ソードアートオンライン VIRUS
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もう一つの二つ名
前書き
SAOのアニメが終わってしまった……
回廊結晶の渦を通って来た先は、牢獄入り口だ。腹の痛みを堪え、立ち上がり直にポーションを使って回復する。
「痛ッー……やっぱ、助けるんじゃなかったぜ」
「てめー……殺す殺す殺す!!」
後ろを振り返ると狂っている男、クラディールがいた。
「お前、連れて行かれなかったのか……」
「ウルセーんだよ!!餓鬼がァ!!」
そう言って両手剣を振り回して攻撃しようとする。しかし、その攻撃は大振りのため余裕を持って避けれる。
「お前さ、ここが圏内ってわかってんだろ?そんな攻撃当てたって意味ないこと分かるじゃん」
そう言ってもクラディールは両手剣を振り回し続ける。
「いい加減ウザイって」
背中の両手剣を抜剣すると同時にクラディールの両手剣を弾き飛ばす。そして逆手持ちにすると、開いた腹に横一線に斬り飛ばす。
「……絶対にお前だけは……俺が殺しに行ってやる……」
クラディールはそう言って気絶した。
「気絶する前に行ったことが実行できれば考えてやるよ……さてと、牢獄にぶち込むか」
そしてクラディールを引きずり、軍のメンバーに引き渡した。牢獄の中に入るのを確認して、帰ろうとすると意外な奴から声をかけられる。
「よう。まだ死んでなかったんだな、血塗れた弾丸(ブラッディー・バレッド)」
そう呼ばれて足を止めた。この呼び方は、俺が知る限りあいつらしか知らない。
「お前も元気そうじゃねえか。下のほうの掃除を忘れてないか?ジョニー?」
そう返してから振り向き、牢の中にいる殺人者ギルド、ラフィンコフィンのジョニーブラックに言う。
「はぁー?ウルセーんだよ。ああー、こんなトコに入ってなけりゃお前を殺しにいけるのによ」
「おい、ジョニー、ウルセー」
奥のほうでエストックでソードスキルを懸命に連発するザザの姿が見えた。
「ザザ、あいつが来てるぜ。血塗れた弾丸(ブラッディー・バレット)がよう」
ジョニーブラックがそう言うと、ザザはソードスキルを使うのをやめ、柵に手を掛けて話しかけてくる。
「何を、しに来た?俺らを、笑いに来たのか?それとも、俺らに、殺されたくて、来たのか?」
シュウシュウと息を吐きながら聞いてきたので、俺は来た経路を短く話す。
「ちげえよ。俺が来たのは、お前らのギルドの新規メンバーを捕まえてから、ぶち込んできただけだ。お前等みてえにな」
「調子乗ってんじゃねえぞ、脳筋野郎!!テメーなんかな、俺の毒付きナイフで簡単に殺せるんだからな!!」
そう言って牢の中からナイフを投げてくる。しかし、ナイフは牢の柵の間をすり抜けず、障壁のようなものの阻まれて下に落ちる。
「無駄だ、ジョニー。この、牢屋から、出なけりゃ、攻撃どころか、触ることも出来ねえ」
「そうだ。所詮お前らみたいな快楽殺人者はその中がお似合いだ」
そう言って、帰ろうとする。すると、ザザが小さな声で何かを言っているのを聞き取った。
「お前も、根っこは、俺らと同じ、殺人者なんだよ。あのときのお前、どこか楽しそうだった、じゃねえか」
それを聞かなかったフリをしてその場を急ぎ足で立ち去る。そして、牢獄の入り口まで戻ると、橙色に染められた空を見上げる。
「俺はお前らとは違う。俺は……悪いと思ってた奴でもそいつらの起こした罪も背負って生きていく。それがどんなに自分勝手なことだとしても、今俺に出来る唯一のことだから……」
そう呟いて、視界を戻す。戻した視界の先に走りよってくるユキの姿が目に入った。
「ゲツガ君!!」
俺の胸に思いっきり飛び込んできて、消え入りそうな声で言う。
「ぐすん……ゲツガ君……あの時私、一人になると思った……ゲツガ君が私の前から消えて……一人になるかと思ったよ……」
胸に顔をあて、泣いているユキの頭を優しく撫でなでる。
「ごめんな、お前に寂しい思いをさせて……でも、大丈夫だ。俺はユキを一人にしてどこかに行ったりはしないから」
