ある晴れた日に
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725部分:清き若者来るならばその十一
清き若者来るならばその十一
「これはクリスマスローズという」
「何、それって」
その花の名前を聞いた茜がまず言った。
「はじめて聞く名前のお花だけれど」
「毒がある」
ここで正道はこんなことを言うのだった。
「毒がある」
「えっ!?」
「嘘!?」
茜だけでなく誰もが今の言葉にいささか引いた。引いていないのは恵美に桐生、加山、それに竹山だけだった。他の面々は皆引いていた。
「毒があるって」
「そんな花なの」
「じゃあ触ったら」
「食べればだ」
正道はまた皆に言った。
「毒がある」
「ああ、食べれば」
「じゃあそのまま触っても」
「何ともないの」
「根を食べれば特に問題がある」
その場合はというのである。しかし今はそれはないというのだ。
そしてである。彼はさらに言ってきた。
「それを食べなければ問題はない」
「まあ根なんてな」
「そんなの食べないし」
「特別美味しいって聞かないと」
誰もクリスマスローズの根については興味がなかった。あくまで興味があるのはその花だった。皆その白い美しい花を見ていた。
「今度はこの花を未晴にってことね」
「見せるのね」
「そうだ」
こう奈々瀬と明日夢に話した。
「そう思ってだ」
「いいんじゃない?っていうか冬にお花あったの」
「そうだったの」
皆このことは考えがつかなかった。それでこう言うのだった。
「あるとは思わなかったけれど」
「こんなに綺麗だったの」
「ああ、そうだな」
「こんなに綺麗な花が冬にもあったんだな」
それについて男組も話した。彼等も知らなかった。
そしてあらためて花を見るとだ。その白くシズカに咲いている花を見てだ。あらためて言うのだった。
「一重咲きの薔薇に似てるな」
「ええ、薔薇っていっても」
「それだよな」
皆で話す。
「それでクリスマスローズか」
「冬の花だから」
「それでなのね」
「この名前も」
「白以外にも色はある」
ここでまた正道が話してきた。
「しかしこの植物園のクリスマスローズはどれも白だ」
「何か白っていうのが」
「余計にクリスマスっぽいよな」
「ああ」
「本当にね」
皆話していく。その花の色が雪を思わせるものだったからだ。それでそこにクリスマスも連想したのである。白と雪とクリスマスが頭の中で一つになっていた。
そしてであった。また話す正道だった。
「そう思ってだ」
「ああ、クリスマスの花だから」
「それで竹林にか」
「見せるんだな」
「だからだ」
また話す彼だった。
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