【完結】Fate/stay night -錬鉄の絆-
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第033話 6日目・2月05日『八人目のサーヴァント』
前書き
更新します。
………目の前で姉さんが口から血を出してゆっくりと前のめりに倒れていく。
そして倒れてしまいそれからなにも反応を起こさなくなってしまった。
これはなんだ………?
この光景は何だ………?
どうして姉さんが、死ななきゃいけないの………?
嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ………ッ!!
「………ねぇ、姉さん? 起きて?」
「シロ………」
「嘘だよね? そんな、嘘だよね………?」
「シロ………しっかりしてくださいッ!」
「起きて! 姉さん起きてぇッ!!」
私が何度も姉さんを揺さぶるが姉さんはピクリとも動かない。
私はその光景が信じることができずに次第に意識が暗くなってくる。
これはきっと悪い夢………。そう、夢なんだ………。
そんな想いを最後に意識を手放した。
「シロッ!!」
志郎が気絶してしまったと同時にアサシンが喋る。
「聖杯………頂いたぞ。約束は果たしましたぞ魔術師殿」
「ッ!! アサシン、貴様!!」
セイバーが目に涙を浮かべながらも憎悪のこもった瞳をアサシンへと向ける。
アサシンはそれに目もくれずにその場から立ち去ろうとする。
「■■■■■■■■■ーーーーーーーーーッッッッ!!!!」
しかしそこで今まで沈黙を保っていたバーサーカーが吠える。
マスターがやられたからなのだろう、一際大きい叫びがその場に轟く。
そしてマスターがいなくなった事でもともとバーサーカーのクラスで現界している為に魔力消費が激しいバーサーカー。
ゆえに体の崩壊が始まり少しずつだが魔力へと還っていく中で、それでもアサシンへとバーサーカーは走っていく。
「■■■■ーーーーーーーーーッ!!!!」
「ぬっ!?」
アサシンは自慢の敏捷さでなんとかバーサーカーの攻撃を回避していく。
だがどんどんと差は縮まっていく。
バーサーカーの右手が消失した。
それでもまだ斧の剣は振るえる。
次は左足が消失した。
だが右足だけでも踏ん張り迫っていく。
そしてあと少しというところでアサシンは避けきれないと悟ったのだろう、無理でも抵抗はするという気持ちでダークを放とうとする。
両者がついに激突する、だろうと思われた戦いだったが次の瞬間、
―――ふん………。狂犬風情に聖杯を壊されてはたまらん。よって地に這え。
そんな第三者のセリフとともにバーサーカーとアサシンの二人に幾重にも鎖が巻き付いてきた。
その光景を見ていたセイバーは、
「鎖ッ!? どこから………いや、この声はどこかで聞き覚えが!」
「セイバー! 聞き覚えがあるって………」
イリヤの体をまだ間に合うかもしれないと調べていた凛がそう聞く。
次の瞬間にはバーサーカーとアサシンの前に黄金の鎧を纏った金色の逆立った髪に紅い瞳をした男がその場にいた。
「貴様は………アーチャーッ!?」
「久しいなセイバー。だが今は十年来の感動の言葉は後にしよう。今は………」
そう言ってアーチャーと呼ばれたサーヴァントはその目に狂気を宿らせて、
「暗殺者ごときが聖杯をその身に宿すか。………愚かな事だ、だが貴様は殺されては聖杯戦争が終わってしまうのでな」
そう言いつつアーチャーはその手になにやら液体が入っている瓶を取り出してアサシンの仮面を剥いで無理やりその液体を飲ませる。
「ぐっ!? なにを、飲ませた………?」
「なぁに………貴様の体だけを溶かす液体だ。中々高価な代物なのだぞ。存分に味わうがよい」
「ギャグァ………アガガガガッ!!!?」
次第にアサシンの体が解けていき数秒後にはその場には黄金の杯しか残されていなかった………。
「これでよい………次は貴様だ狂犬」
次はバーサーカーを見る。
バーサーカーは体のあちこちが消滅している中でなお鎖を解こうともがいていた。
「■■■ッ、■■■ーーーッ!!!!」
「………バーサーカーのクラスでなお主を思うその姿には称賛の言葉を贈りたいところだが、貴様ももう用済みだ。よって楽に死なせてやろう」
次の瞬間、バーサーカーの頭上の空間が歪みそこから様々な剣が出現してバーサーカーへと降り注いだ。
何度も体を貫かれるバーサーカー。
だがそれでもアーチャーへと震える手を伸ばしあと少しという所までの奇跡的な行動を起こす。
