戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~
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コラボ特別編:響き翔く天の道
交わる天の道
前書き
とうとう!遂に!コラボ編!
天の道を往き総てを司る女が、伴装者世界にやって来ます!
今回のコラボ先である、通りすがりの錬金術師さん作『天の道を往き、総てを司る撃槍』はこちらからご覧ください。
https://syosetu.org/novel/194579/
平行世界。それは無数に分岐し広がっていく、可能性の世界。
死んでしまった誰かが生きていたり、逆に生きているはずの誰かが死んでいたり。
起きたはずの事件が起きていなかったり、存在しないはずの何かが存在したり。
或いは、見知った誰かが平行世界では、全く別の性格をしていたり……。
これは、そんな平行世界からの来訪者との不思議な出会いから始まる、ひと夏の物語だ。
∮
「ほらほら翔くーん!早くしないと置いてくよー!」
前方を走って行く彼女が、無邪気に微笑む。購入した夏服やサンダル、いくつかの化粧用品の入った紙袋を両手に、翔はそれを追いかける。
晴天の夏空の下、翔は響と、市内のショッピングモールまでデートに来ていた。
「響、気持ちは分かるがはしゃぎ過ぎだぞ……」
「ごめんごめん!やっぱりわたしも持った方がよかったね」
「ああ……。全部持つと言い切ったが、まさかここまで買うとは予想外だったな……。響がお洒落に気を使うようになるなんて、思いもしなかったぞ」
「翔くんにもっと可愛いって、言われたいんだもん。スキンケアとか、髪のお手入れの仕方とか……難しいし、手順も多くて大変だけど。だとしてもッ!翔くんの事を思い浮かべると、へいき、へっちゃらなんだ~♪」
「響……」
「えへへ~♪」
翔との同棲を始めてから、響は少しだけ変わった。
未来や詩織、翼や友里らからアドバイスを貰い、女子力を磨き始めたのだ。
異性として意識し、告白し、同棲までしている翔にもっと可愛い自分を見てもらいたい。
そう思うようになった響は、生来の素直さから先達のアドバイスを見る見る内に吸収して行った。
最近は髪の毛がサラサラし始めていたり、肌のツヤが良くなって来ており、確実に成果が出始めていた。
ちなみに、クリスの方も愛するOUJI手ずからのマネジメントにより、元々高かった美少女度がメキメキと上がっている事を特筆しておこう。
さて、そんな二人だったが……その平穏を破壊する者が迫っていた事を、二人は知る由もなかった。
「キシャアァァァァァァ!」
耳に入って来たその『鳴き声』に、二人は反射的に身構える。
頭上から飛び降りてきた緑色の影を躱して、バックステップで距離を取り、その姿を確認して……翔は驚きに目を見開いた。
「え……?」
夢ではないかと目を疑う。
しかし、目の前の怪物は現実に今、唸りながら二本の脚で立っている。
「翔くん、この緑色の虫っぽいのって……もしかして!?」
「ワーム!?いや、ネイティブか!?」
そう。現れたのは、両手に鋭い爪を持ち、頭にはカブトムシのような一本角を生やして、全身が緑色で蛹のような姿をした異形の怪人……。
それは翔が愛好する特撮ドラマ、『仮面ライダーシリーズ』に登場する怪人の一人。2006年放送、平成ライダー第七作目にして、仮面ライダー生誕35周年記念作品。『仮面ライダーカブト』に登場する地球外生命体、『ネイティブ』と全くの瓜二つであった。
「きゃあああああ!」
「バッ!バケモノだぁぁぁぁ!」
悲鳴を上げ、ショッピングモールにいた人々が次々と逃げ出して行く。
翔と響は買い物袋を手放し、一箇所に集まると背中を合わせて構えた。
「シュゥゥゥゥゥ……」
「どうやら友好的な個体じゃないらしいな……。響、離れるなよッ!」
「ッ!翔くん!一匹じゃないッ!」
周りを見回すと、ネイティブは六体ほど。幸い、何れもまだ羽化はしていない。
「まだ蛹体か……。響ッ!分かってるな!?」
「うんッ!成長する前に倒すんだよねッ!」
