魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers
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Duel:03 邂逅、轟熱滅砕
――sideフェイト――
「お、今度のマップは……和風の城下町か……あ、奏でと……ヒッ」
隣で響が悲鳴の様な声を上げて皆の視線を集める。集めた本人はというと……なんてこと無いように口元を抑えながら。
「あー、ごめんしゃっくりです」
って言うけど、よくよく見たら若干震えてるように見えるのは何でかな?
『……ねぇ、スバル。顔隠せって言われてたはずなのに、何故全体を隠してるのさ?』
『やー。顔隠せる物をイメージ出来なかったから、前の……災害担当突入部隊の時の服装と装備しかなかったなぁって』
『……だからって、ガスマスク装備してると分からなさすぎて……一瞬びっくりしたじゃない』
画面の向こうで苦笑を浮かべる奏の側には、全身をレスキュー用のジャケットにフード、ガスマスクという、ちょっと懐かしい格好だ。
六課設立前にもらった資料で着てて、ティアナと二人で災害の中のエースって言われてたっけ。
だけど、建物の影って言うこともあって、若干ホラーっぽい。
「そして相手は……あっ」
モニターには丁度反対側に5人の女の子がいた。その中でも……。
「懐かしいなぁ」
「せやねぇ」
はやてと二人で懐かしんでしまう。だって、画面の向こうには昔のなのはがそこに居たから。それ以外にも幼いアリサやすずかが居て懐かしさがどんどん増えていく。
さっきの私のそっくりさんには凄く驚いたけど、今度は懐かしくてちょっと嬉しくなる。それ以外にも……。
「フフ、私の知ってるスバルとは全然違うなぁ」
「そういや、ギンガもそう言ってたなぁ。そんなに違うもんなん?」
「えぇ、生まれのこともあって……昔はとっても内気だったんです。怖いのとか痛いのとか嫌だからって。だけど、こっちのスバルは―――」
丁度画面の向こうで、ちっちゃいスバルが、ちっちゃいティアナとハイタッチしてる所で。
「凄く元気いっぱいで驚きました」
「ショック受けてたのも、ティアナと出会ってるという事からの羨ましさからだしね」
反対にはやては。飛び級って事にショック受けてたし……と言っても、あんまりショックと言うかオーバーリアクションだったけどね。
「……それにしても皆ちっこいなぁ。スバルやティアナは今のバリアジャケットを小さくした感じやんね」
「アリサやすずかも、可愛いね」
なんて話をしていると……。
『とりあえず最初はちょっと様子を見よう。数の理は無いわけだし、きっちり見極めてから行こうか』
『うん。私も……ウィングロードは伏せていこうかな。後半から行ってみるよ』
『お願いね。支援射撃が随時するけど出来ない時は連絡を。情報は共有していこうね』
『勿論。でもちっちゃいなのはさんと勝負……なんだろう。勝てる気がしないと思ってしまうのは私だけかな……?』
『……よし頑張ろ』
『聞いて?!』
……割と本気の作戦会議だよねあれ。というか、響との戦闘を見てから舐めて掛かったらって捉えちゃったみたいだし。
さ、そろそろ始まるかな?
――side流――
「流? あの白騎士……は、まだ分かるが、隣のあれは何だ?」
「……なんでしょうね?」
王様の疑問に思わず苦笑い。奏さんは白いコートに槍の様に長い二丁のライフルのお陰で騎士の様だけど……隣のガスマスクの人はなんだろ? マッハキャリバーを付けてるからスバルさんっていうのは分かるけど。何であんな……明らかに違うなにかになってるけど。
「……ふむ。まだ数の少ないストライカーで、あのアバター……また知らない人。それとも、私達にまだ教えられない人ですか?」
「さぁ? どうでしょうね。それはこれからの動き次第ですよ」
シュテルも既に何かを察したのか、意味深に聞いてくる。それはこの部屋に居るはやてもアリシアさんも同じようで、何かに気づいた。
と言っても、右腕にリボルバーナックルにストライカーモデルを装備してることから、遅かれ早かれバレてしまうけどね。
さて。
「さ、始まりますよ」
画面の向こうでスタートの合図。同時に二人のスバルさんが前に出る……といっても、ちっちゃいスバルはラインを上げることだけで、大きいスバルさんは、奏さんの事を考えての位置取り。ココらへんは経験値の差だね……。
さて。どう転ぶかな?
