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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第七十七話 ビリー、丈に挑みかかるのことその九

「そうだろ、黒いだろ」
「そうだな。確かに黒いな」
「この肌の色だってな。言われたんだよ」
 ダックは笑いながらだ。灰人に対して話すのである。
「肌が黒い奴はな。除け者にされたりするんだよ」
「アメリカってのはそういう国か?」
「そういう奴もいるってこそさ」
 そうした人間ばかりではないとも話すのだった。
「全部が全部そうじゃないさ」
「俺の街じゃ殆んどの奴がそうだった」
「だったな。ひでえものだったな」
 夜血もそれを話すのだった。
「あんたが受けてきた仕打ちはな」
「見ていたな、あんたも」
「ああ。俺はそういうのは嫌いだっていうかな」
 夜血はだ。その充血している目を暗くさせてだった。
 そうしてだ。彼もまただと言うのだ。
「俺も同じだったからな」
「そうだな。あんたも実の親はわからなくてな」
「へっ、親がどうとかっていうだけでだよ」
 二人でだ。自嘲、いや自分達を否定している街に対してだ。嘲笑をして話すのだ。
「俺達は色々言われてきたんだよ」
「それでだ。俺達はそういう奴等を叩き斬る為にだ」
「今の剣技を身に着けた」
「そういうことがあったんだよ」
「今まではそうなんだな」
 ダックは彼等の過去をだ。過去だというのだった。
「そうなんだな」
「?それだけか?」
「そうなんだ、ってだけか」
「そうさ。確かに俺の肌だって黒いさ」
 ダックは陽気に笑いながら二人に話していく。
「けれどそれでもな。楽しくやってるんだぜ」
「楽しくか」
「やってるんだな」
「ああ、そうだよ」
 笑顔で話す彼だった。
「それ以上に楽しくやってるさ。むしろ肌の色がどうかとか言う奴なんて殆んどいないさ」
「それがアメリカか」
「そういう国なんだな」
「まあそうなるな。あんた達の時代は違うけれどな」
 ダックの時代よりもだ。人種問題が露わになっている時代だったのだ。
 そのことはダックもわかっていた。しかしそれでもだというのだ。
「それでもな。その街が嫌ならな」
「アメリカにか」
「行けっていうんだな」
「これからのことだよ」
 それを話すのだった。彼が話すのはこのことだった。
「大事なのはあんた達がこれからどうするかだよ」
「それか」
「これからか」
「明るく楽しくな」
 ここでも笑顔のダックだった。
「やっていけばいいんだよ」
「じゃあ俺達もか」
「やれるんだな」
「ああいう奴もいるしな。似た様な時代だろ」 
 ダックはだ。彼等のところに来るガルフォードを指し示した。彼はだ。
 明るく笑って三人のところに来てだ。こう話すのだった。
「何か暗いな。どうしたんだ?」
「あんた忍者だったな」
「そうだったな」
 夜血と灰人はそのガルフォードにこのことを問うた。
「一人で日本に来て身に着けたんだな」
「そうだったんだな」
「ああ、そうだよ」
 その通りだとだ。ガルフォードは笑顔で三人に話すのだった。
「それで忍者になったんだよ」
「その時に色々言われなかったか?」
「肌がどうとか髪がどうとかな」
「そんなことは気にしなかったからな」
 ガルフォードはだ。そうだったのである。
 彼はやはり明るくだ。二人に話すのである。
 
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