魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers
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第51話 少しずつ動き出す事態
――sideはやて――
「は?」
『連絡は以上となります。フェイト執務官の方から追って連絡はあるかと思いますが、遅くとも陳述会前にはそちらに返せるかと』
「いえ、しかし。コチラの業務もありますし。そんな一方的に!」
本局の方から連絡が来たかと思えば、突然のフェイトちゃんとその副官暫く借りる宣言。
曰く、本局の案件に関わってしまったため暫く帰すことは出来ないと。
なんで地上の調査しただけやのに、本局の案件に関わったん? とか色々あるけどとりあえず言えるのは。
『教会シスターの調査に、管理局を脱走したクランベル元三佐の調査等も担当しているのは知っています。
現在行われている調査がうまく行けば、後者の情報が増える可能性もある。そう言ってもですか?』
「う……」
その情報は六課からはフェイトちゃんから調べているけど、それでも……。
いや、響も一緒に行ってその一端が掴めたということは、きっとかなりの情報を得たんやないやろか?
それにキツイ事で有名なフリートウッド事務官がわざわざ連絡してきたということは……もしかするとや。結構大事に発展しそうな事態になってるんちゃうかな?
空振ったのなら大変やったなーで済む話やし。
……本当は色々やることあるんやけどなぁ。しゃーない。
「わかりました。そういうことならばお願いいたします」
『了承致しました』
「それでは」
と通信を切ろうとした瞬間、困ったように眉を潜めて事務官が見えて。
『八神さん。今回のこのタイミングで、この様な事になってしまい申し訳ございません。
場合によっては、情報を公開できない可能性もあります』
「……えっ?」
……嘘やん。非公式な管理局ランキング、謝罪しなさそうな人で、毎回ランカーになってるフリートウッド事務官が……謝った?
『そんな驚かれないで下さいな。私もあなた方のファンなので。それでは失礼しますね』
「え、あ、はい、あり、ありがとうございます!」
かすかに微笑んで、通信を切られた。
予想の斜め上の言葉を聞いて本気で驚いたわ。
フリートウッド事務官……もとい、カテラさんはよくわからないことで有名や。
曰く三提督のお世話係をしていたと思えば、その三提督相手に暴言を吐いてたとか。
ラルゴ・キール閣下が居眠りしてたら、頭叩いて起こしたとか。今は居なくなった戦車の二つ名を継いだ人とか、いろんな方面でいろんな逸話がある人なんよね。
だから人が寄り付かないとか、なんとか……。
フリートウッド事務官のことは置いておこう。今の問題は別にあるんよね。
そのために夕方にでも帰ってきたら2人にも相談をしようと思っとったやけどなぁ。
問題はすぐにやって来た。
レジアス中将からとある命令が飛んできた。差出人の名前を見て嫌な予感がした。やけど、その内容を見てもっと驚いた。
――風鈴流空曹の異動を命ずる。直ちに所属部隊へ戻るように。
ありえへん。よりにもよってレジアス中将からだけや無く、この命令書には地上の重鎮も絡んでるせいで突っぱねる事も出来へん。
そもそも何でこのタイミングで、レジアス中将がわざわざ流を指名して異動させるのか。それが分からへん。
お陰で陳述会での皆の振り分けが大きく変わってまう……。
……ほんま最悪や。
2人もちゃんと帰ってくる……やんね?
まぁええか。優夜が何となくでも知ってるから説明しますよって買って出てくれたし。
今頃ブリーフィングルームで話を聞いてる頃かな?
