デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~
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第四十九話「天央祭・Ⅹ」
「ベイリーたちは結局失敗しましたか。…まぁ、いいでしょう。想定内です」
そう言いながら入って来たのは全身に白銀のCR-ユニットを取り付けた金髪の女性、エレン・ミラ・メイザースであった。
突然の第三者の乱入に彼女は目を細めると同時に最大限の警戒をする。美九は今入ってきた女性に頬を染めているが彼女の持つ情報では彼女は人類最強の魔術師で名を知られていたはずである。その実力は精霊に匹敵し事実不明ではあるが精霊の捕縛に成功したと言う話も聞いていた。
故に彼女がとった行動は美九の前に立つ事であった。もし、エレンの目的が精霊の排除なら美九を狙う可能性は高い。何故なら今この天宮スクエアの一号館にいる人間を操っているのだから。そんなきわめて危険性の高い精霊を放っておくとは考えづらかった。
しかし、エレンは彼女を一瞥するだけで何かを探すように辺りを見回し士道たちと目が合う。
「…今は【SS】とやり合うつもりはありません。目標は夜刀神十香に五河士道…の反応がある生徒です」
エレンはそう言うと両手にレーザーブレードを構える。そして、
「これより捕獲に入ります」
彼女たちに目もくれずに十香たちに一直線で向かって行く。その速度は早く、スピードに定評のある八舞姉妹に一歩劣るとは言え決して侮る事の出来ない速度であった。その様子に彼女は人類最強と言うのは伊達ではないのか、と心で呟く。と同時にもし自分とやるなら直ぐに距離を詰められるだろうなと戦う場合の想定を行う。
「!逃げるのだ、シドー!」
「に、逃げろって言っても、一体どうやって…」
「くっ!」
士道と十香がいるのはキャットウォークで逃げようにも既に美九に操られた生徒によって入り口は防がれ少しづつ迫ってきている状態であった。この高さから降りようにも下には四糸乃と八舞姉妹が待機しており何処にも逃げ場はない状態であった。
「…すまない!シドー!」
その状況に十香は驚きの行動に出る。十香は士道のてを掴むとあらん限りの力で先ほど開いた壁の穴目掛けて士道を放り投げた。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」
霊力は封印されていようと精霊の力は普通の人間より高い。そんな状態で放り出された士道は情けない声をあげながら建物の外へと飛び出て行った。
「!…ほう」
十香の驚きの行動にエレンの足は思わず止まる。咄嗟にしては素晴らしい行動に思わずエレンも感心してしまう。とは言え、目標の片方を取り逃がす事になってしまったエレンは同時に忌々しいと思っていたが。
「冷静な判断です。称賛に値します」
「ふんっ!貴様に褒められても嬉しくなどない!」
「そうですか」
エレンは短くそれだけ言うと改めて周囲を見回す。キャットウォークに追い詰められた【プリンセス】、夜刀神十香に追い詰める何千の群衆。そしてステージに立つ【ディーヴァ】とそれに付き従う【ハーミット】と【ベルセルク】。更には【ディーヴァ】の前に立ちこちらを警戒している【SS】。なんとも奇妙な光景であった。
これだけの精霊が一堂に会する事など今までは無かった。故にエレンは十香の捕縛失敗時には別の誰かを…と言う思いも浮かぶが直ぐにそれを切り捨てる。
「…いえ、止めておきましょう。慢心は禁物です。それに」
そう呟くエレンの視線の先には【SS】がいた。【ナイトメア】と並び精霊の中でも危険な存在。彼女に殺された者は決して少なくはない。そんな彼女は【ディーヴァ】を庇う様に建っている。それが正しければ二人は知己、若しくは親密な関係と言う事になる。いくら人類最強の魔術師と言え精霊を複数同時に相手に出来るとは思わなかった。
故にエレンは目標を一本に絞る。そう、夜刀神十香に。
「今日用があるのは貴方だけです、夜刀神十香。今日こそは私と共に来てもらいます」
「ふ、ざけるな!」
十香はそう言いながら剣を振るうがエレンはそれを難なく受け止める。
「おや、思ったより威力はないのですね。まあ、好都合ですが」
「な…っ!?」
十香はエレンの反撃に呆気なく宙を舞うも直ぐに立ち直る。しかし、その時には既にエレンは目の前まで迫ってきておりレーザーブレードを振り上げていた。
「こちらも時間をかける訳には行きません。或美島の時の様に鉄十字の会や第三者の介入があっては面倒です。直ぐに決着を付けさせてもらいます」
瞬間、エレンの振り上げたレーザーブレードが十香めがけて振り下ろされた。それは寸分の狂いなく十香の頭に辺り十香の意識を刈り取った。
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