ちなみにこの修業は、オレが旅に出る前の1年前の話である。

★★★★★★★



金髪の少年改め、ラクサス・ドレアー目の前で振り下ろされていく木刀の前に冷静に対処するように、自身の体に魔力を纏うことで雷と一体化し、木刀を持つ対戦相手の攻撃を回避した。
木刀の選手は自身の先手攻撃を避けられたことに対して動揺するが、すぐさま次の行動に移そうとして―――そして吹き飛ばされた。
宙に浮く自分に気づいた時には場外していた。
凡そ10秒も経っていない自分の第二試合に己の弱さに絶望し、武舞台の外である客席にふと目を向ければ見覚えのある小さな老人を見つけた。
何故見覚えがあるのか、それを思い出す日まもなく木刀の選手は意識を失う。

『またしても瞬殺!ラーラ選手場外!ラクサス・ドレアー選手決勝進出決定ィ!!』

「「「オオオオオオ!!!」」」

「なんだあの子!雷を纏ったように見えたぞ!?」
「強いなんてレベルじゃ…どんだけ強えんだ!!」

「…フン」

野次馬たちからの歓声にラクサスは鼻を鳴らし、当然の結果と言わんばかりに武舞台から離れて控室―――から少し離れた場所へ足を運ぶ。
そこにいるのは先程木刀の選手が客席で見た小さい老人。
老人は歯をむき出しにして子供のような無邪気な笑いをラクサスに向ける。その表情は嬉しそうであり、そしてラクサスに向けて両手を広げた。
それに対し、先程まで冷たい雰囲気が消え、老人に向かって小走りする少年らしい顔つきをするラクサス少年だった。

「じーじ!オレ決勝進出だってよ!どうだ!!すげえだろ!!」

「おうおう!凄いってもんじゃないぞラクサス!10歳でそこまでよく勝ち残ったわい!」

さすがワシの自慢お孫じゃな!と自分のことのように喜ぶこの老人はラクサスの祖父―――マカロフ・ドレアー。
そして木刀の選手が忘れていること―――このマカロフ・ドレアーはとあるギルドの族長(マスター)であり、この地の大陸で最も優れた10人の魔道士、通称聖十大魔道の一人である。
優れた魔道士であるのならば、強さを追い求める者であればある程度知る情報の一つ。
そしてマカロフは聖十大魔道として知れ渡っているので知らないものは多くはない。
木刀の選手は気を失うまで思い出すことはなかったが、もし思い出せたのならおそらくこう思っていたのだろう。

―――――ああ、こんな化け物の孫なら、そりゃ勝てないワケだ。

優れた魔道士の血を継ぎ、そんな強い祖父を持つラクサスであればあんなに圧倒的なのは仕方ないのだろう。なにせ、優れた魔道士の孫―――相応の才能を持っているのに違いない、とそう確信していたのだろう。

「あれ?オヤジはどうしたんだ?一緒に見ていたんじゃないのかよ?」

「あー…イワンはまた後で合流するみたいじゃな。それよりラクサス、あの小僧と友達になれそうかのぅ?」

「あの小僧?…あ、あのサイヤ人っていう子?」

「そうじゃ、その子」

何故ラクサスにそのような質問をするか、マカロフはラクサスに対してあることを心配していた。
心配の原因になるのは、対人に関するコミュニケーション。
ラクサスは自分の家族や身近な知り合いに対しては親しい、普通の子供と変わらないが初対面の人に対しては大人しくなる。
それは良い、子供なら当然よくあることだろうが…ラクサスのそれは度を超えていた。何故かビリビリと冷酷非道な言動に変わるように見えてしまうのだ。
愛想が悪い、一言にするならこれに尽きるのだろう。
マカロフは思う、何故自分たちの血縁に当たるものはこうも柄が悪い顔になるのか。いや別に本当に顔が悪いわけではない、むしろ顔が良い。特に自分の父や孫であるラクサス。
自分や息子であるイワンは顔つきが悪人だったが、それでも通常よりも良い方だった。良いほうだったのだ(確信)
孫は自分に似てイケメンだからこそ、勿体ないのだろう。愛橋のいい笑顔を持っている孫なら沢山の友達を作っても不自然ではないが…ではないのだが。
原因はなにか知らないが、ラクサスは生まれたときから体が弱かったのだ。
そのせいか軽い運動でも息が切れ、倒れることも屡々あった。それで周りの子どもたちと遊ぶことはなかったし友達を作る機会もなくなってしまった。
マカロフはそんなラクサスを放置するか、といえばありえないだろう。なにせ情が熱く、何よりも孫を愛するマカロフはラクサスを一杯可愛がり、共に時間を過ごした。
それにマカロフは魔道士ギルドの持つギルドマスター、だからこそラクサスは自分の祖父が居る魔道士ギルドに入りたいと言ったときはマカロフにとっては嬉しく思うことでも合ったが、同時に心苦しく感じることでだった。ある日実の息子でありラクサスの父であるイワンが、ラクサスの体にある魔水晶(ラクリマ)を埋め込んだのだ。
イワンが埋め込んだ魔水晶の特性は”ある生物を絶滅するために作られた魔法”であるため、ラクサスの弱かった体が嘘のように変わり、今では通常の人間よりも感覚が強化、そして身体能力も高くなった。
しかもラクサスの属性魔法である雷もより強力になりあっという間に魔道士としての素質も、祖父から魔法を教わることで秘められていた才能の一部を開花することができた。
そのおかげで、弱かったかつての身体は嘘のように今では武道会で決勝戦が決定した今のラクサスに至るのだった。
代わりに、事前の人見知りと圧倒的な実力によって独立しかけているのだが。
さすがのマカロフもこのままではいかんと思い、ラクサスを自身のギルドに魔道士として加入させ、ギルドの皆に関わらせるようにした。
しかしなかなか状況は発展しない中、ラクサスはある噂を耳にした。