――side奏――
……コレは、嫌な感じだなぁ。
マップを展開してスバルの動きを確認してるけど、それ以上に、小さいスバルの動きが直線過ぎて。逆に読めん。
『ス……じゃなくて、スターズ03へ。なんか見える?』
『こちらスターズ03。なんか、変!』
『いや、変なのは貴女の声だよ。どうしたのさ? その格好でデスボイスとか怖いし聞き取りにくいわ』
もはやスバルとはと言えるほど声変わりした何かがそこに居た。というか、前線で戦う子達って、驚いたりしないかな?
しかも心なしか肌寒く……。
「トワ、リト。索敵。何人来た?」
『接近数は不明。しかし、圏内には入られたかと』
『急激の温度の低下を確認。おそらく―――』
咄嗟に飛んで、飛んできた何かを躱す。私が居た場所を何かが飛来し、土煙が上がる。だが。
着地点に弾丸を一発ずつ撃ち込むと同時に、ライフルから拳銃二丁へと形を変えて。着地と同時に周囲を薙ぎ払う様に弾丸の壁を作る。
「下がります!」
幼い誰かの声。丁度それはあの子を幼くしたような声……ということは、ティアナかな? だけど……。
「アイスバインド!」
「!?」
瞬間、足元が凍りつけられた。更に。
「行きます、ファントムブレイズ!!」
綺麗に私の背後から土煙を裂いて、砲撃が飛来する。
……フフ。
「良いじゃない……ッ!」
早抜きの要領で、右の拳銃をライフルへと戻すと共に、砲撃の下部分を狙い収束させた細い砲撃を撃つ。同時に左の拳銃で足元の氷を砕いて、即座に真上へと向けて。
「クイックスター!」
『Feuer.』
抜き打ちと早撃ちを組み合わせた近距離射撃術を発動。そのまま横へと転がって砲撃を回避して―――
「こちらライトニング6! こっちに3人! 支援射撃は無いと思って!」
『了解!!』
転がり起き上がると共に、銃をそれぞれ上下二箇所、そして視線はコレを指示したであろう人物の元へと向けて。
「な、何で今のタイミングで当たんないのよー!!」
「完全に虚を突いたのに……すずかさんのバインドも壊して、死角のアリサさんを迎撃なんて……」
「凄いなぁ」
「フフ、それ程でもないよ」
出来る限り強がってニヤリと笑ってみせる。正直なところ、舐めるつもりはなかったけど、何処かで侮ってたかなコレは……。
スタイル的に、アリサさんが前衛、ティアナが中衛、すずかさんが後衛の小隊か……。
私の方に意識を向けてくれたのか、最初の動きに合わせて動かなかった私に合わせたのか分からない。だが……。
「トワイライト、ムーンリット……やろうか?」
『『ja』』
使い勝手の良いライフル二丁へと変えて。
「来るよ二人共!」
「はいよ!」
「行きます!」
集中すると共に、背後に一旦飛ぶ。残光……いや、残炎を残しながらアリサさんが、その軌道に合わせてティアナがその隙間を縫って射撃しようと銃口を向けてきてる。背面のすずかさんが動かないということは、何らかの手段で二人を守れるということ。
だが、撃たなければ負けることは明白ならばこそ。
「フルスロットル・ムーンストライクX6!!」
手元でガンスピンさせると共に、カートリッジを3発ずつロードした分。右三発をアリサさんに、左の三発をティアナに向けて、撃ち放つ。速度と貫通に特化した弾丸の三連射。同時に左は残弾が無くなる。
「防いで、スノーホワイト!」
『アイスミラー・ショートサーペント!』
私の弾道を読んでたと言わんばかりに、二人の前に二枚ずつ氷盾が召喚された。だが、防がれるのはわかりきってたことだ。
その本命はただ一つ。まずは一人削る事! 残る弾の入った右の……トワイライトをティアナへと向けながら装填している最後のカートリッジを使用。銃口にスフィアを生成と共に、環状魔法陣を3つ展開させ生成を加速、増幅させて。
「ゲシュペンスト・ライン!」
『Gespenst Linie』
近距離砲撃魔法を発射。それは盾を抜いて、ティアナを完全に捉えた―――筈だった。
「行くわよ! タイラント……!」
