戦国異伝供書
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第五十四話 上洛その七
「お贈りしましょう」
「そうされますか」
「わたくしはまだ茶には疎いですが」
実は政虎も結構嗜んでいる、これは晴信も同じで学問やそうした雅なことにも興味があるからである。二人共武だけではないのだ。
「ですが」
「茶器はですね」
「宗滴殿へのお礼に」
「是非にですね」
「差し上げたいとです」
そのうえでというのだ。
「考えています」
「左様ですか」
「お礼は忘れてはなりません」
絶対という言葉だった。
「ですから」
「この度は」
「そちらをです」
「しかし殿」
今度は斎藤が政虎に言ってきた。
「茶器は」
「高いですね」
「相当なものですが」
「それは構いません、当家の身銭からです」
上杉家のそれからというのだ。
「幾らでもです」
「出されますか」
「わたくしは既に住むところに服に食が揃っています」
だからだというのだ。
「それで充分なので」
「だからですか」
「身銭をです」
「そこから出されて」
「宗滴殿への茶器を買い」
「渡されますか」
「そうします」
こう言うのだった、それも平然と。
「これで何の問題もないですね」
「それでは」
「はい、そうしてです」
そのうえでというのだ。
「宗滴殿へのお礼をします」
「そこまでされるとは」
「ですから当家の身銭はわたくしにはどうでもいいもの」
銭に興味はない、だからこそ言える言葉だった。
「ですから」
「よいのですね」
「左様です、ではこの酒と鯛のお礼は」
「必ずですね」
「します、ではです」
「越前からですね」
「近江に向かいましょう」
次はこの国にというのだ。
「そうしましょう」
「さすれば」
こうした話もしてだった、政虎は実際に宗滴へ茶器を贈りそれを礼としたがそれは後の話であった。
一行は近江に入った時だった、琵琶湖を見た。そこで政虎はそのとてつもなく大きな湖を見てこんなことを言った。
「まるで海ですね」
「全くですな」
「ここまで大きいと」
「海に見えます」
「まことに」
「話は聞いていましたが」
それでもと言うのだった。
「この目で見ますと」
「わかりますな」
「それもよく」
「一体どういった湖か」
「そぽことが」
「はい、この目で見て」
そうしてというのだ。
「わかりましたね」
「若しですな」
本庄がここで言ってきた。
「近江で戦うとなると」
「どうしてもです」
「この琵琶湖がですね」
「重要になります」
政虎もこう話した。
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