「………流石は神代の半神。だが、もう終われ」
そう言ってより一層空間が歪みもう目視では確認できない程に剣が降り注いでついにはバーサーカーは消滅した。
それを戦慄の表情で見ている事しかできないでいたセイバーと、そこに遅れてやってきたアーチャーとキャスターが姿を現す。
「これは………セイバー。これは一体どういう状況だ?」
「志郎様!」
「ほう………残りのサーヴァントも出現したと思えば“贋作者”もいるとは。その存在、汚らわしいな。疾く首を刎ねよ」
アーチャーと呼ばれた男がアーチャーに敵意を剥き出しにして背後の空間を歪める。
その光景を見てアーチャーは過去の記録を呼び起こされたのか、
「ほう………そうだったな。この世界には貴様もいたのだったな。英雄王ギルガメッシュ!」
「我の名を知っているとは………贋作者にしてはなかなか出来るようだな」
瞬間、ギルガメッシュと呼ばれた黄金のサーヴァントは、「では挨拶代わりだ」と言って様々な剣を射出してくる。
だがアーチャーも負けじと同数の剣を投影してすべてをはじき返す。
それにほんの少しだが驚いたのだろうギルガメッシュはその口を弧に歪める。
「我の宝を真似るとは………痴れ者が。そうとう殺されたいらしいな」
「言っていろ。貴様は私が倒す」
「セイバーならまだしも贋作者ごときがほざくか。よかろう、貴様は我自らが裁く。決定事項だ」
そう言い放つ。
そしてセイバーへと目を向ける。
「なんですか、アーチャー………?」
「セイバー。十年前の答えを待っているぞ。大聖杯の場で待っているとしよう。さらばだ」
ギルガメッシュは黄金の杯を手に持ちその場から姿を消したのだった。
それで一時的にだが脅威は去ったということでアーチャーはイリヤへと目を向ける。
「凛………イリヤは」
「ごめん、アーチャー………。もう手遅れかもしれない」
「キャスターはどうだ?」
「わからないわ………でも今からじゃ」
キャスターでも無理かと思った矢先にアーチャーは過去の自身に起きた出来事を思い出す。
「………凛。すまない、記憶で見たやり方を試してみてくれないか? 一時的に蘇生できればキャスターの魔術が間に合うかもしれない」
「で、でも上手くいくかは………」
「それでも、だ。頼む………志郎には絶望を味わってほしくない」
気絶している志郎を見ながらアーチャーはそう言う。
「………わかったわ。やってみる!」
そう言って凛は父から預かった宝石を依代に魔力を込めていく。
そう、それはかつて平行世界の遠坂凛が衛宮士郎を生き返らせるために行った即席の奇跡。
赤い閃光が迸って先ほどまで白かったイリヤの肌に赤みが戻ってきた。
「アーチャーのマスターのお嬢ちゃん! よくやったわ!! 後は私に任せなさい!」
そう言ってキャスターはイリヤの体を持って空間転移をした。
おそらく工房へと戻ったのだろう。後はキャスターの腕を信じるしかない。
「………さて、イリヤはこれでどうにかなるだろう。セイバー」
「はい」
「もし志郎が起きてすぐに気が動転したら落ち着かせてやってくれ。イリヤは大丈夫だと」
「わかりました。お任せください」
「凛もすまない………大切な宝石だったのだろう?」
「いや、もういいわよ。他の平行世界ではどうせあんたに使われる運命なんだから」
「ふっ、そうか」
それで三人は一時的にだが余裕ができたのだろう、笑みを浮かべる。
「さて、では教えてください、アーチャー。彼は………あのアーチャーは」
「分かっている。私の記憶では奴は十年前に聖杯の泥を被って受肉したと言った」
「やはり、そう言う事なのですね」
「その、ギルガメッシュであってるの? あの金ぴか」
「凛はやはりすごいな。奴の事を金ぴか呼ばわりするとは」
「それ以外にどう言えっていうのよ」
「まぁ、そうだな。………奴は大聖杯の前で待つと先ほど言った。だから最終決戦が迫っているという事なのだろうな」
「そうですね。彼の相手は私が…」
「いや、セイバーは志郎に着いていてくれ。奴との戦いは私が行う」
「しかし………」
セイバーが言い淀むが、
「奴と戦うのは私が一番だからな。任せてくれ」
「わかりました。アーチャー、あなたのご武運を」
それで会話は終了した。
後は志郎が目覚めてくれるのを待つばかりである。
後書き
決戦間近です。
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