この夏休み、翔に手伝われて早めに課題を終わらせた響は、翔との特撮鑑賞に明け暮れていた。
弦十郎のOTONA流鍛錬の一環でもあったが、それ以上に、翔の好きな物を知りたかったというのが大きい。
無論、それは翔も大歓迎で、響にも入りやすそうな作品から視聴していたのだが、丁度つい昨日、鑑賞を終えた作品の中に仮面ライダーカブトも含まれていたのだ。
故に、ワーム及びネイティブの性質は響も知っている。
サリスの状態なら、まだ通常兵器でも倒す事はできる。しかし、時間が経つとワームは成虫体となり、周囲とは異なる時間流を移動出来る能力、『クロックアップ』が使用可能となるため、手が付けられなくなってしまうのだ。
何故、目の前に本物のネイティブが居るのかは分からないが、彼らが人間を襲おうとしているのは確実だ。
ならば、自分達は戦わなくてはならない。今この場に、槍と弓を携えているのは二人だけなのだから。
「──Toryufrce Ikuyumiya haiya torn──」
「──Balwisyall Nescell gungnir tron──」
聖詠と共にギアを身に纏う二人。
直後、異形の怪人達は二人目掛けて襲いかかった。
∮
「ぎゅっと握った拳、1000パーのThunder!解放全開ッ!3!2!1!ゼロッ!」
ルナアタックを経てリミッターが幾つか解放され、新たな姿となった響の拳が、ネイティブ達の身体を打ち抜く。
進化したガングニールの一番の特徴である、新たに追加された薄い黄色のマフラーが、動く度にはためく姿はまさにヒーロー。
一方、翔の生弓矢もまた、ルナアタックを経て進化している。
こちらはギアのデザインがより鋭角化し、アーマー部分の装甲面積が増えていた。
両腕の篭手部分にも赤が入り、両脚のアーマーはシャープな形状へと変化し、より速く動けるようになった翔の手足が、ネイティブらの外骨格を鋭く貫き、火花を散らす。
『翔!響くんッ!一体何があった!?』
仮設本部から、弦十郎の通信が届く。翔は歌い続けている響の代わりに、ネイティブを相手しながら現状を報告した。
「現在、俺達を狙って来た謎の敵と交戦中!」
『何だとぉ!?』
「叔父さん!驚かないでッ、聞いてほしいんですがッ!こいつらはネイティブ……“仮面ライダーカブト”に出てくる怪人なんですッ!」
『怪人、だとぉ!?だが、どうしてそんなものが!?』
鉤爪を受止め、受け流すと回し蹴りを決める。
「わかりません。しかし念の為、街中のカメラにサーモグラフィーを──ふッ!」
迫って来たネイティブの顔面を殴りつけ、後方へと吹っ飛ばす。その瞬間、手刀の形にした両腕を振るった。
〈斬月光・乱破の型〉
響の拳と合わせ、あっという間に二体、いや、三体の蛹体が緑色の炎を上げて倒れる。
残り三体も仕留めてしまおうとした、その時だった。
突如、三体のサリスの身体が高熱を放ち、赤く変色していく。
「ッ!まずいッ!」
翔がアームドギア、生太刀モードを取り出すも間に合わず、三体は脱皮し、成虫へと姿を変えた。羽化に成功してしまったのだ。
赤い身体の個体は、右腕が巨大な鉤爪になっており、全身に棘を生やしたダニの怪人……アキャリナワーム。
赤褐色の身体に、右腕が触手鞭となったバイオリンムシのような姿の怪人……ビエラワーム。
黄色い身体に褐色の斑紋を持つ、カブト本編では全く見覚えのない、ミイデラゴミムシのような特徴を持つ怪人…… 。
三体は羽化すると共に、斬りかかってきた翔の目の前から一瞬にして消えた。
「ッ!響ッ!──がはっ!?」
振り返り、響の名前を呼ぶ翔だったが、次の瞬間全身を何かに打たれて吹き飛ばされる。
「翔くんッ!──うわあッ!?」
響もまた、見えなくなった敵からの殴打に後退り、後方へと飛ばされると背中からぶつかった街路樹をへし折り、地面を転がる。
起き上がろうと地面に手を着いた時、翔と響の目の前に、三体が再び姿を現した。
「クロック……アップ……。映像で観た通り……いや、それ以上か……ぐっ!?」
「ッ!翔くん……ッ!」
ビエラワームの触手鞭が直撃し、翔が後方によろける。
追い討ちとばかりに飛びかかったアキャリナワームの鉤爪が命中し、翔のギアからから火花が飛び散った。