「ファントムブラスター……!」
その間に詰めてきたアリサさんの一打と共に、再び背後から声が聞こえて。
「レイブ!」
「ゼロ式!」
完全に挟撃された―――
――sideスバル――
「いっくぞぉおおお!!」
「わ……」
私だぁあああ!? ちっちゃいなのはさんが遠くにいるのを見ながら、私に向ってまっすぐ突っ込んでくる私を見て、なんというか……なんというか、すっごくびっくり。
なんというか……すっっごくボーイッシュな子だなぁって。
なんて考えてたら。
「行きます!」
「ショート&ロング混合の!」
ちっこい私の右腕にスフィアが形成されると共に、遠くのなのはさんの前にもスフィアが展開されて。その収束、密度に驚いて……って。
「「ディバインバスターWストライク!!」」
「うわわ?!」
咄嗟に盾を張って逸しつつコレを回避。いやぁ……ちっちゃくてもなのはさんだなって。さて。
「スバル! 次行くよー! アクセルシューター! シュートッ!!」
「はい! ウィングロード!」
私がいる場所や、その周囲を囲うようにウィングロードが展開された。きっと普段なら慌てたんだろうけど……今はすっごくワクワクしてるのが分かる。
10発の誘導弾で、丁寧に行き先を誘導されて、その先には。
「うぉぉおおお、行・く・ぞぉおおお!!」
もう一度右腕を中心にスフィアを展開して、私に向けて放つのは勿論。
「ディバイン……バスタァアア!!」
――side流――
「はっ。なるほど、そういう事か。またドクターの悪ノリか?」
「さぁ。お応えいたしかねます」
王様の言葉を受けて、思わず笑みが溢れる。彼女の出現により、部屋の中で歓声が上がった。特に二人の付き添いで着いてきた彼女なんて……。
「すっごーい!」
いつもある長女の風格が完全に無くなって眼の前の光景に驚いてた。小さなスバルの撃ったディバインバスターは、ジャケットガスマスクの外装を剥いで。
「……通りでレヴィが負けるわけだ。彼奴ら。この前と同じく未来からの来訪者だろう?」
「えぇ」
ある意味ですけどね。とは言わずに心にとどめて。
「すずかやティアナ、アリサの相手の白騎士も中々。並の相手ならもう決着は着いた筈なのに。彼女はなおもそれを受け止め。拮抗している。良いですね」
シュテルも分かりやすく燃えている。響さんの戦闘、そして次いでティアナとは違った、今まで現れていないベルカ式の銃使いに。そして……。
「スバルの未来の姿が現れるとは、流石の我も想定せんかったわ」
前例があるお陰か、皆さんの飲み込みが速くてホッとする。詳細は終えた辺りで話すとして。
「お、大人版なのはも見れるのかな……?」
頬を紅潮させたフェイトは……見なかったことにしようって。
さ、最初から本気の二人が更に本気になる頃だ。どうなるかな? 決着は……きっと直ぐに着くはずだから。
――side奏――
あれから数分。小さいアリサさんとティアナのコンビネーションを躱しつつ、攻撃を撃てばすずかさんに止められるというとってもわかりやすいジリ貧。
今ほど二丁の銃で良かったと思ったことはないかなぁ。だけど、徐々に対応されていくのが分かる。
「すずか! あれ、やるわよ!」
「うん!」
小さなティアナを置いて、アリサさんが下がり、すずかさんが上がってきたのが見える。だけどそれは悪手だと……。
「ティアナちゃん!」
「はい! 足止め行きます! スマッシュカノン!!」
「……ッ!?」
スイッチの要領で、前に出てきた途端。抜き打ちと共に拡散する魔力弾を連続で叩き込まれる。そして、それを私は防いでしまった。コレが意味するのは……。
「「ユニゾンリライズ!!」」
その掛け声が聞こえると共に、赤い服装のアリサさんが蒼くその剣に冷気を、蒼い服装のすずかさんが赤く、炎を纏った。
なるほど……決めに来たか。
あー……強いわぁ……だけど。
ティアナのスピード、弾幕にも慣れた。
「見えた!」
