戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~
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第5楽章~交わる想い、繋がるとき~
第47節「デート大作戦」
前書き
祝・初のデート回っ!
でも期待されてたほど濃厚さに欠けてたら、次の回の砂糖を増量して埋め合わせますので!
では、お楽しみください!
「……遅いわね。あの子達は何をやっているのよ」
公園の池に架けられた橋の前。翼は腕時計を見てそう呟いた。
待ち合わせの時間は既に過ぎている。それなのに、言い出しっぺの未来と響がまだ来ていないのだ。
「翔、やはり迎えに行くべきだったのではないか?」
「待ち合わせの時は、予定より早く到着。なおかつ、相手が予定より遅れても待っている事。相手との入れ違いを防ぐ事と、女の子はおめかしに時間をかけてしまう事を考慮すべし……。って、前に親友が言っててさ」
翼も翔も、今日は私服だ。目立たないよう、翼は帽子を被って顔をかくしており、翔も一応周囲を警戒している。
「そういえば、お前の親友はまだ見つかっていないのか?」
「藤尭さん曰く、逆探知の結果は隣町の山道からだったらしい。調査員の人達が今、その山を捜索しているんだってさ」
「そうか……。見つかるといいな」
「純の事だし、きっと雪音と一緒にフィーネから逃げ続けてる、なんて可能性も有り得なくはない。心配ではあるけど、絶対帰ってくるはずだ……。あいつはそういう男だよ」
本当は翔も、今でも親友が心配だ。しかし、今日は姉の貴重な息抜きの時間にして、せっかく普通の女の子らしく過ごせる時間だ。逃す訳にはいかない。
「すみません、翼さ~んっ!翔くんごめんっ!」
と、そこへようやく待っていた2人が走って来る。
「遅いわよ!」
「はあ、はあ……。申し訳ありません。お察しの事と思いますが、響のいつもの寝坊が原因でして……」
息を切らして膝に手を置く二人だったが、翼を見て驚く。
私服姿の翼を見るのは初めてだったからだ。
「まったく……。時間が勿体ないわ、急ぎましょう」
さっさと出発しようと歩き出す翼を見て、響は呟いた。
「すっごい楽しみにしていた人みたいだ……」
「姉さん、昨日はずっとニッコニコしながら私服選んでたらしいぜ?緒川さんも手伝ったらしい」
「「へ~……えっ!?」」
緒川さん経由で知った翔からの暴露に、響と未来が驚きの声を上げる。
そう、緒川が私服を選ぶのを手伝っていた……という事実に。
「──ッ!誰かが遅刻した分を取り戻したいだけだッ!」
頬を赤らめながら怒鳴る翼に、3人は肩をビクッと震わせた。
「え、えへへ……翼イヤーは何とやら~」
「ツヴァイウィングは空を飛び、翼ビームは蒼ノ一閃……かな?」
「それいつの時代の曲?」
古のアニソンネタに、未来がツッコミを入れる。
そのツッコミに笑いながら、翔は響の私服姿をじっと見つめる。
「……翔くん?その……何か変、かな?」
「いや……いつもと全然印象違うけど、よく似合ってるなぁ……と。特にこの花の髪留めとか、可愛いと思う……」
「えっ!?あっ、ああ……ありがと……。その、翔くんもその服、似合ってるよ……」
「お、おう……そりゃ、どうも……」
少しだけ頬を赤らめながら、そんな会話をする初々しい2人。
それを見て、未来と翼は微笑むのだった。
「ほら、早くしなさい。先に行くわよっ!」
「ほらほら、早くしないと時間足りなくなっちゃうよ!」
「あっ!翼さん、待ってくださいよ~!」
「姉さんと小日向、既に楽しそうだな……」
翼と未来を追いかけるように、翔と響は足を速めるのだった。
まずはウィンドウショッピング。雑貨屋に並んだキャラクターグッズを見て回った後、映画館へと向かう。
見る映画は選ぶまでもなく、恋愛映画だった。
翼と未来はここで、一つ手を打つ。
「はい、これが響の席ね」
「こっちは翔の分よ」
「ありがとー。って、未来!これ……」
「しーっ」
響の言葉を遮り、未来は耳打ちする。
「せっかく隣同士にしたんだから、せめて手ぐらい握るのよ?」
「そっ、そそそそんなこと言われたって……!」
「風鳴くん。わたし、ポップコーン買ってくるから、先に入ってて」
