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ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士

作者:涙カノ
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第39話 =私の勇者=

 
前書き
今回はユカSideでお送りいたします。
急に話が跳びすぎているところもありますが… 

 
=第55層=ユカSide=


私はキリトについていくなか、ずっと考えていた。
人に捨てられたのに、また人を求めようとするのはどうなんだろうって…

「…もう、2年になるのね…」

「どうしたんだ?」

「な、なんでもないわ…」

どうやら前で歩いているキリトにも私の呟きは聞こえてしまったらしく質問されてしまった。反射的に答えてしまったけれど多
分、言わなきゃいけないんだろう。サチやリズ、シリカ…特にリクヤには…

などというちょっとした考えをめぐらせながら歩いていくとフォアード隊隊長のゴドフリーが手を振って私たちを呼びかける。
だがキリトはどうだか知らないけど私は足を止めそうになった。…いや一瞬完璧に止まっただろう。ゴドフリーの隣にアスナにストーカーまがいな事をしたクラディール…とかいうヤツと私の元恋人の…この世界じゃマルベリーと名乗っている人がいたからだ。

「「…どういうこと(だ)?」」

私とキリトが同時に問いかけたのにもかかわらずガッハッハと笑いキリトは同じギルドの仲間、私はギルド同士の友好な関係のため今まで争ってきたのを水に流せ、と言うらしい。正直無理な話だろう、突然変なことを言ってデュエルを申し込んだりした
りするヤツなのだから…圏内とはいえまた変な行動をされかねない。
だが、そんな予想も裏切って彼がやってきたことはぺこりと頭を下げたという驚きの行動だった。
しかも鎧特有の金属音も出来るだけ鳴らさないよう気をつけて、だ。

「今までご迷惑をおかけして悪かった…二度と無礼な真似はしないので…許してもらいたい…」

「……キリト、どう思う…?」

「……わからない…でも、用心はしておいたほうがいい…」

まだ不快感は消えないためキリトの警告に小さく頷き、メニューを開いて自分の武器である投剣、そしてポーション類、何かあった時のための結晶を確認する。…うん、投剣も攻撃用と回復、麻痺毒、モンスター相手に使用する毒の効果のついたものもちゃんとあり、ポーションや結晶類もそれぞれ5つずつある。これなら万が一のことが起こっても対処は可能…と思い歩こうとしたところゴドフリーはその野太い声で私たちを止めた。

「今日の訓練は危機対処能力も見たいので諸君等の結晶アイテムはすべて預からせてもらおう」

「…転移結晶もか?」

キリトの問いに当然だ、と言わんばかりに頷く。誰もそれには賛成しないだろう、などと思っていたけどクラディールとマルベリーはおとなしくアイテムを差し出すのでキリトの差し出した後「私のは数が多いけど…」としまうのを促してからギルドの生命線であった結晶をすべて預ける。
これならサチやシリカに預けてから来ればよかったのに…なんて後悔はもう遅いわね…

「よし、じゃあ皆、出発だ!!」

ゴドフリーは大きな声でそういうが同じようなテンションで答えたものはおらず、「おぉ」と私を含めた4人はやる気なんて存
在しなかったかのように答えてしまう。そのままゴドフリーがすたすたと歩いていったのが救いだったけれど。


=第55層 迷宮区前=

ここ、55層は植物がほとんど無い乾いた荒野、そしてその大部分が谷間。キリトは早く終わらせるためにさっさと行こうということを進言し、私もそれに
賛成したけれどまさかの却下。多分、リクヤ並に敏捷は捨てているのだろう…と諦めてテクテクと歩いていくことになった。
途中で何度もモンスターと鉢合わせするが狭い通路でキリトから逃げれるわけもなくどんどん斬られていき、上空にいたモンス
ターは私が投剣を投げてポリゴンにしていた。
多分私とキリトは同じ事を考えたと思う…早く終わって帰りたいと。

「よし、ここで一時休憩!」

「…一気に突破したほうがいいんじゃないかしら」

「そんなに早く行かれては見たいものも見れないのでな」

「…そう」

私はそのまま冷たく言い放つ。キリトも却下されたことに不満そうな顔をしているがこれ以上、どっちの意見も聞き入れてはも
らえないだろうと思い近くの石に座り込む。ここに来るまで一切しゃべっていないあの2人も気になるが…。

「では、食料を配布する」

「………そうよね、普通」

何の期待もせず麻で作られたような袋を開けると、中に入っていたのは水の入った瓶とNPCショップで売られている美味くもな
い…いや、不味い固焼きのパンが入っているだけだった。
いつもならリクヤかサチの作ってくれた昼食なのに…サチはともかく料理の腕で男に負けるのはどうかと思うけどこの世界では
確実にリクヤのほうが私よりも料理は上手で私たちの好きな味なので完璧に胃袋をつかまれちゃってる…これ、普通逆よね?