本来のティアを知ってるせいか、やはり練度が足りない。クロスミラージュの銃口からしか撃たないというのがその答えだ。私の知ってる彼女なら。もっと厚い弾幕をハルことが出来るだろう。
だけどこのティアナは始まりの部分が固定で、トリガーを引くタイミングも図れたのなら。恐れることはない。
「行くよ。二機とも!」
『『ja』』
ライフルをガンスピンさせると共に、その形態を拳銃へ。だが、その形態の一番の役割は。
「……え? 銃ですか、それ?!」
「拳銃だよー。ただし、4丁だけど!」
グリップエンドが連結した、メリケンサックのような独特な形状に変えて。両手に構え、盾を解いて踏み込む。身に当たるもの以外は、気にしない。身を屈め、的を小さく。前を伺って、ティアナの懐へ。左手をねじ込んで。
「クイックスター!」
『Feuer.』
ほぼゼロ距離で放つと共に、ティアナの体が浮き上がる。そのまま右手を二人へ向けると共に。
「ゲシュペンスト・ライン!」
『Gespenst Linie Zwei』
「スノーホワイト!」
『ショートサーペント!』
二丁の銃口から近距離直射砲を放つが。それは炎の盾に防がれた。が―――
それは悪手ですよ。左の銃をもう一度変形。それは滅多に使わない3つ目の形態である。
「撃て!」
『Stern Lichtstrahl.』
対艦ライフルに変えると共に、その銃口から収束砲を残カートリッジを使用して撃ち放つ。それは盾を超えて。
「「ユニゾンアーツフレイザード・ストーム!!」」
二人の合体技と拮抗。だけど。
『Durchstechen.』
それは事前射撃。本命は……。
「ファイヤ」
刳り穿つ様に、前方を撃ち抜いた。
――sideフェイト――
「わー……奏ノリノリだぁ」
苦笑を浮かべながら響が言うと皆が首を傾げた。奏の本来のデバイスについては話を伺ってるけど……あんまり変わってないというのが正直な感想だった。
シンプルな二丁の拳銃、ライフルの他に、2丁ずつ連結した拳銃と、対艦ライフルと初めて見るものがたくさんあったし、何よりその出力は凄まじかった。
「……あれ、対人でめったに使わないのになぁ」
「え、そうなの?」
「えぇ。だって最後の砲撃。もう一本あれが追加されるんですよねー」
思わず私もはやても、ギンガまでも顔を顰める。
「しかもあれ。対艦ライフルを鈍器のように振り回してたときも合ったなぁ」
「あーあったあった。懐かしいわぁ」
震離と二人で懐かしそうに話してるけれど、私達はそれについて行けてない。そう言えば皆の本来のデバイスを用いた戦闘って見たこと無いんだよね。紗雪や時雨もバリアジャケットが変わってたのは見たけど、そのスタイルまではちゃんと見てなかったし。
「……でも、やはり対人の癖ですね。咄嗟に急所を外してた」
「せやんなぁ」
ティアナを撃ったときも、アリサやすずかを撃ったときも、僅かにその銃口をずらしてた。ティアナに関しては両肩に当たるように。アリサやすずかに関して、芯に当たらないように、二人の間を狙って。
「まぁ、勝ったから問題ないとしても……問題が……」
「せやなぁ。小さいなのはちゃんとスバルやんねー」
ちらりとスバルの方を見ると、既に小さいスバルはダウンしており、小さいなのはと一騎打ちになってるけど……。
「どの世界でもなのはさんって強いのか、それともスバルがちょっと残念なのかわからないですね」
既にどちらもACSを起動しての突撃対決をしてる。ちなみに小さなスバルはと言うと、未来の自分の姿に興奮して……勢い余ってウィングロードから落ちてダウンしちゃった。
で、スバルとなのははというと……。
「……やっぱなのはさんの三次元空間把握ってやばい……」
「……そうだねぇ。経験値ならスバルが上なのに、そのスバルの機動を学んで糧にしてるもの。凄い」
響とギンガが軽くひいてるけど、コレには私達もびっくりだ。
昔から空を飛ぶという才能があったなのはだけど、まさか違うタイプなのに、それを学んで実践するとは。
「流石エースオブエース……え、でも待って。なぁ震離。この世界って、もっと上とか居るの?」