そういいながらユキを慰める。しばらくしてようやく泣き止んだユキは、まだ涙の溜まってる目を拭って子供のように聞いてくる。
「本当に……本当に私を置いてったりしない?」
「ああ、この世界でも、元の世界に帰っても、俺はお前の隣で歩き続ける」
「ありがとう。ゲツガ君」
そう言ってもう一度抱きついてくる。俺もユキを抱きしめた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
お互いに離れた後は、手を繋いで、はじまりの街の大通りを歩く。その時にあまり話さずにいたため、空気を和ませようとするが何を喋っていいかわからない。
「ねぇ……ゲツガ君」
ユキから口を開く。
「何だ?」
「私たち結婚してるんだよね。何で抱いてくれないの?」
「ぶッ!!」
ユキ、いきなりアウトなことを言うのはやめよう。いくら周りにプレイヤーの姿が見えないからってその言葉を言うか。時と場を考えようぜ。
「ユキ、言ってる意味がとてもいけないような言葉に聞こえたのは気のせいだよな?違うよな?」
「だから、何で一緒に暮らして、一緒の布団の中にいるのにゲツガ君は抱いてくれないの?」
「ユキ、ちょっとそれはだめじゃないですか……特に年齢とかの面で」
「私十六歳だもん。だから大丈夫だよ。それに、倫理解除コードって物もあるから多分出来るよ」
ユキ、なんでそんなものを見つけてるんですか……。そう思ってから、少し考えていった。
「じゃあ、七十五層。その階層が攻略されたらユキを抱いてやる。だから我慢しろ」
「えぇ~。なんでそんなに遅いの」
「俺の心の準備」
そう言うとユキは頬を膨らましてから不機嫌そうに言う。
「……わかった。じゃあ、絶対だからね。七十五層が突破したら抱いてよね」
「エロいことばっか言うな。それよりも何かおかしくねえか?どうして今日はこんなに人が少ないんだ。この街には確か二千人ぐらいのプレイヤーがいたはずだけどな」
「話をそらされた……、でも、それもそうだね。それだけの人がいるのに何でNPCの姿しか見えないんだろう?」
辺りを見回してもNPCばかりでプレイヤーの姿がまったく見えない。しばらく辺りを見回していると三人くらいの子供のパーティーを発見した。近づいて声をかける。三人は声をかけた瞬間、三人は身構える。
「……あなたたち、軍の人ですか?」
軍、それははじまりの街を拠点とする、大きなギルドだ。
「違うよ、私たちは上の層から来たの」
ユキがそう言うと三人は目を輝かせる。
「って言うことは攻略組の人!?」
「うん。私とこの人は攻略組で血盟騎士団っていうギルドに入ってるの」
「スッゲー!!トップギルドじゃん!!ねえ、武器見せてよ!!」
そう言って俺らに近づいて、ねだってくる。それよりもこの人の少なさの事を聞く。
「お前たち、この街の人が見当たらないわけがわかるか?」
「うん?ああ、軍の人たちが徴税とか言ってこの街に住んでいる人たちから金を巻き上げてるんだ。だから、宿とかにみんな籠もってんだ」
「そうか、じゃあお前たちの住んでるとこに連れてってくれないか?こんなトコで軍に見つかるのもなんだし、情報提供代としてシェフが料理を振舞ってやる」
「ホント!?じゃあ着いて来て!!」
そう言って三人は走って行く。その後を着いて行くと、しばらくして教会に着く。三人は教会の勢いよく開けて、入っていく。その後、扉を通ると中には数人の子供と一人の大人の女性がいた。
「サーシャ先生!攻略組のお客さんが来たよ!!」
そう言うと、教会内の全員が黙る。しばらくして、サーシャと言われていた女性が近くに寄ってくる。
「初めまして、私がこの子供たちのまとめ役見たいのものをしているサーシャと申します」
「初めまして、私は血盟騎士団のユキです」
「同じく血盟騎士団のゲツガだ」
そう挨拶を交わした後、子供たちが俺たちに近づいてくる。
「ねぇ、武器見せてよ、武器!!背中の奴でもいいからさ!!」
「こらっ!お客様に失礼でしょ!!すみません、少しはしゃいでるようで」
