魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica59其は世界をも凍結させる冬の化身なる者~RiangScelto~
前書き
あ、次でエピソード5最終回です。
日常編はすべてこのEp5に入れると言ってましたが、あまりにも長くなるのでラストエピソードにも回すことにしました。
まぁ日常編は、一度事件編を完結させてから後々入れていく予定なので、投稿がいつになるかは私も判りません。ごめんなさい。
†††Sideルシリオン†††
今どきメールではなく手紙で決闘場所を指定してきたリアンシェルト。フィヨルツェンの時はアウストラシアだったが、今回指定されたのはシュトゥラの座標だった。荒野だが、山の形などから魔女の森があった場所辺りだろう。そう、近くには俺やシグナム達グラオベン・オルデンが拠点としていたアムルがあることになる。
「リアンシェルト・・・」
そんな場所にあの子は居た。フリルの付いたハイネックの純白のロングワンピース。胸元にはサファイアのブローチ。その上から青のクロークを羽織っている。完全な戦闘モードのリアンシェルトだ。
「卑怯だ、と言ってもいいか?」
手紙と一緒に送られてきた封筒に同封されていたカード。フィヨルツェンも使っていたが、転送魔法を発動できるカードだ。ソレを使ってここまで飛ばされてきたわけだが、そこで俺たちを待ち構えていたのはリアンシェルトだけじゃなかった。
「卑怯、ですか? 何を持ってそんな言いがかりを言うのですか?」
自前の氷で出来たロッキングチェアに揺られながら、「おかしな人ですね」と口元に手を添えて笑ったため、車椅子のグリップを握っているアイリが「すごいイラッと来た」ポツリと呟いた。
「ミミルとフラメルとルルス。そいつらと共闘でもしようというのか? 確かにエグリゴリだが・・・。出来れば戦闘は分けてほしいんだが・・・」
『ただでさえリアンシェルト1機でも勝てるかどうかなのに・・・!』
予想としてもミミル1機でオリジナルの“エグリゴリ”と同等の神秘を有している。そんな奴とリアンシェルトを同時に相手にしろって? 冗談じゃない。情けない話だがそう提案するしかなかった。
「まさか。今の私とあなたとの間にある差を考えれば、私単独ですら勝てると言うのに、そこに別の戦力、パイモンを参戦させるなんて申し訳なくなります」
挑発のつもりだろうが、事実なだけに今さら怒りも湧いてこない。怒りの代わりにミミルが戦闘に参加しないと判ったことで安心した。今はただ、リアンシェルトに先制で攻撃を加えて、少しでも有利な立場に立つことを最優先する。
「で? そいつらは何のためにここに居る? まさか見学とか言うんじゃないだろうな?」
「まぁあながち間違ってはいませんね。あなたが勝っても、私が勝っても、ミッドへ帰るための手段が必要ですから。あなたに勝てるとは言ってもミッドへ帰るまでの余裕があるかどうか判らないので」
『マイスターに勝てるって言ってるようなのが腹立つ』
『その余裕をねじ伏せてやるさ』
アイリは、リアンシェルトに並々ならぬ対抗心というか敵愾心を抱いている。アイリよりずっと格上の氷雪系のリアンシェルト。それについても負けたくないと言っていたが・・・
――女としてアイツに負けたくない!――
という理由もあるそうだが、ちょっと俺には解からない理由だった。比べる必要も無いとは思うんだがな。
「さて。長話もこれにて終わりにし、あなたと私の最後の戦と参りましょう」
リアンシェルトが立ち上がると同時、ロッキングチェアがガシャン!と大きな音を立てて砕け散った。
「そうだな。もう言葉は要らないか・・・」
――昇華――
魔力炉の稼働率を上げて魔術師化し、車椅子から立ち上がる。さらに“エヴェストルム”を起動。そして穂に刻まれたルーンに魔力を流し込むことでルーンを発動して神器化させる。
「車椅子、離れたところに置いてくるね」
「すまん」
アイリが腰から白翼を展開し、折りたたんだ車椅子を手に離れた場所へと飛んだ。こんなことなら車椅子を置いてくれば良かった。
「魔道を交え、数千年に亘るこの戦に決着を」