と響が質問に対して、震離はと言うと……。
「……あ、流ー、次タイマンするから誰が出るか決めててねー」
『了解しましたー』
「聞けや」
……いつか響とあんなやり取りが出来たら良いなぁ。
――sideスバル――
は、早!? トップスピードや、小回りは私のが上なのに、私のカーブの癖をよく見て、それを真似て。私を追い掛けてくる。ウィングロードを足元に展開してその行き先を誤魔化してるにも関わらず。
「ディバイーン、バスター!!」
きっちりと私の行く先を打ち抜き、阻害してくる。
……あー。ダメだ。笑ってしまう。だけどコレは自嘲でも無ければ、なのはさんを下に見る訳でもない。ただ純粋に喜びで笑ってしまう。私が目指して、憧れた人は、小さくたってこんなにも強いんだって。こんなに熱くなれる勝負が出来るんだって。だから。
「行くよ相棒!」
『Alright Buddy!!』
一際高く飛んで、背後から迫るなのはさんを先へ行かせる。そのままなのはさんは反転して、私と相対するけれど。
「ぉおおりゃああ!!」
「わ、わ?!」
なのはさん目掛けて、体当たり。狙うは左半身を左寄りの正面から。けど。その瞬間アクセルシューターが展開され、真上から真下へ向けて撃ち込まれるのを。離れて回避。その勢いを活用してその場で回転とマッハキャリバーの加速からの、左のハイキックを、なのはさんの右側面へ―――。
『Protection.』
しかし、障壁で防がれ逸らされる。マッハキャリバーと衝撃がぶつかり合う音が炸裂すると共に。左手に魔力を装填。もう一度回転して。左手を伸ばして障壁と干渉。力ずくでそれを打ち破ると共に、なのはさんの腹部にスフィアを展開して。
「ディバイン……!」
そのままスフィアに魔力を流し込んで肥大化させてからの。
「バスタァアア!!」
右の拳を叩き込んで、砲撃を放った。
――side流――
「……あの二人。上手いな、大きい方のスバルが苦戦していたのは、おさげに何か思うところがあったと言う所か?」
「それも有るんでしょうけど。単純になのはの学習能力の高さだと思いますよ」
関心したように話す王様に合わせて私もちょっと関心した。というより、勝負の面でまだコレをゲームで遊びという事を本当の意味で把握していないとはいえだ。圧勝するだろうと、私は考えていた。だが現実は違った。響さんはレヴィと拮抗している。そして、スバルさんや奏さんも、若干押されていたし、戦術をしっかり組めば全然勝てるだろう。
何より、ブレイブデュエルはフリーバトルだけではないですしね。
ふと、シュテルが私の服の裾を掴んで。
「……流。次は、次こそ……」
「え、あー……」
いつもクールなシュテルさんが、コレでもかと言うほど目をキラキラさせて言っている。コレには王様もレヴィ、ユーリは勿論。はやても珍しい物を見たという顔をしている。それ程までに珍しいことだ。
「わかりました。次は一対一ですので、シュテルにお願いしましょうか」
「承りました」
小さくガッツポーズを取るシュテルの頭を思わず撫でてしまう。というか、王様もそばに寄って頭を撫でてる。こんなにストレートに言うのは本当に珍しいことだから。
「ねぇ流ー?」
「ん、何でしょうアリシアさん?」
ニコニコとギンガとお茶を飲んでるアリシアさん。
「次の相手は誰なの?」
「んー……残ってる人を考えると。多分……」
フェイトさん、といいそうになるのをぐっと堪える。多分言ったらきっと……。
「楽しみは最後まで取っておきましょう。まだ内緒です」
口元に人差し指を当ててまだ内緒ということを伝えると。悔しがってたレヴィが起き上がって。
「あ、もしかして!」
「はい、それ以上はいけませんよ?」
「勿論! 流はどっちが勝つと思う?」
「さぁ? 二試合通して。分からないですね」
コレには私も苦笑を浮かべる。だって、こちら側から出る子は、相変わらず全国一位を、単独戦最強が出るのだから。
だから……舐めて掛かると、負けますよ?
