曇天に哭く修羅
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第一部
再燃
前書き
原作そのままの部分が多い。
この話は書きにくかった。
_〆(。。)
「気分転換でもしておいで」
《立華紫闇》は《黒鋼焔》に勧められて外出したが気持ちは晴れない。
「言われたな。人間には限界が有るって」
【龍帝学園】で教官をしている《斬崎美鈴/きりさきみすず》の言葉を思い出す。
その言葉を痛感している。
《江神春斗》や《クリス・ネバーエンド》に肩を並べたい気持ち、英雄になりたい気持ち、ここで終わりたくない気持ち。
今は全て二の次。
「人間って苦痛に弱いんだな」
紫闇は焔との組み手を振り返りながら河川敷を歩いていたが突如として足を止めた。
見覚えの有る人影。
春斗と《的場聖持》、それに《エンド・プロヴィデンス》の三人だ。
彼等は紫闇に気付き駆け出す。
「貴君、今は何を?」
「無事で良かった」
聖持と春斗が声を掛ける中、エンドだけは紫闇の耳元であることを呟く。
「《永遠レイア》から聞いてるよ」
エンド以外は事情を知らないらしい。
そう簡単に言えるものでもないが。
「立華紫闇。俺は良い。聖持と話せ」
春斗とエンドは紫闇達を二人きりにする。
「なあ覚えてるか紫闇? 初めて俺と出逢った時のこと。そこからの付き合いなんだが」
「幼稚園に入り立ての頃に聖持と会ったのは覚えてるんだが何が起きたかまでは……」
「紫闇は昔からそういう奴だったよ。人にしてもらった良いことは覚えてるくせに自分が他人にした善行は直ぐに忘れるんだから」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あの頃の俺は周りに馴染めず浮いてた。そんなわけで[いじめ]の対象だったんだよ。そこをお前に助けられた。他の奴等は見て見ぬ振り。でも紫闇だけは違った。数の暴力で無茶苦茶されてたけどな」
紫闇の記憶が呼び起こされる。
「あ~有ったなあそんなこと。その後で聖持と一緒に作戦を立ててえげつないリベンジかましてやったっけ。いじめっ子に宣言してたし」
「そうだよ。高笑いしながら『俺の友達に手を出したら許さないぞ』ってね。俺はあの言葉がな。嬉しかったんだよ。あの時の紫闇は誰よりも輝いて見えた」
聖持は紫闇が馬鹿にされる姿が嫌らしい。
「それにしても学園の人間が口を揃えて言いやがるのは無性に腹が立つ。『あんな奴と関わってるのは的場君の為にならない。切り捨てろ』ってな」
彼は震えながら拳を握る。
「ふざけんなよっ! どいつもこいつもっ! 俺の幼馴染みを馬鹿にしやがって!」
聖持は戦闘能力こそ高いものの、基本的には普通の人間に混ざって目立たなくしている。
冷静で落ち着いた人間だ。
声を荒げたりする性格ではない。
「誰に何を言われても絶対に諦めない。俺を助けてくれた時もそうだった。弱くたって俺にはヒーローみたいな存在だったんだよ。そんな紫闇が馬鹿にされるだけの人生を送るなんて我慢できるか……!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
聖持は言う。
エンドも春斗も普段は態度に出さないが、紫闇が学園に来なくなってからは何処かそわそわして学園を欠席することも多くなったのだと。
かなり心配していたらしい。
聖持が紫闇の肩を掴む。
「何をしてても良い。ただ腐らないでくれ。ここまで努力してきたのは何の為だ? 俺は紫闇が負け犬で終わるのなんか見たくない。俺は俺のことを助けてくれたお前が駆け上がってヒーローになる姿が見たいんだよッ!!」
紫闇は目尻が熱くなり涙が浮かぶ。
そして今までのことを話し出す。
学校から逃げて焔とレイアに助けられた後に黒鋼へと弟子入りをしたこと。
今は絶望していることも。
「頑張ろうって思ったんだ。でももう無理だと感じてる。俺にはどうしても、どうやっても苦痛と恐怖を克服することが出来そうにない……」
「紫闇なら出来る。誰が否定しても俺が信じる。だから自分の可能性を諦めないでくれ」
聖持の言葉に紫闇の心が応える。
小さな火が点いた。
(俺は俺を殺す。過去の弱い自分を殺して新しい俺に、強い俺になってみせる)
火は大きくなり炎となる。
「聖持のお陰で立ち直れた。約束するよ。俺は限界を超える。そしてあの《朱衝義人》以上の英雄になるんだ」
紫闇は燃料を得た。
諦めず戦い続ける為の。
「江神を超えたら聖持の背中は見えるか?」
「先ずはクリスにしとけ」
後書き
原作で聖持くんの担当をしてる田中くんは紫闇に対して少し事情と裏が有ります。
打ち切られてしまったのでその辺りは明かされていませんが本心から友達だと思う。
聖持くんも紫闇に対して事情有り。
_〆(。。)
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