ある晴れた日に
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713部分:冬の嵐は過ぎ去りその十三
冬の嵐は過ぎ去りその十三
そこからだ。我が子を見て言ってきたのである。見れば父の外見は彼に酷似している。彼の方が似ていると言うべきか。母の姿は女優の高木美保に似ている。
「何か大きなことをやったわね」
「それに勝ったんだな」
「勝ったのか」
正道は両親の言葉を聞いて今はじめてそう考えた。
「俺は」
「そういう顔になってるわよ」
「大きな戦いにな」
「そうか」
それを聞いてだ。少し微笑む彼だった。
「俺は勝ったのか」
「だからそういう顔なのよ」
「今の御前はな」
「わかった」
両親の言葉に対して頷いた。
「それならそれでいい」
「はい、それじゃあね」
「祝勝会でもするか?」
こう彼に言ってきたのである。
「丁度クリスマスだし」
「ワインもあるから」
「ワインか」
それを聞いてふと述べた彼だった。
「いいな」
「じゃあ飲むのね」
「七面鳥もあるわよ」
それもあるというのだ。飲み物もあれば食べ物もである。どちらもあるというのだ。
「どちらもね」
「好きなだけ飲み食いしていいからな」
「わかった」
それを聞いてだった。正道は立ち上がりであった。そのままテーブルに座り両親と共に飲み食いをはじめるのだった。
だがその様子はクリスマスというよりはだ。何か別のものであった。見れば三人共ワイングラスではなく陶器の大きなコップにワインを入れて飲んでいる。そうしているのだ。
その中でだ。彼は言うのだった。
「明日まただ」
「明日?」
「どうしたんだ?」
「明日また帰りが遅い」
こう言うのである。
「明日また」
「勝った後の最後のね」
「詰めだな」
「そうなるのか」
また両親の言葉を聞いた。聞きながら七面鳥を焼いたものを食べていく。今はワインを飲んでいなかった。そのうえで話を聞いていた。
「明日は」
「いい、勝ってもね」
「それで終わりじゃないからな」
両親は今度はこう言ってきたのである。
「最後の最後の詰めでしくじったら」
「どうにもならないからな」
「わかった」
また両親の言葉に頷くのだった。
「それではだ」
「さて、それじゃあ」
「どんどん飲め」
ワインを飲めと勧めてきたのは父だった。顔も背丈も本当によく似た親子だ。違うのは父親の方が腹が少し出ている位である。
その父に勧められてだ。ワインを飲んでいるとだ。三人はここであることに気付いた。
「ああ、そうだ」
「そうだったな」
また両親が言ってきた。
「テレビつけないとね」
「何か面白いのやってるかな」
「テレビか」
正道は両親がテレビを観ると聞いて少し微妙な顔になった。その顔にはもう酒が出ている。赤くなってきているのだ。
「今は何も」
「とりあえず古館か鳥越が出たら切るわよ」
「ああ、その場合はドラマにしろ」
両親も結構酒が入ってきていた。
「言ってること嘘ばかりだし」
「あんな連中を見ていたら酒がまずくなる」
かなり嫌っていることがわかる言葉だった。
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