雲に隠れた月は朧げに聖なる光を放つ
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第一話 復活と異世界召喚
ピッ‥‥‥‥ピッ‥‥‥‥ピッ‥‥‥‥ピッ‥‥‥‥
(‥‥‥なんだ?体が動かない‥‥)
これっぽっちも体が動かない。目も開かない。瞼が異常に重たいのだ。その代わり耳は敏感に働いている。横ですすり泣く声が聴こえる。頬には暖かい感触。俺は無理矢理に瞼を開けることにした。
とてつもなく瞼が重たいので、開けるのに時間がかかる。それでも、なんとか薄く開けることに成功した。知らない天井がある。目だけ動かしてみると、病室のようだ。どうやらあの後、俺はぶっ倒れて救急搬送されたみたいだ。
俺は頬にある暖かい感触の出所がどこかを探す。
‥‥‥すぐに見つかった。セミロングの髪型、モデルのような体格。優しい瞳。しかし、その瞳からは涙が零れ落ちている。俺は、その女の子の姿を凝視した。
ずっと、会いたかった人。
ずっと、愛していた人。
‥‥‥自分が、守ることができなかった人。
(聖‥‥‥?)
‥‥‥どこからどう見ても聖だ。死んだはずの、雲月 聖だ。容姿は、年相応に変化している。俺はありえない事態に混乱する。
(まさか‥‥‥‥そんなことが)
有り得ない。そう心が言っている。しかし、目の前にいるのは紛れもなく聖なのだ‥‥‥。
俺は無理矢理、腕を持ち上げた。そして、頬にある聖の手に自分の手を重ねようとした。
ポスッ‥‥‥‥‥
「?!!」
重なった‥‥‥!しかも感触がある!
(はあ!?どういうことだ!)
「?!コウ!」
聖も気がついたらしい。目を見開いて俺のことを見つめてくる。
「ひじ‥‥‥‥り?」
「コウ!!」
ガバッと覆いかぶさる聖。ギューッと抱きしめてくる。もう二度と、離さないとでも言うかのように‥‥‥。
「かっる‥‥‥お前痩せたか?」
「あ、嬉しいこと言ってくれるなー」
そう、聖は俺に覆いかぶさる‥‥‥というかのしかかって来たのだが、重さをまるで感じなかったのだ。それに、なんだか透けて見える。
「なあ聖。あの時お前は確かに死んだよな?
なのになぜ‥‥‥」
「あー‥‥‥説明しないとだよね。うん‥‥どこから話そうか‥‥‥‥」
しばらく目を閉じて思案する聖。やがて目を開き、語り始めた。
要約すると大体こんな感じだ。
聖はあの時、死んでからとある場所に来たという。そこは幽霊社会というらしく、幽霊として現世に留まる術を教わったとか。例えば足音を消す練習、姿を消す練習などだそう。半年で全ての術を身に着けた聖は、早速現世に戻り俺の近くにいたらしい。
「寂しかったんだよ?声は届かないし、触れることもできなかったから‥‥‥」
「あれ?墓に行ったときは声が聞こえたけど‥‥‥しかも暖かい風が吹いたな」
目が覚めてから少しすると、声も普通に出るようになった。胸はかなり痛いが、聖に会えた嬉しさに痛みを忘れて喋る。
「うーん‥‥‥もしかして霊力の問題なのかな。あの時は夜だったから尚更かも。そして今回、死にかけたから私をハッキリと視認できるようになったんじゃない?」
なるほど、納得できる考えだ。
「てか俺死にかけたの?何があったんだよ」
「あ、聞いてないのか。ええっとね、コウは肺にある血管数百本が断裂したんだって」
「いや結構ヤバイやん」
「その併害で吐血したんだってさ。手術を何回もしてたよ?」
「うそん。手術したって‥‥‥体に何か入れられた?」
「大正解。人工の血管を入れられたよ」
「ええ‥‥‥改造人間じゃん」
こんな感じで雑談をする。約二年半ぶりの雑談は、途切れることなく続くのだった‥‥‥。
ガチャッ