「うわああああああッ!?」
地面を転がる翔へと近寄り、アキャリナワームの左手が、翔の首を掴んで持ち上げる。
『我らの計画最大の障害、シンフォギア装者が二人もいるのだ。まとめて始末し、利用させてもらうとしよう』
ようやく喋ったアキャリナワームを、翔は首を絞められながらも睨み付ける。
「ぐッ……目的……?地球侵略でも……しようっ、てか……」
『この惑星を我らの新天地とする為にも……カブトに次ぐ障害である貴様らシンフォギア装者は、根絶やしにしてくれる!さあ、くたばるがいい!』
アキャリナワームの右腕に赤い電撃が走る。クロックアップという別世界の物理現象による連続攻撃からのダメージは、既に規定値を超えている。
この一撃が命中すれば、翔が無事で済む保証はない。直感的に響はそう察した。
「ダメッ!翔くんッ!」
『シャァァッ!』
立ち上がり、翔の元へと向かおうとする響。しかし、ミイデラゴミムシ型のネイティブがそれを許さない。
口から噴射されたガスが、響の顔に吹きかけられる。
「ッ!?ゲホッゲホッ……臭ッ!ゲホッ……」
『キシャアァァァッ!』
咳き込んだ隙を狙い、ネイティブの両手から生えた鉤爪が響を襲う。
避けるどころか、目を閉じてしまった事でどこから攻撃されるのかも分からず、直撃を逃れることは出来ない。
ようやく視界を取り戻した頃には、ギアから火花が飛び散っていた。
「ッ!ううっ……」
『さあ、とっとと楽になれ……』
膝を着く響の目の前で、アキャリナワームの右腕が振り上げられる。
呼吸が出来ずに藻掻く翔へと、無慈悲に突き出される鉤爪。
響の口から悲鳴が飛び出すかと思われた、まさに絶体絶命の瞬間だった。
──天は二人の元に、一人の太陽を導いた。
『ぐうぅっ!?』
突如、戦場に響いた何発もの銃声。アキャリナワームの背中から火花が飛び散り、翔はその魔の手から解放されて咳き込んだ。
突然の事に驚き、慌てて後ろを振り返る響。
ネイティブ達も銃声のした方向を振り返ると……そこに居たのは、彼らが最も恐れる者だった。
『貴様は……このタイミングで現れるかァァァッ!』
「あの人が言っていた……。私は世界の中心。ならば世界は私が救ってやる」
そこに立っていたのは、重厚な銀色とオレンジの鎧に全身を包み、銀朱色をしたカブトムシ型のメカを銀色のベルトのバックルに装着させた戦士。
太陽の神にして光速の貴公子。天の道を往き、総てを司る者……。
響も翔も、その名前と姿をよく知っていた。
『仮面ライダーカブト マスクドフォーム』……目の前に現れた本物の仮面ライダーに、二人は二つの意味で驚きを隠せなかった。
「仮面ライダーカブト!?でも、その色は……」
「それに、その声って……わたし!?」
カブトは二人を交互に一瞥すると、手にしているカブトクナイガン ガンモードの引き金を引き、三体のネイティブを撃ち抜く。
「伏せろ」
「え?」
カブトがベルトのゼクターホーンに手を添える。
翔はその一言の意味を即座に理解し、困惑から動きが止まっている響に向かって叫んだ。
「響、伏せろ!アレに巻き込まれるぞ!」
「あッ!」
響が慌てて身を伏せると、カブトはゼクターホーンを反対側へと倒し、あの言葉を呟いた。
「キャストオフ」
【CAST OFF】
次の瞬間、マスクドフォームのアーマーが全てパージされ、四方に飛び散る。
他の二体は躱したり、弾いたりする中、飛びかかろうとしていたビエラワームが、飛んできたアーマーの直撃を受けて吹き飛ばされた。
【CHANGE BEETLE】
鎧の下から現れたのは、カブトムシを模した銀朱色の鎧に身を包んだ戦士……仮面ライダーカブト ライダーフォームだ。
ネイティブ達は一斉にカブトの方へと向かっていく。
やはり、色がガングニールに近い事が気になりながらも、響は翔の元へと走った。
「翔くん!大丈夫!?」
「ああ、なんとか……。それより、あのカブトとネイティブはいったい……」
【CLOCK UP】
次の瞬間、カブトもネイティブも一瞬で姿を消した。
代わりに周囲で断続的に、何かがぶつかり合う打撃音だけが響き渡った。