――side優夜――
特殊鎮圧部隊。通称、管理局の裏。表立って行動する事が出来ない案件を極秘裏に片付ける部隊。しかもそれは外に向けるだけでなく、必要とあればその矛先は自分たちにも向けられる。
ついたあだ名が死神部隊。文字通りの魅入られたらそれは死を意味する。任務の達成率は100%。ただしその訳は失敗したら後を残さず消えることから、失敗だと判断されない。
そんな部隊。俺達も実在するか分からない。所属している人達は階級が低いにも関わらず、それに見合わない実力を持っている。
「っていうのが、流が所属してるかもしれない部隊ってこと」
俺が知ってる限りの情報、かつて調べようとして得たことをティアナ達4人とギンガに伝える。前もって伝えてるのがあくまで俺達が知ってる情報は噂程度だという事は言ってる。
実際、流が部隊の情報を頑なに言わないのは恐らく……知ってしまったら不味いことになるって理解してるからだと思う。
流と言う人材をここに送った事。それ自体は機動六課一同、感謝してる。実際庇ったりして貢献してるしな。
だからこそわからないのが、異動命令がどこから出てきたのか分らない事。辞令書自体はレジアス中将からだが、そもそもレジアス「中将」が「空曹」の異動を指示するなんてありえない。
それに、だ。流の様子を見た限りではそんな素振りは見せてなかった。
見せてたら震離がわかりやすくへこむはずなのに、この情報を聞かされるまでおとなしかったし。聞かされた瞬間この世の終わりって位に、あいつの回り闇に包まれてるし。エリオやキャロに励まされる事態だし……。
「……あの? 仮にその部隊が存在しているとして、どうして六課に?」
ティアナの疑問はもっともだ。一番可能性が高い仮定を出す。
「多分だけど、レリックを集めて行けば、いつかスカリエッティにつながる何かが……もしくは、対峙する可能性が高いから送られてきたと仮定出来る」
黒い方向で考えれば、六課の監視も合っただろうが本人にそれらしい動きをしてなかったからな。結果的に一番酷いのが俺たちだったっていうね……。笑えないなー本当に。
「……その流に帰還命令がくだされた、と。もしかして何かあったの?」
小さく手を上げながらスバルが言うけど。
「それは分からない。今回の命令だって意味が分からないけど……楽観的にも悲観的にも見れるし、正直意味わからないもの」
困ったように両手で頬杖してる時雨が答えてくれる。
突然の命令で、外に出てたシグナムさんとライトニング呼び戻して、訓練中だったスターズも中止して、今いる隊長陣で集まって話し合う程だしな。
理由は勿論。
「十中八九、陳述会で何かが起きるのは確定しちゃってるもんだしねぇ」
時雨の一言で、ブリーフィングルームが静かになる。
普通の部隊なら此処でそんなバカな話がと笑うだろう。だけど……。
「クランベル元三佐の離脱で、内部情報はある程度持っていかれたと考えて……まぁ、襲うには絶好の機会だからなぁ」
「でも。そんな時に襲っても、返り討ちに遭うんじゃ?」
ギンガさんの指摘もそうだけど。
「良いんだよ。遭っても。襲って少しでも混乱させることが出来れば、それだけで価値があると証明出来る。
もしこれで管理局員を倒した! なんて出来てみろ。いろんな組織がスカリエッティと接触しようとするよ」
皆の顔が青くなるのを見ながら、時雨が継いで。
「その上ガジェットドローンの製作者っていう大々的な告知にもなるしね。AMF内蔵してるから、そのシステムだけでもほしいっていう組織は多い。
そんな中で倒れりゃ間違いなくまずい方向に傾くよね。タダでさえ、地上本部は結構ギリギリだから」
多分ティアナやギンガさんは気づいてんだろうけど。そもそも厳重警戒してる中で襲えるというだけで、それを実行できるだけの敵という印象を与えられる。
このアドバンテージは凄まじい。
だからはやてさんは、フェイトさんと響にも相談しようとしてたのに……なんか連絡取れなくて焦ってたし。
どうするもんかねぇ?
流と震離、奏はデスクワークしてるし、煌と紗雪は108のおつかいから帰ってくる。いや、もう帰ってきてるかな?