そんな俺とアイリに攻撃を加えることなく、こちらの準備が終わるまで待っていてくれるリアンシェルトがスッと右手を上げると、ミミルとフラメルとルルスが離れていく。入れ替わるようにアイリが戻り、手を繋いで「ユニゾン・イン」を果たす。
『アイリ。始めから全開で行くぞ』
『ヤヴォール! 深層同調を開始。神々の宝庫より魔力結晶を起動、魔力炉と融合開始・・・、完了。マイスターのリミッターを第二級まで解放。マイスター』
アイリが俺の命と体を支える大事な柱として頑張ってくれるから、俺も無茶を通すことが出来る。
「第二級粛清執行権限、解凍」
51%~75%の魔力を制限するリミッターを解除。“界律の守護神テスタメント”となってからアレを発動するのは何百年ぶりだろうか。
――高貴なる堕天翼――
こちらが臨戦態勢に入ると、リアンシェルトも背中より20枚の羽を放射状に展開し、魔力量をぐんぐんと上げ始めた。あぁくそ。俺の魔力量と神秘を一瞬で追い抜いて行きやがった。
「(それでも!)我が手に携えしは確かなる幻想。目醒めよ、我が 心なる世界が一つ。其は美しき黄金に輝きたる館。五百四十の扉、槍の壁、楯の屋根、鎧に覆われた長椅子、彷徨いたるは狼に鷲」
「その詠唱は・・・。なるほど、1対1では敵わないなら、軍勢を以って私を押し潰そうと言うのですね。ですが、私を追い詰められるほどの英雄は残っていますか?」
残っていようがいまいがリアンシェルトに対抗するにはこれしかない。今日この日、リアンシェルトとの闘いのために取っておいた“ジュエルシード”などのロストロギアや、この3ヵ月の間にトリシュのスキルで貰った魔力を結晶化させた物、なのは達の協力の元に彼女たちから吸収した魔力を結晶化させた物を解放するつもりだ。
「(ここまでやるんだ、負けてたまるか!)館に住まうは我が 心に在りし神秘の幾多の主。今高らかに告げる。いざ開かれよ、ヴォルグリンド。契約の下、拒みし者を蹂躙せよ、罪ある者を断罪せよ、助け求める者を救済せよ。いざ出でよ英雄の軍勢」
“エヴェストルム”を空に向かってに突き出し、遥か空にアースガルド魔法陣を展開。“エヴェストルム”の先端より放たれる光が魔法陣に当たると、魔法陣を中心に全長数kmの巨大な門扉が描かれる。アレがヴォルグリンド、“ヴァルハラ”の正門だ。
「英雄の居館・・・開錠」
鍵を開けるように回す。音も無くヴォルグリンドが開いていき、膨大な光が溢れ出す。その光はシャワーのように俺たちに降り注いで、視界がサファイアブルーの光に満ちる。
(今の俺ではヴァルハラを維持できるのは精々数分。その間に決める!)
視界が晴れた時、そこはもう俺の世界、創世結界・“英雄の居館ヴァルハラ”。13万平方kmの巨大な一室。英雄全軍を召喚してもまだ余裕があるこの広い世界で、リアンシェルトを迎え撃つ。
――瞬神の飛翔――
12枚の剣翼と10枚の菱翼を展開。そして、その22枚の蒼翼を背部より切り離し、遠隔操作飛行砲台「コード・ミカエル!」として利用する。
「さらに!」
――瞬神の飛翔――
「ヘルモーズの同時二重発動・・・!?」
驚きに目を見張るリアンシェルト。空戦形態ヘルモーズの発動中にさらにヘルモーズを発動するなんて、長年存在している俺としても初めての試みだ。俺は『アイリ! ミカエルの操作を任せる!』と頼み、俺は他の魔術のコントロールに注力する。
「さあ! 行こうか!」
背後に控える“異界英雄エインヘリヤル”にチラッと目をやって、そう声を掛ける。
「了解です、父上。ヴァルキリー第2隊アルヴィト隊隊長クルックス・アルヴィト・ヴァルキュリア、いざ参る」
ライオンのたてがみのように逆立っているココアブラウンの髪。切れ長のダークブルーの瞳。黒のハイネックタンクトップ・レザーパンツ・白のロングコート姿。そして右手には槍型神器・“戊ノ鑓”を携えた、土石系最強のクルックス。
「よーっし! 決着つけたろうじゃない、リアンシェルト! ヴァルキリー第3隊ヒルド隊長ティーナ・ヒルド・ヴァルキュリア、行くよ!」
足元まで伸びるスカーレット色の髪、アクアブルーの鋭い瞳。前後燕尾な赤色がかったセーラー服。上から制服の黒のロングコート。彼女独自の黒のハーフズボン姿。炎熱系最強のティーナ。
