レーヴァティン
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第百二十九話 博多から福岡へその十
英雄は二の丸も攻めてそこも順調に攻略していった。そうして本丸の正門の前に来たところで再び降伏勧告を行うと。
城主の方から自身の切腹そして魂も消し去るということで兵達の助命を申し出てきた、英雄はその話を聞いて言った。
「切腹には及ばない」
「では」
「そうだ」
まさにというのだ。
「城主もだ」
「助命されますか」
「そうする」
こう紅葉に答えた。
「すぐに城を出る様にとな」
「言われますか」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「これからだ」
「さらにですね」
「福岡城を攻め取ってだ」
「そのうえで」
「そしてだ」
それでというのだ。
「ここはな」
「福岡城をですね」
「修繕してだ」
砲撃で破壊した場所をというのだ。
「それをしつつな」
「お城にですね」
「兵糧や武具を入れてな」
「兵達も入れますね」
「そうする、それは考えているが」
それでもとだ、英雄はさらに話した。
「別にだ」
「城主の人のお命は」
「興味がない、そして降った時はな」
「用いられますね」
「ここまで見事な戦いだった、そして兵達の命と引き換えにな」
「ご自身がと言われることは」
「見事な気概だ」
それを見ての言葉だった。
「だからだ」
「それで、ですね」
「城主の切腹はな」
彼が申し出たそれはというのだ。
「いい」
「そうされますね」
「そしてだ」
「城から退いてもらう」
「兵達と共にな」
「それでは」
「その様に伝えろ」
城主にとだ、実際に彼にそう伝えさせてだった。
霊友は敵兵も城主も城から立ち退かせた、敵の城主は歩いていたが英雄はそれを見て周りに言った。
「城主だ、ならな」
「城主としてですか」
「その立場で」
「馬なり駕籠なりだ」
そうしたものに乗ってというのだ。
「立ち退けばいい」
「その様にですか」
「城主殿に伝える」
「そうされますか」
「俺はそんなことは言っていない」
歩いて去れ、とはというのだ。
「それならだ」
「城主としてですか」
「その立場に相応しい風にですか」
「退いていいですか」
「そうだ」
まさにというのだ。
「だからだ、何なら俺が伝える」
「いえ、それはです」
「棟梁が言われるに及びません」
「そのことは」
周りの部将達が英雄に応えた。
「ですから」
「このことはです」
「我等がです」
「伝えておきます」
「俺でもいいが。敗将にはか」
まさにとだ、英雄は部将達に述べた。
「総大将はそうは声をかけないものか」
「対した時は別ですが」
それでもとだ、智が言ってきた。
「ですが」
「こうした時はか」
「どうも総大将は」
「あえてか」
「直接言わず」
そうしてというのだ。
「家臣に伝えさせる」
「そうしたものか」
「そうかと。では」
「伝えてくれ」
英雄は智の言葉も受けて部将達に告げた。
「ここはな」
「はい、馬なり駕籠なり」
「好きなものに乗って」
「そうしてですか」
「下がればいいのですか」
「その様に伝えろ、敗れても立派な戦いをしたなら」
それならばというのだ。
「恥じることはない、堂々とだ」
「退け」
「そうすべきですね」
「そうだ、そう伝えろ」
こう部将達に告げてだった、英雄は城主にあえて馬に乗らせて退かせた。駕籠ではなかったがそちらだった。
英雄は彼と城を守っていた将兵達が退いたのを見届けてから本丸に入った、こうして福岡城を完全に自分達の城とした。
第百二十九話 完
2019・9・8
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