「別にいいって。この歳だったらこのくらい元気のほうがいいからな」
そう言って背中の両手剣を背中から外して床に置く。そこにわらわらと子供たちが集まる。重てぇ、すごいなどのことを言っている。サーシャはその光景を見て微笑んでいた。
「さてと、サーシャさん。ここにキッチンある?ちょっと、料理を振舞おうかと思ってね」
「本当ですか!?それじゃあ、お言葉に甘えて。キッチンは奥のほうにあります」
「わかった。ユキ、しばらく子供たちと一緒に待っててくれ」
そして俺は、キッチンに行って調理を開始した。今回は相当な人数なのでいつもと違い、相当時間がかかったが、完成した。それを持って、ユキたちのトコに向かう。その時にも何人かの子供に話しかけられる。
「ねぇ、上の層のモンスターとか教えてよ!」
「二人できたってことは、付き合ってるの!?」
「はいはい、まずお前は食事中俺のトコに来い。モンスターの話をしてやる。それと俺とユキはもう付き合いは終わって結婚してる」
そう言うと、子供たちは黄色い声を上げる。そして子供たちの間をどうにか抜け出してユキたちのいるトコに着く。
「料理できたから食べようぜ」
「うん。ゲツガ君の料理とっても美味しいんですよ」
「本当ですか。子供たちも喜びます」
そしてサーシャに言われたとうりに配膳をして、サーシャが用意した席に座る。そして、サーシャは遊んでる子供たちに叫ぶ。
「みんな、ゲツガさんが料理を作ってくれたんで食べましょう!」
そう言うと、わぁーと言って子供たちはばらばらに席を取る。その時に椅子を移動させて俺の横に来る子供もいた。そして、いただきますと言い、食べ始める。
「おいしー!!」
「うまい!こんなの食ったことないよ!!」
子供たちは料理の感想をそれぞれに述べながら、がつがつと食べていく。そして隣にいる子供たちは食べながら俺の話を聞く。
「上の層のモンスターはドラゴン系やビースト系とか色々いたが、やっぱり俺が一番あってよかったと思った奴はレアモンスターのメタルダストドラグニルだな。こいつは俺らの本部がある階層の北にあるダンジョン《灼熱の洞窟》にごく稀に出てくるレア中のレアなんだ」
話を夢中に聞く子供たちに話していると昔の自分のことを思い出す。四歳ごろ、親父の話をよく聞いた。親父の子供の頃に作った秘密基地、友達とやったいたずら。その話は内容は今になってはよく思い出せないがとてもわくわくしたのを覚えてる。そして、話も終わり、ご飯も食べ終わったので、そろそろお暇させてもらうことにする。
「それじゃあ、サーシャさん。私たちはこれで失礼します」
サーシャにユキがそう言うと子供たちは俺らの周りに集まってくる。
「えぇー!!もう言っちゃうの!?」
「武器とか上の層のこともっと話してよ!!」
「こら!!迷惑をかけちゃいけないって言ってるでしょ!!」
サーシャが注意すると子供たちはシュンとする。
「まあまあ、今度また来るからそん時に話してやるよ」
そう言うとシュンとしていた子供たちは再び元気を取り戻し、はしゃぎだす。
「本当にすみません。ご飯から子供たちにお話してもらったり気を使わせてもらって……」
「気にすんなって言ってんだろ。こっちも楽しかったし」
「そう言ってもらえると助かります」
「それじゃあ、私たちはこれで」
ユキがそう言って、俺たちは教会からでた。
「……楽しかったね」
「そうだな。あんなに人に囲まれて食事したのは初めてだから楽しかった」
「速くこの世界から出て、アスナやキリト君、それにこの世界で出来た友達とかと一緒にパーティーしたいね」
「いいな、それ。……でも、しばらくは休みをもらおう。この世界での思い出作りと俺らの結婚したことを数人に伝えに行こう」
「うん。それじゃあ、今度リズのトコに行こうよ。ゲツガ君知ってるでしょ」
「ああ、そうだな。今度行こうな」
そう言って、この世界での俺とユキの我が家のある、エグゼブルに帰った。
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