―――近頃、花咲く都に武道会が開かられると。

ラクサスは己の実力を確かめるためにマカロフにその大会を伝え、出場したいと申し出た。
それに対してマカロフは心配していたが、孫が世を知り、あわよくば友達を作ることを願って参加を認めたのである。
しかし、この武道会には実力者は多くなく、何よりもラクサスを落胆とさせるような結果になった。
なにせ、魔道士の参加者が多くない。強者が居ないということに不満が漏れ出た。
客席でその様子を見ていたマカロフも今回も駄目か…そう諦めかけたとき、アナウンサーのある選手紹介を聞いて好機を見た!

―――――次の選手はなんと!先程のラクサス選手と同じ10歳の子供!しかし侮ることなかれ、その少年こそかの英雄と同じ戦闘種族、サイヤ人!ネロ・ハバード選手です!両者、舞台上へどうぞ!

ラクサスと同い年の少年が、しかもラクサスと同格かもしれない少年が選手として出場しているではないか!これはチャンスに違いない!
そしてこの考えも間違いではない。なにせラクサスと同じ魔道士、しかも魔道士ギルドに所属していて戦闘経験のあるであろう魔道士の鼻っぱしらをへし折るように第一回戦を切り抜けたのだ。
その戦い方はギリギリとも思えるものだったが、ラクサスを満足させられるかもしれないとマカロフは確信した。
…え?先の魔道士でも良くないかって?…相性的に、雷は水を放電させ、より強力な攻撃と化すことでローラ選手の勝機が半滅してしまうこともありえたり、何より雷と一体化するという業を成すラクサスの雷速の速さにローラはついていけない。しかもまだまだ強くなる、とマカロフは見たときの感想であるが…あの歳でこんなに成長するとはさすが自慢の孫である。

「アイツ、いい感じだな。さっき目合ったけど、笑いかけてくれたんだぜ!?」

「おおお!それは本当か!?」

「本当だって!!これって友達を作るチャンスだよな!?」

勘違いである。確かに目が合い、笑いかけましたがそれは宣戦布告という意味を含めての不敵な笑みである。
ラクサスも笑みを浮かべていたが、本人は微笑んだというイメージのつもり。本人のイメージとは全くの違い不敵な笑みになっていたが。
そのまま勘違いに気づかず、最初の友達を作れるかもしれないと意気込んでいるラクサスにつられ、マカロフまでテンションを高める。

「こうしちいられん!孫の友となる子なら応援しなくては!次の試合はあと1分じゃったな?」

「ああ、オレも控室で応援してくるぜ!またあとでなじーじ!」

そうしてマカロフは客席へ、そしてラクサスは選手たちが武舞台を眺めている控室へ。
祖父と孫は同じ想いを一つに、それぞれと別れていったのであった。
もし、もしもマカロフの息子であるイワンがこの現状について察していたのならばきっとこう言うに違いないのだろう。

―――――ア ホ く さ


★★★★★★★

「へ…へ…ヘーックショイ!!」

くしゃみに耐えきれず、大きなくしゃみを鼻から出してしまった。
荷物の中に入ってあるティッシュを取り出して鼻の中の物を片付けようとしていると控室にさっき決勝進出した少年、ラクサスが戻ってきた。
武舞台から出てどこかへ行ってたのだろうけど、満足そうな顔をしているのを見ている限りとてもいいい快便だったのだろう。…余裕あるなアイツ。
そりゃあんな圧勝していたら余裕も出てくるだろうけど…もしやオレなんて目じゃないってことか?
…ハハッ、燃えるじゃねーの…。

