ある晴れた日に
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655部分:悪魔その十六
悪魔その十六
「それってどうなのよ」
「どうなのって?」
「だから。私達は支払うのよね」
「そうだよ」
「それで佐々は受け取らない」
奈々瀬はまた言った。
「それって矛盾してるじゃない」
「矛盾はしてるよ」
桐生もそれは認めた。
「けれどね」
「けれど?」
「そのお金は寄付するんだよ」
こう言うのである。
「寄付ね。どうかな」
「寄付って?」
「それをするってこと?」
「そうだよ」
まさにそれをするというのである。
「どうかな、それって」
「ええと、ちょっと」
「何ていうかな」
「どうかな」
皆ここで顔を見合わせる。桐生のその言葉を聞いてだ。
「寄付っていっても」
「何か急だし」
「それってどうもな」
「そうよね」
首も傾げさせる。受け入れられるには少し時間がかかるといった状況だった。
「それって。つまり」
「どうしようかな」
「支払うけれど受け取らなくて寄付って」
「ううん・・・・・・」
「何かそういうのってはじめてね」
また言う奈々瀬だった。
「私も募金はしたことはあるけれど」
「それはあるよね」
「それと同じ?」
こう考えるのだった。
「つまりは」
「そういうことだけれど」
「寄付はそれで何処になの?」
奈々瀬は今度はこのことを彼に尋ねた。
「いかがわしい寄付もあるっていうし」
「それはもうちゃんとしたところにね」
それだというのである。
「ほら、八条グループのね。医療のね」
「あっ、それな」
「いいよね」
「そうよね」
皆それには素直に頷けた。
「未晴の話だし」
「余計にいいよな」
「そうよね」
こう言い合うことになった。
「それじゃあそこに寄付して」
「それでいいか」
「だよな」
「賛成してくれるんだね」
桐生は皆のそうした言葉を聞いて述べた。
「それで」
「ああ、いいぜ」
「それでね」
「わかったわ」
皆会心の顔になって頷いた。今度はそうなっていた。
「それでね」
「いいと思うぜ」
「佐々はどうかな」
桐生は皆の言葉を聞いてからもう一方の佐々に対して尋ねた。
「それでいいかな」
「大筋じゃな」
彼はこう答えた。
「それでいいぜ」
「納得してくれたんだね」
「ただしな」
しかし言葉を付け加えてきたのであった。
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