蒼と紅の雷霆
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爪編:トークルームⅣ
《外食しちゃった》
「ただいま」
「お帰りなさい、GV。ご飯、出来てますよ」
「…あ、ごめん、オウカ」
「どうかしましたか?」
「実はさっき、シャオと外食してきて…」
「あら、そうでしたか」
「連絡してなくてごめん」
「大丈夫です。気にしないで下さい」
「作ったご飯、どうするの?」
「明日のお弁当…ですね。無駄になったわけじゃありませんから、そんなに暗い顔しないで下さい。ね?」
「本当にごめん…次からはちゃんと連絡するよ」
僕がオウカに謝罪しているとモルフォが悪戯っぽく笑いながら姿を現した。
『ふふ、やっぱりGVはソウの弟よね。ソウも遅く帰ってきた時、既に簡単に済ませていたからテーラが作っていたお夜食を朝食にして食べてたのよ。やっぱりそういうところはそっくりだわ』
「まあ、そうなのですか?ふふ、やっぱりお2人はそっくりですね」
「そ、そうかな…」
『あの時のソウは珍しく困っていたような顔をしててね…珍しい物が見れたわと思って…』
「モルフォ、お前は後で罰を与える」
あの時の兄さんの顔は…とても怖かった。
(パンテーラとの心の繋がりを感じた)
(シアンは焦りを、モルフォは身の危険を感じた)
《お帰り》
「ただいま…あれ?」
家の中は静まり返っていて部屋の電気も点いていなかった。
どうやらオウカは留守のようだ…何時もの出迎えがないとなんだか妙な感じだな…。
「あっ、GV!お帰りなさい。先に帰っていたんですね」
振り返ると、両手に買い物袋を提げたオウカの姿。
「お買い物をしていたら遅くなってしまいました」
「お帰り、オウカ」
「あ…はい!ただいま帰りました。ふふ、何時もと逆ですね。久しぶりに、お帰りって言われた気がします。こんなにも…ほっとするものなんですね…」
幸せそうに微笑むオウカ。
…たまには早く帰って、オウカにお帰りと言えるようにしたい。
少しして兄さんも帰ってきたのでお帰りと2人で伝えると兄さんは呆れたような表情を浮かべていたけれど、その表情はどこか柔らかかった。
(シアンは焦りを感じた)
《少しだけ》
「はあ…」
私は冷えた指先を擦りながら夜空を見上げていました。
「お金を持ってくるべきでした」
皇神の施設からある資料を強奪し、能力で逃亡したのは良いのですが、今夜は思ったよりも寒いです。
ソウから頂いたフェザーの制服は耐寒性能も良いのですが、肌が露出している部分は冷えます。
目の前に自動販売機があるというのに…。
「ほら」
「え?」
聞き覚えのある声に顔を上げると、ソウが目の前に立っていて紅茶を私に差し出してました。
「あの!?ソウ!?どうしてここに!?」
「それはこちらの台詞なんだがな…今日は簡単なミッションがあったからそれを終わらせて…寒いから自販機で飲み物を買おうとしたらお前がいただけだ…とにかくさっさと受け取れ」
「あ、はい」
温かい紅茶を飲んで一息吐くと、ソウもコーヒーを飲んで一息吐きました。
「エデンの任務か?」
「………ええ」
「そうか……」
「詳しく聞こうとしないのですね」
「聞けば答えるのか?」
「いいえ」
「ふん、そう返ってくると分かっているから聞かないだけだ。」
「ふふ、すみません…」
そして沈黙する私達ですが、不思議と苦痛ではありませんでした。
「テーラ…もう少し…時間は取れるか?」
「え?」
「せっかく会えたんだ…もう少し話したい…嫌ならいい」
「…エデンの情報は渡しませんよ?」
「そう言うことじゃない…お前とは個人として話したいんだ」
「…それなら少しの間だけですが構いません…」
少しの間だけ、エデンの巫女としてではなく彼の知る私として…。
(パンテーラとの心の繋がりを感じた)
《雷霆兄弟の妹分》
本を読むオウカの目に涙が浮かんでいた。
「その本、前に読んでいた…ロボットの話と同じで悲しい話なの?」
あの後に僕も例の作品の続編や派生した物語を読んでいるが、派生の物語に出る主人公の彼は記憶を失いつつも最後の最後まで自分の信じる物のために、己の信念を曲げずに戦い抜いて最後には消息不明となる最終話には残念と思いながらも感動した。
