ある晴れた日に
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719部分:清き若者来るならばその五
清き若者来るならばその五
「今があるのよ」
「未晴の今が」
「そういうことよ。それじゃあね」
「ええ。それじゃあ」
「行きましょう」
その声は微笑んでいた。
「未晴のところにね。今からね」
「ええ、それじゃあ」
「楽しみに待っていてくれているから」
こう言って皆を先に進ませる。そうしてだった。
病院に入りその病室に向かう。隔離病棟の暗い中も今では問題にならなかった。その中を進んでいき病室に入るとであった。
既に母親の晴海が待っていた。彼女は微笑んで皆に言ってきた。
「いらっしゃい」
「はい」
「今日はですね」
「パーティーよね」
それだと皆に言ってきた。
「今から。それをするのよね」
「はい、そうです」
「昨日できませんでしたから」
「有り難う」
その彼等の言葉を受けての言葉であった。
「未晴の為に」
「いえ、本当に」
「それはいいですけれど」
彼女のその感謝の言葉はまずはいいとした。そうしてであった。
「じゃあ今から」
「はじめていいですよね」
「ここで」
「病院から許可は取ってあるから」
それは既にであった。話はしてあったのだ。
「本当は昨日のうちにしていたけれど」
「そうですよね」
「それはもう昨日のうちに」
「やっぱり」
「一日遅れたわね」
今はこう言うだけだった。これだけだった。
「けれどね。それもね」
「はい、今日やりますから」
「今から」
今度の一同の返事は明るいものだった。何よりもだ。
「はじめます」
「未晴の為に」
その未晴はベッドの中で上体を起こして寝ている。やはり表情はなく動きもしない。しかしそこにい続けているのは間違いなかった。
その彼女を囲んでだった。皆でパーティーをはじめた。
皆歌いケーキや御馳走を食べる。そのうえで未晴にも声をかける。
「どう?」
「楽しい?」
「このケーキ美味しいわよ」
「とてもね」
「だから未晴もね」
こう彼女に声をかけていくのだった。
「どうかね」
「食べられたら」6
こう話してだった。そうして野本がブレイクダンスを踊る。未晴の前で踊るがそれもだった。彼女の反応はない。しかしそれでも彼は最後まで踊った。
皆はその彼女に拍手した。そうしてだった。
「よかったわよ」
「目に入っていたから」
「安心して」
「だったらいいけれどな」
それを聞いて納得した彼女だった。
「それで」
「ええ、それじゃあ」
「今度は私達がね」
「未晴、いいわね」
今度は五人が歌を歌う。クリスマスソングをだ。この歌も未晴の前で歌う。彼女に届く様に必死に歌ってだ。最後まで歌ってみせたのだ。
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