| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ある晴れた日に

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

717部分:清き若者来るならばその三


清き若者来るならばその三

「子供の頃から悪戯とか買い食いとかはしたけれどいじめたりとかは絶対にしなかったからね」
「何だ、結構いい奴なんだ」
「それだったら」
「結構だけ余計だよ」
 五人の言葉にまたクレームをつける。
「俺だってな。これでもな」
「滅茶苦茶いい加減だけれど」
「それでもなんだ」
「そうだよ、筋は通さないとな」
 こうしたところでは真面目なのだった。
「まともなダンスも踊れないさ」
「ああ、ダンスっていったら」
 ダンスの話が出たところで加山が彼に言ってきた。
「今日も踊るの?」
「ああ、そのつもりだけれどな」
 当然だといった顔で彼に言葉を返した。
「それもな」
「そうなんだ」
「あいつに見せないとな」
 ここでは楽しそうに笑って言うのだった。
「とっておきの踊りをな」
「それがプレゼントなんだ」
「ああ、もののプレゼントも他にあるぜ」
 それもだという。
「それはもうあげてるから」
「ああ、昨日に」
「ダンスだけじゃやっぱり物足りないって思ってな」
 そこまで考えている彼だった。彼なりに必死に考えてのことなのだ。
「それでな」
「そうか。それでか」
「御前も真面目に考えてたんだな」
「しっかりと」
「だからやるぜ」
 また言う野本だった。
「ダンスもな」
「よし、じゃあな」
「見せてやれよな、そのダンス」
「しっかりとね」
 皆からこうも言われる。そうしてだった。
 正道はいつも通りギターケースを背負っている。その中で言うのだった。
「あいつにも届いているな」
「そうよ、届いてるよ」
 千佳がその彼に応えてきた。
「ちゃんとね」
「ならいい」
 彼はそれでいいというのだった。
「それでな」
「だから安心していいから」
 こう話すのである。
「未晴ももうすぐ」
「もうすぐか」
「もうすぐ戻れるから」
 励ましの言葉だった。だが千佳は自分で言いながら信じてもいた。そうした言葉だった。
「今日も頑張ろう」
「まずは動かないとね」
 桐生も言う。
「それからだからね、何事も」
「若し今まで何もしなかったら」
 恵美も言う。
「今みたいにはなっていなかったわよ」
「今みたいにか」
「そう、今みたいにね」
 こう正道に話していくのだった。
「なっていなかったから」
「そうだな。それは」
 それを聞いて納得する。周りの言葉が有り難くもあった。
「それなら今日も」
「ああ、それだけれど」
「確かあんた」
 ここで皆で彼に言ってきた。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