クリスマスの姪
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第二章
「よかったじゃない」
「勝手に決めたけれど」
「七穂ちゃんならいいのよ」
細い眉に丸眼鏡をかけた大きい目で言う、茶色の髪は長くふわふわとしていて優しく整った顔立ちだ。胸は一六〇の背に九〇とかなりの大きさでウエストも引き締まっている、もう三十八だが二十代前半に見える。怒ると博多弁丸出しで怒鳴ってきて怖いが普段は優しく家事も得意な申し分のない妻である。
「もうね」
「いいんだ」
「遠慮しなくてもね」
「奥さんがそう言うなら」
「じゃあおもてなししないとね」
「おもてなしっていっても」
それでもとだ、金吾は妻に話した。もう子供は寝ていて二人でリビングで話している。金吾の右手にはビールがある。
「福岡だよ」
「それがどうかしたの?」
「ガメ煮に明太子にラーメンに」
「全部出してね」
「いや、全部クリスマスじゃないよ」
この時に食べる料理ではないというのだ。
「はっきり言って」
「いいのよ」
「いいのかな」
「どれも食べてもらって」
そしてとだ、頼子はさらに言うのだった。
「後は鶏もね」
「食べてもらうんだ」
「ええ、そうしてもらうから」
「鶏っていっても」
福岡のことからだ、金吾は妻に返した。
「焼き鳥とか唐揚げとか」
「あとお鍋ね」
「そういうのじゃ」
「いいのよ、もつ鍋もね」
「だから全然クリスマスじゃないよ」
「七穂ちゃんが来るなら」
「いいんだ」
金吾は妻にビールを飲みつつ応えた。
「別に」
「いいのよ、公康と一緒にね」
二人の間の息子と、というのだ。
「楽しんでもらうのよ」
「むしろ七穂ちゃんんの方がだね」
「あんな可愛くていい娘が姪で幸せよ」
頼子はこのことは七穂をはじめて見た時金吾が彼女を自分の家族に紹介する時に家に行った時からのことだ。
「私は」
「何か実の娘みたいだね」
「今度は女の子が欲しいわ」
「そこでそう言うのかい?」
「だから今晩も」
「まあそれはそれで」
内心それならビールは控えようと思いつつだ、金吾は応えた。
「話すけれど」
「そうなの」
「とにかく」
「七穂ちゃんうちに来てくれるのね」
「そうなったから」
「楽しみにしてるわね」
「うん、じゃあ」
妻の返事は予想通りだったので何も問題はなかった、それでだった。
次に何時来るかという話になったが二十三日となった、弟と話をして決まった。そして帰るのは二十六日の朝になった。
こうしてクリスマスに七穂を迎えることにした、すると七穂はあちらの終業式が終わるとすぐに電車で福岡まで来た。
そして金吾が自宅に帰った時は。
七穂がいた、黒く長い奇麗な髪の毛をポニーテールにしていて細い眉にやや切れ長の大きな瞳、小さな紅の唇に白いきめ細かい肌に中学生らしからぬスタイルの姪がいた。既にテーブルに着いていて水炊きに唐揚げ、焼き鳥、そして明太子に囲まれている。
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