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デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~

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第四十五話「天央祭・Ⅵ」

「貴方は精霊。本来なら先にあなたを殺すべき。だけど士道の為にあなたを手を組んだ。でも、退けた以上次の標的は貴方」

「全く、節操がないな」

彼女はホワイト・リコリスの主砲を躱しながらMG42を広範囲にばら撒く。折紙はブースターをフル稼働し通常のCR-ユニット並みに動いてくるため点より面での攻撃が有効と判断したためである。

実際にその判断は間違ってはいなかったが広範囲にばら撒いたため当たっているのは一割にも満たないためホワイト・リコリスの随意領域(テリトリー)で危なげなく防がれてしまう。

「DEM社の第二波が来ないとも言えないこの状況下でよく大胆に動けるな」

「第二波は来ない。DEM社からの出向社員は彼女たちだけ」

「そうか」

端から〈バンダースナッチ〉を数に入れていない二人。人間味の無い鉄人形など今の二人にとっては単なる障害物扱いでしかなかった。

MG42の弾が切れた隙を狙い折紙が主砲を放つ。その攻撃を彼女は身を翻し躱すが避けた先に大量のミサイルが包み込むように近づいてきていた。

「っ!」

それを防ぎきる事は不可能と断定した彼女は直ぐに退避行動をとり退避した先からくるミサイルのみを撃墜する。結果ミサイルの包囲から脱出する事には成功するも退避した先には折紙が彼女に主砲を向けていた。まるで来る(・・)ことが《・・・》分かっ(・・・)ていた(・・・)様に。

しかし、彼女はそれを呆気なく避けて見せ折紙に弾丸の雨で反撃する。彼女の霊力が込められた弾丸はMG42の本来の性能もあり一般人なら一発食らうだけで人体の大半をミンチに出来る威力を誇っている。無論随意領域(テリトリー)を展開する魔術師も無事とは行かず最強の魔術師と言われているエレンも無傷では済まないだろう。

それらはホワイト・リコリスの重さ故に回避運動が間に合わなかった折紙に全弾命中するも発生した随意領域(テリトリー)に呆気なく弾かれる。

「流石にこれをそんな簡単に防がれるのは心が折れるな」

「精霊を殺すためならこのくらい出来て当然」

「それは、嬉しくないねっ!」

彼女は手榴弾を折紙に投げそれを撃ち抜く。瞬間、黒い煙があふれ折紙の視界を奪う形で周辺に漂う。

その隙に彼女は後方に回り込み両腕に持ったパンツァーファウスト60を発射する。速度こそ弾丸よりはるかに遅いものの折紙が気付くころには目と鼻の先まで近づいており、折紙の目の前で爆発を引き起こした。

「…くぅっ!!」

随意領域(テリトリー)の展開が間に合わなかった折紙は顔を真っ赤に染めながら彼女の事を睨みつける。そんな彼女は撃ち終えたパンツァーファウストを投げ捨てラインメタルを構え銃口を向けていた。

折紙は随意領域(テリトリー)を発生させようとするが脳にダメージが入ったのか上手く作動せずそれどころか視界が真っ赤に染まり何も見えなくなってしまう。更に意識が朦朧とし始めておりこのままでは死ぬと折紙は無意識に思った。

「中々の強敵だったよ鳶一折紙。それじゃあ、Auf Wiedersehen(サヨウナラ)

そして、今まさに折紙へと止めの攻撃を食らわせるべく引き金に手をかけた時であった。

ヴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!

下から響き渡った巨大な音。それはピアノの鍵を一斉に鳴らしたかのような音。耳へと響く音に思わず彼女は耳を抑える。しかし、音は耳に響くのではなくまるで脳に直接入り頭の芯を侵食するかのように染み込んできた。

「これはっ!?」

彼女はこの現象に心当たりがあった。三か月以上前に美九が自らにした【お願い(・・・)】、それによく似ていたのである。幸いな事にあの時の様に洗脳される事は無かったがもしもう少し消耗していたならあの音にやられていただろう。

一方の折紙は脳にダメージがありそれどころではなかったのか特に異常はなかった。しかし、満身創痍であることに変わりはない。彼女は武器をしまうと折紙に話しかける。

「…どうやらステージで何かあったらしい。私は様子を見に行く。お前も退いた方がいい。これ以上やるなら手加減(・・・)は出来ない」

「ッ!!!!!」

折紙は彼女の言葉に歯を食いしばる。手加減(・・・)。彼女は確かにそう言った。その事実はつまり自分は彼女に手を抜かれた状態で相手をされていたと言う事である。自分は本気で戦っていたはずなのに相手は余裕があった。その事実が折紙の頭を何度も行き来する。

「…」

茫然とする折紙に彼女は怪訝な表情をするも天宮スクエアへと降りていく。

「っ!させない!」

折紙は当初の(・・・)目的を(・・・)忘れた(・・・)様に(・・)主砲を放つ。今度は彼女はそれを避けなかった。対角線上には天宮スクエアがあったからだ。もし、彼女がここで避ければ天宮スクエアに直撃していただろう。そうなれば中にいる人たちに死傷者が出ていたはずである。

「…どういうつもりだ?」

主砲を受けた彼女は…軽傷であった。両手にはトンファーが握られておりそれを使って防いだことをうかがわせた。

「お前の目的は分からないが精霊から人類を守ると言っているお前らがやる行動とは思えないが?」

「そ、それは…っ!」

我を失い自らが行った行動に折紙は震える。もし、彼女が避けていたら…。あの中にいた士道に 何か起きたかもしれない。その事に折紙は震える。

「…脅す訳じゃないがこれ以上の深追いをするなら一般人に被害が出る覚悟で追ってくるんだな」

「私は…」

彼女はそれだけ言うと今度こそ天宮スクエアに降りていく。その様子を折紙はただ見ている事しか出来なかった。
 
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