――side震離――
「……いやー、怖いわー。ティアナってば、ちっちゃいのに早撃ちがヤバかった……凄いわぁ」
ちょっぴりげっそりした奏に対して。
「なのはさん凄かったのと、私は私だったと言う事……そして、ちっちゃいティアを私は見たかった……ッ!」
膝をついて漢泣きのスバル。
凄い対称的だなぁって。正直こちら側が圧勝するものだと思ってたけど、思いの外差がないという事と、まだまだ実践のように捉えてるからこそ動きが固いなぁって。
元の世界に戻っても大丈夫な程度に羽目を外しても問題ないと思うけど……それは酷か。
……さて。
「次はフェイトさんが出ますけど、皆さんどっちが勝つと思います?」
次の試合まで時間があるし、時間つぶしに奏とスバル以外に話を振ってみる。はやてさんは顎に手を当てながら。
「んー。順当に行けばフェイトちゃんなんやろうけど……ここまで見てると番狂わせは普通にあり得るし……ギンガはどうや?」
「相手がわからないのでなんとも言えないですけれど……やっぱりフェイトさんが勝つかと。響は?」
「あー……舐めて掛かると持ってかれる。一対一だから、相手も多分強い子? が出てくるだろうし。一概にどっちがなんては言い切れないよ。
ところでギンガさんや? 降ろしてもらっていい?」
「ダメー」
手持ち無沙汰なんだろうけど、はなをはやてさんが抱いて、小さい響をギンガが抱いてる。その様子が微笑ましい。
……そういやなんで奏はあんまり響と絡まないんだろう? あの時奏と響は結ばれてたもんだと思ってたのにな。
いかんせん、あんまり見てないしもう結構昔の話もあって若干おぼろげなのが悔しい所。こうして再会したから抑えてるのかな?
『震離。私の方は準備できたよ?』
「へ、あ……ごめんなさいフェイトさん。ルールは変わらず模擬戦の感覚で戦って頂ければ問題無いので」
『うん了解。あんまり危なくないようにするから』
……んー。コレは言うべきか言わざるべきか……いや、一応言っておこう。
「フェイトさん。要らぬおせっかいかも知れませんが……フェイトさんと対面する子。舐めて掛かると……一方的に焼失しますよ?」
私がそう伝えると、一瞬スッと、目が細くなったけれど直ぐに戻して。
『それでもだよ。それじゃあ行ってくるね』
「はい、いってらっしゃい」
さ、どうなるかな? ゲームだから出来る事をしてくる子だけど?