そう言うと未来は売店の方へと駆け出していった。
「あっ、未来!」
「姉さん、小日向を任せられるか?」
「任せて。直ぐに合流するわ」
そう言って翼も未来の後を追う。
それを見送ると、翔は響の方を見る。
「じゃあ、先に座っとこうか」
「そ……そう、だね……」
「どうした立花?」
「なっ、なんでもない!ほら、行こっ!」
そう言って2人は指定された席に座る。ちなみに席の順番は左から順番に未来、響、翔、翼だ。
「その……楽しみだね、映画」
「『HAPPY LOVE』、とあるカップルが艱難辛苦を乗り越えて結ばれるまでを描いた作品、だったな。あらすじだけ見るとベタなのに、最近流行ってるんだっけ?」
「そうそう。なんでも、あらすじだけはベタなのに、蓋を開けたらどうあっても泣いちゃう作品なんだって」
「へぇ、そんなにか。そいつは気になるな……」
映画の話題でしばらく時間を潰す。お互い、いつもと違う服装にドキドキしながらも、いつもと変わらない会話で盛り上がり、気づけばすっかり緊張は解けていた。
「上手く行ってますね」
「だな。さて、我々もそろそろ座るとしようか」
その様子を、ホールの入口からそっと見守る2人。
タイミングを見計らうと、ポップコーンと飲み物を手に、2人はそれぞれ翔と響の隣へと向かって行った。
∮
映画終盤、感動のクライマックス。女性陣3人は泣きながら、スクリーンに映された男女の行方を見守る。
ハンカチ片手に見入っている未来。指先で涙を拭う翼。
そして一番泣いているのは響であった。
「……」
スクリーンに目をやりながらも、翔は隣の響へと意識を傾けていた。
感動の涙だと分かってはいる。しかし、やはり響の泣いている顔を見るのは、少々思うところがあった。
何と言えばいいのか、彼の中の庇護欲が彼を掻き立てて仕方が無いのだ。
ふと、翔の視界に入ったのは、肘掛けに置かれた響の手だった。
涙も拭かずに見入ってしまっている為、その集中を割くことは躊躇われる。
しかし、それでも彼は抗うことが出来ずにその手をそっと掴んだ。
「っ……!」
響が驚いて翔の方を振り向く。翔は照れ臭そうに頬を掻きながらも、視線をスクリーンへと逸らした。
響はしばらく翔の方を見ていたが、やがて頬を赤らめたまま、スクリーンへと視線を戻す。
映画の内容よりも甘い空気が、二人の間を漂っていた事は言うに及ばず。
その後、響はエンドクレジットまで、その左手に誰よりも大好きな人の温もりを感じ続けているのだった。
もっとも、映画の内容が結構飛んでしまったのは、言うに及ばず。
しかしこの程度、得られた時間に比べればきっと安いものだろう。
∮
「良かった……本当によかった……」
映画が終わった後で購入したソフトクリームを舐めつつ、翼がそう呟く。
「最後はどうなることかと心配しましたけど、タイトルは嘘をつきませんでしたね……」
ストロベリー味のソフトクリームを舐めながら、未来もその言葉に同意する。
「ねえ響。響はさっきの映画……」
未来は響の方を振り向いて……何かを察したような表情になった。
響は先程の事を思い出し、少々頬を赤らめていた。お陰で抹茶味のソフトクリームが溶けかけている。
「響!溶けかけてるよ!」
「えっ!?わっ!危ない危ない……」
慌ててソフトクリームを全力で舐める響。その後ろでは、同じく頬を赤らめた翔が、気を紛らわすかのようにチョコレート味のソフトクリームを舐め続けていた。
「響、映画見てる間に何かあった?」
「いっ、いや、そのっ!ななななんでもない!」
「そう?ならいいけど……。次はお洋服見に行こっ!」
「そっ、そそそそうだね!」
誤魔化すようにあたふたとする響を見ながら、翼は翔にこっそりと耳打ちした。
「翔、さては立花と何かあったな?」
「なっ!?ね、姉さん!何かってなんだよ!?」
「何だ、てっきり立花と手でも繋いでいたかと思ったが……」
そう言った瞬間、より一層頬を赤らめた弟を見て翼は悟った。
「図星か」
「い、いいだろ別に……」
「お前は本当に立花に首っ丈だな」
「ッ!?……やっぱ姉さんにはバレてるか……」
観念したように呟く翔を見て、翼は微笑む。
「翔、これはあなただけにする話なんだけど……実はこのデート、翔のために計画されているの」
「え?」
「小日向にもバレてるのよ?立花への片想い」