「は!?隠れるね!」
聖が大急ぎでベッドの下に隠れた。体が完全に隠れた瞬間に、看護師さんが入ってきた。
「ファッ!?目が覚めてる!?先生ーー!!」
あっと言う間に去ってしまった。その後すぐに先生が駆けつけた。色々と質問されたが、胸の痛み以外は問題なしだと答えた。そこで俺は詳しい話を聞くことになった。
俺はあの時ぶっ倒れてから、一週間は目が覚めなかったらしい。その間毎日手術をしたとか。倒れたのが8月前半だったので、今は夏休み後半というわけだ。
「君は本当に運が良かったよ。生き残れるかどうかも微妙なラインだったからね」
「Oh‥‥‥」
「あ、そうだ。このことは一切他人に喋ってはいけないと君のご両親から言われたよ。友達にも言うな、とのことみたいだね」
「あ、そうですか。分かりました」
「多分、あと二、三日で退院できるよ。安静にしててね」
そう言って先生は出ていった。
「ふう‥‥‥バレないで良かった」
「バレるもんなの?幽霊じゃん」
「確かに幽霊だから普通はバレないけど‥‥‥たまに見える人もいるから念の為だよ」
聖曰く、霊感の強い人なら普通に姿を確認できるらしく、霊感の弱い人でも気配ぐらいなら察知できる人がいるらしい。見つかると驚かせてしまうので、聖は普段隠れているとか。
「幽霊も大変なんだなあ‥‥‥‥グビッ」
「そういえばコウ、今はハーレム目指してるの?」
「ブホッ」
思わず飲んでいた飲み物を吹き出してしまった。
「ゲホッゲホッ‥‥‥なんじゃあいきなり」
「え?違うの?千秋さんは正妻で若芽さんは側室とかじゃないの?」
「なんでそうなる‥‥‥‥」
「それで、体操で一緒に練習している女の子たちも側室なんだよね?」
「恋愛感情すら持ってないわ!」
「えー、どう見てもあれは‥‥‥」
「知るか!寝る!」
聖相手だと墓穴を掘りまくりそうだったので、俺は寝ることにした。すると聖がベッドに潜り込んできた。
「な、ななななにすんだあ!」
「んん?」
何がなんだか分からないという顔をする聖。
(そうだった、こいつは天然だった‥‥‥)
そう、聖は小学生のときから天然なところがあるのだ。男子が勘違いすることも結構あったのを思い出した。
「というか‥‥‥ホントに幽霊なのかな。俺は普通に触れられるし体温も感じるぞ?」
「うーん。コウがもしかしたら幽霊になりかけているのかもねー。まあ普通に肉体は保ててるわけだし‥‥‥。半分幽霊、みたいな?」
「なんか厨二病みたいだ‥‥‥こりゃあ話せないわ」
「今のコウはミリオタでしょ?」
「おい、なんで‥‥‥って幽霊だから見てたのね」
そう、現在俺はミリタリーオタクなのだ。ふとしたキッカケで第二次世界大戦中の戦闘機の本を読み、そこからどっぷりハマってしまったのである。ハマってからはあっと言う間だ。軍艦、戦車といった類も大好物になってしまった。
まあこのことは隠しているのだが‥‥‥。
ちなみに一番好きな戦闘機は一式戦闘機隼だ。軍艦ならば駆逐艦夕立、戦車はチヌ戦車だ。
「それはさておき‥‥‥コウ、これからどうするの?」
「ん?ああ、体操はもう無理そうだからな‥‥‥負担の少ないトランポリンでもやろうかな」
「あ、それならいい高校があるよ」
「あ、そうなの?教えてよ。調べるからさ」
「うん、その高校の名前はね‥‥‥‥」
その後俺は、高校調べに没頭するのだった‥‥‥。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「‥‥‥本校に入学したみなさん、ご入学、おめでとうございます‥‥」
「ねっみい‥‥‥」
「あはは‥‥呑気だなあ」