「…だよな」

「……どうせアスナにあーんしてもらう妄想でもしてたんじゃないの?」

「なっ!?…そ、そんなことするわけないだろ!」

明らかに驚いてる…少し面白いって思ったのは駄目かしら…それとも少しSっ気が私に入っているとか?
そのことでクスクス笑いながら水の入った瓶の栓を開け、口にする。キリトも恥ずかしそうに同じく水を口に含む。
…なにか変な味がする…こういった水に味をつけるというのは可能だ。リクヤやサチ、アスナが料理を作っている合間に時々やっているのを見たし、それを飲ませてもらったこともある。
リクヤにやり方を聞いたら「システム外スキルだ」とドヤ顔で自慢されたため一発殴った覚えもあるけど…

「…ユカ!そいつを捨て…ぐっ」

「え?……っ!…な、何よこれ…」

私はキリトに言われたことは意味がわからなかった。そいつ…多分、水の入った瓶のことだろう。なぜ捨てなければならないの
かがわからなかった。でも、突然体の自由が聞かなくなり、体が地面に投げ出された時点でその理由がわかった。

「…ま…麻痺…?」

その証拠に私のHPバーは普段存在しないグリーンに点滅する枠に囲まれている。キリトも私と同じく麻痺毒にかかったのかその
場に崩れ落ちている。ということは恐らくゴドフリーやクラディール、マルベリーも…と思ったが…

「クッ…クックックック」

「フッ……フフフッ」

突然、声色の違う高笑いが2つ響いた。うつ伏せになっているおかげで何とか周りを見渡せることが出来たが、私の眼に映った
のはクラディール、マルベリーがそろって私たちを見下しながら笑っているのが見えた。

…まさか…。

「「ヒャっ!ヒャハハハハハ!!!」」

もう笑いを堪えきれないのか天を仰いで哄笑している麻痺毒にかかっていない2人。恐らくこの時点で今考えたことは確定で良
いだろう。この麻痺毒入りの水を用意したのはあの2人のどちらかに決定ね…

「ゴドフリー!!早く解毒結晶を使え!!」

「させるわけないだろぉ、ゴドフリーさんよぉ!」

マルベリーがどこからか飛び移りゴドフリーの手にあった緑色の結晶を遠くへ蹴飛ばす。麻痺中は握力すら十分に入らないほど
無駄に細かい。そのせいで結晶はサッカーボールのように遠くへ飛んでいってしまった。その近くでは無理やりポーチから結晶
を取り出し自分のポーチに入れるクラディール。

「クラディール…それにマルベリー………何のつもりだ……?これも何かの…訓練なのか……?」

「バァーーーーカ!!」

まだ事態の把握できていないゴドフリーの口をクラディールのブーツが蹴り飛ばす。
一瞬、こんな人がKoBでフォアード隊隊長をしていていいの?なんて思ってしまったけれどそんなことは今はどうでもいい…
蹴られたゴドフリーのHPがわずかに減少すると同時に、クラディールのカーソルがオレンジ色に変わる。けどそんなことが今の状況になんの影響も与えるわけがない。こんな攻略完了層に都合よく通りかかるものなどいるはずないのだから。

「こんな訓練あってたまるかよぉ!…ヒャハハ!!」

「ゴドフリーさんよぉ、馬鹿だ馬鹿だと思っていたがあんたは筋金入りの筋肉脳味噌(ノーキン)だなぁ!!」

さらにマルベリーも一回蹴りを入れてHPを少し削りそれと同時にカーソルがオレンジ色へと変色した。2人のおかしくなったような声が荒野に響く。正直耳障りだけど右手首しか動かせず、耳まで持っていけない
…右だけ動かせる?