流以外の面子にはとりあえず伝えてるけど、震離がすっげぇ切れててヤバかったなぁ……。
――side響――
……初めて見たとき、素直に小さく悲鳴をあげました。
ガチャリとドアを開けて入ってきた身長2メートルの筋肉質な男性。カイゼルに、ドスの利いた声の……メイドの格好というアンバランスさで、小さく悲鳴をあげてしまった。
背が小さくなっていたせいもあるのか、本当に巨人のように見えて……得も言われぬプレッシャーで……もう一回気絶してしまった。
意識を取り戻してから、改めて現状確認。色々幼くなっているらしく、本当にちょっとしたことで涙が滲んだり、過剰な反応が出てしまう。
……実際メイド服の、いや、此処の店長さんであるキャディさんを初めてみたとき少しチビってしまったし。
その事をフェイトさんにバレてて凄く恥ずかしい思いをしました。
で、そんなこんなで。
「ふふ~ん、ふーふふーん♪」
白い子供向け下着を着たフェイトさんが嬉しそうに俺の髪を梳いてる。嬉しそう……と言うより楽しそうにだ。
「ブラシ、引っかからない?」
「……えぇ、まぁ」
ブラシを流しながら、空いた手で俺の髪をひとふさ持ち上げて。
「この前も思ったけど、響の髪サラサラでいいなぁ」
「……母親譲りですし、まぁ」
その後もブラシを流していく。その無言の時間が結構辛い。いや、辛いのは俺だけなんだけど。フェイトさんは鼻歌交じりに楽しそうにしてるし。
廃棄区画にいて汚れてるからお風呂……というかシャワーへどうぞと言われて来たわけなんだけど……フェイトさんが離れてくれなくてそのまま一緒に入る事に。
がっくりと肩を落としながら、フェイトさんにお風呂で羞恥プレイと言うか、なんというかの責めのせいでガッツリ精神が削られた。
普通に洗ってくれたんだけど、一々ここが柔らかいとか色々言われたせいでホント辛かった。
そして、脱衣所には何か知らんけど、メイド服が置いてあったし。
フェイトさん曰く、私達が見たいからとかなんとかで、用意を……一番小さいサイズをキャディ店長に出してもらったらしい。
助けてくれた人の願いということもあるし、フェイトさんに色々迷惑かけたから泣く泣く呑んだけど……。
「うん、終わった」
ぽん、とメイドカチューシャを頭に乗せて終わったという合図を貰う。
はい。凄く恥ずかしいですが何か? 唯一ありがたいと思ったのが、知り合いいなくてよかったなーと。
見られてたら嫌だったなーと。
しっかし、自分の顔見ると、わかりやすく目が死んでるのがよく分かる。なんかもうここまで来たら何か全て受け入れられるわー……心は既に折れてるしなー。もうなるようになるさ。
大体俺ばっかり恥ずかしがってるけど、フェイトさんは何で平気なんだよ……一応男なんですけどねー。この前の休暇もそうだったけど……何でこの人こんなに平気なんだろう。
さっき、風呂入ってる時はフェイトさんは、バスタオル巻いてたけど……アレ多分、恥ずかしいとかそう言うわけじゃないよなー。だって、人の体を隅々まで洗ってきたし。恥ずかしくて顔から火が出そうだったわー……。
向こうの方でフェイトさんが着替えてる間に、肩を回したり、背伸びしたり、軽く立って伸脚したりして体を動かす。動かすたびに体が軽いのと、関節が柔らかいことに驚く。
こんなにも違うのか、と。
でも、身に着けてる物を考えると悲しくなる。メイド服と、女性物の下着。うん。この感触と言うか着心地は知りたくなかったなぁって。
「さ、響行こうか?」
気がつけば普通の格好のフェイトさんがそこに。なんでこの人は着替えてないんだろうと顔に出てたらしく。
「ふふん。昔色々はやてに着せられてたからね。あんまり反応薄いんだ私」
クスクスと笑ってらっしゃる。
そのまま手を引かれて、キャディさんの所まで行って、改めて謝罪を一つするけど、相変わらず圧がすごいなぁと。
そして、フェイトさん達の今後の計画を改めて聞かされて驚く。
流がロストロギアの影響で変わったのと同じく、ほんの数日はこのままで、報告はしない方向になった。
加えて、このキャディさん。ラルゴ・キール閣下と知り合いらしく、閣下の名の下、フェイトさんと俺を暫く預かる連絡を六課にしてもらったらしい。
理由は単純、六課を色んな意味で護るために。これ以上のミスは隠しきれず、もし地上本部の耳に入ればおそらく何か言われるとの事。
ここまでは予想してたけど、それを回避するために暫くここに身を隠すことになったらしい。
キャディさんもお店は暫くやらないらしい。居なくなったお店の人を探したいのと、陳述会前だから、色々やることがあるとかないとか……。
その上で。
キャディさんから、姉は居ないのか? と聞かれたけど居ないと答えた。