「氷雪系の最強機として、あなたを止めるよ、リアンシェルト。ヴァルキリー第4隊ラーズグリーズ隊長氷月・ラーズグリーズ・ヴァルキュリア、行く」
前髪を分けて額を少し出したマドンナブルーのショートヘア、ホライズンブルーの瞳は少し釣り目。制服の長衣は白。上から制服である青いロングコート姿。そして釵型神器・“災牙コキュートス”を両手に持つ氷雪系最強の氷月。
「僕らが必ず止めるよ。操られて、父さんを殺そうとするなんて悲しい事が起きないように。・・・ヴァルキリー第5隊ヘルフィヨトル隊長レンマーツォ、行くよ!」
まだあどけない少年で、チョコレートブラウンのショートヘア、少女のようにマルっとしているシルバーグレーの瞳。白の長衣に黒のハーフパンツ姿。両腕に装着した籠手と同化しているクロスボウ型神器・“冥弓シルカルデ”に魔力矢を自動装填する、狙撃系最強のレンマーツォ。
「リアンシェルト。お父様に弓引くなど言語道断! 操られたというのなら、拳でその目を覚まさせてあげる! ヴァルキリー第7隊ランドグリーズ隊隊長プリメーラ! 参ります!」
金の長髪を赤いリボンで結ってハーフアップにし、角度によって色の変わる瞳を持つ。同盟軍の制服とも言えるハイネック・前後の裾が燕尾の黒い(色は個人で違う)長衣、ロングコートを着て、彼女独自の黒のハーフパンツ姿。雷撃系最強のプリメーラ。
「見たところ魔力量が凄まじいですね。とはいえ、各隊長が集まった上、父上も一緒なのであれば勝てる戦です。気合を入れましょう。ヴァルキリー第8隊ゲイルスケルグ隊隊長クリスト、出撃する」
ポニーテールにしたガーネットの長髪、切れ長なブラウンの瞳。白の長衣にスラックス姿。両腕にバックラーと剣の付いた籠手――ランタン・シールド型の神器・“アヴァリティア”を装着した、闇黒系最強にして最硬の防性術式を有するクリスト。
第一陣は“ヴァルキリー”の隊長陣との共闘だ。これでリアンシェルトの魔力を少しでも削る。どれだけ膨大な魔力があろうとも無尽蔵じゃない。あの子にドーピングのような回復する術が無い以上は必ず限界があるはずだ。
「確かにこれは、私もさすがに骨が折れそうです。ただ、アンスールを召喚しなかったことだけは後悔させましょう、神器王!」
――天壌に靡くは輝ける氷幕――
氷で出来た無数の薔薇の花弁が幾枚ものカーテン状として展開され、俺たちとリアンシェルトを隔てた。下手に時間を与えて創世結界を発動されでもしたら厄介だ。
「エンゲージ!」
「「「「「「「了解!」」」」」」
俺がカーテンを越えるために宙へ上がると、アイリが操作してくれているミカエルも追従。
「護衛はお任せを! 」
「私たちが父上を護りますゆえ」
氷結系の頂点にして対氷雪系でもある氷月、そしてクリストが俺に付いてくれた。おそらくとしか言えないが、リアンシェルトの攻撃の大半を防いでくれるだろう。
「ティーナ!」
――捻じ伏せる破壊角――
「ういす!!」
――火葬砲拳――
両籠手の“シルカルデ”より魔力矢を連射し、カーテンに射ち込んだ鏃を爆破したレンマーツォ。その爆発によってカーテンに穴が開き、そこに通すように炎を纏わせた拳を突き出して火炎砲を放ったティーナ。ティーナの火炎砲がリアンシェルトを直接狙う。
「っ! くっ・・・!」
迫る火炎砲に対して防御ではなく回避行動を取ったリアンシェルト。そこにレンマーツォの鏃弾幕。リアンシェルトはさらに回避行動を取ったが・・・
――疾閃雷翔駆――
目にも映らない超高速移動で接近していたプリメーラの雷撃を纏った右脚による薙ぎ払うような蹴り技、「蹴破斬雷舞!」を、リアンシェルトは「クリュスタッロス・アントス!」と雪の結晶の形をしたシールドで防御。しかしプリメーラが振り払った脚の軌道に沿って雷撃が残り、雷鳴と同時に炸裂してシールドを破砕。
「きゃぅぅ・・・!」
放電する衝撃波にリアンシェルトが体勢を崩し、そんなあの子の背後にクルックスが回り込んだ。
「晶槍・穿突!」
“戊ノ鑓”を床に突き刺し、リアンシェルトの周囲の床から水晶の六角錘柱を8本と突き出させ、あの子を穿とうと迫る。