‥‥‥‥ここは、高校。俺は聖の薦めてくれた高校に無事入学した。高校、というか中高一貫校だが‥‥‥。ちなみに千秋、若芽、拓人、蜂起も同じ高校だ。左から卓球、器械体操、吹奏楽、マジックをやる目的で偶然にも同じ高校に入学したのである。
ちなみに自慢じゃないが、俺を含めて物凄い実績持ちだ。俺と若芽は器械体操で全国制覇。千秋も全国大会まで出場した強者だ。また、拓人は全国的なコンクールで金賞を取った経験があり、蜂起は世界的なマジシャンとして名を響かせている。
更に偶然なことに、俺たち五人は同じクラスだ。
「‥‥‥以上で話を終わります」
「長えんだよ‥‥‥」
拓人が毒づいた。
「ホント、なんで校長の話ってあんなに長いんだよ」
俺は同調する。どこに行っても校長の話は長い。自然と眠りそうになってしまうのだ。
「まあ、今日はこれで終わりだよ。幸は部活か?」
「そうだな。若芽も千秋も部活だよ。入学以前から体験で来てたからな」
「リアルハーレムしとるなあ。羨ましい」
「拓人は彼女いるじゃん。蜂起もすぐできるだろ」
「は?拓人彼女いんの?」
「え、知らんかったのか」
「お前なあ‥‥‥」
もう用事のない人は下校していいので、俺たちはその後も軽く雑談をした。
そのうち時間がぼちぼちきたので、俺は部活に向かった。更衣室で着替えて別館にある練習場に向かう。この学校の練習場は、体操部とトランポリン部が共同で使っているらしい。聞いた話だと、卓球部やバドミントン部もここで練習する時があるらしい。
「こんちは」
「おう、今日も早いな」
「先に跳んでますね」
そう断って、トランポリンで跳び始めた。胸は問題ない。感覚も特に変わりない。俺は軽く跳び、背中から落ちたり宙返りをする。
風が気持ちいい。俺は、ただひたすらこの風を楽しむ。
「おーい、そろそろ本格的に始めるぞー」
「おいっす」
俺は跳ぶのを止めて声がした所まで行く。見れば部員が全員集まったみたいだ。
「先輩、カッコいいよね‥‥‥」
「あの孤高の狼な感じがカッコいい‥‥‥」
「ん‥‥‥顔が可愛いなあ‥‥‥」
「あんた、後輩に手を出しかねないわね‥‥‥」
ちょっと危険は会話だが、全てスルーだ。男子に睨まれてる気がするのも気のせいなのだ。気のせいったら気のせいなのである。
その後は練習を普通に行い、気がついたら帰る時間になっていた。片付けと清掃、それにストレッチをして解散だ。俺はサッサと着替えて校門前まで急ぐ。そこいるのは、ただ一人。時間的には夜なので、月明かりが彼女を幻想的に照らしている‥‥‥‥。
「あ、コウ。お疲れ様」
俺の姿を確認して、優しく微笑む彼女。
‥‥‥現在の俺の最愛である、千秋だ。入試が終わってから、俺たちはいつの間にかよりを戻し、前より一層恋人らしくなったのである。千秋の笑顔を見て、俺も軽く微笑む。
「ああ、行くか‥‥‥‥」
「あ、コウ待ってよ!」 ドーン
「わっぷ‥‥‥‥お前なあ、いきなり背中に飛びつくのは辞めろって」
「えへへ、ごめんね」
そこに、若芽も飛びついてきた。途端に始まる彼氏争奪戦である。
「ちょっと若芽?コウから離れてよ」
「嫌だよ。私だっていちゃいちゃしたいんだから。千秋こそ諦めてよ‥‥‥」
「こちらのセリフよ!」
バチバチと火花を散らす二人。俺は思わず苦笑する。聖は面白そうな顔をしている。まるで楽しんでるかのようだ。口を挟んでも黙らされそうなので、俺は虚空を見つめることにする。
(そういえば拓人、彼女できたんだよなあ)
俺は思わず心の中で呟く。彼は中学の卒業式に突如告白されたらしい。人生分からないものだ。
「コウ‥‥‥コウ!」
「ん?なんだ?」
「そろそろ決めてよ!どっちがいいのか!」
「うん、逃げさせてもらうわ」