「……お願い…気づかないで…!」

右だけ動かせることに気づいたのは正直幸運だった。小さな声でいるかもわからない神様に祈りながら小さくメニューを開きメッセージ部分を選択、あて先には一番上にあったリクヤを…Subはいらない…本文に助けてと打ち込もうと手首だけで操作する。

「なぁにやってんのかな?」

「…っ!?」

その時点で送信ボタンを押してメニューを強制終了させる。髪をつかまれて顔を凝視されて本当に嫌だけれど今回ばかりは助かったって素直に思った。多分メニュー操作したことは気づかれてないはず…

「……」

「…チッ、だんまりかよ…おぃクラディール!俺の分も残しとけよ」

思いっきり地面に叩きつけられ顔を地面に打ち付けてしまうが痛みは存在しないため不快感だけが頬の部分に残る。

「(でも…送ることは出来た……リクヤ…お願い、気づいて…!)」

そう思いながら送信したメッセージは『助けて』なんて3文字は打てず、『たすk』の微妙な3文字だけだった。
遠くではゴドフリーを2人が奇妙な笑い声を上げながらめった刺しにしているのが見える。HPバーはすでに黄色になっておりそれでも剣でゴドフリーを刺すことをやめない2人。

「ま、待てお前たち!お前…何を…何を言ってるんだ……く、訓練じゃないのか…?」

「「うるせぇ…いいからもう死ねや」」

そう同時に吐き捨てるように言い無造作に剣を振るスピードを上げていく。本当にようやくだが声を上げるゴドフリー、しかし声を上げるのは遅すぎ、そして意味のないことだった。
ザクッザクッと嫌な音が響き、ゴドフリーのHPバーが大きく減少しそれに目もくれずさらに二度、三度、振り下ろされ、HPをどんどん削っていく。

「いいか~?俺たちのパーティは!!」

さらにクラディールはそういい一撃を加える。続けてマルベリーがもう一撃を加えながら口を開く。

「荒野で犯罪者パーティに襲われェー!」

「勇戦虚しく3人が死亡ォー!!」

交互にゴドフリーに剣をつきたてながら自分たちのシナリオを叫ぶあの2人。

「俺たち2人になったものの見事犯罪者プレイヤーを撃退して生還しましたぁ!!!!」

そして大きく振りかぶり一撃をさらに加える。
さすがは隊長というべきか、防御はそこそこあるようでこの攻撃にもHPは0になっていなかったがすでに危険域。
その危険域である赤に突入するとクラディールたちの動きがシンクロしているかのように同時に止まる。殺すまではさすがにしないのかと思ったのも束の間。クラディールが両手剣を逆手に握ってそのままゴドフリーの体に突き立て、マルベリーはそれをお笑い番組でも見るかのように笑っている。

「ぐあああああ!!」

「ヒャハアアアアア!!」

「イーヒッヒッヒヒ!!」

突き立てているため継続ダメージが発生、コツンと音がし剣が地面にたどり着いたと思ったらゴドフリーのHPバーは空っぽになっておりその体を無数の破片へと変えた。その音は私…私だけじゃなくて多分キリトにも不快な音として脳に刻まれているがあの2人には女神からの美声にでも聞こえてるんじゃないのってくらいに満足な顔をしていた。

「ヨォ」

そういいながらマルベリーは私の元へと近づいてきて私の顔に手を触れる。

「お前みたいな女のせいで関係ねェヤツ殺しちまったじゃないかよぉ…」

「その割には…ずいぶんとうれしそうだったけど…?」

…リクヤ…まだなの?と思うもするけど恐らく、リクヤが来るにはまだ時間が足りないのだろう…アイツもゴドフリーと同じく筋力値にほとんど振っていてスピードなんて言葉があるのかすらわからない…

「なんでKoBにいるのかしら?犯罪者ギルドにでも行けばよかったじゃない…!」

「決まってるだろ?あの女をえさに、お前を俺専用の玩具にするためだよ」

あの女…恐らくアスナのことね…そのことに気づくと体が熱くなる…だが、次の言葉を思い出し一気に体の底からがさめてしまう。
この男は…私を本当にどうするつもりなの?

「おっとぉ、そんな怖い顔するなよ。いろいろ道具はあるし、これから楽しもうぜ」

「そんなの…お断りよ…」

「お前の意思なんか関係ねぇよ…せっかくのご褒美で優しくしてやろうと思ったのによ」

そういいながら腕に装着されているガントレットを外し、白い布を上へと持ち上げる。

「…そ、それは…!」

その腕につけられていたものは漆黒の棺桶だった。これだけなら「趣味が悪い」の一言ですむのだがそれだけではなかった。ふたには気持ち悪くニヤニヤ笑う両眼と口が描かれずれた隙間から白骨の腕がはみ出している。
このマークのギルドは1つしかない…