――sideフェイト――
「リライズ・アップ」
そう宣言すると、一気に世界が塗り替わって。瞬きした瞬間。
「……わぁ」
一言、懐かしいと思えた。まだ日も登らない開け切らぬ空に、水平線の彼方から日が昇ろうとしていて、うっすらと明るい。
あの日もそうだったなぁって。ただ、あの時と違うのは、私がオーバーコートを纏ってるせいで白く見えて、私と相対する少女が赤紫色の上着とロングスカートが風に揺られてはためかせているという事。
その少女は、なのはに顔立ちはとても良く似ているものの、一目で違うと分かった。胸の中に熱いモノを抱いて、冷静であろうとする少女。
ちょっとお話をしたいなぁと思う反面。既に勝負は始まってるということを肌で感じて、意識が収束していくのが分かる。
現在の距離を考えると、近接を仕掛けようと踏み込むには僅かに距離があり、彼女の射程距離だと僅かに近い。
そんな間合いのせいで、私と彼女は視線を合わせ続けている。
「パイロシューター!」
彼女の周囲にスフィアが8つ展開されると共に、私も踏み込んだ。
こちらを狙うアクセルシューターのような誘導弾は、なのはのそれとは違い、それぞれが複雑な機動を描きつつも、その全てが本命に近い、当ててみせるという意思を感じる。
飛来するスフィアの弾道を計算し、加速、減速を組み合わせ、僅かな隙間を潜ってそれらを回避すると共に。
「……やりますね」
「貴女こそ」
すれ違うと同時にスフィアを斬り落としていく。口で言うのは簡単だが、思ってた以上にキツイことでもある。私の知っているなのはと比べればやはりまだ甘い点はある。だがそれでも鋭い誘導故に、大きく回避行動なんて取れないし、それをした瞬間撃ち抜かれてしまうだろう。
4つ目を切り裂いた辺りで、もう一度踏み込み彼女へ向けて飛び立つ。それを迎撃しようと残りの4つが飛来するのが見えて。
「バルディッシュ」
『YesSir.』
バルディッシュの形態が、杖からハーケンフォームへと切り替わり、魔力刃が展開される。それを振るって、一つ、二つ、三つとシューターをもう一度斬り落として。
最後の一つを斬ろうとした瞬間、不規則にそれは動きを変え、切っ先を躱して私へ向かう。
―――上手い。
心から思うと同時に、彼女の杖がエクセリオンモードに酷似した形態へ変わってるのが見えて、私の中の警告が鳴り響く。だが、裏を返せば、コレは好機。
スフィアが当たるよりも先に踏み込み、再度加速して彼女へ向かう。瞬間彼女の瞳がギラリ、と煌めいて。背中の影から、もう一発スフィアが現れ私へ向かう。それは9つ目のシューターで、こういう時の為の保険。一打を当てるために備えていた物。このまま行けば確かに危険だけど。
「ハーケン……セイバー!」
バルディッシュを振りかぶって、魔力刃を射出。別に大きく振るう必要はない。だが、敢えて大きく振ったのは、背後に迫るシューターごと斬り落とし、目の前に迫るシューターも落とすためだ。
打ち出した魔力刃は真っ直ぐ彼女へ向かう。
あの時と似たシチュエーションだなと考えるけれど―――
「ディザスター!」
なのはのディバインバスターと同等……いや、少し弱い砲撃でセイバーを迎撃してきた。
防ぐ択よりも、攻めて迎撃しようとする彼女を見て関心したというのが半分。なのはの様に無茶をするなぁと言うのが半分あった。
だが、ふと妙だと感じたのが、攻め手を選ぶ彼女がその程度の事をするのか、と。
そして、その答えは直ぐに現れて。爆炎の中をセイバーが貫きながら現れた。最初に比べれば威力も速度も落ちたが、なおも彼女は真っ直ぐ私を見据えて。
「ヒート!!」
セイバーを砕く砲撃と、それを追いかける二発目の砲撃。
そこで私は気づいた。3連射の砲撃なんだと。
炎を帯びた光線が、爆炎を飲み込み、奔流となって向ってくる。
ここでようやく気づいた。彼女はなのはと違う点を。
彼女の魔力は、なのはに比べると少ないし、きっとそこまで多くないのだと思う。だからこその、攻撃に全てを振っているんだろう。
だけど、攻撃を放つ際のロスを徹底的に抑えて。その場に最適な出力を徹底的に見極めて、瞬間火力を調整する技巧派スタイル。だからこそ、三連射の砲撃の内、二発で迎撃、そして、最後の一打を本命として放った。
踏み込んでしまった以上、コレを回避するのは不可能だから、コレは防ぐしか無い。
『Defenser』
こちらから突っ込む形となってしまい、防御の上からでも削られるのが分かる。炎熱持ちなのか、ジャケットが燃え、千切れていくのが見えて、冷や汗が流れるのが分かる。
なのはのバスターとは違って、抉る事は無いが、炎熱と収束の火力に任せての削りが痛いんだ。
でも、まだ……対応圏内。ならば。
『SkillCardRoad』
防御をしながら、スキルカードを使用して、次の一手の為の用意をしてから……。
「トライデント……スマッシャー!!」
砲撃を防いだ際の爆煙にまぎれて、お返しの直射砲撃を放つ。私を中心に三つに別れた砲撃が飛び、彼女を目指してそれぞれが結合しようと奔る。
だが。
「―――貴女がスキルをセット出来る時間があるのなら、それは私も同じです」
私の直射砲撃が爆煙を切り裂いた瞬間、目の前にはバリアジャケットを半壊させた彼女がそこに居た。
「この身が焼け尽きようとも、この身を動かす炎は勝利を掴めと滾っております」
砲撃が収束する直前に突っ込んできた?!
