恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第七十七話 ビリー、丈に挑みかかるのことその八
灰人が来てだ。こんなことを言うのだった。
「よお、それならな」
「それなら?」
「俺と一緒にある国に行かないか」
「ある国って何処だよ」
「アメリカって国だよ」
そこだと言うとだ。ダックが言うのだった。
「俺の国だな」
「何だ、あんたの国か」
「ああ、そこに一緒に行くか?」
灰人はこう夜血に話すのだった。
「そうするか」
「そうだな。あそこにいてもな」
「何もならないだろ」
「あんたもそうだな」
夜血は灰人を見て言った。
「それは」
「ああ、俺もな」
実際にだ。彼も暗い顔になって言葉を返す。
そうしてだ。こう返すのだった。
「あんな場所にあれ以上見てもな」
「仕方ないよな」
「それじゃあだな」
「あの坊さんに言われたさ」
ここで灰人のその言葉が変わった。そうしてだった。
「アメリカに行けってな」
「そう言われたんだな」
「だから俺は帰れたらな」
どうするか。そうした話になった。
「アメリカに行くぜ」
「じゃあ俺もあいつを連れてな」
「三人で行くか?」
「そうするか」
そうした話をするのだった。
「そしてあんな街からな」
「出るか」
「詳しいことは知らないけれどな」
ダックはだ。二人の話を聞いてふと言った。
「それでもあんた達も色々あるんだな」
「まあな」
「それは否定しないさ」
二人はその暗い顔でダックの言葉に返す。
「俺達が生まれ育った街だけれどな」
「何の愛着もないさ」
「所詮屑の溜まり場さ」
「そう言う俺達もだけれどな」
そうした世界に住む者特有のだ。卑屈さも見せてだ。
彼等はだ。こんなことも言うのだった。
「そんな中で蔑まれて生きてるんだよ」
「この血のせいでな」
「んっ、そういえばあんた」
ダックはだ。灰人のその言葉であることに気付いた。
彼の髪や肌を見てだ。そうして彼に話した。
「純粋なアジア系じゃないな」
「ああ。俺の親父はな」
「白人か」
それだというのだ。
「それだな」
「そうだ。俺の親父は白人らしいんだよ」
「はっきりわからないんだな」
「誰かまではな」
「そうか」6
「あんたは何も思わないんだな」
灰人はダックのその何でもないという態度を見て述べた。
「俺のこのことを聞いてもな」
「それは俺だけか?」
「あんただけかって?」
「他の奴もそうだろ」
ダックはこう灰人に言い返すのである。
「そうだろ、それはな」
「そうだな。言われてみればな」
「この世界の奴も俺達の世界の奴も同じだよ、それは」
「俺の肌がどうとか髪がどうとかか」
「そんなことはどうでもいいんだよ」
そうだというのだ。
「大事なのはあんたがどう思ってどうするかだよ」
「俺がか」
「俺の肌は黒いだろ」
ダックはふとこんなことを話した。自分のことをだ。
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