戦国異伝供書
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第五十六話 高僧の言葉その三
「当家の柱になるわ」
「そこまでの者にですか」
「近々なる、ただな」
「ただとは」
「お主が当家におってよかった」
心からだ、雪斎はこうも言った。
「若し敵だったらと思うとな」
「その時はですか」
「恐ろしい、これからもお主はな」
「当家においてですな」
「仕えてもらいたい」
これが雪斎の願いだった。
「お主は他家の家臣ならどの家でも柱となり大名ならな」
「その時は」
「百万石を大いに超える者になり天下もじゃ」
「まさか」
「いや、お主はさらに大きくなる」
その資質がというのだ。
「だからじゃ」
「天下もですか」
「狙えるな」
「そうした者になりますか」
「必ずな、だからな」
それでというのだ。
「お主はな」
「大名であればですか」
「天下も狙えるな」
「まさか」
「いや、わしはそう見る」
元康の資質はというのだ。
「だからじゃ」
「それで、ですか」
「これからも当家におってな」
「そのうえで、ですか」
「学問と鍛錬に励んでな」
そうしてというのだ。
「己を磨きより大きな器になってな」
「そのうえで」
「そうじゃ、当家の柱となってもらいたい」
「それでは」
「この度のこともよく見てな」
そうしてというのだ。
「学ぶのじゃ」
「わかり申した」
元康も応えた、そしてだった。
実際に雪斎の進める武田、北条とのやり取りを見た。すると実際に雪斎は彼の思うままにことを進めていた。
そうしてだ、義元にこう話した。
「まず当家ですが」
「北条殿からでおじゃるな」
「姫様をお迎えして」
そうしてというのだ。
「そのうえで我等は」
「武田殿にでおじゃるな」
「姫様をお送りし」
そしてというのだ。
「武田殿はです」
「北条殿にでおじゃるな」
「この様にして」
雪斎はさらに話した。
「三つの家がです」
「それぞれでおじゃるな」
「縁組を組んで」
そのうえでというのだ。
「確かなです」
「三つの家での盟約をでおじゃるな」
「結び」
「後顧の憂いを完全にでおじゃるな」
「なくすのです」
「見事でおじゃる、では」
義元は雪斎に笑みを浮かべて話した。
「これからのこともでおじゃる」
「拙僧にですか」
「任せるでおじゃる」
こう言うのだった。
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