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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第七十四話 于吉、裏で蠢くのことその六

 店はおろか人影一つない。そうした状況ではだった。
「何も食べられないわよ」
「果物の木とかもないしね」
「いや、食い物はあるんだよ」
 ところがだった。社はこう言うのだった。
 そしてだ。己のズボンのポケットからだった。
 大きな黒い鍋とインスタントラーメンの袋を出してきた。それをだった。
 出して来てだ。そのうえで二人に言った。
「これな」
「鍋とインスタントラーメン」
「ポケットに入れてたんだ」
「ああ、そうなんだよ」
 それで持っているというのである。
「どうだ?一緒に食うか?」
「ええ、それじゃあね」
「食べようか」
 二人は社のその提案に頷いた。そしてだ。
 その場に車座になって座り込んでだ。そうしてだった。
 薪も社が自分のズボンのポケットから出してだ。クリスが火を点けた。そのうえで何時の間にか水が入れられている鍋にラーメンを入れてだった。
 三人で食べはじめる。そうしてまた話をするのだった。
「やっぱりラーメンはこれだな」
「インスタントね」
「社本当にインスタントラーメン好きだよね」
「ああ、大好きだぜ」
 その通りだとだ。笑顔で言う彼だった。
「だからこっちの世界にも持って来たんだよ」
「ポケットに入れられるのがいいね」
「そうだね」
 二人はそのことには全く疑問を抱いていない。
 そうしてだ。ラーメンをさらに食べ続ける。そこにだ。
 朧が来た。今度は彼が言うのであった。
「おお、美味そうじゃな」
「ああ、あんたもどうだ?」
「食べる?」
 社とシェルミーが彼に顔を向けて尋ねた。
「ラーメンはまだまだ一杯あるからな」
「遠慮しなくていいわよ」
「ふむ、それではじゃ」
 二人の誘いを受けてだった。
 朧も彼等の中に入った。そのうえで碗と箸を出して来てだ。そのラーメンを食べるのだった。それを食べてまずはこう言ったのだった。
「ふむ。これはじゃ」
「これは?」
「美味しいかな」
「美味いのう」
 こうシェルミーとクリスに答えたのだった。
「御主達の時代ではこうしたものを食っておるのか」
「ああ、そうだぜ」
 その通りだとだ。社は笑顔で話した。
「俺はいつも食ってるぜ」
「よい時じゃのう」
「この時でも食ってるんだよ」
 そうだというのだ。
「それでだけれどな。あんたとも長い付き合いになりそうだな」
「そうじゃな。どうやらな」
「仲良くやろうぜ」
 社はにこやかに笑って述べた。
「楽しくこの世界を破滅させような」
「常世をこの世に出してじゃな」
「私達はオロチを復活させてね」
「そうして破滅させるよ」
 シェルミーとクリスはそうしてだというのだった。
「さて、それじゃあね」
「これから色々と楽しくなるね」
「あの于吉よ左慈もよい」
 朧は彼等もいいというのだった。
「しかしそれと共にじゃ」
「司馬尉だよな」
「うむ、あの娘じゃ」
 彼女だとだ。社に答えた。
「あの娘。中々いい筋をしておる」
「あいつはやるぜ」
 社も楽しげに笑って話す。
「己の野心の為には人を殺すことなんて何とも思ってないな」
「そうじゃな。この世界を破滅させ」
 司馬尉もだ。それを狙っているというのだ。
「そのうえで己の国を築き上げるのじゃな」
「民は人間じゃないんだな」
 彼等にとってはだ。人間でなければそれでよかった。そうした意味で彼等は人間ではなかった。その心がそうであるからだ。
 
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