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おっちょこちょいのかよちゃん

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19 隙見せぬ猛攻

 
前書き
《前回》
 異世界からの敵が清水を訪れていると感じ取った杉山達。一方かよ子は病気が治った小春の為に紫陽花が咲いている場所へ再び案内する。その時、オリガという女性が現れ、長山を連れてかよ子を消そうとする!! 

 
 オリガの台詞に条件反射するかの如くかよ子は杖を取り出した。
(異世界からの敵だ!!)
 かよ子は川原に落ちてある石に杖を向け、石を操る能力を得た。
(山田のその能力(ちから)、やはり・・・!!)
 長山はかよ子が不思議な能力を使用しているとすぐわかった。かよ子は石を弾丸のようにしてオリガに発射した。しかし、石はオリガの体に当たる直前で砕けた。
「そんなあからさまに狙う攻撃では私を倒せないわよ」
(まさか、どうやって守ったの・・・!?)
 かよ子にはその原理が理解できなかった。
「私は『この世界の人間』だったころ、私が支持していた組織が失脚し、私は逮捕・収監されてとても非常に辛酸を舐めたわ。私には今、憎しみしかないのよ。そんな私の憎しみは強大な者。どんなものか教えてあげましょうか」
 オリガは近くにいる猫を見ると、指を鳴らした。すると、猫の体が一瞬でバラバラになった。かよ子はその恐ろしさを見て一瞬でおぞましくなった。次は自分の番かと。
「さあ、次は貴女の番よ」
 オリガは視線をかよ子に向けると指を鳴らす。もう何もできない。自分はこれで死ぬ。そう思った。

 杉山達「次郎長」、山口達「義元」の面子は石松が示した方向へと急いだ。
(山田・・・。無事にいてくれよ・・・!!)
 クラスメイトの女子を心配する杉山。
(あの子がもしかして・・・)
 すみ子は以前、自分のグループと隣町のグループの抗争の鎮圧に協力してくれたあの女子に恩があった。あの女子には無事でいて欲しいとすみ子はそう思った。

 北勢田は三河口が居候しているという家にいた。
「おい、ミカワ」
「北勢田か、どうした?」
「さっき変な奴とすれ違った。ぞっとする予感だったんだ!」
「何!?もしかしたら異世界の人間かもしれんぞ!そいつを探そう!どんな奴だった!?」
「男女のペアだ」
「わかった!」
 二人は怪しげな男女の捜索に動こうとした。
「あ、健ちゃん」
 三河口の叔母が甥を呼び止めた。
「おばさん?」
「これを持って行きなよ」
 おばさんは二人にお守りを渡した。
「このお守り、貴方達の力を出せるはずよ」
「はい、ありがとうございます」
 三河口と北勢田はお守りを手にして走り出した。

 オリガは指を鳴らす。彼女の思う通りになるならばこれで山田かよ子の体は服ごとバラバラになり、一緒にいた少年をさらい、計画は成功するはずだった。かよ子自身もまた、死を覚悟していた。しかし、何も起きなかった。オリガは何かの気のせいで失敗したのかと思い、もう一度指を鳴らす。しかし、その少女は体が砕け散りもせず、傷一つも負っていない。
「な、なぜ?どうして何も起きないの!?」
「そ、そんなの、知らないよ!」
 かよ子は反撃のチャンスだと思った。かよ子は再び石を操る力を得て、石を巨大化させた。そしてオリガを潰そうとした。オリガは慌ててなんとか石を砕いた。そしてオリガは高速移動でかよ子に接近する。かよ子の杖には石を操る能力がまだあったので、石で壁を造って防いだ。しかし、オリガはその壁を突き破った。
「どうやら物理的に殺すしかないようね」
 オリガはナイフを取り出した。かよ子を刺そうとする。この近距離では避けられない。その時・・・。
「や、やめて・・・!!」
 小春が石ころを拾い、オリガに向けて投げた。オリガは小春の投石に急いで対応して撥ね返した。その隙にかよ子は何とか後退りし、後ろにジャンプして避けた。草の薄さに腕を少し切った。
(切れ味のある草・・・。そうだ・・・!!)
 かよ子は杖の使用方法を記した本に書かれてあった一文を思い出した。

【刃でない場合、切れ味の鋭いものであるならば、切り刻む能力を得られる】

(この草、能力として使えるかも・・・!!)
 かよ子は草に杖を向けた。杖は光りだし、先に丸鋸(まるのこぎり)を付けていた。
「この子、邪魔して・・・!」
 オリガは小春に視線を向けると、瞬殺しようとした。
「い、妹に手を出すな!」
 長山は妹を庇った。その時、オリガは指鳴らしをやめた。この時、長山はふと気がついた。
(殺す時は指を鳴らせばすぐにできるのに僕が小春を庇うと殺すのをやめた・・・?)
 長山は考察する。殺害の対象は目に見えていないと殺せない。そして、彼女はあからさまな攻撃では効かないと言った。なら今小春の投石が意表を突く攻撃でなかったらそちらに対応してかよ子はあっさりとやられていた。それならば・・・。
「山田、今だ!」
「うん!」
 かよ子も長山も阿吽の呼吸だった。かよ子は能力を得て装備された杖先の丸鋸をオリガに向けた。オリガは何とか跳ね返した。
「山田、普通に狙っても跳ね返される!遠回りして狙うんだ!」
「遠回りして狙う?うん!」
 かよ子は長山の言う事が理解できた。遠回りして狙うと言う事は対象をそのまま狙うのではない。つまり、野球の変化球のように放物線を描きながら狙うと言う事だ。かよ子は再び草から切断の能力(ちから)を得て丸鋸を杖先に装備した。だが、鋸はオリガに真っ直ぐ飛んだ。
「馬鹿なの?あの少年も言う通り、真っ直ぐ狙っちゃ跳ね返すわよ!」
 オリガは簡単に目の前に来た丸鋸を破壊した。
「そうだよね。でも私は鋸は『二枚』造ってるよ!」
「・・・え?」
 その時、オリガの背中に何かが刺さった。かよ子は能力を得る際、丸鋸を二枚造っていた。そして一枚はオリガの真正面に飛ばし、もう一枚はオリガの背中に回り込んで飛ばしたのだった。
「あ、あああーーーーーーーーーーっ!!」
 オリガは背中に刺さった鋸の痛みで耳をつんざくような悲鳴を挙げた。
「いいぞ、山田!」
「うん!」
 ところが、その時、オリガの体に刺さった鋸が外れた。
「オリガ、手伝いに来たぜ」
 別の男が現れた。
「オサム、遅いじゃない、何してたのよ?」
「ああ、すまん、援軍が来ないように結界みたいなものを張っていてな」
「だ、誰なんだ!?」
 長山は聞いた。
「俺は丸岡修(まるおかおさむ)。君か、博識な少年は。名は確か長山治。俺と同じ名前だな」
「だから何だ?」
「お前の博識さを是非我々に活かしてもらいたい」
「どういうふうに?」
「それは、この日本を昔の強さに戻す為だよ!」
(昔の強さ・・・!?そうか・・・!!)
 長山は感づいた。昔の日本の強さとはいかなるものか。それは、ハワイやサイパン、グアム、台湾やタイ、ビルマ、満州、朝鮮半島など、様々な国を占領・支配していた太平洋戦争の頃の日本、いわゆる大日本帝国そのものだった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「訪れた援軍」
 杉山達は石松や「義元」の面々と共にかよ子を探す。そして三河口と北勢田も長山を探す。その一方、かよ子と長山はオリガと丸岡に対して劣勢となってしまい・・・。 
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