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戦国異伝供書

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第五十四話 上洛その二

「そなたもです」
「都にですか」
「来てもらいます」
 自分と共にというのだ。
「よいですね」
「有り難いお言葉、では」
「はい、参りましょう」
「それでは」
「それでなのですが」
 政虎はこうも言った。
「上洛の前夜には」
「その時もですか」
「はい、宴を開きます」
「出陣の時の様に」
「この度も戦なので」
 政虎はそう考えているのだった。
「ですから」
「宴を開かれますか」
「酒に馳走をです」
「出されて」
「はい」
 そうしてというのだ。
「城を絶ちます」
「まさに戦ですね」
「軍勢も引き連れますし」
 このこともあってというのだ。
「宴をです」
「開かれて」
「そのうえで向かいますので」
「そうですか、では」
「このこともですね」
「承知しました」
「その様に、しかし公方様も」
 ここで義輝のことも思うのだった。
「何かとです」
「ご心労が絶えぬと」
「はい、天下はこの通りです
「乱れに乱れ」
「戦が絶えず幕府の定めたことも」
 それもというのだ。
「なくなっている有様なので」
「しかも都の近辺も」
「管領の細川殿の専横があればと思えば」
 それがというのだ。
「家臣の三好殿がとって代わられ」
「そこから松永殿も出られるという」
「その松永殿がです」
 まさにというのだ。
「これ以上はないまでにです」
「危険な御仁ですね」
「わたくしはそう見ています」
「はい、それがしもです」
 兼続も答えた。
「あの御仁はまるで蠍です」
「異国にいるという虫ですね」
「その尾に毒針があり」
「敵を刺し殺す」
「そうした剣呑な虫ですが」
「松永殿は」
「まさにその虫であり」
「剣呑なことこの上ない」
 こうしたことを話した。
「まさに」
「はい、ですから」
「公方様の周りは」
「非常に危ういです」
 政虎はこのことを言った。
「わたくしは関東管領、関東の仕置きを担う立場ですが」
「都の公方様の御身は」
「お護りしたいとです」
 その様にというのだ。 
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