『さて、次の試合は先程活躍を見せていただいたネロ・ハバード選手くん!そして対する前試合で相手に棒術でなぎ倒したギグリ・ムース選手!両者、武舞台へ!』

ラクサスに対抗心を燃やしていると次の試合で呼ばれる。
よし…今度こそアイツにオレを認識してもらうために、そして決勝戦で当たるためにもこの試合で勝てなくては…じゃないとやりきれないぞこの気持ち。
気合を入れ込むように自分の頬を両手で叩き、控室に出ていく坊主頭で棒を抱えて出ていく男性の人を目に入ったので追いかけるように出ていく。
ふと、視線を感じたのでそれに目を向けたらラクサスがこっちを睨みつけていた。
まるで、この試合オレが勝てるか、見極めようということか?―――上等じゃねえか!!
ラクサスに対してふと笑みを浮かべているとあいつも笑みを返してきた。全く、燃えさせてくれるやつだ。雷の魔法を使うだけのことがあるぜ(関係ないです)

「「「オオオオオオオオオオオオ!!!」」」
「頑張れよサイヤ人のガキィ!」
「ギグリさん!目にものを見せてやれぇ!!」
「フレーフレーネローくーん!!」

野次馬が騒いでオレや対戦相手に応援をしてくれる。先の戦いを見てオレにも声援を送ってくれる人が増えてくれた。…けど、なんだあの爺さん。学ランなんて着て…てかこの世界にも学生服なんてあんの?学ランの?どうなっているのこの国の文化。

野次馬たちを白い目で見ながら武舞台に着くと相手は祈るかのようにこちらを待ち構えており、こちらを見ていた。
もちろん、今回の対戦相手である相手を忘れたわけではない。こっちもそれに向けて集中するさ。

「よろしくおねがいします」

「…うむ」

相手に敬意する意味を込めてお辞儀すると相手も対応してくれたことでオレ自身も構える。
構えるオレに対し、相手は両手に長い棒を持ち足を深く沈めてこちらに構えてきた。
あの構え…カウンターか、それか突きか。どちらにせよやはりこの対戦相手も強敵に違いないか。

「両者、準備はいいですね?では第二試合―――――開始!!」

「…ハァッ!」

相手が接近戦なら、こちらは長距離からの攻撃。相手の間合いには入らず、片手で気弾を生成して投げ込む!!

「…読めている」

だが、相手にとっては予想の範疇だったようだ。
特に慌てるような素振りを見せずにオレが放った気弾をたったの一突きで霧のようにかき消された。

「チッ…」

「其方の戦い方は先の試合で観察させていただいたが、あの戦い方は一度見られては使えぬ戦法。故に一度見た某にとっては効かぬと知れ」

オレがこの坊主頭―――ギグリが対戦する前にどうやら戦い方を見切られた、そう丁寧に教えてくれる彼だが、まさか本当にあの戦い方がオレの本当の戦い方だと思っていないだろうな?

「見ての通り、某は感情に乗せられることはない。よってこちらを挑発するようなことは無駄だ」

「…みたいですね…失礼するけど、あなたも極めている口ですか?」

「…年季が違う。当然、其方より極めているだろう。降参するなら某はそれでも構わん」

「まっさか…これほどの達人だ。降参なんて勿体ねえ…このまま戦りあって強くさせてもらいますよ」

「…やはりサイヤ人か。それで良し。どこからでもかかってくるがいい」

表情を変えず、淡々とそう答えるギグリさんにゾクゾクとする感覚を感じながらオレは突進前の構えをするように身体を前にする。
どうやらあちらから動く気はなく、あくまでもカウンターに徹するようだ。それはこちらを甘く見ているのか、それとも本当にオレの実力を理解したのか。…あっちが魔力を感知できるのなら、ありえるか。
少しずつ身体を前にして、そしてオレはギグリさんに突撃をした。できるだけ今のオレができる攻防。殴るだけではなく相手の隙となっている場所を狙っての攻撃―――しかしオレの攻撃を意図も簡単に受け止められたり、流される。

「…隙有り」

「ぐっ…!?」

できるだけギグリさんに攻撃をしないように蹴りの連打をしていたが、彼にとってはカウンターは造作なかったかもしれない。
なにせ涼しい顔のまま棒でオレに突いてきたのだ。

「スッ…だだだだだ!!」

「…無駄なことを」

「イッツ…波ッ!!」

「―――っ!?」

なんとか受け身を取り、今度は殴りかかってみるが、それらを今度は棒ではなく拳で捌かれる。
むしろオレの拳をその手で握られ、オレを回転させるかのように空中に投げられる。だけどよ、こういうのよく姉さんにされてたんだ…だから、ここでの反撃は案外早えぞ。
空中のまま両手を構え、慣れた感覚に任せて身体がタイミング的に空へ向いたところにかめはめ波を放ち、オレの身体を再び地上にいるギグリさんへ落下突撃――!
流石にこの機転は読めていなかっただろう。相手は防御を取る前にかめはめ波による勢いの速さの拳で胸へ突撃を成功した。
受けた衝撃によりギグリさんは後ろへ一歩下がるが…胸に手を当て次にオレの方へ視線を向ける。
やっぱりあまり効いてないみたいだ…畜生め。…アレ(・・)を使うしかないのか?けどいつでも使えるわけじゃないし…自由に使える感覚が掴めていない時点じゃ無理か。

