魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers
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幕間 伍幕 それでも親子なんだと
――sideフェイト――
皆が……と言うより、各家族毎に帰路につく中。私達はと言うと……。
「プレシア、フェイト。注文は何にしますか?」
「私と貴女はとりあえず生だとして……フェイトはどうする?」
母さんとリニスに連れられ。居酒屋の個室へと来ています。
「……ハッ! プレシア? もしかするとフェイトは……」
メニューを見ながら唸っていた私を見て、リニスが何かに気づいた様で母さんを見る。
「……ハッ! もしかして、我が愛娘ってば……まだ未成年……だった?」
失敗したと言わんばかりに口元に手を添え、目を見開いて衝撃を受けてる二人を見て思わず……。
「フフ。ううん、誕生日は迎えて二十歳になったから平気だよ」
記憶の中の母さんとリニスとは違うのが可笑しくてつい笑ってしまった。
私の言葉を受けて、ホッと胸を撫で下ろす二人を見ていると、私も安心。
「しかし、フェイトはあまりお酒は呑まない感じですか?」
リニスが心配そうに声を掛けてくれる。
だけどお酒……あまり呑んだことが無いというのが本音だ。
すると、そんな私の様子を母さんは看破したようで。
「リニス。とりあえずシャンディガフを」
「わかりました。おつまみは適当に頼みますね」
「えぇ。お願いするわ」
あれよあれよという間に注文していくリニスを見ながら、視線を母さんとリニスの間を行ったり来たりしていると。
直ぐに飲み物が届いて、そして。
「さ、乾杯するわよー!」
「フェイトも」
へ? へ? よくわからないまま、ビールよりも少し色の薄い飲み物のジョッキを持って。
「「乾杯!」」
「……乾杯」
ぐいっと豪快にジョッキを傾ける二人に対して、ちびちびとジョッキに口をつけて……。
ちょっと呑んで、何だろうジンジャーエールみたいだけど、ちょっと苦いような……うん、お酒っぽいけど、全然そんな事無いような。
「……美味しい」
ジョッキから視線を母さん達へと戻すと、丁度二人でハイタッチしてる所で。思わず首を傾げてしまう。
「良かった。それも一応お酒だけど。大丈夫かしらって心配してたの」
「プレシアはお酒に弱いですからねー。フェイトももしかしたらと思ったのですが一口目で美味しいって言えることは、大丈夫そうですね」
「ちょっとリニス。酒弱いってことは伏せてって言ったでしょう?」
今度は母さんが困ったように笑って、リニスもからかうように笑ってて……なんというか、状況が飲み込めない。
コホンと母さんが咳払いをしてから。
「ごめんなさいフェイト。突然飲み会なんて困ったかもしれないけど。その、昨日からやってきたフェイトを見てると、まだ距離があるように見えて、それでね」
「正確には、遠慮がちの娘も可愛いけど母としてはもっと来てほしいのと。娘と一緒に飲み会をするという親としての喜びを先に感じたいという二つの理由ですね」
「リ・ニ・ス!」
慌てて口を閉めようと席をのりだすけれど、ジョッキ片手にそれを回避するリニス。
私が考えてた関係とは違うせいで、やっぱり可笑しくて。
「アハハハ」
つい笑ってしまった。
そんな私を驚いたように二人共目を丸くしたけど、直ぐに。
「さ、ガンガン行くわよ!」
「「おー」」
母さんの掲げるジョッキに、リニスと二人でジョッキをぶつけて二度目の乾杯をして―――
――――――
食事もそこそこに、いろんなお話をした。当たり障りのない事を話した。それでも二人は嬉しそうに話を聞いてくれた。
母さんとリニスが、嬉しそうに笑ってくれる。その度に考えてしまった。とても優しくて、有り得ない世界だって。
きっとお酒の影響もあったんだろう、ぽつりぽつりと、元の世界でのことを……エリオやキャロの事を話した。遠い場所に居るとは言え、この世界にも二人が存在しているから、名前は伏せて。
そして伝えた。
―――私にも家族が出来た。
その言葉を受けて、リニスも母さんもとても驚いて……そして。
―――おめでとう。
思ってもいない言葉に思わず泣いてしまって、二人を慌てさせた。
その後も、私が母さんたちと別れたあとのことを。少しずつ少しずつ話していった。
一番の親友と出会った事。ライバルって呼べる人と出会ったことや、私がアリシアトシテではなくて、本当の意味で私としての人生を歩む決意を固めた時の事。親友が無理を通して、怪我した時の事。だけど、心を強く持って、もう一度立った事を。
きっと、おかしいと思われたかもしれない。そのせいなのか、途中から飲み物に苦味が現れてきた。まるで後ろめたい気持ちを表してるようだった。
