曇天に哭く修羅
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第一部
始動
前書き
紫闇の修業は一通り完了しましたが黒鋼流の奥義までは覚えていません。
_φ(゚Д゚ )
黒鋼での修業を終えた《立華紫闇/たちばなしあん》を【龍帝学園】へ送り出した《永遠レイア》と《黒鋼焔》
「さあどうなるかねぇ」
紫闇は年に一度だけ行う[夏期龍帝祭]へ参加する為の申請を済ませている。
今日はその予選会。
当然だが試合も有り。
「今の紫闇には丁度良いんじゃない?」
レイアがそう言うのも解る。
この選抜戦出場者は龍帝学園の一年生のみに限定されており、実のところ新人戦。
「ちょうど良いとは思うけど、仮にエンド君や聖持君が出てたら優勝は不可能だよね。後は兄さん達が鍛えた《江神春斗》とか」
「エンドと聖持君は出ない。今は出ても意味が無いって言ってたし。けどもしかしたら春斗君はこの大会に出るかもしれないな」
名前の挙がった三名。
彼等は強い。
今の紫闇には早すぎる。
「ということは一番の問題になるなら現在の龍帝一年で学年序列一位の彼女だね」
焔が候補に挙げたのは金髪のハッピートリガー《クリス・ネバーエンド》
会ったことは無いが知っている。
「今のところ夏期龍帝祭で紫闇と当たって壁になるとしたらあの娘だけだよ。向子さん、会長が何かしないことが前提になるんだけど」
レイアと焔はある人物を思い浮かべた。
龍帝の全体序列一位。
学園で最強の座を4年も防衛する女帝。
龍帝学園の内部に秩序と安寧をもたらしてきた生徒会長の《島崎向子》
レイアは彼女や一部の人間と共に、出来る限りは紫闇の成長を観察していかなければならない立場なので向子との関係が深い。
「紫闇も厄介なもの抱えてるからなぁ」
事情を知る焔がレイアの肩を叩く。
「紫闇は今日から学園を休んでた分を取り返すとして、兄さんは学校の方どうするのさ。今年は顔出してないよね? 座学で強引に卒業資格取ってるけど」
「たまには顔出しておこうか。関東から近畿に足伸ばすのは面倒臭いんだがさくっと学校の全体序列一位を取れば文句は無いだろうし」
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魔術学園の【天覧武踊】
一般的なものは番付勝負。
学年内での序列争いだ。
しかし夏期と冬季の龍帝祭は龍帝学園主催の天覧武踊でも特に盛り上がるもの。
世間からも注目されている。
ここは龍帝の内部に有る中型スタジアム。
江神春斗とクリス・ネバーエンドは観客席で夏期龍帝祭の予選を観戦していた。
結界に包まれた舞台には予選参加者10人が上がり生き残りを懸けたバトルロイヤルが繰り広げられ、ころころと戦況が変わっている。
なお、一定以上の高位序列を有した生徒が参加申請した場合は予選を免除。
自動的に本選出場が決定されるのだ。
「ちょっと。アンタなんでこんな予選見てんのよ。つまんなくない? そんな暇が有ったら早いとこアタシと戦いなさいよね」
クリスは頬杖を突いている。
「退屈なら帰れば良いと思うが。それに俺と戦いたくばもっと強くなれ」
春斗の返事はつれなかった。
この二人は予選には出ない。
しかし両者の立場は違う。
クリスは一年生だけしか出場できない夏期龍帝祭に出場している一年生の中で序列一位なので当然ながら予選試合を免除されている。
春斗は紫闇が黒鋼での修業を初めてから自分で三軍に落ちることを志願。
そして三軍となる。
その後は暫く学園を休んで《エンド・プロヴィデンス》や《的場聖持》と修業三昧の日々を送っていた。
学園に復帰したのは昨日のこと。
別人のように強くなった雰囲気に包まれている春斗に対しクリスが絡むもスルー。
彼は出場申請しなかった。
(エンドと聖持が出ずに俺が出れば、先ず間違いなく優勝する。黒鋼で鍛えたと言えど、立華紫闇も一月半では俺と勝負にならんのは明白)
クリスは眼中に無い。
やる気は認めているが、正直なところ力不足なので戦う価値は無いに等しいのだ。
(雑魚狩りの趣味は無いのでな)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「帰れば良いと思うがって言うけど残ったアンタは一人寂しく観戦することになるわよ? それを可哀想だと思った私がわざわざ付いてあげてるっていうのによく『帰れ』なんて言えたもんね。クソ無礼よアンタ」
春斗は思う。クリス・ネバーエンドに礼儀の何たるかを言われたくないと。
しかし春斗は何も言わない。
言い返したことの何倍も愚痴や文句が返ってくることが解っているから。
「まだ6組も残ってるのよねぇこの予選。アンタに限らず何で見に来てんのよ」
クリスには不評だが客数は多い。
本選や冬季龍帝祭ほどではないが。
春斗はクリスが面白くない試合だと言う気持ちは解るのだが、それは仕方ないこと。
一年生しか居ないからレベルが低い。
なので過激なサバイバルルールで10人同時に戦わせて客の興味を引いているのだ。
しかし、春斗は試合内容を期待して見に来たわけではないので別に構わなかった。
「俺が予選を見に来た理由は闘技者の熱を感じたかったからだ。彼等がどれだけ本気で戦っているかを知りたかったに過ぎん」
次に戦う10人が入ってきた。
予選に望む者は皆一様に必死の形相であり、何らかの目的を抱いて戦う。
(どんな思いで戦っているかは俺には解らん。だが内容を問わず、尊敬に値する。天覧武踊は死者が出ることもまま有るのだから)
出場者から放たれている気が熱い。
それを肌で感じ取る。
春斗は共感して己に活を入れた。
うかうかするな。追い付かれるぞ。
彼はそんな想いを持つことで日々の鍛練を有意義なものに変えようとしている。
(強くなれ立華紫闇。俺はまだお前に追い付かれたりしないから安心しろ。何時か壁としてお前の前に立ちはだかってやるぞ)
後書き
春斗が出ない時点でかなり違うけど、夏期龍帝祭の本選はどんな試合にしようか
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