最近多いなーと思う反面、そういう人が居るのかとちょっと気になる。そして、なんでそう思ったのか? と質問して、見せられた写真を見て。更に首をかしげる事に。
知らない銀髪の女性。似たように髪を束ねているけど、共通点はそれだけだ。どことなく、誰かに似てるとは思ったけれど……そもそも知らない人の顔だ。
一応名前も伺った。個人情報だからあんまり言いふらさないようにと釘を刺された上で。
サト・ヒタチという名前だということを聞いた。
日本人っぽい名前だなと思うけど、ギンガやスバルの例もあるから何とも言えない。
一応フェイトさんにも確認を取ったけど知らない様子だし。
正直な感想を言えば、変わった人だなーと。
さて、なんか六課からえらい沢山通信要請来てるし、ちょっと花霞に声だけでも戻して対応しないとなー。
――sideなのは――
隊長室にフェイトちゃん以外の隊長陣とリインが集まって、はやてちゃんから諸々の説明を受けて。
「下手したら風鈴抜きで警備……と言うより迎撃を……手数が足りなくなりますね」
シグナムさんから深い溜め息が漏れる。はやてちゃんも同じ気持ちらしくかなり疲れた様子だ。
だけど、だ。
「戦力が足りなくなっちゃうけど。一度流を戻すのがベストかな? 何方にせよ元の部隊が要請したからなのか、それともレジアス中将の単独の命令なのかわからない以上、下手に引き伸ばしたら不味いんじゃないかなって」
「……せやな。で、どないしようか? 会場に入るのは私とシグナム。その会場の回りをなのはちゃんと、フェイトちゃん。そして建物周辺の警備を皆にって考えてたんやけど?」
コチラとしての理想の編成がこうだ。
会場入りは、それぞれ別だけど当日に理想の持ち場に付けたら良いけど……実際はどうなるか分からない。
私達が合流できない場合の編成は、ティアナ達4人をヴィータちゃんとリインで率いて、内部警備に響と奏、ギンガを、外の遊撃は流と震離に。
それでも本命は、ヴィータちゃん達だ。
ガジェットを基礎戦術として出してくる以上、それを安定して倒せる戦力、よほどの事が起きても対応できるように今日までしっかりとしてきたし。
「なのは。あたしは小隊の指揮はティアナに任せるつもりだかんな」
「うん。その代わり要請があったら戻ってあげてね?」
「おう、勿論だ!」
「勿論です!」
ヴィータちゃんとリインなら問題ないし、ティアナにも改めて説明しなくちゃ。
流のその後をどうしようかと皆で悩んでいると。
『音声通信でごめんね。コチラフェイト、どうしましたか?』
良いタイミング……って思ったけど。
なんか声幼くない? 気の所為かな?
――――
一通り事の経緯を伝えた上で、近くにいるであろう響にも意見を仰いでもらえば。
『にゃる……なるほど、普通に流の件。震離を六課からのメッセンジャーとして一緒に行かせて、その上で流を六課に再出向させてもらえるよう頼ませれば良いんじゃないですかね?』
「にゃ? まぁええわ。それも考えたんやけどその場合空いた場所に誰入れるん?」
……なんか響も声は何時も寄りちょっと高い気がするし、なんか口回ってない気がするけど……どうしたんだろ?
『俺とギンガでコンビを組んで。奏の所に……紗雪を入れたらどうでしょう?』
おっと? これは予想外。でも紗雪か……奏と外に行かせるのも有りかな? それに響だったら。
『俺ならギンガと合わせられる自信ありますし。室内戦なら、空飛ばなくていい分、俺も対応出来ますし。
奏と紗雪なら問題なく合わせられるかと、それにどちらも遊撃も足止めも出来ますしね」
そう言うと少し考えるように眉を八の字にして、唸るはやてちゃん。で、少し間を置いて。
「……それで行こうかぁ」
はやてちゃんからしたら、少しでも六課に戦力残したいんだろうけど、これならなんとかなるんじゃないかと。
『それに2人……最悪な場合震離だけでも戻ってきたら六課に向かわせれば問題ないでしょうし』
「……せやね。だけど、震離で大丈夫やろうか? 特殊鎮圧部隊って情報知ったら不味いんやろ?」
『まぁ、問題かもしれませんが、六課に流を送った理由を推察すれば、問題ないかなーって……希望的観測でしゅけど』
……噛んだ? 突然の噛みに、ヴィータちゃんもリインも吹き出してるし。
「せやねぇ。それで行こうか……ゴメンな二人共? 色々大変な中で?」
『……うん』『……えぇまぁ』
なんかすっごい歯切れが悪い返事だね。
それにどことなく幼い? 若い? そんな感じがする。響なんて、どことなく舌足らずのような……そう、ヴィヴィオみたいに所々たどたどしいし。
『ごめんね。もう少し話したいけれど……』