バレていると言われ、思わず手で目元を覆ってしまう翔。
姉だけでなく、未来にもバレていた。そのショックは計り知れない。
「デートは暫く続くから、その間に頑張って、立花に告白するタイミングを掴みなさい。私は翔の事、応援してるから」
「姉さん……」
「そうと決まったら、次はショッピングよ。荷物が一気に増えるかもしれないけど、よろしくね。それから、呉服店での試着では立花をしっかりと褒めちぎってあげる事。わかった?」
「え、あ……ああ。……ありがと、姉さん……」
照れ臭そうに感謝を伝える弟を、翼は軽く撫でると未来に声をかける。
「小日向、次の店は?」
「向こうです!行こっ、響!」
「ちょっ、未来!あんまり引っ張らないでよ~!」
この後、服屋での試着やレストランでの昼食、翼に気付いたファンを撒いて逃げるなど、いろんなイベントがあったが、どれも告白するタイミングには及ばなかった。
それでも2人は互いに相手を意識しては、顔を赤らめながら、その機を伺い続けたという。
∮
それからしばらく。4人はカラオケにやって来ていた。
翼が子供の頃から憧れていた歌手の演歌を披露したり、翔が先日出会った仲足千優の出演する特撮ドラマの主題歌を熱唱するなど、各々自分の好きな曲を歌い切った。
歌った曲の数が合計で50に到達する頃、翼がある提案を投げかける。
「よし。翔、ひとつ勝負をしないか?」
「今日こそは負けないぞ、姉さん!」
「勝負ですか?」
響が首を傾げる。
それを見て翼は、楽しげに笑いながら説明した。
「私と翔は、カラオケに来る度に点数を競って勝負するの。負けた方がカラオケ代を奢るルールよ」
「えっ!?それ、翔くん勝ち目ないんじゃ……」
「確かに、これまで姉さんに勝てた事はまだ1度もない……。でも今日こそは負けないからな!俺だってシンフォギア装者になったんだ!負けるものか!」
翔くん歌わないじゃん、むしろ演奏する側じゃん。
そう突っ込みたくなったが、盛り上がっているので敢えて言わない未来であった。
「だが、今回はただの勝負ではないぞ?今回はな……デュエット対決だ!」
「デュエット対決、だとぉ!?」
その一言に翔は目を見開く。
「私と小日向、翔と立花。この2組に分かれての勝負とする!デュエットは二人の息がピッタリ合わなければ高得点は狙えない……ハンデとしては充分だろう?」
姉の不敵な笑みに、その意図を察する翔。
未来は響の方をポン、と叩いて翼の隣へと移動した。
「いいだろう!その挑戦受けて立つ!立花、やるぞ!」
「えっ!?う、うん!翼さんと未来が相手でも、負けられない!」
「じゃあ、先行と後攻を決め次第、選曲ね」
こうして勃発した、姉弟カラオケデュエット対決。果たして翔は、響と2人で歌いきる事が出来るのか……。
ジャンケンで順番が決まり、決戦の火蓋が切って落とされた!
後書き
カットすべきでなかった気がする点が割とある気がする。でもそれは敢えて、皆さんの脳内補完に任せますね!
職員A「有給取れてよかったー!」
黒服B「ジャンケンに勝てて良かったですね。それにしても、古今東西こんなにもしょーもないジャンケンがあっただろうか?」
職員A「勝ちたい理由が休暇そのものよりも、『翔くんと響ちゃんの初々しいイチャイチャを直接この目で見たいがため』ってのが中々ねぇ。でもしょーもないという理性をかなぐり捨てて、これにはそれだけの価値があると断言するわ!」
黒服B「やれやれ。まあ、彼らから託されたこのカメラに色々バッチリ収めたものの、映画館やカラオケにまでは流石に着いていけないのが辛いわ……」
職員A「あ、カラオケの方に関しては無問題よ」
黒服B「どうして?」
職員A「新入りにして、見守り隊一番隊隊長のエージェントAが録音しているわ!」
黒服B「なんですかその真選組一番隊隊長みたいな肩書き!ハッ、まさかそのセンスと頭文字……まさか姉と天羽々斬にかけて……」
尺の都合でカットされたあれやこれも、見守り隊に入ればライブラリから閲覧可能!
更に今までのイチャラブもまとめて視聴・鑑賞できるぞ!
次回!翔と響、意を決して遂に告白!?
砂糖の準備は充分か!!
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