「なるほど…なかなかの経験を持っているようだ」

「アンタ程じゃないだろうけど…一矢は向けたようだな」

ギグリさんの表情に変化がない、これぐらいはなんでもないというのだろうか。
そして棒を突きの構えを始めた。
構え始めたギグリさんに、言い知れない何かを感じる。それだけじゃない…”気”だ。他の人は魔力とか、 身体能力強化というが…この人、パワーを上げていく。
やっぱり…格上だな、と目の前で実感させられる。見えないはずの闘気の炎が、オレの目で見えてきた。

「ならば某も本気で行かせていただこう。…すぐに倒れるでないぞ、ネロ殿」

見えていたはずの男の言葉に構えていた時、気がつけばオレは胸からの衝撃を感じ、空を見ていた。

★★★★★★★

侮れない少年だ、そう棒を突きの構えをしてから確信する。
この茜色のサイヤ人、ネロからは普通の子供が獲れないだろう武、いや対戦の経験か。
その経験を持って、ネロは先程の選手を下したのだろう。彼が使っていた魔法、そして先程の蒼い光といい、この対戦相手であろうサイヤ人の子供は将来はよき戦士になる。
そんな戦士になるためにも今回は良き種とするよう、敗北を与えなくてはならない。
酷なであるが、この子が強くなるには数々の敗北を知らなくては意味がない。敗北とは、時には良き薬となる。
もしこのまま敗北を知らずに強くなっても見ろ、いつかきっと敗北したときにはプライドをへし折られ、戦いの道から下りる時が来る。そうなっては―――――勿体ないではないか。
故に、ギグリは容赦なく、大人気なくともネロというサイヤ人に敗北を経験させ、次のステージに昇るためのチケットを与えようと決めた。
自身の得物である棒を掴む力を入れ、少年として見ていたサイヤ人へ突きの構えを取る。
構えを取ったギグリの雰囲気に周りの客席にいる人達は顔色を変えていく。
控室にいる選手も、ラクサス自身も気づく。この男、次の攻撃は先程の比ではないことを。
皆の予想は正しく―――――ギグリの棒による突きでネロを衝撃とともに吹き飛んだ。

「―――――ガハッ!?!?」

きっとネロにとって気づかない間に攻撃されたのだろう、ネロが飛んでる途中に気づいたのか口から息が漏れた。呼吸が、安定しない。
さっきの突きは、ネロの肺にダメージを与えていたことを誰が見ても明らかだった。
武舞台に倒れ、そのまま横になってもピクとしないネロの元にギグリは足を運んでいく。

『な…なんということでしょう…!互いの攻防により、ギグリ選手にカウンターを決めたネロ選手だったが、ギグリさんの力を込めた突きによりネロ選手、ノックアウトにされました!それに肺にも攻撃が伝わったのか、うまく呼吸ができていない…ギグリ選手、このままトドメをさすのでしょうか…!?』

若干震え声になるアナウンサー、それはそうだ。先程からハイレベルというより、魔法で一瞬決着つけていく試合に気が抜けていたのだろう、それが今回の試合で互いの試合が五分五分で、実況することすら忘れていたのだ。
今ではなんとか実況するが、10歳の子供に対しゆっくりと歩いている大人の坊主にアナウンサーはハラハラ状態だ。いやなら子供の出場を認めるなって話であるが。
それでも、結構なレベルのこの試合にマカロフは冷や汗をかく。
孫といい試合できそうな者が多くいる。それも決勝で当たるとなると喜ばないはずないが、如何せん、孫と同い年のネロとラクサスに対戦させて友情を深めてほしいのだ。できることなら…いや、それは小僧にとっては辛いことだろう。…それに相手とレベルの差が違いすぎる。
それはラクサスも同じことを考えており、自分と友達になれるだろう少年を惜しむ。
周りからは苛ついているようにしか見えないが、ラクサス自身あの少年のことが気になるのだ。
もしこのまま負けるのなら、自分が慰めて友だちになるのもいいが―――できることなら、ライバル関係にもなってみたかった。
誰もがネロの敗北ムードを疑わず、ただその時を待つ。それか降参宣言を待っている。
だが―――――

「は…ハハッ…」

響き渡るのはまだ声変わりしない子供の乾いた笑い、しかし武舞台ではその笑い声は確かに響き渡った。
ギグリはビタッと足を止め…ありえない何かを見るような目でネロを見つめる。
確かに―――――もう動けない程の突きを放ったはずだ…なのに…笑っている?

