デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~
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第十九話「動き出す者たち」
「フフフ」
某所の地下、そこで一人の男が画面を見ながら不気味に笑っていた。その後ろには一人の少年が立っており男が見ている画面を除こうとしている。しかし、男の体は太く大きいため画面を覗く事は出来なかった。
仕方なく少年は男へと声をかける。
「ねえねえ、少佐。さっきから何を見ているんですか?」
「…准尉、少佐ではないぞ。少佐は既に名誉大佐に階級が上がっている」
少年の疑問を別の声が制する。暗闇の部屋の後方、少年の更に後ろから別の男が現れた。少佐と呼ばれた男と比べ極端に痩せた体をしているその男は画面を覗こうとする准尉と呼ばれた少年の襟首を掴み引きはがそうとするが少年は少佐の椅子にしがみ付く事でそれに全力で抵抗する。
「いい加減少佐からは・な・れ・ろ!」
「い・や・だ・ね!何で博士の言う事を聞かなきゃいけないんだよ!」
少年はフーッ!と猫の様に威嚇する。しかし、博士と呼ばれた痩せ気味の男はそれに対抗するように力を籠める。このくだらない戦いは少佐が椅子ごと倒れた事で幕を閉じた。いきなり抵抗がなくなったため博士は背中から倒れ少年は椅子の下敷きとなってしまう。
「う~、少佐~。重いよ~。少しは痩せたらどうなの~?」
「ははは、それは無理な話だ」
少佐はそう言うと倒れた椅子から立ち上がる。椅子と少佐の重みから解放された少年はそこで初めて少佐が見ていた画面を目にする。
「…ねぇ、少佐。これって」
「ん?ああ、これか。例の者だよ」
少年の問いに少佐は実に楽しげに答える。しかし、もしここに常識人がいれば少佐の顔を見た瞬間恐怖を抱くだろう。それほどに今の少佐は狂気的な笑みを浮かべ見る者全てに一生忘れられない恐怖を覚えさせる程だった。
だが残念な事にここには普通の人はいない。全員が一つの目的の為に行動しその為に命を捨てる覚悟を持った狂人たちだった。故に少佐の顔を見ても何も感じない。全員が同じ表情をしているのだから。
「現地協力者からの報告やここ最近でのここでの観測結果からこいつが関係してる可能性がある。上手く隠してあるが我々の前では無駄な努力でしかない」
「…で、どうするの?このまま放置するなんてつまらない事はしないんでしょ?」
少年の挑発的な言葉に博士がまた注意を使用と近づくが少佐がそれを右手を上げることで制する。
「勿論さ。彼の者が通う来禅高校、だったか?そこで面白い情報が入った」
そう言って少佐は懐から一つの封筒を取り出す。
「同士からの定期報告の中に奴らが来禅高校に細工をしたらしい。恐らく同高校に通う【プリンセス】が見つかったのだろう」
「我らはこれに便乗し接触、可能なら拉致をする予定だ」
「それってあいつらの獲物を横取りするって事だよね?それは楽しそうだなぁ」
少年はその様子を想像したのか無邪気に、楽しそうに笑う。しかし、「でも…」と呟くとその笑みを引っ込めた。
「少佐は一体誰を送り込むつもりなの?あまり派手に動くと怒られるんじゃない?」
「無論送り込むのは少数精鋭さ。あまり大人数や重武装で行っても今の我々では精霊に対抗できない。本格的に動くのはまだ先の話だ」
少佐はそう言うと画面に映る少年、五河士道に視線を向け口角を上げ笑みを浮かべた。
「さあ、少年よ。せいぜい足掻いて見せろ。一方的な戦い程詰まらない物はないからね」
その言葉に少年も博士も狂った笑みを浮かべるのであった。
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