魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers
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Duel:24 なんちゃってのエスコートと、オフシフトの悪役と
――sideサト――
「……あれ?」
ショルダーバッグを肩に掛けながら、T&Hから研究所内の家へと向かっていると。
「ちょうどよかった。これから連絡しようと思ってたんです」
お家の居るはずの流がベンチに座って、待ってたかのようにそこに居た。
「……や、それはいいんだけど。どうした?」
イマイチ状況がわからず、ベンチに座っている流の横に座る。
とりあえず荷物をおいて、流の顔を見ようと顔を向ければ。
「しばらく女子会するとの事で、それでやること無くてどうせならサトさんとデートでも、と」
「……デートって、お前は」
クスクスと笑うのを横目に、ちょっとため息が漏れる。
……それよりも。
「女子会って、誰か居るの? 奏?」
言っててアレなのが、昨日泊まった三人がまた泊まったとは思えないし。新しい誰か?
だけど、動けそうにない人ばかりのハズだが?
「奏さんは高町家に。はやてさんはそのままで、中島家に緋凰姉妹が。そして、今居るのはフェイトさんですね」
「……意外」
「私もです」
心からそう思う。流も何か思うところがあったのか、席を外しているんだろう。
「震離さんとフェイトさんって、結果的に共通点が多くなったというか。今なら気が合うと思うから女子会って言ったんでしょうし」
「? そうなの? 人見知りだった震離と、引っ込み思案なフェイトさんは相性良さそうだとは思ってたけど、あまり話したこと無いんじゃないの?」
流達の辿った歴史だとどうかは知らないけれど、少なくともこちらの知ってる歴史では分隊が違うこともあって絡みは少なかったはず。
違いはあるけれど、劇的に変わったとは思えないんだけど……。
「えぇ。だから話をするんでしょうね。後は色々話したいこととか質問受け付けたりとか。後は初めて奪った者同士だからっていうのもあるんでしょうねぇ」
「……お、おう」
ふふふ、暗い影を醸し出しつつ笑う姿はちょっと近寄りづらい。
「なんて冗談です。実際はわからないですよー。あの二人の共通点なんて上げればキリがなく、合わないだろうという点も沢山ありますしね」
「そっか、ならいいよ」
クスクスと流が笑うのを見ていると、やっぱりいいなと思う。
機動六課に居た頃……もう懐かしいと思える程度に昔になったことだけど、その時にはこんな笑顔を引き出すことが出来なかった。
まだ、終わったことには出来ないけれど……最後に元の世界で見たのは確か。
「サトさん? どうしました?」
「……や、大丈夫。ちょっと震離の成長に改めて感心してたんだ」
一瞬思考の海に沈んでたけれど、それらしいことを言って誤魔化す。
さて。
「デートって言うからには、何処かエスコートしてくれるのか?」
ニヤリと、笑えているかどうか分からないけれど笑って見せれば。一瞬驚いた様子で目を丸くしながら優しく微笑んで、
「えぇ。頼りない私ですが、精一杯エスコートしますよ?」
きらり、と紅と蒼の瞳が煌めく。こちらの前に出て執事の如く姿勢良く立っているのは、なんというか、
「……モテる訳だよ」
「? 御冗談を」
クスクスと笑ってる流の頭を撫でながら隣に立つが、あまり自覚がないのはどうかと思う。
震離という高い壁が居るからあまり表立ったアプローチを受けてないだけで、流にだって結構な人気があるし。
数少ない男性プレイヤーで、かつ女性受けのいい奴だしねぇ。
そのまま二人並んで飲食街の方へ足を向けてると不意に、
「所で何か希望はありますか?」
「んー……昼に麺類食べてるから、夜は米系がいいな」
「ご飯物ですか。ご飯物はあまり知りませんが、何処か良い所とかってありますかね?」
「寿司でも食べる? 苦手な生魚とワサビを克服するには丁度いいと思うけど?」
「ぁー……美味しいところを知っているならば」
「知ってるよ。さ、行こうか」
「ぅぁー……逆にエスコートされますねこれは」
「迷惑かけっぱなしだからな、そのお詫びだよ」
こんなにも、他愛もない会話が心地よい。
そのうち、次に進めるといいな。
……でも、次に進んだその先は……まだ怖いな。
――side奏――
「……ま、まいったぁぁぁああぁ」
「まいったのはこっちの方だよ~。いやぁ重心しっかりしてるし、出来るとは思ってたけどここまでなんて。
平行世界の未来にも強い人は居るもんだ」
小さいなのはさんに連れられて、やってきたご実家について早々に美由希さんと組み手をするとは思いませんでした。
小太刀を銃に見立てて接近の打撃戦をしたけど……なんとまぁ、強いことのなんのって。
「しかし、未来のサバゲーって進んでるんだねぇ。まさかいい勝負になったよー」
「こ、こちらこそ。ありがとうございました」
全然呼吸が整わない。ほんの10分程度の手合わせだったはずなのに、連撃の凄まじことよ。
響みたいに居合を使ってたけど、その方向性は全然違った。
響は斬撃に魔力、もしくは純粋に力を乗せて鋭く一閃するのに対して、こちらは引きながら切り裂くようにしてるし、一撃一撃が内部破壊、衝撃を通すことに特化しているんだもん。
動きこそ凄く似てるけど、派生の仕方が全然違うから戸惑った。
何より、仮に銃を使ったとしても……勝てるかと言われれば微妙なラインだった。
それぐらい強いし、攻撃はすり抜けてくるように見えたし。
そして、決まり手は。
「最後の突きは、予想外だったぁぁ」