「コレが私の……盤面、この一手……ッ!」
私の盾に杖を突き立てると共に、細い魔力刃を通すと共に私をバインドで縛る。
形こそ違えど、それはまるでACSドライバーの様で……。
「疾れ、明星すべてを焼き消す炎と変われ」
眼の前で魔力が集束されていき、更には炎熱変換による焔が赤々と燃えるそれは―――
「真・ルシフェリオン、ブレイカァァァァ!!」
―――なのはに負けず劣らず、とても強くて、驚いたなぁって。
――side震離――
勝負がついた。結果はシュテルの勝ち判定で、その結果に皆が驚いてる中、一人だけ。
「……あー、ありゃ捉え方の差だなぁ」
一人だけ、結果を冷静に分析して呟いてた。
響の言う通り、コレはシュテルとフェイトさんの、この勝負……ブレイブデュエルの捉え方の違い故の結果だ。
フェイトさんは純粋な魔力戦闘の延長線だと……つまり、試合、模擬戦と捉えた。
対してシュテルはブレイブデュエルにおける、フリーマッチ。勝負を試合と捉えてる。
その意識の違い。早い話が、フェイトさんは危険行動を取らないように、シュテルはその逆、試合だからこそ出来る突撃を行った。それこそ、被弾してでも叩き込むという、魔力戦闘ではハイリスクとなる行動を。
でもまぁ……。
「フェイトも、なのはさんのそっくりさんも、楽しそうで何より」
「せやねぇ。コレは次どっちも熱くなるで」
響とはやてさんの言葉の通りだ。きっと普通の人ならば、フェイトさんに勝った事に喜ぶだろう。だが、シュテルならきっと……。
――side流――
「……とても素晴らしく、心踊るものです」
珍しくはっきりとした口調で話すシュテルを皆が珍しがってる。ただ、彼女の幼馴染だけは。
「そうか、ならいい」
「やったねシュテるん!」
と彼女の喜びに気づいて、それを共に喜んでる。
間違いなくシュテルは今の勝負の結果に本当の意味では納得していないだろう。事実、フェイトさんならば、あそこからでも切り替えせる択を有してる上に、切り札と呼べるものを何一つ切っていないのだから。
だからこそシュテルは喜んだ。この勝負は勝たせてもらったもの。だが、自身が全力を尽くしても勝てない相手が現れたという事を何よりも喜んでる。
同時に。
「大人版フェイト……すっごく格好いい!」
「……てっきりいつか見たレヴィみたいになるかと思ってたら、全然違う。コート格好いい……」
アリシアさんとアリサが呟いてる。前者はまさかの自身の妹の未来の姿が現れたことに。後者は、イメージしていたものと異なる姿。何よりインパルスフォームのコートを羽織ってる姿に。
「……凄い、私まだあんな風に突撃出来ないし、凄く参考になる……」
自身の理想の動きに近い事を眼の前で見たせいか、フェイトも人一倍驚いてる。
だけど……。
「……」
「なのはちゃん。しっかり」
苦笑を浮かべるすずかの言葉も届かず、なのはだけはフェイトの未来の姿に心奪われているようで、顔がうっとりしてる。
「あ、じゃあ流ー?」
「はい?」
何かに気づいた様子のスバルが元気に手を上げて。
「大っきいなのはさんも居るの?」
……。
「さ、次はラストマッチですよー。相手は二人ですが、こちらは三人です」
「無視すんのかーい」
……この反応で察してくれたらありがたいなぁと。
後書き
長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。
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