こうなると面倒くさいのでダッシュで逃げる。当然二人は追っかけてくるが、スタミナは俺の方が上だ。イジメっ子に鍛えられたスタミナは伊達じゃない。
「あ、こら!」
「待ってよ!」
「待ってられるか!捕まったら面倒だからな!」
その後、三人による追いかけっ子が始まったのは言うまでもない‥‥‥‥‥。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
高校に入学して半年が経った。この時点で分かったことがいくつかある。
まず、このクラスは顔面偏差値がめちゃくちゃ高い。その中でも特にイケメン&美女は、クラスの中人的人物になっている。とりわけ人気が高いのは、白崎香織と、天之河光輝というやつだ。二人共完璧超人である。他にも苦労人だが美女の八重樫雫と、脳筋マッチョの坂上龍太郎だ。
俺?光輝たちと仲良くやっている。他の四人もそのグループで上手くやっている。
そして二つ目に分かったこと。それはイジメがあることだ。このクラスには、小悪党組がいる。そのリーダー檜山大介が先導して、このクラスのオタクである南雲ハジメをイジメているのである。なぜイジメているのか。その理由は簡単だ。白崎が南雲の近くによくくるからだろう。学校でも超人気の白崎が、ただのオタクに近づくのは許せないとか、そんな理由だ。
ちなみに俺と南雲は仲が良い。俺もある種のオタクなので、仲良くなれたのである。他の人からは単なる世話焼き、としか見られてないみたいだが‥‥‥‥。
とりあえずイジメだけは許すことができないので、表立ってイジメていたら止めるように仲介していた。そのうち陰湿的、かつ辛いイジメになってしまったのだが‥‥‥。
そんなわけで(どんなわけだよ)昼休み。俺は南雲と飯を食っていた。
「って‥‥‥お前なあ。飯それだけか?」
「うん、あまりお腹空いてないから‥‥‥。それにしても緋鷹くんの弁当凄いね。自分で作ってるの?」
「まあな。慣れれば簡単だ。少し教えようか?」
「うーん。早起きできないから遠慮しとくよ‥‥」
「あ、そうだ。この前薦めてくれたアニメ、面白かったぞ」
「あ、本当?良かったよ」
「ミリタリー物大好きだからな‥‥‥感動したよ」
「生粋のミリタリー好きだもんね‥‥‥ノートにある絵とかクオリティ凄いよ」
「あれ?南雲くん。珍しいね、教室にいるの。お弁当? よかったら一緒にどうかな?」
「あ、白崎か」
(しまった‥‥‥気を抜いてた)
「あ~、誘ってくれてありがとう、白崎さん。でも、もう食べ終わったから天之河君たちと食べたらどうかな?」
南雲がミイラのように中身を吸い取られたお昼のパッケージをヒラヒラと見せる。
「えっ! お昼それだけなの? ダメだよ、ちゃんと食べないと! 私のお弁当、分けてあげるね!」
(うわあ‥‥‥クラスメイトの視線ヤバイな)
南雲にグサグサと刺さるクラスメイトの視線。そこに光輝たちも現れた。
「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」
爽やかに笑いながら気障なセリフを吐く光輝にキョトンとする香織。少々鈍感というか天然が入っている彼女には、光輝のイケメンスマイルやセリフも効果がないようだ。
(聖と同じタイプだこりゃあ)
「え? なんで光輝くんの許しがいるの?」
「「ぶふっ‥‥‥」」
笑ってしまった。見れば八重樫も吹き出している。
「やっべ‥‥‥我慢できない。八重樫、大丈夫か?」
「む、無理よ‥‥‥面白すぎだわ」
八重樫と思わず笑い合う。そこに先生も乱入(?)してきた。
「あらあら、仲がいいですね」
この人は、畑山愛子先生だ。担任教師ではなく、社会科の教師だが自分のクラスの人とは仲が良い。