一瞬距離を取って離れたはずが、追撃で突き一閃をおでこに当てらちゃったし。
「冗談、スウェーで致命傷にならないように回避出来てたじゃん。引き分けだよー」
……いやいや、接触したら衝撃打ち込まれるって分かってるんだから避けるでしょうよ。
ただ、その後体制維持出来なくて負けちゃったのが悔しい。
「お姉ちゃーん、奏さーん、終わったー?」
「お? なのはの宿題終わったかな? ありがとうね奏? 恭ちゃん……あ、私達の兄さんが居なくて最近なまっててね。いい運動になったよ」
「こ、こちらこそ。ふぅ……もっと精進します」
ぐっと胸のあたりで拳を握って、シンプルに思いを伝えれば、美由希さんはニヤリと笑って。
「またいつかやろうよ? ね?」
「えぇ、また」
コツンと拳をぶつけて再戦を誓う。またいつか来てもいいように……って。
「お姉ちゃーん、お父さんがすっごい静かに呼んでたよー?」
「ヒッ?! す、すぐ行く! ごめんね奏、なのは電気だけ切ってて! お父さん、弁解させて!?」
小さいなのはさんの言葉で顔を真っ青に飛んでいったのがちょっとおもしろい。
それと入れ替わりでなのはさん……もとい、なのはが入ってきて。
「宿題終わったから、一緒にお風呂入ろう?」
「うん。よろしくねー……ってあれ?」
よく見ればなのはの肩にフェレットが居るのが見えて、バッチリ視線があったかと思えば。
「あ、はじめまして。ユーノっていいます!」
「にゃはは、ユーノくんの事紹介してなかったね。ごめんなさい」
「え……あ、こちらこそご丁寧に」
……一瞬思考が止まったけれど、ちょっとまって。
え? フェレット=ユーノって、あのユーノ・スクライア司書長さん? ……何がどうしてこうなったんだろう?
あ、そうすると。
「お風呂入る時ユーノくんも入るの?」
「と、とんでもないです! ママさんのお手伝いしてます!」
……あー良かった。フェレットでもやっぱり気にするんだね。
なのはと一緒に道場を後にして、お家に入る勝手口まで来て。
そこで気づいた。
「アレ!? なんでフェレットくんで喋ってんの!?」
「「今?!」」
普通に受け入れてたけどおかしいよねぇ!?
――side響――
「……子供部屋、やべぇ阿鼻叫喚だな」
ドスンドスンと、宿題を片付けてる筈なのに重い音が聞こえるのはこの際置いといて。
一階と二階なのに、声がよく聞こえるのはすごいなーと。
「この時間帯はいつもみたいだよ。特に今は私達が居るから」
「すっごいよねぇ。毎日楽しそうだもん」
洗濯物をものすごい勢いで畳んでいくギンガと、たははと笑いながら空き缶を潰していくスバルの対比がすごいなぁと。
クイントさんは奥でカレー作ってるらしく、いい匂いが広がってる。
……小さい子供くらいなら余裕で入りそうな寸動鍋2つもあるのは見なかったことにする。
本当は俺らも手伝ったらいいんだろうけど。
お客さんだからいいよって断られた。ちょっと申し訳ない。
はなもお隣さんの、スカリエッティ家の七に会いに行ったというか、七と目があって連れていかれたというか。
平気だとは思う。だって、現状俺より強いし……うん。
「ゲンヤさん、短期の単身赴任……というか学会参加って悲しいな」
「うん。ちょっと若いお父さんを見たかったんだけどねぇ。あ、カルタスさんもお父さんとこっちで仕事してるみたい」
「……世間って狭いなー」
ここまで来ると、乾いた笑いしか出てこないですよ。
まだ、俺らの身内、桜庭出身の人たちが見つかってないだけで、存在してたらいいんだが……案外見落としてそうだけどねぇ。
聞いた話だと、エルトリアって言う所に、リイン曹長とかが留学してて……残りのナンバーズの子や、教会の人たちはそちらに居るみたいだし。
血縁ですか? って怖くて聞けねぇもん。ナンバーズ……というか、中島家とスカリエッティ家の血筋やべぇってなりそうで。
子沢山過ぎて凄いもんなぁ。
……それにしても。
「すごいね。ギンガ……さん達のお母さん」
ちょっと吹き出したスバルは今度しばくとして、咳払いを一つ挟んで。
「二人が居なくても、たくさん食べる皆のご飯をいつも作ってるんでしょ?」
「うん。その上美味しいもん、すごいよね」
ギンガらしからぬ、と言ったら失礼だろうけど。一瞬その発言に違和感と、スバルが悲しそうな表情を浮かべたのは見逃さなかった。
下手すると……いや、話を聞かないとわからないな。
「やったッスー! 宿題終わったッスー!」
「今日もいっぱい遊ぼう!」
「待ってウェンディ、スバルおねーちゃん」
ドドドドドドと元気よく階段を駆け下りてくるのが聞こえる。
「……いつも超やばい?」
「うん。私やギン姉でも疲れるね」
「あの子達と遊ぶの大変よ? 頑張ろうね?」
……話す前に、俺生きてられっかな?
「……あらぁ? 本当に大きくなってるわぁ」
「やべぇ、ギンガが大きくなると普通に二乃姉よりも姉ちゃんしてる。いや、アタシよりもか……?」
「三月姉ぇは、兄貴肌だもんタイプが違うわ」
「……一応アタシも女なんだが四菜?」
ふと聞き慣れない声が聞こえて振り返れば、丸メガネをつけて二本の茶髪のおさげの子と、細くてもガッチリしてるのがジャージの上からでもわかる紫の、
「……トーレとクアットロだっけ?」
会話するのも初めてだなーと。
後書き
しばらく、短い投稿になりますがお付き合い頂けると幸いです。
長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。
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