「ハハハッ…アンタ、やっぱ強えよ。ワクワクが堪んねえ…」

先程ギグリ選手に対し敬語だったネロは素の喋り方でギグリを称えながら胸を抑えて立ち上がる。
立ち上がる少年の表情は笑みを声と同じ笑顔を浮かべている。

―――――ッ!!

どこか言い知れぬ不安をギグリ、そして観戦していたラクサスとマカロフは感じた。
まるで、”あそこにいるのが大きな獣がいるかのような”、野獣を目にしているのか、とギグリは考えた。
立ち上がったネロの後ろに―――――大猿が見えている。
実際居るわけではないだろうが、ネロの雰囲気により大猿が背後にいるかのように幻影が見えるのだ。
ギグリの手に汗が滲み、棒を握る手を更に固く握った。

『た…立ち上がったーッ!ネロ選手、アレほど強烈な突きを受けても尚立ち上がりました!わたしもびっくりです!観客の皆さんもびっくりです!!!』

ネロの立ち上がりにアナウンサーや客席の野次馬も驚きを隠せず、そしてザワザワといった音が周りに聞こえてくる。
しかし、一番驚愕しているのはやはりギグリ自身だろう。長年鍛えてきた自身の自慢の突きを、受けても尚立ち上がり…そして先程よりも気迫が強くなっている少年に対して。

「…貴様…何故立ち上がれる」

「なぁに…同じ攻撃を何度か受けていたら立ち上がれるさ。要するに慣れだ」

「…慣れだと?ふざけているのか?」

自身の本気の攻撃を受けて、立ち上がれた理由は慣れ。そう答えるネロにギグリは怒りを覚える。
感情に乗せられないはずが、動揺とともに怒りを溢れてくるのをギグリ自身が気づいて抑える。

「ああ…貶したつもりはないんだ。ただいつも稽古で瀕死になるのが多くてさ…それで結構慣れているんだよ」

「…瀕死、だと?ふざけるな、それを何度も受け続けられる筈…いや、貴様…」

通常の人間が何度も瀕死を受けていればトラウマになったり、ギグリがネロに危惧していた武の道を下りることになるのが見える。
しかし目の前の少年は―――――サイヤ人はそれを対して重要と見てない。そして、ギグリは目の前のサイヤ人を、子供として見るのをやめ…”敵”として認識する。

「案外…慣れるもんだ、…じゃあ…また行くぜ…!」

ネロは拳を作り、力むと周りから白い炎のような気をを高める。観客たちは「魔法を使う気か?」と予想をし始めるが、これは違う。ただ、己の気を高め、溜めているだけだ。
そして立ち上がり様にギグリはネロの目を見て、異変に気づく。
――――あの少年の目は、あんな色だったか?

「…来るか」

何かを仕掛けてくると思ったギグリは棒を構え―――――次の瞬間、白いオーラを纏ったネロが横でこちらに右ストレートをしていたことに気づく。

「ッ…!?」

そのストレートを棒で裁き次いでは狙いを定めてネロの顔へ真正面に突きを放つ。空気すらも裂くその突きにネロは、ただ(・・)首をかしげて避けた。

「―――――」

何かが違う、そう感じ取るギグリは突きの連打を続ける。何度も連打を続けるその様は残像すらも作っての突き。それを対処として突きを放たれているネロは―――――ただ避ける。
見えているのか?この突きの連打を。ギグリは内心そう疑うが―――――

『わ、私には見えていませんが、ギグリ選手、ネロ選手による攻撃を防御したあとに突きの攻撃を何度か放っております。しかしネロ選手、先程より早い突きであるのに関わらず全てを回避!もしやどこを攻撃してくるか予知で知っているのでしょうか―――!?』

そう…そうだ、この避け方はまるで事前からどこから攻撃してくるかを理解して回避しているかのような、そんな回避をしている。もしや―――――心を読む能力が?それなら納得できる。そうギグリは確信してネロに問いかける。

「もしや…心を読んでいるのか、貴様―――ッ!?」
そう問いかけるギグリに対する返答は脇腹への回し蹴り。
確かに、戦闘中の会話に隙が出来てそこへ攻撃するのは当たり前のことだが、ギグリにとってはありえないことだった。
なにせ、この少年は先程まで本当に全力(・・)でこちらに攻撃していたのだ。その全力だと思っていた少年の速さが、たった今ギグリの認識外になっていたことに驚愕なことだ。
脇腹のダメージされたことで体制が崩れ、防御していたギグリに留守が出来た。それを、目の前のサイヤ人は見逃さない。
次に顎への膝蹴り、そして腹筋へのブロー。次々と攻撃の手を始めていく。