「まさか…笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の…!?」

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)はかつてこのアインクラッドに存在していたPK専門のレッドギルド。噂で聞いただけだけどそのギルドリーダーの恐ろしいアイデアにより何百人という人数が亡くなっている。一
度は話し合いで解決しようとしたらしいけど失敗に終わり、武力で解決することになったらしい。そのときはリクヤの普段見ない剣幕で来るなといわれ私たちは家で帰りを待つしかなかったけれど。多分、あれほど本気なリクヤは滅多に見ないと思う…
「来るって言うんなら俺がお前等を牢獄へと送ってでも来させない」…なんていう脅しまで言われたのだから。その後のことはリクヤは話してくれなかったけど…

「なんで…いまさらなの?…復讐にでもきたのかしら…?」

「んあ?…そんなわけねーだろ。ただお前を玩具にしたいがために精神的に入っただけだよ」

このとき恐らく現実の体が反応していたのなら鳥肌が全身に出来ていただろう…それくらいの恐怖を感じさせる言葉をこの男は何の抵抗もなく言い放ったのだ。

「…そ、そんなの…!?」

「おかしい、とでも言いたげだなぁ!…んん…いいねぇ…現実でかげないのが本当に不幸だ」

突然私の髪を持ち上げ首筋に鼻を当てにおいをかぐマルベリー。いつもならここで「変態!」と突っ込みそうなところだけど今の私の体を支配しているのは恐怖以外の何者でもない…

「…そろそろ麻痺が切れるか…ほら、もう一回飲んどけや」

「…ぐっ!?」

無理やり瓶を口にくわえさせられその中に入っている液体を体内に入れさせられる。これにより私の体は麻痺の時間がさらに上乗せされてしまった。

「クックック…ほらぁ見てみろよ向こう…黒の剣士も死にそうだぜ?」

「…キ、キリト…」

さらに髪を引っ張られ上半身が浮いた状態でキリトが倒れている方向を見せられる。そこにはクラディールがキリトに深々と剣を刺している。

「いいざまだなぁ…さて、こっちはこっちで楽しもうぜ…」

そういいマルベリーは私の上半身を抱え頬に顔を近づけてきた。その顔を横目で見ると舌を出して私の顔をベロリと舐めているのが目に入ってきてしまった。ハラスメント警告も表示されているが今は体が麻痺しているため手でその部分をタッチすることも不可能…あってないようなものよ…こんなものは。

「…や、やめっ!」

「う~ん…甘いなぁ…涙は、どうかなぁ!!」

いつの間にか流していた涙をもそういいながら舐め、大声をあげて何かを言っているマルベリー。でも、もうその言葉すら聴きたくなかった。…こんなことをされたなら、もう死んじゃってもいいわよね……

「リクヤ……」

「また、そいつの名前かぁ!!…いいぜ、その名前すら忘れるように俺を刻み込んで…な!?ぐはぁ!!!」

驚愕の叫びが聞こえたかと思ったらマルベリーの体は遠くへと飛ばされていた。そして支えを失った私の体をふんわりと受け止めてくれた人物がいた。

「…悪い、遅くなった………アスナより早く出たはずなのになんでアスナと同時なんだろうな…」

本気で謝罪の気持ちが入ったその声を聞き、その声の発信源は一緒に来たらしいアスナをみて苦笑していた。

「リ…リク…」

「無理してしゃべるなって…大丈夫、俺はリクヤだ。偽者でもない、本物だ」

「…リクヤ…!」


私にとってその声はどんな勇者よりも、英雄よりも上をいく力強く、でもとても優しい声に聞こえた。
















 
 

 
後書き
リ「…おいおい、マルベリーのモデルさんって現実でもああなの?」

涙「まさか!!!剣道部部長だし、人あたりいいし…少なくともこんなやつじゃない!」

リ「じゃあ何でこんな風に書いたんだよ…」

涙「…時々一緒に帰るときさ、毎回毎回恋話になっていくから嫌なんだよ…」

リ「は?」

涙「そしてその内容が砂糖吐きそうなくらい甘くてさ、嫌になってくるんだよ」

リ「たとえば?」

涙「…見られてないよな、これ…例えばか…一緒ににけつして帰ったとか、
自転車を押してあげたとか、一週間のほとんどはメール10回はしてる…とか」

リ「リア充じゃね?」

涙「なめるなよ…俺がリア充じゃん、っていうと「付き合ってないし」とか言うんだぜ?
聞かれるほうの身にもなってみろよ!」

リ「…確かに自慢だけど…そんなに苦か?」

涙「そいつはクラスの男子の中では人気は高い、そして俺はどん底…もうわかるだろ…
自慢以上のものなんだよ…!!」

リ「…そっか、お前のクラスの男子8人だもんな…」

涙「だから、今回須郷みたいに書かせてもらいましたwwではでは~」
 
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