何が起きているのかは理解しているが、やはり、認識出来ない時間軸での彼らの戦いは、見ている側からすれば高速戦闘にしか見えない。
本物のクロックアップの凄まじさに言葉を失い、二人はそれを両の目に焼き付けることしか出来ないでいた。
【CLOCK OVER】
そして数秒の後。カブトが姿を現した頃には、三体のネイティブは姿を消していた。
どうやら逃げたらしく、漂う刺激臭だけがその場に残されていた。
ギアを解除した響の肩を借りて立ち上がると、同じくギアを解除した翔はカブトに向かって声をかける。
「ありがとう、お陰で助かった」
「翔くんを助けてくれて、ありがとう。カブトさんっ!」
カブトは無言で二人を振り返る。
何も言わずにじっとこちらを見ている姿に、翔は疑問に感じていた事を問いかける。
「ところで、君はカブト……なんだよな?その体格と声、天道さんではないみたいだけど……」
「ああ、そうだ!ねえ、どうしてわたしと同じ声なのッ!?」
しかし、カブトが返した答えは二人の予想に反するものだった。
「ッ!?天道……だと!?」
ベルトのカブトゼクターを外し、変身を解除するカブト。
その姿はなんと、響と全く瓜二つの容姿をしていた。いや、喋り方や表情、服装を除けばほぼ完全に同一人物だ。
カブトに変身していた響は、翔に迫ると矢継ぎ早に喋りだした。
「まさか、この世界には『あの人』がいるのか!?お前はあの人を知っているのか!?教えてくれ!!」
「えっ!?あっ、あの人……?」
「“天道総司”だ!天の道を往き、総てを司る男の名だ!さっきお前が口にしていただろう!?この世界にはあの人の物語があるんだな!?」
「あ、ああ……。丁度昨日、全話鑑賞し終えた所だぞ?」
「なにッ!?それは本当か!?」
「ちょ~っとストップ!二人とも、距離が近いよッ!」
グイグイと翔に迫って行くもう一人の自分に耐えかねて、響は少し頬を膨らませながら二人を引き剥がす。
「ッ……す、すまない……。なにぶん、かれこれ10年以上はあの人の居ない世界で生きて来たものだから、つい……」
翔から離れると、もう一人の響は我を忘れていた事を思い出し、気まずそうな顔でそう言った。
「この世界って言ったよね?って事はあなたは、もしかして違う世界の……」
響からの問いに、もう一人の響は一旦目を閉じると、人差し指を立てて天を指さした。
「あ……」
「そのポーズは……」
そのポーズが何であるのかに気付く二人。あまりにも洗練され、本人と寸分違わぬそのポーズに、二人は目を釘付けにされた。
天の道のポーズ。名乗りを前にこれを取る、という事はその後の流れは理解している。
予想通り、彼女はこう名乗った。尊敬してやまない天道総司を真似して、自らを生き写しにした彼女の名は……。
「あの人が言っていた……。私は天の道を往き総てを司る女、立花響」
「別の世界の……響……」
「仮面ライダーの……わたし……」
天の道を往く女と、伴装者の少年が愛する少女。二つの太陽が出会い、今、誰も知らない物語が動き始めた。
後書き
天道撃槍コラボ第1話!如何だったでしょうか?
遂にとうとうこの日を迎えられたこと、とても嬉しく思います。
短くて3話、長くても4話くらいの計算です。
また、天道撃槍の方では、天道響視点で物語が展開されます。そちらも併せてお楽しみください!
あ、それと活動報告にハロウィン回の企画を上げています。
皆さんの意見で、ビッキー達の衣装が決まる!
次回、響き交わる伴装者は──デッデデデッ
翔「平行世界?」
弦十郎「そうだ。ギャラルホルンは、この世界と平行世界を繋げる事が出来る、謎多き完全聖遺物だ」
クリス「ホントにあたしらが知ってる響とは全然違うな……」
響「もうっ!翔くんなんか知らないッ!」
未来「あんな響、初めて見た……」
純「ネイティブが二人の姿を既にコピーしている可能性って、有り得るんじゃないかな……って」
天道響「絆とは決して断ち切る事の出来ない深いつながり。例え離れていても心と心が繋がっている……」
『天の道を往く女』
天の道を往き、総てを司る!
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