「ううん、こっちもゴメンな? 後は二人共ちゃんと戻ってきてな?」
『うん、それじゃ。留守の間お願いします』
「はぁい」
――――
2人と通信を終えた後、皆を隊長室に集めた。勿論流も居る。
何時もなら和やかな雰囲気なのに、今回は事情が事情だから空気が張り詰めてる。
そして、はやてちゃんが流を呼ぶ。
風鈴陸曹、と。
そして、告げられる。異動命令が来たということを。それが表向きではなく本来の部隊にという意味を込めて。
困惑したように目を白黒させていた。その様子から流も異動の件は前の部隊から連絡を受けていないみたい。その様子を見守ってる震離も落ち込んでるし。
だけど、すぐに。
「その上で、流はすぐに行ってもらって、もう一度六課へ出向出来るように説得をしてほしい。そして叶望一等空士には、六課の代表として流が必要だということを伝えてほしい。もしそれでも変わりがなければ……震離は六課へ戻ってくるように」
それを聞いて二人が固まった。そして、すぐに震離が流に後ろから抱き着いて。
「必ず遂行することを誓います!」
「うん、お願いや」
お互いにサムズアップで応える。だけど、流の様子がおかしいことに震離が気づいて。「どうしたの?」と質問。若干青い顔で。
「……その、前の部隊のある世界……第23管理世界なんですけど……」
その意味が分かっていないキャロとスバルが首を傾げてる。残った流を除いた皆は固まった。
私も含めて全員だ。なぜなら第23管理世界。世界名称「ルヴェラ」という世界。この世界に限らず大体の世界には「文化保護区」というものが設定されていることが多い。
それは、その土地ごとの固有文化を護る為設定された保護区。 保護区に指定されると、固有文化とは異なる先進技術などの持込や建造物の建築などが制限される。
加えて、転移魔法とかで飛びづらい世界でもある。
そして、何よりも基本的に管理局ですら支局を作るのが難しい場所に流の前部隊がある。
ただ、この情報は別にいい。極秘裏に作られてたのかもしれないし。色々考えられて作られたんだと思うし。それは別にいい、ある意味隠すのなら良い場所だろうし。
「……ルヴェラ行きの次元船なんて、ミッドから丸一日掛かる……往復二日って。ちなみに流、隊舎は近い場所にあるん?」
無言で首を振って、若干震えた声で一言。
「……足を用意して半日です。一応部隊の車両があるので何とかなるんですが……私はまだ免許を所有していなくて」
「あ、車でもバイクでもあるんなら、私、運転できるから平気」
……え?
「そうなの? 震離のデータに車両運転の資格なかったと私は憶えてたんだけど?」
4人が来るとき色々見て、誰も車運転出来ないのか-ってなったからよく憶えてる。
「えぇ、身分証代わりになるから取ってたんです。でも、使うことないなー言ったら面倒だなーって思って今まで伏せてましたが……コチラになります」
そういって懐のパスケースから免許を取り出して見せてきた。
え、待って。震離ってば、普通自動車免許に、バイク免許、メカニックマイスター、2級通信士に司書資格って。え、普通に凄いんだけど?
久しぶりに免許にその他資格有りって書いてるの見たよ?
「全部趣味というか。昔、捜査官でいろいろ単騎で動く必要あったからそれで取ったんです。ほかにもあったんだけどいくつか取られちゃって。残ったのがそれだけです」
皆震離が凄いっていうのは何となく知ってたから、あんまり驚かないけど、思ってた以上に持ってる事に驚いてるし。
へーってはやてちゃんも見てるけど、肩を叩いて呼んで。
「……はー。すごいなー……あ、違う違う。そしたら二人とも? 移動費は予算で落すから……悪いんやけど、すぐに出てもらってもええかな?」
「「了解」」
感傷に耽ってるのもつかの間、今からでないと間に合わないしね。
気がつけば時刻はすでに19時を回ってる。今から用意して次元港に飛び込めば間に合うかなって。
――――
なんだかんだで正面ロビーで、流と震離の2人を見送ることに。震離にははやてちゃんから直筆の手紙を渡されてる。
私からはフェイトちゃんと響からの伝言を伝える。何もなく戻っておいでって言ってたことを2人に伝えると嬉しそうに笑ってくれた。
ティアナとスバルは早く戻ってこないとあんたらのポジション取るって言ってるし。
ふふふ、コンビで遊撃ならばいい勝負出来そうだもんね。
ここで再確認。理想は二人とも帰ってくること。その場合は流を六課に、震離を本部の警備に加える予定。震離だけ帰ってくる場合は六課に戻る方向ということ。
一応帰ってくる時、連絡が可能ならする様にと伝えられた。ただし、場所が場所だけに上手く出来るかどうか分からないけどね。