「いえ、兄と妹の家族愛を描いた、良いお話ですよ。GV達とシアンさん達によく似ているんです」
「似てるっていうのは、その本の兄妹に?」
「はい…何時も見ていて思っていたんです。GV達とシアンさん達からご兄妹の絆のようなものを感じる、と」
「兄妹、か…確かにシアンとモルフォは、僕や兄さんにとっては妹のような存在なのかもしれないな…」
「シアンさんが妹なのは分かりますが、モルフォさんもですか…?」
「モルフォはシアンの第七波動でシアンの願望が具現化したような存在だから…」
だからモルフォは見た目はともかく、中身はシアンと大差がない。
事実、小さくなってからはよりシアンに近い雰囲気を纏っている。
僕には兄さんしか家族がいない、そしてモルフォはシアンの第七波動だけど家族で姉同然だ。
おまけに皇神にいたという同じ境遇だからこそ共感を感じて僕達は一緒にいるのかもしれない。
「でも、テーラは妹と言うより…」
『義姉?将来テーラがGVの義姉に…』
振り返るとシアンとモルフォがいた。
「モルフォ……人をからかうんなら、兄さんに報告するよ?」
『じょ、冗談よ』
「(…………妹、か)」
(シアンとモルフォは焦りを感じた)
《夜空》
オウカが庭に出て、夜空を見上げていた。
「星を見ているの?」
「満月です。GVとソウさんも一緒に見ませんか?今晩は一段と大きく見えて……くしゅん!」
「…何か温かい物を用意してやる」
兄さんはそう言うと台所に向かっていった。
「あんまり長く夜風に当たっていると風邪を引くよ」
上着をかけようとした時、僕の手がオウカの肩に触れた。
冷たい…かなり冷えているみたいだ…。
「そろそろ戻ろうか。体を冷やすのは良くないよ」
「ふふ…GVの手、温かいですね」
そう言うと、オウカは僕の方に体を寄せてきた。
「こうしてくっついてるともっと温かいからへっちゃらですよ。なので、もう少しだけ、お願い…出来ませんか?」
「オウカ…」
「もう少しだけ付き合ってやれGV。」
兄さんはそう言って僕とオウカにカップを渡す。
中身はホットミルク…一口飲むと蜂蜜の甘さが広がる。
「ふふ、美味しいです。ありがとうございます」
「気にするな…以前の礼だ」
それだけ言うと兄さんは部屋に戻ろうとする。
「そうだ…GV、明日は俺が作るから遅くまで起きていても構わない…オウカの相手をしてやれ。お前をオウカと一緒にいさせることがオウカへの一番の礼になりそうだ」
「…兄さん…疲れてるんじゃ…」
「お前は俺を何だと思っている?」
(シアンは焦りを感じた)
《歯ブラシ》
夜、洗面台で歯磨きをしていると、オウカが後ろから顔を覗かせた。
「GV、すみません。後で少し手伝ってもらいたいことが…あ…っ」
「どうしたの?」(歯を磨きながら)
「…………いえ、何でもないです。歯磨きが終わったら、居間の蛍光灯の取り替えを手伝ってもらえませんか?」
「…?うん、いいよ」(歯を磨きながら)
歯磨きを再開しようとして、はたと気付く。
僕が使っている歯ブラシは…オウカの物だった
「ああー…」
様子がおかしいことに気付いたのだろう。
兄さんとシアンが顔を覗かせて来た。
「G…GV…そ、それ、オウカさんの歯ブラシ…」
「歯ブラシは個人で別々の場所に置いておいた方が良いかもしれんな…」
オウカは気付いた上で、気にしてない様子だけど…とりあえずこれは念入りに洗って、明日、新しい物を買ってこよう…。
(シアンは焦りを感じた)
《2人でGVを》
「ねえ、オウカさん…オウカさんはその…GVの…GVの…何になりたいの?彼に、何をしたいの?」
「シアンさん…。私は、GVを支えてあげたいです。シアンさんと2人で…」
「私と…?」
「私はシアンさんのようにGVに歌を届けて支えることは出来ません。ですか、GVが帰るべき場所を守ることは出来ると…思う…思いたいんです。2人でなら、私達の想うあの人を支えていける…そう、出来たらなって」
「…そう、なんだ」
…………シアンに、オウカで2人で話がしたいと言われ、扉の向こう側で待機していたが…2人の会話は、殆ど聞こえていた。
シアンはどういうつもりでオウカにこんな話をしたんだろう…。
「…もしかしたら、覚悟をしているのかもしれんな」
「覚悟?」