でも、私は話を続ける。
一度は信じていた家族に捨てられた男の子の話を。住んでいた場所を追い出された女の子の話を。
そんな二人に、私のことを家族だって言ってくれたことがとっても嬉しかったってことを伝えた。
――sideリニス――
……プレシアと、リンディとは付き合いが長くて、割と三人で……と言うより、仲の良いニ人に誘われ私も飲む様になりました……が。呑んでも全然変わらないリンディとは打って変わって、プレシアはすごく弱いです。ビールを2杯くらいで酔っ払う程度に。
そして、何より……泣き上戸でも有るのです。
さて、フェイトが話した中で突然私がこう考えているのは、たった一つの後悔からです。
何がいいたいかと言うと……。
「それでね母さん!! 響ってば、酷いんだよぉおおおお、せっかく告白してくれたのに一緒にいてくれないんだもぉおぉぉん!!」
「分かるわフェイト!! 私もこんなに頑張ってるのに、リニスもリンディも私を束縛して!!」
おいおいと号泣するテスタロッサ母子。
キッカケは、フェイトの顔がすごく赤くなってる事に気づいたことでした。元々薄暗い個室だったせいで気づくのが遅れてしまったこと。
そして、何よりも……。
気がつけばフェイトとプレシアの飲み物が入れ替わってたことに気づかなかったことです。
それぞれ3杯呑んだところまでは、どちらも問題なかったと覚えていますが。いつの間にかそれが逆転してしまった事。
その結果、血は争えないんだって言うことに気づいた事です。
フェイトも……初めてということも有るんでしょうが、お酒に弱くて泣き上戸だということです。
もー酔っ払い方がプレシアとほぼほぼ変わらなくて可笑しいんですよね。
……それにしても、プレシアから相談された時には、おや? と思いましたが、杞憂だったようですね。
貴女の娘ということもあって、とってもそっくりですよ。ただ、現状は歳が合わないので仲の良い姉妹のようにも見えますけどね。
しかし、驚いたことと言えば……フェイトに彼氏が居るということです。プレシアもフェイトも酔っ払って居るせいで記憶に残らないでしょうけど。貴女の娘大変なことを口走ってますよ?
ただ、引っかかるのが……。響とは、あの響の事でしょうか?
思い描くのは、昨日見た長い黒髪の少女。歳不相応に礼儀正しいとは思っていましたが、彼女の妹にあたるはなを見ていると、自然とそうなったと考えられなくもない。
同名の男性なのかしら、と思っていると。
ピピッと、私の携帯がメールを受信する。なんだろうと思って開くと、英文と画像データが2つ添付されていた。
新手の迷惑メールかしら、と思っていると。文章を読んで少し思い悩んだ。
―――マイスターへ。我が主の想い人の写真でございます。どうか他言無用でお願い致します。閃光の戦斧より。
と短くそう綴られていた。
普段なら迷惑メールだと、切って削除する内容だ。
だけど。マイスターという単語に、戦斧と聞いて。私は夢のことを思い出した。
確か、夢の中の私は夢の中のフェイトに向けてとある贈り物をしたということを、共に在って欲しいという意味でバルディッシュを創り贈っていたことを。
そう言えば、今のフェイトの手荷物にもありました。金の台座に乗った三角形の黄色い宝石が。
だから、自然と大丈夫だと思いその添付画像を開いて―――
「……まぁ」
思わず息を飲んだ。画像の中で二人の男女が抱き合って居る写真。そして、そのままもう一枚を見て。心が暖かくなりました。
二人が唇を重ねた写真。アリシアとは違って口ベタというか、引っ込み思案のこの子が……と考えてしまい、思わず涙がホロリと。
同時に、写真に映る赤い和服の長い黒髪の男性。横顔しかわかりませんが……女の子の響とそっくりだなぁと。
ですが、この方がフェイトの想い人の……響なんだと。
不思議ですね。微妙に違う世界の未来のフェイトだと言うのに……何処か夢の中のフェイトの様に見えるんですよね。淋しげに笑うところなんて、そっくりですよ。
そのせいでしょうね、プレシアがなんとしてでも呑みに誘ったのは。夢の中のフェイトとだぶって、そっくりだからこそ。この子の本当の笑顔を私は見たいのよって張り切っていましたし。それ以上に、心からお母さんって呼ばれたいって。
今のこの光景を―――プレシアとフェイトがジョッキ片手に肩を組んでいる姿を、こっそり写真に収め短い文を込めて。戦斧さんへ送り返す。
―――良い親子ですよ、と。
後書き
今回短編になってしまい申し訳ございません、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。
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