「くッ―――ハァッ!!」

「―――!!」

しかしいつまでも受けにいるギグリじゃなかった。棒をネロに横振りをするがネロは後ろへバックタウンする。そしてバックタウンしたネロにカウンターに徹していたギグリがこの試合で初めての攻めの一手を行動した。
身体とともに突きを技。その突きの加速を観客たちが見えなかった。そしてネロすらもその突きを見ていないと、正面にいるギグリは認識するが―――ギグリの突きはネロだった残像を突き抜けていた。

「オレは直感で避けているだけだ。それもただの直感じゃないぞ?今まで鍛え上げてきた―――――野生による”野生の勘(ワイルドセンス)”だ」

野生の勘(ワイルドセンス)…だと?」

ギグリから離れた場所にネロは姿を表して構えていた。追撃せずにこちらに返答するとは甘いな、とギグリは呆れるがネロを向き合う。
実際、この野生の勘というのは、ネロは前世にやっていたスパーキングなゲームに出てくるある技のヒントを思い浮かべたのだ。
―――――ワイルドセンスで、何度もCPUの攻撃を避けている技。
ワイルドセンス、即ち野生の勘を利用での完全回避。ゲームでは一回の攻撃を避けたりしただけだが、実際鍛えてみるとどうなるのだろう、最初は傷つきながら馬鹿なことをしていると自覚するが、それでもやめなかった。何度も瀕死になるような攻撃を姉から受けながら、ネロは続けていった。
だって、意外なところに必ず何かが起こるのがこういう不思議なパワーが働いている世界にあってもおかしくない。どこかゲーム感覚でありながらこれは間違ってないとネロは信じていたのだ。
そして、姉の瀕死の攻撃を受けてパワーアップ続けて半年、ネロは―――――ついに姉の攻撃を避けた。
確かにその攻撃に慣れていたのだろう、見えていたのだろう―――――しかし、その時の出来事をよく覚えていたネロは否定した。だって―――――いつもオレが瀕死によるパワーアップで強くなっていくうちに、姉の攻撃が速くなる。その目で追えない速い攻撃を、どこから来るかと解って避けれるほどネロは自分が出来ていると思えないのだ。
そして何度も続けているうちに―――――感で避けているのだと確信した。
何も考えず、ただ身体に任せる神の御業とは真逆の回避技。感でやってくる攻撃を回避する技。
最も決定打になったのは、大猿の10倍を感じようと何度も大猿になったこともそうだろう。
その大猿の感覚、戦闘衝動もそうだが大猿の中にあるだろう野生本能もネロは利用することにしたのだ。

「サイヤ人、そして野生としての感を持つ大猿ならでできる…自分の回避技だ。どうだ、すげえだろ?」

「大猿…?いやしかし…野生本能によっての回避技など…聞いたことない」

どこか自慢するかのように胸を張るネロにギグリは唖然とする他なかった。なにせ、武を極めるものにとって野生本能というのは全く別の位置に存在する感覚だったのだ。それを、目の前の少年が極めている。
ネロの動きには武を感じさせることもあったが―――その中にも野生があったのか、それも自分が気づかないほどの鍛えられた力を。
これをまだ”10歳”という年齢で出来上がったのだ。これは化けるところではない…もはや神童―――将来は、きっと大陸に名が広がる戦士になるのに違いない。
ギグリはそう思い、口を笑みへと歪める。先程から感情に乗せられて感情を変えていたが、ギグリがこうやって笑みを浮かべるのはこの大会にきて始めてのことだった。

「恐るべき少年だ…これをまだ10歳ときた。もしや、年齢を偽っているではなかろうな?」

「―――え”ッ…そんなわけないでしょう…オレ、10歳ヨ?」

どこかガタゴトのように感じるが、実際子供になるなんて言う薬も魔法なんて聞いたことない。実際存在するかも知れないが、それはどうでもいい。ただ―――己が強さを極めるのならこの少年との試合が必要不可欠だということだけ。

「―――さぁ、増分とやりあおうではないか…!!」

「へへ…楽しんできたな?オレも負けねえぞ!!」

『野生の勘…そしてそれに感化されるかのようにギグリ選手の表情が表れてきました。さぁ、この試合、互い高まった感情をどのようにぶつけるか―――――』

「かめはめ波ッ!!」

「むんッ…!!」

アナウンサーの実況を聞く間もないまま両者は再び激突した。青いエネルギー砲と棒による突き。
本来なら棒がこの青い光によって消滅するような現象になるのだが、どういうわけか互いの一撃が互角(・・)に見えるほど押し合っている。

「ぐぅゥ…波ァァアア!!」

「ムゥン…!!!」

互いに五分五分というような力で抵抗をし、周りの武舞台が段々と崩れていく。

「う、おおおおおおおお!!!!!」

武舞台が半壊するその前に、ギグリは握っている棒に更に力を振り絞る、ネロが放っていたかめはめ波を”突き消した”。

「…畜生め」

そしてネロは冷や汗をかきながら、改めてこのギグリという男の力を思い知る。

(やべえ…”今の力”でやっと互角になってンのに…あのギグリさんの(パワー)がまだ上がっていきやがる…!オレと同じサイヤ人じゃねえっつーのになんて成長の早さだよ…ブロリーじゃあるまいに!!)