「何せ、モルフォの力は完全に戻っていない。今は平気でもシアンの体にどんな影響があるか分からん。宝剣に能力因子を移植するケースはあるが、こういう形で奪われたケースなど例がないからな」
「……シアン…」
(シアンは焦りを感じた)
《ジグソーパズル》
オウカがジグソーパズルと格闘していた。
3000ピースはありそうだ…かなり大きい。
「それ、どうしたの?」
「今、学校でちょっとしたジグソーブームなんです。私もやってみたんですが案外楽しくって、自分でも買ってみちゃいました」
「…でもこの大きさ、初心者向けじゃないよね」
「挑戦しがいがあって俄然楽しいです。GVとソウさんも一緒にやりません?」
「良いの?1人で組み立ててたんじゃ…」
「GVとソウさんと一緒に組み立てたほうが絶対に楽しいですから」
「俺は………いや、折角だ。やってみるとしよう」
僕と兄さんは半ばオウカに引き摺られるようにして一緒にパズルを組み立てていく。
…確かに、ピースがはまって、少しずつ絵が完成していくのは、なかなか楽しいかも…。
兄さんも人生で初めてのパズルだからか慎重にピースを選んでいる。
「完成したらお部屋に飾りましょう」
「待てオウカ、額はあるのか?」
「はい、バッチリ買ってあります」
「用意周到だね…」
「お、はまったぞ…」
「お兄さんとGV…楽しそう…」
『じゃあシアンも混ざればいいじゃない』
(シアンは焦りを感じた)
《エプロンをプレゼント》
「オウカ、何時もありがとう…これ、受け取ってくれるかな」
そうやって僕は、以前オウカが欲しいと言っていたエプロンを手渡した。
「わあ、ありがとうございます。とっても嬉しいです!あの…早速着てみてもいいですか…?」
「構わないよ」
オウカはエプロンを着用すると、僕の前でくるりと一回転……。
「どうでしょうか?」
エプロンは品のある紫色で、桜の花弁の刺繍がところどころに施されている。
オウカの雰囲気に合うと思って選んだ物だ。
「よく似合ってるよ」
「ありがとうございます。ずっと…大切にしますね」
「エプロンなんだからどんどん汚してもらって構わないよ。使えなくなったら、また新しいのを贈るから」
「ふふ、そうなっても私、ずっとこれは、大切に取っておくと思います」
「オウカさんにプレゼント…うう…」
「お前もGVから宝石を貰っただろう。」
「お兄さん、それとこれとは話は別だよ!」
(シアンは焦りを感じた)
《GVに差し入れ》
「ふぅ…」
ダートリーダーの整備が一段落し、一息吐く。
ふと時計を見ると、整備を始めてから2時間が経過していた。
「お腹空いたな…」
軽食でも作ろうかと思い、自室を出ようとすると、見慣れない物が目に入った。
扉の近くにトレーが置かれている…。
トレーの上には、ブラックコーヒーとサンドイッチ、そして書置きがあった。
“お疲れ様です。根を詰めすぎないようにして下さいね”
「オウカ…」
隣の部屋を見ると、兄さんの部屋の前にも置いてある。
彼女の気遣いに感謝しつつ、僕はサンドイッチに手を伸ばした。
《カップ焼きそば Take.2》
キッチンにカップ焼きそばが置かれている。
「珍しいね、オウカがインスタントを買うなんて」
「新商品と書かれていたので、気になって買ってしまいました」
「…オウカは、カップ焼きそば知ってるんだね」
「…?はい、勿論?あ…ですが、かねてから気になっていたことがあるんです」
「うん?」
「お湯を注いで、3分経ったらお湯を捨てて出来上がり…一体、どの段階で麺が焼かれているのでしょう?」
「ね?ね?気になるよねそれ?テーラちゃんにも聞いてみたけどテーラちゃんも分からないんだって」
「まあ、テーラさんにも?きっと特別な工夫がされているのかもしれませんね」
「2人共…」
「何故分からないんだ…こいつらは…お前達、その…何だ…それは焼きそばに似せた物…ようするに焼きそば風のカップ麺だ。実際に焼いている訳ではないぞ?完成形を似せているだけだ」
「そんな…!?」
「まあ…!」
シアンはショックを受けてオウカは驚いていた。
(シアンとの心の繋がりを感じた)
(パンテーラとの心の繋がりを感じた)
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