「ぅく、この程度で・・・! 氷刃舞う砕嵐!」
リアンシェルトの足元より無数の氷の花弁が舞い上がり、その攻撃によって水晶柱が一斉に砕かれる。
「アイリ! ミカエル用意!」
『ヤヴォール!』
――崇め讃えよ汝の其の御名を――
アイリが操作する蒼翼22枚と、俺の背中に展開されている蒼翼22枚を切り離し、計44枚の蒼翼の先端を花弁に覆われたリアンシェルトへと向けた。
――召喚・雪皇鯨――
「「父上!」」
氷月とクリストに呼ばれると同時、氷で出来た全長500mサイズの鯨が9頭と出現した。5頭が地上に向かって突進し始め、残り4頭がこちらへ向かって大口を開けて突っ込んで来た。
「父上は攻撃に専念を!」
「ここは私と氷月で止めましょう!」
「ああ! アイリ!」
『ジャッジメント!』
最初にアイリの蒼翼から22発の砲撃が発射される。アイリのミカエルは、花弁が薄くなってその体を視認できるようになり始めたリアンシェルトへ真っ直ぐ進む。
――天花護盾――
最初の22発はシールドに防がれたが、破砕音と共に氷の破片を散らせた。シールドが薄くなったのを見計らって俺は別角度からミカエル22発を発射。
「ハガルイズ!」
――拒絶し反射するのは煌く鏡面――
その掛け声に呼び出されたのは、円鏡型の神器・“零鏡ハガルイズ”。鏡面からスノーホワイトに輝く円形の魔力バリアが発生し、俺のミカエルを全て反射して防いだ。無差別に跳ね返された砲撃は掠ることなく遠方へと消え去った。
「『まだまだ!』」
俺に迫る鯨の迎撃を氷月とクリストに任せ、アイリと2人で蒼翼を操作。シールドやリフレクターで防がれない位置を模索しつつリアンシェルトへ砲撃を連射した。
(最後の切り札を切る前に、少しでも多く・・・!)
リアンシェルトを削ってみせる。そして必ず勝つ。その果てに待つのは、最後の“エグリゴリ”・ガーデンベルグの居場所。そして、4thテスタメント・ルシリオンの終末への道だ。
「この程度で、私を抑えきれると思わないでください・・・!」
――真技――
†††Sideルシリオン⇒はやて†††
ルシル君が別れも言わずにリアンシェルトとの闘いに向かって2日目の深夜。自宅のリビングのソファに座って、ルシル君の帰りをひたすら待つ。
「はやてちゃん。ちょっとくらい寝ないと・・・」
「シャマルの言うとおりですよ。本局から帰ってきてから一睡もしてないですし」
シャマルとリインが不安そうに声を掛けてくれるけど、私は首を横に振って「ううん。もうちょい待つ」そう返した。体はもう寝ろって警告を出してるけど、心がそれを許さへん。
「仮眠でもいいので少しは休んでください。主が倒れてしまっては、ルシルも気を揉むでしょう」
「はやてが寝ない最大の原因が、そのルシルだけどな」
そう気遣ってくれるシグナムに、ヴィータが肩を竦めて溜息を吐いた。私は心のうちで、まったくや、ってヴィータに同意する。ルシル君とは、私たちが家に居るときにリアンシェルトとの闘いへ向かうようにって約束してた。一緒には戦えへんけど、せめて見送りはしたいからって。
(それやのに、ルシル君はなんにも言わずにアイリを連れて、リアンシェルトに指定された戦場へ向かった)
重大な約束違反、裏切りや。シャマルから、ルシル君とアイリがリアンシェルトとの闘いに出るのを止められへんかった、って涙声で連絡を受けたとき、私も泣きそうになったし、辛かった。そんで遅れて怒りがふつふつと湧いてきた。
(でも、こうして待ってる間に怒りは消えて、やっぱり心配が一気に増した・・・)
もはや祈るしか出来ひん。ルシル君とアイリが無事に帰ってきますようにって。額を指を組んだ手に乗せて、もう1度ルシル君たちの無事の帰還を祈ろうとしたら、アインスが「失礼します」私の首後ろと膝裏で腕を通して、私をお姫様抱っこした。
「アインス!?」
「我らの今の主は主はやて、あなたであり、セインテストではありません。あなたの健康を最優先させていただきます」
医務局でルシル君が語った真実の中に、これまでは歴代のセインテストの記憶は継承してないって話やったけど、実はシリーズが複製したものが記憶として継承されてる、ってものがあった。つまりオーディンさんの記憶もルシル君は持ってるってことになる。それでもアインスは、ルシル君より私を選んだ。