そして、震離にはもう一つ連絡が。シャーリーから、震離の新しいデバイスの完成度は現時点で7割。それでもいいなら持っていくかと打診されたけれど。
今回は行って帰ってくるだけだからいらないと振られてた。ちなみに奏のは6割。
一番はまだAIが出来ていないのと、震離と奏の希望を叶える方向でちょっとだけ手間取ってるんだよね。
最近は響の融合騎とアームドデバイスの件もあるし。
あとは……。
「じゃあなのはさんから。何かあったらすぐに連絡入れること。それと流?」
「……はい」
どことなく落ち着かない様子の流を呼んで。目の前に来たところで頭を撫でて。
「ちゃんと頼る様に。震離も居るんだからね?」
「……ありがとうございます」
本当に初めて六課に来た時に比べると、表情を出すようになったなぁって。
暫くヴィヴィオになんて言おうかなー。すっごく懐いてるからなー。
ふと目を離すとロビー前の道路にタクシーが止まってるのが見えた。早いなぁって。
「それじゃあ流と震離、二人はちゃんと戻ってくること。これはスターズ一同からのお願いです」
「「了解!」」
「あとは、せやな……向こうの世界は、今の時期は冬やからね。風邪ひかないように気を付けること。それだけや……さ、いってらっしゃい」
「よし、じゃあ行ってきます。行こうか流?」
「……はい」
挨拶もそこそこに流と震離がタクシーに乗り込んで、走り去るのを目で追いかけて……。
色々胸騒ぎはある。だからこそ、ちゃんと帰ってくるようにと2人にお願いした。
……きっと大丈夫だから。
――side震離――
「お嬢ちゃんらはあれかい、姉妹かい?」
「あはは、その通り家族ですよー」
いやー参った。タクシーの運ちゃんうるせぇ。乗って少し経ったあたりからずっと話しやがるうぜぇ。
まぁ、適当に会話しながら、ちらりと隣の席に座る流をいるとやっぱり悲しそうだ。まぁ、突然の連絡だもんね……仕方ない。
あ、そうだ。
(ねぇ流の所に連絡は入ってなかったの?)
営業トークしながら念話を飛ばす。
(……えぇ、私のボックスには入ってませんでした。一応何かないかと、問い合わせているんですが返答がないんですよね)
(……そっか。まぁ、時間はあるし返事来るかもしれないよ。だから、さ。元気出して? ね?)
(……ありがとうございます)
……しかし悪い予想が当たったとはな。この前のメールで、メル友からの近状報告で、最近管理局からの追撃が無くなったんだけど、なんかあった? って連絡来たけど。
あんまりにも突然すぎて、とりあえず移すだけ移して確認したら、相手側の部隊はいつも通りの所属不明だった。おそらくこれが特殊鎮圧部隊だと推測出来る。
だけど、それにしたって……なんでこのタイミングで? 現時点の管理局の戦力があそことやり合ってるという情報はない。動く災害というか後手後手に回ってるし、今のところ小規模でしか動いてないし。
というか、私の表のメルアドをどこで知ったのやら……。ねぇ、カレンさんや?
でも、そのおかげで有り難いことが分かった。あの人ら、ナンバーズとも交戦したらしく、そのうちの何人かの名前が分かった。
ヌル、トーレ、チンク、ウェンディの4名。
そして、ヘリを撃った時の2人……それを助けた1人と、召喚士の子を助けた1人。合わせれば8人かな。名前が数字つながりなのはおそらくそのままの意味だろう。ということは最低でもウェンディという名前と、ヌルを考えれば12人も居るわけだ。
ただ、向こうは特にやり合うつもりはなかったらしいし、施設を襲ったら互いに被ったらしいし。だから細かい戦力までは分からなかったけど、名前が分かったのは有り難いかなって。
けど、妙だと言っていたのが、ヌルと呼ばれる者が独断専行したようにも見えるし、何より手こずったって言ってたな。攻撃が読まれるとかなんとか書いてあったけど、お互いに興が乗らないからって引いたらしいし。
その上他のメンツと違って、フードをずっとつけてたせいで顔が見えないって言ってたし。ただ、唯一分かったのが、右目が翡翠、左目が紅玉のオッドアイ。これに対応するのは……。いや、深く考えすぎかもしれない。
まぁ、ヴィヴィちゃんと同じ可能性もあるし、もしかしたら本物っていう可能性も考慮するけどねー。
赤黒の魔力光って言ってたし、目だけが似通った可能性もあるし。実際見てないからなんともいえねぇ。
あと、運ちゃんうるせぇ。
後書き
長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。
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