今の力というのは、ネロの目の色を見れば明らかになるだろう。他の観客たちは気づかなかったが、唯一ネロと対面しあっているギグリにしか気づかなった。この少年、ネロ・ハバードの目が赤く(・・)輝いていることに。
まだ完璧ではないが、ネロは通常の状態のまま大猿パワーを引き出す感覚を覚えることが出来た。
できたとは言っても、長い間に理性を保っていられるわけでもないし、自在にこの状態を引き出せるわけではないが。
なら一体、どうやったらこの状態になれるか?――戦闘衝動を爆発させる。
己の中に住む、戦闘衝動でどうしても理性をなくしてしまうような暴力的な感情を抑えず、そして大猿の時の感覚と姿を思い浮かべて自身の中の奥底にいる獣を解放させることで漸くなれる状態だ。
そのおかげというべきか、ネロは求めていた今の”10倍先の戦闘力”を体感して、求めていたある技を覚えようとしたが、ふとあることを思いついた。
――これ、あの技を覚えるよりこの10倍も上がるパワーを身に着けたほうが早くね?と。
まぁ、完全に使えているわけではない。溢れ出る力によって身体が少しずつ傷ついていくし、一回でも理性を失くしてしまえば暴走すらしてしまう。だからこそ、未完成だが…理性をなんとか保つことによってこの姿になれることができた。…尚、理性を起こすために何度か姉に致命傷させられたりしたのはネロにとってトラウマなのでそれのおかげで理性を保っているといっても過言ではない。
これがネロの奥の手、10倍もあげる戦闘力なら勝機があるとネロが確信していた…が、その確信すらも無駄になった。この目の前の男によって。

(…末恐ろしい小僧だ…。)

一方ギグリは自身が棒を握っている手に目を移せば、両手がまるで火傷したような状態であり、棒にも少し傷ついていた。
ギグリは間違いなく、本気を出している。全盛期とは行かずとも自分が持っている技術を引き出していると間違いなく首を縦に振って答えるだろう。
武術家としてのギグリは、目の前の少年の実力に舌を巻く。魔道士、否戦士としての素質が寄っているのだろうか。まだ未熟だが、それでも鍛えれば今の比ではない。そう実感してしまう。

(身体強化してもなお、これだ。本当に…先が楽しみになる。一層のこと弟子にしてしまいたいが…)

ギグリはネロとの闘いを脳内に振り返して、そして弟子にしようという考えを捨てた。
目の前の少年が至る場所は、己が昇ろうとしている場所より、また先の場所だと。
ならば己は少年を止めるわけには行かず…しかし少年に道を譲るわけにも行かない。
己でさえも、まだ求道者。強さの先へ目指す者に過ぎない。この少年には堕ちてほしいわけでもないが、己もそう安安とこの”道”を譲るわけにも行かない。
自分が握る棒にまた力を込め、そしてネロへと駆け出す。

「フゥ――!」

「ッ~~!!」

駆け出したギグリの瞬歩はあまりにも早く、更に力を上げたネロですら目に追いつけない。だから野生の勘で己にやってきた棒を両拳で受け止めてギグリへ上段蹴り!
カウンターしてくると悟っていたギグリは自分が握っていた棒を一時に離して上半を反らして避け、棒を受け止めたままだったネロに対し、棒を押し上げるように蹴り込む。

「――っぶねえ!!」

その一撃がくることをまた野生の勘で察知し、棒を地面に立てさせて自身の体全体をギグリの後ろへ行くように跳び、空中のまま後ろへ行く途中に棒を片手で持ってギグリに向かって投げる。
その棒を後ろに目でもついているかのように受け止めてまだ地面に着地していないネロへ再び攻撃をしかける。

(クッ…!カウンターに徹していたときよりも動きが洗練されていやがる…!いくら野生の勘(ワイルドセンス)で避けているからって、何度も避けられる程オレ余裕ねえぞ!?)