「降ろしてアインス。私、ルシル君とアイリを待たな・・・」
「いいえ、ダメです。今はしっかり眠ってもらいます。大丈夫です。ルシルとアイリが帰ってきたら起こしますので」
「そ、そうだぜ、はやて! あたし達がちゃんと起きて待ってるから、今は休んでくれ!」
「です! はやてちゃん、そんな隈だらけの目でルシル君たちを迎えちゃダメですよ」
そこまで言われたらもう休むしかあらへん。私は抵抗をやめて、大人しくなしく寝室に運ばれようとしたとき、ずっと外を眺めてたザフィーラが「転送魔法だ!」って声を上げた。
「アインス!」
「あ、はい!」
アインスに降ろしてもらって、玄関からやなくて掃き出し窓から素足で外へ出て、転送魔法の証である光の柱へと駆け寄る。アインス達も合流して、光の柱が治まるのを待つ。そんでようやく光が治まると同時・・・私たちは絶望を知った。
「リアンシェルト・・・!?」
「それに、ミミル!」
転移して来たんは右腕と右足を失い、ボロボロになったクロークとロングワンピースの所為で穴だらけな素肌を多く露出したリアンシェルト。そんで、そんなリアンシェルトに肩を貸す、指名手配されてるミミルさんやった。
「まぁここまで損傷してしまいましたが、勝負は私の勝ちということで」
ミミルさんが空いてる左手をこっちに向かって振り上げた。その手から投げ捨てられたんはルシル君のデバイス、「エヴェ・・・ストルム・・・」やった。とは言うても原型を留めへんくらいに損壊してる。それを見て私はその場にへたり込んで、足元に転がってきた“エヴェストルム”に手を伸ばした。
「ルシル君は・・・? アイリは・・・?」
「・・・ふ」
リアンシェルトが鼻で笑った。一瞬にして血の気が引いて、私の目からドッと涙が溢れ出してだしてきた。
「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」「てんめぇぇぇぇぇ!!」
「許さねぇ!」
シグナムとヴィータがデバイスを起動して騎士服に変身すると、アギトも騎士服に変身した。
「許せない・・・! オーディンさんだけじゃなくてルシル君までも、私たちから奪うなんて!」
「このまま帰してなるものか!」
続けてシャマルとザフィーラも変身して、アインスが「待てお前たち! ミミルも居るのだぞ!」警告した。ルシル君は以前、ミミルさんのことをオリジナルの“エグリゴリ”と同等くらいって言うてた。ならその実力はとんでもないもんや。
「お父様は本当に愛されているのですね・・・良かった」
リアンシェルトがなんか呟いた直後、新たに転送魔法の光が生まれた。姿を現したんはミミルさんの使い魔で、実は“エグリゴリ”やったってゆうフラメルとルルス。それに・・・
「ルシル君!」
「アイリ!」
フラメルがルシル君を肩に担ぎ、ルルスはアイリの襟首を持ってぶら下げてた。2人はテクテクと普段どおりの足取りでこっちに近付いて来て、ルシル君とアイリを私たちの前に寝かせた。私たちは一斉に2人の前に跪いて、体の状態を確認する。
「シャマル!」
「はい! アイリは見たところ無傷ですね。ブラックアウトによる一時的な意識障害かと思います。ですがルシル君は・・・」
私でも見て判る。凍傷、擦過傷、骨折、打撲などなど、怪我のオンパレードや。シャマルは「癒しの風で少しでも治して、本局の医務局に移送します!」って、魔法発動と同時進行で医務局に連絡し始めた。
「あ、てめぇら待ちやがれ!」
ヴィータが声を荒げたから、私はルシル君たちからリアンシェルト達へ目を向ける。ルシル君とアイリをここに連れてきたことが目的やったんか、シグナム達の敵意をスルーしてるリアンシェルト達が踵を返して立ち去ろうとしてるのを見た。
「ルシリオンに1つ言伝を。次の挑戦、かの場所で何年でも変わらず待っています、と。パイモン」
「はい~」
リアンシェルト達はそれだけを言い残して、転送魔法でこの場から姿を消した。
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