「あ、先生。いやあ、面白くない‥‥‥か。先生とは感性違うし‥‥‥」
「なんか酷くないですか‥‥‥」
「ま、いいじゃないですか」
俺は鞄から改造エアガンを取り出してガンスピンをして遊ぶ。
‥‥‥その時だった。
教室に魔法陣が現れたのだ。その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。
愛子先生が咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫ぶも‥‥‥‥遅かった。
魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったからである。
眩しい。俺は顔を隠しながら、教室にいた人を思い出してみる。聖、千秋、若芽、拓人、蜂起はみんないたのは覚えている。あとは‥‥‥光輝たちと南雲だ。
(さて‥‥‥厄介だがどうなる?)
やがて、光が徐々に収まっていく。俺はすぐに目を開け、周りを見渡した。
まず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。
背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。美しい壁画だ。素晴らしい壁画だ。
「ここは日本じゃないな‥‥‥‥だとしたらどこだ?」
「あ、コウいたいた」
「聖‥‥‥」
「コウ、ここ多分異世界だよ。なんとなくそんな気がする」
「ああ‥‥‥そうだ、他の人は?」
「みんな無事。怪我一つないよ」
「よし、とりあえずあそこにいるお偉い人みたいなのが状況を説明してくれるだろう。悪いが話を聞いててくれ。俺は少し考え事をする」
「了解だよ」
俺は思考を巡らす。とりあえずここが異世界だと仮定する。そしたら、この世界は危機に陥っていることになるはずだ。でなければ、わざわざ別世界から人を召喚する必要性はない。この中の誰かが、勇者だったとする。まあ、おそらく光輝だろう。そんな気がする。普通なら勇者に助けを求め、勇者が世界を救う‥‥‥で終わりだ。
しかし、今まで様々な漫画やアニメを見てきたので別の事柄も予想する。実はこの世界の神が、弄んでいるだけなのでは、という考えだ。
だが、馬鹿らしい気がしたのですぐに考えるのを止めた。俺たちはいつの間にか移動し、今は晩餐会のテーブルについている。
聖からだいたいの情報を聞き出した。どうやら想像してた通りの理由だったらしい。この世界がピンチだから勇者である俺たちに救ってくれ、とのことだ。
「おい、千秋大丈夫‥‥‥じゃねえか」
「コウ‥‥‥怖いよ。なんかあの人たち、狂信者みたいだったし‥‥‥」
「ほう‥‥‥」
「そうだね‥‥‥ちょっと怖かった」
若芽も同意する。このことに気がついたのは、俺たち五人だけらしい。いや、聖も含めて六人だ。
とりあえず目配せをして、「今は落ち着いて寝よう」とだけ伝える。
俺たちは晩餐後、それぞれ部屋を割り当てられた。俺は南雲と同じ部屋だ。
「南雲‥‥‥‥お前はどう思う?」
「この世界のことかな?それなら‥‥‥あの人たちは少し怪しいかな。狂信者の気がする」
「流石だな。俺もそう思ってるところだ」
「天之河くんたちは信じきってるみたいだし‥‥‥嫌な予感がするかな」
「ああ‥‥‥無事、帰れるといいがな」
そのまま意識をブラックアウトする。脳裏には、親の顔を浮かべながら‥‥‥‥。
後書き
ようやく絡みましたね()
次回もお楽しみに!!
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