そのまま空中にいる自分に下から棒を突き上げてくるギグリにネロはまだ見せていなかった舞空術を使って上へ逃げる。空中なら追いかけてくることはないと思うも、まだ危機が去ってないと野生の勘が告げてくる。

『おーっと!ネロ選手!空を!空を飛んでいるゥ!ギグリ選手との攻防により地上が不利と悟ったのか、空中へと飛んでいきました!まさか飛行魔法が使えるとは驚きの展開…いえ、もうさっきから驚きっぱなしです!!』

「…なる程、空中浮遊も可能とは。多芸だと思ってはいたがそこまで手の内を持っているとなると面白みが湧いてくるものだ」

「そんな余裕そうな(ヅラ)してよく言うじゃねえか…!本当、強えよアンタ…」

「いやはや、某なんてまだまだ。…これでもまだ才能がない身とはいえ、鍛錬続けて漸くこの極致の扉に立ったに過ぎん」

「才能が…ない…!?嘘だろおい…アンタそんなに強えのにどこが才能がないと…!!!」

ふざけた話だ、そうネロが言ってしまいたくなるのは仕方ない。自分が漸く大猿の力を引き出して互角だというのに、目の前の男は自分に才能がないといいながらまだ自分が強くないと言っている。
確かに、控室にいるラクサスも規格外に強く感じるが、それでもこの男も負けていない。そうネロがギグリと戦って感じた感想だ。
―――しかし。

「―――ネロよ」

ネロが考えより、この世界は規格外だ。

「某は、この広い世界を旅して数々の強者と出会い、敗北した」

「――は…?」

舞空術していたネロは力が抜けたように武舞台に着地して、呆然としてギグリを見ていた。
この男の発言が信じられないと思いながら。

「某がいくら鍛えたところで、勝てる見込みのない者もいる。勝てない化け物、モンスターすら存在した」

ギグリは、魔法を使わない。いや、使おうという発想もないが…もし使ったとしてもあまり効果がない。
なにせ、彼自身はその魔法を酷使する”才能”がないのだから。
だからこそ、己の長所を極めてきた―――それでも敵わない者が存在している。

「…まだ試合中であったな。ならば―――この話の続きは此度の試合が終わってからしようか…今はまだ、某が其方より強者故に…勝たせてもらおう」

「アンタ…」

「構えよ。…もっと戦るのだろう?」

「…ッ…ハハッ…全くもう…」

オレってば…どこの星にきてんだ全く…そう零したくなるような言葉を飲み込み…ネロは頭の中にある雑念を心の隅に追いやることにした。まだ、整理してはいないが…それでも。
控室にいる――雷の少年と戦いたいのだから、だからこの試合に勝つ。

「「―――ッ!!」」

まだヒートアップする試合、気づく実力差、世界の広さ。
色々ごちゃまぜになりながらも、それでも強く、そして戦いという欲求に従っているサイヤ人になった転生者の口は笑みを浮かべていた。 
 

 
後書き
実況とかどうやってやんだ…気がついてたらアナウンサーの人を置いてけぼりにしてしまう…!わざとじゃないんだ!私の文才が駄目なだけなんだ!そもそも日本語が駄目なんだけどネ!!

え、戦闘描写も面白くない?…頑張りますので次回もお楽しみください。…タイトルと全然違う?大丈夫、次回はちゃんと出てくるはずですから(レイプ目)

※大猿制御修行法について
例の技で倍率上げとかわからないので、大猿になることで10倍に上がる戦闘力を知ろうと試した修行。なお、これを将来の究極のサイヤ人になるのに有効活用したい模様。今は大猿の野生本能で野生の勘を習得できた。


※ギグリについて
ただ棒術で強さ極める求道者のモブにするはずがいつの間にかオリキャラとして成り立っていた人物。
油断ならない相手。戦闘力はドラゴンボールの誰かと例えるならギニューの12万。普通ならハバネロが勝てない相手です。身体強化の魔法を使う。(身体強化とは気を最大限に高める技術)

※ラクサスのコミュ障について。
今作だけの設定ですので。ただ、ラクサスは他人との接し方に不器用な描写があったり、番外編の雷豪一閃でもそれがあったことから、幼年期で体が弱かった頃は同年代の友達がいなかったと勝手に推測(ぐふっ)
ですので、それをアレンジして今作での子供時代は友達がいなかったコミュ障にしました。はい、今作の設定ですので本作は別物なのであしからずに。


※ネロが旅に出たのが2年前じゃなく1年前に変更しました。


★☆次回予告☆★


ハバネロ「もういろんな意味でワロタ」
???「これもいつか経験することになっていたんでしょうから、今経験しても同じですよ」
ハバネロ「わーってるよ…けど、ここまでくるともう笑うしかねえ…」
???「…それでもきっと貴方様は、止まらないんでしょう?」
ハバネロ「…姉さんにも鍛えられたからな。中途半端に止まらねえさ」
???「良かったです。…では、次回予告をしましょうか」
ハバネロ「うっす。…ぶつかり合う拳と長棒。やまないその戦いに終止符が打たれる」
???「強くなりたいという最初の意思は憧れから。なら、次は?」
ハバネロ「オレは―――――」

 「「次回、妖精のサイヤ人」」

「第五話:決着!そして決勝戦へ!」

ハバネロ「負けて…たまるかァ――ッ!!」
モブから進化したギグリ「それで、こそだ」

???「では、次回もお楽しみに。…あ、私の出番はこの武道会が終わった次の章です(ネタバレ)」

 
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