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戦国異伝供書

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第五十六話 高僧の言葉その四

「このことは」
「それでは」
「頼むでおじゃるよ」
「はい、これからも。そして」
「そして?」
「実はです」
 雪斎は笑みを浮かべてこうも言った。
「お館様とです」
「麿と」
「武田殿、北条殿が」
「会うでおじゃるか」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「確かな盟約をです」
「結ぶべきでおじゃるか」
「その様にして」
 そうしてというのだ。
「憂いを全くです」
「なくすでおじゃるな」
「そうしましょう」
「そのこともわかったでおじゃる」
 義元は雪斎の今の言葉もよしとした。
「ではでおじゃる」
「はい、盟約を結ぶ為に会われる場も」
 そちらもというのだ。
「決め、ますので」
「楽しみにしているでおじゃるよ」
「さすれば」
 こうしてだった、雪斎は武田家そして今川家とも話をしていった。武田家で彼とやり取りをしたのは山本だったが。
 この話を晴信にすると彼は唸って言った。
「流石と言うしかないな」
「雪斎殿については」
「全くじゃ」
 こう山本に言うのだった。
「あの御仁が今川家の柱じゃ」
「戦もそうでありますし」
「政もな」
 こちらもというのだ。
「内も外もな」
「全くですな」
「どちらも今川家の柱でじゃ」
「この度もですな」
「実にじゃ」
「お見事ですな」
「当家にとってもよい話じゃ」 
 晴信はまた唸った、そのうえでの言葉だった。
「だからじゃ」
「この度のことは」
「受ける、姫は北条家に送ってな」
「当家も」
「太郎の正室に迎える」
 嫡子である義信のというのだ。
「そうしてじゃ」
「三つの家の盟約を確かにし」
「そしてな」
「上杉家と向かい」
「上洛もな」
 それもというのだ、
「狙う、だが」
「はい、上洛は今川殿もです」
 義元もとだ、山本は晴信に話した。
「狙われています」
「尾張からな」
「はい、ですが」
「今川殿ではじゃな」
「雪斎殿を以てしても」
 その戦の柱でもある彼でもというのだ。
「織田殿には勝てぬ、いや」
「負けることもですか」
「充分有り得る、むしろ下手をすればな」
「逆にですな」
「敗れて今川家自体がじゃ」
「負けて」
「力を削がれるやもな」
 そうなるかも知れぬと言うのだった。
「だからな」
「それで、ですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。 
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