恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第七十六話 群雄、一同に集うのことその十一
「遂に各地の牧達が挙兵しましたね」
「ええ。それで彼女達と戦うのね」
「勿論」
その通りだと答える于吉だった。
「そしてここで彼女達をです」
「全員滅ぼすのね」
「そうすれば貴女にとっても楽ですね」
「彼女達がいなくなればもう何も恐れるものはないわ」
女はだ。楽しげな笑みを浮かべて述べていく。
「張譲も。どうということはないわ」
「彼もですか」
「所詮は宦官、宮中以外のことは何も知らないわ」
「その様な存在は貴女にとってはですか」
「倒すにあたってはまさに赤子の手を捻る様なものよ」
そうだというのである。
「何一つとして心配はしていないわ。そのことに関して」
「そしてその後で」
「王朝を築くわ。私の王朝を」
話がだ。そこに至った。
「そう、国名は」
「何にされるおつもりですか?」
「晋ね」
一言だった。それが彼女の創る国だというのだ。
「人の治めない国にするわ」
「オロチの国にされますか」
「常世の国でもあるわね」
「はい、そして常に乱れています」
于吉もまた楽しげに笑って彼女に話すのだった。
「そうした国にしていきましょう」
「私にとって泰平なぞ苦痛でしかないわ」
彼女にとってはだ。そうではないというのだ。
「戦乱と殺戮こそがいいのよ」
「民の怨嗟と血が」
「ええ。それに覆われた国にしていくから」
「だからこそ我々と行動を共にされるのですか」
「その通りよ。私一人で漢王朝を滅ぼし」
つまり簒奪だ。それをしようというのである。
「そして新たな国を築くわ、その晋をね」
「いい名前ですね」
于吉はその国名にだ。微笑んで述べた。
「その破壊と殺戮を感じさせてくれる名前です」
「貴方と会ってその建国がさらに容易になりそのうえで」
「はい、異界からも」
「オロチに刹那、それに朧」
「アンブロジアもまた」
「面白い世界になるわ」
彼女にとってはだ。そうなるというのだ。
その話をしてだ。彼女はこうも言った。
「例えば私に逆らう者がいれば」
「どうされますか、その場合は」
「皆殺しにし」
そしてだ。それからだというのだ。
「そのうえでその屍で門を築くわ」
「京観ですね」
「それを築くわ」
こう言うのであった。楽しげにだ。
そうした話を闇の中でしていく。于吉はさらにだった。
彼女にだ。さらに楽しげに話していくのであった。
「ではこの戦はです」
「私は何もしなくていいのね」
「御覧になっていて下さい」
それでいいというのである。
「若しそれが失敗すればです」
「その時に出ればいいのね」
「はい、その時にです」
出ればいいというのだ。
「その時にです」
「ことが果せなかった時も考えているのね」
「勿論です。策は幾つも用意しておくものです」
「その通りね。私もそうするわ」
「流石です。貴女もまたわかっておられるとは」
「そうでなくては大きなことはできないわ」
女はだ。闇の中で笑いながら述べてみせた。
「国を。魔の国を築くことはね」
「そうですね。これをしくじってもです」
「策は幾らでもある」
「その通りです。では」
「今は落ち着いて見させてもらうわ」
女は于吉に対して述べた。
「そして楽しくね」
「そうして下さい。司馬尉殿」
女の名前をだ。ここで呼んでみせたのだった。
「司馬尉仲達殿」
「ええ、そうさせてもらうわ」
その女司馬尉も微笑んで返すのだった。それは闇の中にある、邪な漆黒の笑みであった。
第七十六話 完
2011・4・14
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